GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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第5話

 

 

扶桑皇国の全体とは言わないが、この赤城に乗っている軍は俺の存在を認知している。

 

そして俺の扱いは宮藤一郎博士の使用人ということになっており、これは宮藤さんが戸籍も何もない俺のために気を利かせてそういう立ち位置にしてくれた。本当に頭が上がらない。

 

もちろん本当に宮藤一郎博士の使用人なのかは怪しまれたが、宮藤さん自ら「信頼できる」と軍人に伝えてくれたので俺は警戒対象として扱われながらも赤城に乗り込めた。

 

その代わり部屋は与えられず、適当な倉庫にハンモックを作ってそこで寝床を確保している。

 

てかあの宮藤博士からお墨付き貰っているのにこの扱いは扶桑皇国としてどうなんだ?まあいい。一応倉庫で寝泊まりしている理由を述べるなら赤城の船は大きいが部屋の数は限られており、ブリタニアから引き取った物資などで少し場所に余裕が無いのだ。

 

それでも眠れる場所と屋根があるだけ有難いので文句は言えない。寧ろ戸籍も血縁もこの世にない素性の知れぬ俺を乗せてくれた扶桑に感謝するべきだろう。

 

しかし俺も警戒する側だ。扶桑軍に対しては。

 

今はまだ魔法陣から授かったGVS(ガンダム)の力を隠しているがネウロイと戦っている内に明かされて行くだろう。

 

一応、北郷章香の後ろ盾があるのでマフティーなハサウェイほど身構えすぎる必要は無いかもしれないが激化が続くほど人間は欲する。

 

それはガンダムの作品でもよく見てきた。人の脳を弄くり回した結果ユニコーン3号機が大暴れして人間のいる研究施設をドカーンと破壊するとことか色々とな。その惨状にゾルタン・アッカネンは愉快に喜ぶ。いつも何かするのが人類だと言わんばかりに。

 

世界観も倫理観も違くとも人間って点ではストライクウィッチーズの世界も同じだろう。

 

 

「まあ、その時は振り払うがな…」

 

「黒数、よそ見とは随分と余裕だな」

 

「潮風気持ちよくてな。少し緊張感が薄れた」

 

「ほぉ?なら潮風を浴びるよりも汗を浴びてもらおうか」

 

 

 

さて、俺は今、北郷からボコボコにされようとしていた。え?何かって??

 

稽古(暴力)らしい。

 

アグニカカイエルもニッコリだ。

 

 

「いくぞ黒数!はっ!」

 

「このっ」

 

「やるな!ならば…!」

 

「!、!!」

 

 

講道館剣術の師範代である北郷章香から繰り出される斬撃、使っている物は木刀だが当たればひとたまりもないし何より斬撃が早い。

 

戦いの心得もないオールドタイプ(普通の人間)ならアザの一つや二つできてしまう。

 

それでもなんとか反応はする。

 

 

「っ!!」

 

「ほぉ、これを防ぐか!!」

 

 

素人目線でもかなり容赦ない攻撃だ。

 

右に振り下ろして防いだ瞬間、既に左の方から木刀が振り下ろされようとしている。

 

負けそうになる握力に耐えながら"勘"の良さと反射神経だけで防いでいた。

 

 

「反撃はしないのか!黒数!」

 

「できるかっ!」

 

「なら存分に打ち込ませてもらうぞ!」

 

「ちぃぃ…!」

 

 

扶桑に着くまで丸々二週間は掛かる。

 

天候次第では1か月以上は覚悟するらしい。

 

それで扶桑に着くまで何もしない訳にも行かないので北郷章香から「鍛えてよう」と誘われてから甲板の上で稽古が始まった。

 

最初は簡単なものばかりだ。

 

走り込み、素振り、柔軟、精神統一、時代を感じさせるような体験だが、やってる分には案外楽しく感じている。

 

運動は元々得意ではあるからそのくらいなら…… なんて思ってたけどこの時代の扶桑人と言うよりか、戦時中の扶桑人は普通に身体能力が高くて正直焦った。

 

これが戦で命を滾らせる軍人かと思わせるようなフィジカルを兼ね備えている。気を抜けば大人なんて子供と大差ないことを思い知らせてくれる戦闘力だ。しかも加減してくれてこの強さだ。

 

北郷章香という人間の強さが木刀で受け止める衝撃全てに伝わる。

 

女の子相手に握力で負けんなよぉ!俺!!

