GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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第54話

 

 

ベルリンはとても綺麗な街だ。

 

歴史がある。

 

人の営みがある。

 

老若男女問わずこの街を楽しむ。

 

私だってこのベルリンが好き。

 

カールスラントを象徴する場所だから。

 

 

しかしこの街の外に怪異がある。

 

それは人を脅かそうとする。

 

だから私は街を……いや、この生まれた国を。

 

カールスラントを護りたくウィッチになった。

 

 

 

 

そして…

 

 

 

 

「なんだ、アレは!?」

「なんなの!あの敵意は!?」

「黒いっ!黒い人形だ!」

「赤い光はもしかして剣なのか!?」

「あんなのに斬られたらっ!」

「が、願那夢…!」

 

 

駆け付けた援軍は頼もしい。

 

未だ有効打を見出せない攻撃性の劣る武器を抱えているが、しかし対面の負担は減る。

 

あと隣に仲間がいる。

それが何よりも頼もしい。

 

しかし、隣に飛ばないあの人は?

あの、願那夢を名乗る黒数強夏は?

 

いま彼は一人で人型と立ち向かっている。

 

 

「ね、ねぇ?あれ、大丈夫なの?」

「わ、わからない。で、でも願那夢なら…」

「いや!押されてるように見えるぞ!」

「そ、そんな!」

「おい、こっちにネウロイが来た!」

「くっ!息を吐く間も無くわね!」

 

 

私たちよりも更に上の高度で戦う願那夢。

 

人型ネウロイが握りしめる赤色の大剣が振るわれる度に強い光が瞬き、エーテルの光が軌道を描いてそれを凌ぐ。

 

 

「ヴィーゼ!」

 

「っ!」

 

 

願那夢から貰い受けたこのマシンガンだけはネウロイの装甲を貫ける。

 

だから私だけが頼り。

 

しかし弾数も少なくなってきた。

 

あの人型ネウロイと戦う願那夢からカートリッジを貰い受けれる見込みもない。

 

いや、しかし、それよりも…!

 

 

「っ!」

「ギギギィ!!」

 

 

あの大剣に対して接近戦を挑む願那夢。

 

いや、ちがう。

 

接近戦のみ許されている現状。

 

私に遠距離攻撃の武装を託しているから。

 

だから彼は使えない!

 

 

「こんなっ!こんなのって!」

 

「ヴィーゼ!どうした!?」

 

「トゥルーデ!違う!違うのよ!願那夢が!あの人が!私はコレを託されたから!今は使えないの!あの人型に対して!」

 

「どう言うことだ!?何が起きてる!?」

 

「願那夢は私達がネウロイを倒せるように武装を渡してくれたの!だけど代わりに彼が武装を引き出して戦えないの!それなのに少ない武装で今!人型と戦ってくれている!なんとかしないと彼がこのままじゃ!」

 

 

バチーン!!と、耳を劈くよう音が響く。

 

誰もが身をすむませるような衝撃。

 

思わず上を見上げてしまう。

 

しかし視線をネウロイの群から離してはならない。奴らは私たちを待たない。

 

 

「このまま!このままだと…!」

 

 

彼に今すぐこの武装を返したい。

 

でもそうなると目の前にいるネウロイ達を倒すことは叶わない。

 

ベルリンの空に現れた巣から現れるネウロイ達は特段装甲が固く、今の武器では通用しない。

 

 

「ヴィーゼ!ネウロイの親機を見つけた!コッチだ!急いでくれ!」

 

「ッッッ!!!」

 

 

無線から届く必死な声。私はストライカーユニットの回転を増やして一気に向かう。

 

 

なんで、こうもっ!

 

ネウロイって言うのは!

 

っ!

 

アイツらッ…!!

アイツら…!!

 

よくもッッッ!!