 

 

 

「前のっ!世界でも!何か!やってたっ!のかな!」

 

「特に!これとっ!言ってはっ、ね!」

 

 

木刀を振りながら受け答えする。

 

 

「嘘をっ!言うっ!必要は無いな!教えてくれてもっ!良いじゃっ!ないかい?」

 

「言ってもっ!わからないっ!なっ!」

 

「言えっ!言えっ!言わせてやるっ!」

 

「じゃぁ!フラッシュ暗算!」

 

「な、なんだそれはっ!」

 

「それからビームライフル(射撃部)!」

 

「びー、ビーム? な、なんだ!?」

 

「あとっ!アーチェリーっ!」

 

「わからーんっ!」

 

「(時代が)70年はえーんだよっ!」

 

 

小、中、高、と共に学生時代は結構楽しんでいた習い事や部活動を思い出しながら、鍛えに鍛えた反射神経と動体視力で北郷と渡り合う。それでも男性に負けない腕力と技術力は時間が経過するのと共に差がつき始めて、体力が危うくなった辺りで木刀が弾き飛ばされた。

 

 

「あ」

 

「ふっ、わたしの勝ちだな」

 

 

額の汗を拭いながらすっっごくいい笑顔で言われた。お前バチバチの経験者だろう。初心者相手にするレベルじゃねーぞ。

 

 

「大人気ない奴め」

 

「はっはっは!まだアガリを迎えてない未熟な子供でな、大人じゃないからついつい本気になってしまったよ」

 

「夢中になってたけど普通に怖かったからな?打ち込まれたら痛くてたまらないと思って必死だったぞコッチは」

 

「なら次も必死になってもらうか。その方が強くなるからな」

 

「強くなる前に壊れるわ」

 

「なーに、扶桑男児は丈夫だ。君も扶桑男児なら傷の一つや二つ!乗り越えた証にするんだ」

 

「俺は日本人だよ!」

 

「扶桑とは親戚みたいなものじゃないか、話を聞く限りだとな!あっはっはっは!」

 

 

カラカラと笑って誤魔化す北郷章香。

この人なにかと良い性格をしている。

 

まあ指導者とはそのくらい余裕にあしらえて振る舞えないとつとまらないのだろう。ましてや師範代と言う重たい役割を得ている人間だ。これから先率いる者ならこのくらいの心得は無いと自分が持たないのだろう…

 

あと…

 

 

「む?さっきからどうしたか?続きでも御志望かい?」

 

「いや、綺麗な汗をかく女性は綺麗だなって」

 

「!………こ、こほん。あー、黒数くん、あまりそうやって軍人を揶揄うな…?」

 

「俺は軍人じゃなくて北郷本人に言ってる」

 

「んむむむ……! そ、その、勘弁してくれ。反応に困るから…」

 

「そうかそうか。たしかにまだ子供だな。男性の口説き文句を捌けないなら未熟っ子だな」

 

「く、黒数っ…!」

 

 

アニメのストライクウィッチーズは何かとギャップ萌えが強烈なイメージあったが、なるほど、と言える収穫だ。

 

やはり軍人が少女ってところがポイントなのかな?戦争はともかくこの辺り素晴らしいな。

 

 

 

「まったく、君って人は、まったく…」

 

「稽古のお返しだ」

 

「……ふんっ」

 

「拗ねるなよ」

 

 

口を膨らませてプンスカと怒る北郷章香。

 

これは年相応なのか、まだ少しだけ子供っぽいところがあるのか、恐らくどれかだろう。

 

しかし軍人としての風格を除けば彼女はただの女性だ。随分と可愛らしいところがある。

 

 

「北郷、やっぱり君が望む通り俺は北郷の事を大尉と呼ぶのやめるわ」

 

「む、なんだ急に?そりゃ扶桑に帰ったら大尉ではなく、少佐になる身だが…」

 

「そうじゃないよ。そうじゃないんだ、北郷」

 

「??」

 

 

木刀を肩に乗せて首を傾げてポニーテールを揺らす彼女に俺は苦笑いをする。

 

木刀を拾いながら「そのうち意味は教える」と言って汗を流すために甲板からシャワールームに向かう。

 

雨水を再利用したシャワーだが贅沢言う必要は無い。借りた半袖をパタパタと叩きながら彼女より一足先に去る。

 

 

 

「俺は… 自分のことで必死だ。恐らくいつまでも必死になる。でも、そのついででも構わないなら、俺はそこに驕りながらも助けられる隣人は助けよう。ブリタニアの少女(リネット)にそうしてあげたように、ウィッチの力になろう」

 

 

魔法陣は、ウィッチの、またはウィザードの作り上げた叡智の泉なら、その魔法陣から現れた俺は魔法を使うこの世の少女のために武器を振るう。ストライクウィッチーズの世界に来た俺という存在をそう定めてもいいのかもしれない。