 

 

 

「許さないっ!許さない!」

 

 

握りしめたマシンガンは普通の小型ネウロイよりも一回り大きな親機に放たれる。

 

一発、二発、三発。

 

硬いはずの装甲に弾丸が食い込む。

 

なんとも容易く撃ち抜けてしまう。

 

願那夢の魔法力によって作り上げられた武装だから質が違うのだろう。

 

コレが異界から取り出せる兵器。

 

ああ、なんとも酷いことか。

 

これほど強い武器を使えずにあんな恐ろしい人型と戦ってくれている。

 

私たちなんかでは渡り合うに命足りない敵を願那夢が命と体を張って人類を守ろうとする。

 

無力だ。

 

カールスラントをウィッチは。

 

 

 

「ッッッ、黒数!!」

 

「なっ、おい!?何をするマルセイユ!?待て!行くな!これは命令だ!」

 

「臆病者のバルクホルンは引っ込んでろ!次は私が黒数を助けるんだ!」

 

「何を!?くそっ!待てぇ!!」

 

 

彼を助けようと高度を上げるウィッチが一人叫んでいる。彼女はマルセイユ。その上官に当たるバルクホルンが制止するもいつものように命令無視で飛び出すマルセイユはそこに人型が飛んでいようと黒数の元に向かう。新兵の中でも勇猛な姿勢であるが無謀も兼ね備えた未熟な突貫に上官達は顔を顰める。しかしその間にもネウロイが襲いかかってくる。彼女のことを誰も止められない。

 

 

「くっ!なんてことだ!マルセイユの奴は死ぬ気なのか!?」

 

「でもそこには願那夢がいるわ。まだもしかしたら安全かもしれない…」

 

「ッ、くそっ!!こんな機関銃じゃなければこんな奴ら!こんなネウロイなんか!!」

 

「トュルーデ、落ち着いて。冷静に。私も気持ち同じよ。歯痒くて仕方ないわ。でも今は成すべき状況が大事。下にいる友軍はベルリンから撤退を始めている。ここは間も無く放棄よ」

 

「っ、撤退……私達に、撤退を、しろと?」

 

「そうだ」

 

「ラル隊長!」

 

「ベルリンは間違いなく落ちる。対抗手段を持ち合わせていないカールスラントにできることなど無い。可能なのは人類の反抗時どれだけ軍を保有できているかだ。私達はイタズラに戦力を失えない」

 

「くっ…!祖国を犠牲に私はまた後ろへ逃げてしまうのか…!?残された妹まで連れてここまで逃げてしまったのに!こんなのッッ!!」

 

 

様々な思いが蔓延る欧州の空。

 

こんなにも息苦しく、こんなにも締め付けられるような体験は生まれて初めてで、私も願那夢から受け渡された機関銃を強く握りしめて無力を噛み締める。どうにもならない。

 

 

「今は目の前のネウロイだ!片っ端から親機を潰して統率力を奪え!そうすれば私たちの退路も確保できる!いまは空の戦場をウィッチが受け待て!怯むな!」

 

「「「了解っ!!」」」

 

 

フーベルタ中隊長の声に奮起し、カールスラントのウィッチは散会する。集ったウィッチ達もよく勉強しているのか親機の見分け方はスムーズであり、無駄弾を減らした少ない弾数でネウロイを牽制、また同じくビームライフルとマシンガンも節約しながら親機を潰すことになんとか成功している。その代わり空では強い衝撃波が空を震わせ、衝突する影同士から発生する稲妻さえも欧州の空を貫いている。

 

どちらも長く持たないことを証明している。

 

 

私達は……この国は……この先。

 

___キミは、生き残ることができるか?

 

 

 

そんな言葉が、焦燥感を煽る。

 

っ、死んでたまるものですか…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビームサーベルにも種類がある。

 

火力を上げるタイプ。

主に試作二号機、またサイサリス。

 

剣先を伸ばすタイプ。

主にGセルフ、またはガンダムZZ。

 

両刀に生やすタイプ。

主にSEED系、またはジャスティス。

 

コレにより様々な角度から格闘を挑める。

 