 

だからまずは…

 

 

 

「北郷章香くらいは、助けられるようになろう」

 

 

 

あくまで『ついで』の中。

 

本命はネウロイを倒すこと。

 

ヴェイガン殲滅おじさんと化したフリットのように俺は人類に危害を加えるネウロイを根絶する。

 

それが架空の世界で作り上げられた戦争の武具であり、ガンダムなどを通して戦争を知ってるつもりの俺が考えるべき役割。

 

架空の兵器で、架空の世界に、挑む。

 

黒数 強夏 に与えられた定め。

 

 

 

「身勝手な物語だ…」

 

 

もしこれが二次小説ならとんだ駄作だ。

動かされる人のことなど考えてもいない。

 

確実に苦しみが見える果てまで描こうなど自己満足も良いところだ。馬鹿らしい。

 

 

でも今ここにあるのは現実。

 

ストライクウィッチーズという架空の世界であろうとも、貯めた雨水で、汗水を流すこの温度や心臓のやかましさは夢なんかではない。

 

本当に起きていることだ。ならあまり否定しすぎても、この現状に考えすぎても仕方ない。

 

もう始まってしまったんだ。俺がゲームを起動してしまったあの日から。決められたんだ。

 

 

 

「………死んでたまるか」

 

 

不安も恐怖も消えやしない。

 

けれど確かな強さはここに出来た。

 

あとは生きるも死ぬも、俺次第だ。

 

モビルスーツに乗り込んだパイロットのように。

 

この戦争でどう戦い、どう生きていくか。

 

でも、どうせなら…

 

 

 

「少しは俺の周りが優しい世界であったらいいな」

 

 

 

ご都合主義が存在するならそうであってほしい。

 

元から有るものに強請り、無いものに強請る。

 

やはりどうあがいても、人類は欲するらしい。

 

そのために、自分のために。

 

ストライクウィッチーズだろうと、ガンダムだろうと、人間が身勝手になぞるなら、世界の違いなんて対して関係ないんだから。

 

 

 

 

 

 

 

「この場合は『トレース、オン!』って言った方がいいのか?」

 

 

どこぞの聖杯戦争で英雄を夢見た主人公のセリフを思い出す。何か起こる度にいつもガス会社が泣かされてる世界はともかく、武器を召喚すると言うのはかなりざっくりした表現だが、実際に召喚したのだからそう言うしかない。

 

 

「まあ、あの時は必死だったからな」

 

 

帰るはずの魔法陣から呼び出した。しかも前世のゲームの続きと言わんばかりに俺の選択した機体の武器が手元に召喚された。

 

 

 

「………()()()!」

 

 

手元に念じる。

 

すると一瞬だけ、手元に数本ほど青白い光が縦にスッと開いて、そこから瞬きも許さない速度でズッシリと乗っかる。

 

 

「ジム・ライフルだな」

 

 

適当に()()()武装を呼び出した。

 

するとデフォルトで設定されたままなのか、あの洞窟で召喚してネウロイを倒した武装がそのまま出てきた。あの時以来引き金は引いてないがネウロイが現れたらまたこれを撃ち放つ時が訪れるのだろうか。間違いなくその時は来るだろう。

 

さて、召喚したこのメイン武装。

 

何度も言う通りこれはジム・ライフル。

 

これは俺がモニターの光に飲み込まれる前までゲーム内で選んでいた機体、ジム・カスタムのメイン武装だ。それと…

 

 

「カートリッジ」

 

 

……は、召喚できないらしい。

 

元が自然回復(リロード)だからか?

 

なら手動リロードのメイン武装を召喚すればカートリッジもメイン武装の一つとして正常に召喚出来るかもしれない。

 

そこらへんは要検証だな。

 

 

「ビームサーベル!」

 

 

()()武装を念じる。

 

するとジム・ライフルを召喚した時と同じように瞬く速度で青白い光が手元で輝き、秒に入らない速度で召喚される。

 

そこには懐中電灯ほどの大きさ、またはリレーで使われるバトンのような筒状の棒が手元にのしかかる。

 

それを真っ直ぐ伸ばして、念じる。

 

紫色の光がシュン!と伸びた。

 

 

「初めて召喚した時よりは滑らかになったな」

 

 

召喚する時のこの感覚をどう伝えたら良いか分からないが、ゲームセンターにあるアーケードコントローラーで格闘ボタンを押すような感覚で武装を引き出している。

 

もう体の一部として備わっているらしい。

 

そうなると呼吸するが如く武装を出せるようになるだろう。むしろそうなった方がいい。高機動戦が強いられる空戦なんだから。

 

それからしばらく、出しては、消して、出しては、消して、手のひらをグー、パーを行う感覚で武装を試す。

 

少しアクションを混ぜ合わせながら召喚したりと身体に馴染ませる。大体手元に召喚出来るのでよっぽど変な体勢で召喚しなければ手元から落とすことはないが、例外はある。

 

 

 

「ぐぉ、イテェ…!」

 

 

()()武装、バズーカ系の武装。

 

こればかりは手のひらだけで抱えることはできず、召喚の際は肩に担げれるようにある程度姿勢を作っていないと体のどこかにぶつかって痛い。

 

てかこの倉庫で誤ってトリガーでも引いたらアボンだ。赤城でそんなの間抜けは許されない。

 

バズーカ系の武装は一旦中止だ。

 

すると不意に…

 

 

「うおっ、お、お、た、立ちくらみか…」

 

 

もちろん無償で使えるわけでもない。

 

思わず荷物をクッションに尻餅を付く。

 

ため息を付いて、天井を見上げる。

 

トリガーを引いて放火はしていない。

 

仮に引いてるとしてもビームサーベルの刃を展開するくらいで、そこまで回数は重ねていない。

 

色んな武装を出し引きしてる程度だ。

 

それはつまり…

 

 

「召喚の度に魔法力を消費している。そう言うことかな。ウィッチで言うシールドを展開する時と同じ感覚か。俺自身正統なウィッチじゃないからシールドを展開できないが、代わりに数多ある武装の数々が許されていると言ったところか。よくバランスが取れてるわ、こりゃ」

 

 

しかしそれはつまり、ネウロイの攻撃に当たれば一撃で落ちると言うことだろう。

 

 

……いや、普通に死ぬじゃねーか。

 

なーにがバランスだよ。

 

 

「まあ、まだ盾とかそういうコマンドは試していない。これからもっと試してみないとな」

 

 

ふらつく体に鞭打ってハンモックに転がる。

 

小さなランプがひとつだけ。

 

目が悪くなりそうな暗さ。

 

火が勿体無いのでランプの光を消してハンモックに揺れる。

 

 

「正式なタイトルはGUNDAM VERSUS(ガンダムバーサス)。でもその大元はエクストリームのタイトルから」

 

 

GUNDAM(ガンダム) EXTREME(エクストリーム) VERSUS(バーサス)

 

日本語に、または扶桑語に。

これらを都合よくこの単語を変換するなら。

 

 

『ガンダム で 究極的 な 戦いを』 って事。

 

 

「チート能力も大概だな。使うのは生身の人間だけれども、どんな戦闘でも戦えるとなるとこれほどやばい奴はいない」

 

 

この世界の基準なのかわからないが、この世界にある魔法陣とはこの世を凌駕したナニカらしい。

 

厳密にはその魔法陣の中に隠されたモノだが、そんな魔法陣から出てきた俺と、この体に備わるGVSの力は世界規模からすると絵本の中にある英雄(ヒーロー)そのものだ。

 

それが今の俺であること。

 

それを証拠づけるようにあらゆる武装が使えると言うこと。

 

つまり、それは、どんな敵でも戦えてしまう恐ろしさを秘めていること。

 

魔法陣から来た黒数強夏という男はこの世界の英雄なのかも知れない。そりゃ魔法陣の意味を理解する宮藤さんも期待もするよな。

 

人類の叡智から、今の時代に苦しむ人類のために召喚された存在なら、もしかしたら… と期待もしてしまう。俺がネウロイに襲われる側の人間なら魔法陣から来た存在に縋りたくもなるさ。

 

 

__君は英雄なのか?

 

 

 

「英雄ではない。愚者がそれらしいことをするだけだ。俺は戦争を知らない。戦いを知ってるつもりでいる画面越しの消費者だ。大層な存在じゃないんだよ、宮藤さん」

 

 

 

ブリタニアでお世話になった男の顔と名前を思い出しながら目を閉ざす。

 

俺がウィッチと似たようなものなら、体を休めると同時に魔法は勝手に回復するらしい。

 

波風立てる赤城の音を聞きながらハンモックに揺れる。まだ航海が始まって三日程度。

 

まだまだ扶桑まで時間はかかるらしい。

 

それまで出来ることを行い、理解を深める。

 

寝息を立てて、意識は闇の中に。

 

 

 

 

 

つづく






エクバと言ったらボタン一つで何もない空間から武装を引っ張り出して攻撃してしまうから召喚してしまう程度大したことないぞ、恐らく。

それ以上にネウロイがヤバい…

ではまた
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