実際に第十二航空隊にいた頃、部隊長である北郷章香を筆頭に、生徒の若本徹子や坂本美緒、陸軍からも穴拭智子や黒江綾香など、片手で数えれる程度には白兵戦の訓練をした事がある。

 

その時は大体、木刀など殺傷力の低い武器を使って模擬戦に投じるのだが、勇猛にも「本気で挑むわよ!」なんて意気込むウラルの閃光の乙女達から頼まれたら、そりゃ本気の本気で立ち向かってくる相手にビームサーベルも引き出しては、その時に様々な性質を秘めたビームサーベルを試したりとこの武装の汎用性は確認している。ぶっちゃけビームサーベルは強い。

 

ただ大前提として弾幕掻い潜って近づけたらの話になるのだが、41年時点で4世代分を先征くこのストライクユニットならばその前提は解消され、目に見張るこの機動力なら接近戦は容易い。

 

何より人の形をしていない以上相手の動きもわかりやすくサーベルを突き刺しやすいのだ。

 

サーベルの投擲がよく当たるのも軌道を読めるから…… って、言ったらそう簡単なことじゃないと章香に諭されたことがある。軍神の彼女が言うのならそうなのだろう。

 

 

 

「ギギギィ!」

 

「ちょこまかと上取りやがって!高コストの個体だけあって太陽光を利用することをネウロイも覚えてるのか!」

 

 

上を取られまいと更に上昇すると、紛い物のエピオンも上昇して、その度に接近戦による応酬を繰り広げている。ビームサーベルにはビームソード、ヒートロッドにはビームシールドを、そうしていつの間にかネウロイの巣の上までやってきた。

 

しかしこのエピオン、原作ゲーム通りに神経を尖らせて対面を強要してくるこの状況、自動シールドを持たない俺からしたら気を抜けない。

 

いや自動シールドがあったところであのエピオンが握るビームソードは簡単にシールドを斬り砕いてくるだろう。実際にシールドの厚みが足りなくて俺の服が裂けている。危うく胴体を刻まれるところだった。

 

それでもビームシールドで防げているのはビームソードがシールドに当たる瞬間に強度を最大まで上げているから。それをタイミングよく打つけるように斬撃を払っている。俗にいう『パリィ』ってヤツ。お陰であんなのと対面して生きながらえている… が、しかしコチラもサーベル一本ではエピオンに与えれる有効打が見出せず膠着状態だ。しかも射撃戦は不可能。下で地上の友軍を助けるためカールスラントのウィッチ二人が使っている。

 

 

なら更に引き出せば良いのでは?

 

 

いや、それは無理だ。

召喚するためのキャパシティーが足りない。

 

今はもうビームサーベルで限界だ。

 

しかも部が悪いことにコチラの魔法力は無限じゃないし、オーバーヒートによる飛行不能を考えると長期戦は望ましくない。

 

俺がもし戦線離脱するようならエピオンは誰が止めれるだろうか?

 

初見殺しの塊であるエクバを対面経験皆無なウィッチに任せるなどあってはならない。

 

自動シールドすら斬り砕くようなエピオン相手に死人が何人出てしまうか……

 

考えたくもない。

 

 

 

「黒数!」

 

「!?」

 

 

真下から声が聞こえる。振り向くと一人のウィッチがコチラに飛んでくる。マルセイユだ。

 

 

「バカ!来るな!」

 

「ギギギィ!」

 

 

目を離した瞬間、エピオンは変形するとマルセイユの方に急速接近する。

 

 

「!?」

 

「逃げろ!マルセイユ!!!」

 

 

あまりの速さに目を見開くマルセイユ。それでも訓練された体は勝手に動いたのか機関銃を構えてエピオンに対して迎撃体勢に入る。しかしコレまで対面したことが無いだろう高速機にマルセイユは銃口を定めきれず、そして完全に足を止めてしまった。やばい!的だ!

 

 

「っのぉ!!」

 

 

俺はビームシールドに魔法力を込め、濃くなった魔法力を握るように掴み、そしてマルセイユの目の前にぶん投げると緑色のオーラがカーテンのように広がる。やってることはフェネクスのメインの真似である。もちろん攻撃性はあまりない。しかしエピオンはその異質な魔法力に反応したのか軌道を変えながら変形を解除してヒートロッドをマルセイユに繰り出す。

 

すると勝手に展開された自動シールドはヒートロッドに対抗できるのか、マルセイユの目の前で弾かれた。俺はその隙を見て一気にマルセイユとエピオンの間に割って入る。

 

 

「ぁ…黒数…」

 

「バカ野郎!!死ぬ気か!!」

 

「っ!?」

 

「人型をよく知ってる俺だから引き受けているんだ!お前には手に余る敵だ!」

 

「っ!でも!でも!黒数は遠距離攻撃出来ないじゃないか!なら黒数も同じだろ!?誰も何も出来ないじゃないかよ!」

 

「そんなの理解承知だ!だからこうして上に誘導して切り離してんだろう!誰もコイツを倒せないならせめて理解ある奴がコイツの猛攻を捌いて時間を稼ぐ!その間にカールスラント軍が戦線離脱できたら武器だって俺の手元に戻ってくる!俺を助けたいなら下を助けろ!理性はそれを正しいと分かってた筈だ!」

 

「っ!!…わ、たし…!わたし…ただ…く、ろかず、を…」

 

「ギギギィ!!」

 

「「!!」」

 

 

怪しく赤色に目を光らせるエピオン。

すると装甲が黒を混ぜた赤色に染まる。

 

ビームソードも出力が上がり、アレに斬られたらただでは済まない光景が目に浮かぶ。

 

だがそれよりも威圧感が増した。

__オマエヲコロス。

 

まるでパイロット(ヒイロ・ユイ)の言葉を借りるように訴える。

 

その姿はまるで殺戮マシーン。

 

 

「ひっ…!!」

 

 

活きの良い新兵かつ、良くも悪くも怖いもの知らずなマルセイユだが、敵から放たれる『本物』の殺意を向けられてしまい、何よりこれまで経験のない敵の威圧感によって握りしめた機関銃がガタガタと震えていた。

 

不味いと思い、俺は彼女の前に割って入る。

 

しかし更に小型ネウロイも巣から出てくると敵である俺たちを認知し、数機分エピオンの後ろに取り憑いて数を増やしてきた。流石に俺も額から汗を垂らし落とし、かなりヤバい状況であることを悟る。あとまだ下は俺の武装で戦っているらしい。射撃戦は無理だな。

 

 

「マルセイユ」

 

「!」

 

 

視線は敵から逸らさず、俺は後ろに手を伸ばして恐縮していた彼女の頭に手を置いて声をかける。ピクンっと手のひらに伝わる。しかし俺は構わず言葉をかけることにする。

 

 

「お前は新兵として未熟者だ。優先順位を理性で判断しなかった。それがこの現状。分かってるよな?」

 

「っ……わ、わたし…」

 

 

彼女も理解している。

 

__自分は足手纏いだ。

 

命を優先して戦うことを選べばこれから負担が増えることになるから。

 

 

「でも理性(それ)は別として、お前が来てくれたことは心から嬉しく思う。コレは確かだ」

 

「!」

 

 

褒められない行動だが、俺を助けたくて来てくれたその心遣いは、手元に足りなさすぎる武装よりも満たされた気がして嬉しかった。それは一言告げておく。

 

それから彼女の頭から手を離してビームサーベルをもう一本だけ召喚して二刀流に構える。

 

 

「ここからは新兵扱いは出来ないぞ。___着いて来れるか?」

 

「!!」

 

 

つまりマルセイユを優先せず、自分自身が生き残ることを優先してこの空を受け持つ。

 

それがネウロイの巣の上まで来てしまった者の役割であり、約束される末路である。

 

歌詞にある「死神の列」はこの瞬間から。

哀戦士とならん者はこの場面から。

 

 

 

ッ、もちろんだ!わたしは黒数と…!ああ!お前と…!ずっっと憧れた願那夢とロッテを組めて死ねるならこれは本能だ!!!

 

「!!」

 

 

もう彼女に震えはない。

 

そして覚悟を決まった眼で敵を見据える。

 

この瞬間__彼女は、殻の付いたヒヨッコ扱いから脱したカールスラントのウィッチとして空を飛ぶ。

 

 

「人型は俺、雑兵はマルセイユ。良いな!」

 

「了解っ!」

 

 

恐らく過去一番の「了解」が彼女の口から出たのかもしれない。

 

ユニットを回し、新兵扱いもその場に置いてマルセイユは小型ネウロイに突っ込む。

 

俺もエピオンに二刀流で構えたビームサーベルを振り下ろしてヘイトを集中させる。

 

 

 

エピオン相手に射撃戦が出来ない?

 

上等だ。

 

やってやるよ。

 

この生身一つで挑んでやる。

 

なに、恐れはないさ。

 

そもそも白兵戦なんて章香や穴拭を相手に散々してきたんだからな。

 

それが今回エピオンだった話。

 

なら知識と経験で凌ぎ切ってやる。

 

この欧州の空で…

願那夢は役割を果たす…!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

撤退だ!撤退しろ!

全軍!空のウィッチも撤退!!

 

 

 

そんな声が無線から聞こえる。

 

短いようで、長い戦闘から解放される。

 

どのくらいベルリンの空で戦った?

 

実を言えば、時間的には2時間弱か。

欧州の空に巣が現れてからそのくらい経つ。

 

これもユニットを限界まで酷使したから今も飛べているのだろう。整備が大変だな。

 

それでも俺はまだ生きているし、ストライクユニットもまだ飛べる。定期的にネウロイを踏み台にしてブースト回復をしてきた。だから精神が擦り切れるまで戦えた。

 

やはりコレを提案した宮藤博士も凄いな。あと航続距離と飛行時間を頗る伸ばす改修をしたハッパさんも凄い。もちろんコレを扱う俺も間違いなく凄い。頼れる相棒だ。

 

ああ、でもそうだ。

 

この戦いで一人、頼れる相棒ができた。

 

そのウィッチは『ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ』というカールスラントのウィッチ。

 

新兵の中では実力は高いが、しかし魔女学校を卒業後も問題児に変わらず感情のままに反発繰り返す彼女は軍属後も困らせる程のヒヨッコウィッチだが、その内側にある闘志と意志は強固だ。願那夢の隣で空を願った彼女の眼はまるでガンダムの世界のパイロット。アムロやシャアが言うように戦いはこうも人の姿を変えてしまうか。それとも俺が願那夢だから彼女は変わったのか?どうであれ、今はとても頼もしいウィッチとして俺はマルセイユを知る。

 

え?その彼女はいまどうしているか?

 

 

「……ぁ………げっほ…っ!……ぅ…ぐ…」

 

「……まずいな…」

 

 

「ギギギィ…」

「キィ」

「キィ、キィ」

 

 

無限に動くネウロイと、有限に限られた人間とでは差がある。もし拮抗すれば生き残るのは前者だ。間違いなく。

 

だからマルセイユは倒された。

 

小型ネウロイのビームによりシールドごとストライカーユニットが片足分だけ破壊される。

 

ストライカーユニットの爆発と破片に巻き込まれてしまい、素足晒した片足からは流血。

 

きめ細やか綺麗な女性の肌は至る所から流れる血によって血汚れ、また、片足にまだ生きてるストライカーユニットも装甲が焼けこがしながら血で汚していた。俺は落ちる彼女を受け止めて、今そのまま背負っている。

 

そのタイミングで無線から全軍撤退指示が響くが俺は目の前のネウロイから眼を離さず弱まるビームサーベルを構える。

 

 

 

「はぁ……はぁ……なに……やってんだよ……わたしを…捨て、ろよ……」

 

「俺は軍人じゃない。願那夢の役割に投じる黒数強夏は人間で沢山だから。感情が先行することもあるさ」

 

「へ、へへ…へ……っ、つぎはぎ、だらけ……なんだ、な……くろ、かず…って……」

 

「相棒がそのまま落ちそうだったからな。体が動いたんだよ、勝手に」

 

「へへ……そう…か………ぁはは……おまえの…こと…めちゃ、くちゃ…すきになりそう…だ……」

 

「悪いが俺は章香しか勝たんよ」

 

「へっ……それは……ざんね、ん…だ……」

 

 

 

「ギギギィ…!」

 

 

 

エピオンは強化状態を解除する。

 

もうそれほどにならずとも俺達を殺せると判断したんだろう。

 

バカにするな。俺はまだ動けるぞ。

 

上がる息を誤魔化すように、ビームサーベルの出力を上げ…… ようとしてサーベルのエネルギーが少しずつ薄まる。

 

どうやら俺も魔法力が落ちてるようだ。

召喚する武装も低コストのレベルの性能。

 

コストオーバーというより魔力オーバーってことかなこれは。

 

意図的に武装の性能を下げることはあったが、魔力を使いすぎて性能が低くなることは無かった。

 

貰い物のコレが元々が多かったからそんな心配も無かったが、相手がエピオン程になるとサーベルを投擲して牽制したり、切り替えたりなどして、召喚しすぎた。あと普通に俺自身の魔法力も長期戦故に足りなくなってきた。いやむしろ良く持った方がだな。さすが叡智から託された願いの奇跡(まほう)だろう。

 

 

「一気に降下して街に逃げるぞ。ちゃんと捕まっていろよ」

 

「ぅ…ん…」

 

 

背負っているこのウィッチは見捨てない。

 

絶対に生きて帰る。

 

第十二航空隊の頃だってそうしてきた。

 

任務中に落ちてしまったヒヨッコを何度も受け止めて、そのまま抱えたり、背負ったりして帰ったことは何度も経験ある。まあその度に厳しく訓練設けさせて二度と落ちないように基礎から叩き込んだっけか。懐かしいな。

 

新兵のコイツを背負ってるからか色々と当時のことを思い出してしまう。

 

ってことは、まだコイツを新兵と思ってしまってるのかな、俺は。

 

そうなると、つぎはぎだらけなのもまあ否定出来ないな。やれやれ。

 

 

「っと、言っても、雑兵が逃さないよな」

 

 

取り囲むように飛んでいる小型ネウロイ。視認する限り10機程度。この空戦で恐らく親機となっているエピオンがいるからか雑兵から手を出して来ない。しかし奴が動けば雑兵も動いて一斉射撃か。なら上手くエピオンを巻き込んでみるか?うまくはいかないだろうな。やっぱり逃げるか。

 

 

「(かなりの賭けだが、進行方向にビームサーベルを爆発させ、身をくらませながら被弾覚悟で一気に降下するか。マルセイユには覚悟してもらおう)」

 

 

ストライクユニットのバーニア出力を上昇させて準備を行う。

 

エピオンもビームソードをブンと構え、迎え討とうと構えた____

 

 

 

 

次の瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

脳裏に走る電流。

 

俺は膨張したビームサーベルを上にぶん投げると、次にビームシールドをやや上に展開して守る状態に入った。

 

するとエピオンは動き出し、同時に雑兵の小型ネウロイも動き出し、俺達を集中攻撃をしようとしたら瞬間。

 

 

 

「狙うっ!!」

 

 

 

___誰かの声が聞こえた。知っている声。

 

上に放り投げた膨張したビームサーベルに一発の銃弾が突き刺さる。爆発した。

 

 

「ギギギィ!!?」

 

「キィ!?」

「キィ!?」

 

 

しかもその爆発は俺が想定していたよりもかなり大きい。だがそのおかげで魔力波がこの一帯を占めるほどであり、エピオン含めてネウロイのセンサージャミングに成功する。素体が弱いネウロイは機能全体が麻痺して動かなくなり、突破口が出来る。

 

俺は首元に回しているマルセイユの手をしっかり押さえてその場から一気に急上昇する。

 

落ち始める太陽だが夏だけあってまだ明るい。

 

そしてマルセイユの抑えていた手を掴んで勢いのまま真上に放り込り投げた。

 

ついでにマルセイユから、一つ、とあるものを剥がして回収する。

 

 

 

「うぇっ……!?」

 

 

 

まだリアクションできるほど余力あるか。

 

そこに安心しながら___俺は叫んだ。

 

 

 

「中尉ッッッ!!!頼んだぞォォ!!!」

 

 

 

真上に放り投げられたマルセイユを受け止めて通り過ぎたウィッチが一人。

 

彼女は…

 

 

 

「黒数さん!!」

 

 

 

カールスラント空軍第3夜間戦闘部隊の隊長。

 

その名はヘルミーナ・レント。

 

彼女が、俺に___伝えた。

 

 

 

__その二つを上にッッッ!!!

 

 

 

まず一つはマルセイユ。

 

もう一つは膨張したビームサーベル。

 

そんなメッセージが脳裏に響く。

 

何故こんなことが可能なのか?

 

彼女はナイトウィッチとして擬似的な魔道針を開発して、ナイトウィッチ適正の低いウィッチも夜空を飛べるような研究をしている。

 

そして彼女自身もナイトウィッチとして特殊なパルスを放ってナイトウィッチ同士で会話する技術を持っている。

 

 

そして、それは…

 

俺にも『周波数』が合うということ。

 

 

覚えているだろうか?

 

俺にもナイトウィッチの適性がほんの少しだけあることを。それは過去ウラル戦線時の夜間哨戒で証明しているし、何よりニュータイプとしての『感受性』の高さが助長して他者からのメッセージが受信しやすいことを。

 

更に付け加えれば俺はカールスラント空軍第3夜間戦闘部隊で二ヶ月ほど部隊運営を手伝っていた。フラッシュ暗算などを通してそこにいるナイトウィッチの周波数やパルスを大体知っている。ここら辺もニュータイプが助長させてくれてたから出来たことだ。

 

だが、その中で特に、ヘルミーナ・レントのパルスは感受しやすかった。

 

ヘルミーナ・レント。

彼女はストレスを抱えやすい人間。

 

そのストレスが精神的な重圧感を心に秘め、常に訴えるような感情が彼女の精神を動かしていた。

 

それはニュータイプとして感じ取りやすい。

 

その周波数は俺にとってわかりやすかった。

 

それは半年前のアンドラから夜飛び出し中型ネウロイを見つけたらあの日から。

 

最初は純粋な魔法力。そこに上乗せするように彼女のストレスから始まる精神の訴え。それを拾い上げる願那夢としての役割。そして部隊運営二ヶ月分の理解。それは長く、濃い。

 

 

 

だから俺は___伝わった。

 

 

 

 

黒数さん!その二つを上にッッッ!!

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄Z________

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネウロイィィ!!!貴様ァァァ!!!!」

 

 

「ギギギィ!!」

 

 

 

先ほどのビームコンフューズはレントの魔法力も上乗せしてかなり強めの魔力波だ。

 

しかしエピオンに関してはスペックが高いだけあってスタンからの立ち直りが早い。

 

ビームソードを構えてコチラに突貫してきた。

 

そんな俺はもう武装の召喚が限界だ。

せめてビームサーベルの一本が限界。

 

だからと言って愚直にビームサーベルで斬り込もうとは思わない。相手は格闘機だ。ただのカチ合いに勝てるなんてそれ全盛期の北郷章香でなければ不可能だ。だから俺は用意した。

 

 

「マルセイユ!借りるぞ!」

 

 

彼女の片足に生きていたストライカーユニットを、腕に嵌めると魔法力を流す。

 

するとまだマルセイユの魔法力が残っていたのかプロペラがすぐに展開される。

 

まるで盾のようにエーテルが広がる。

 

するとエピオンは前格の挙動でビームソードを突き刺して、そのストライカーユニットを破壊しようとする。

 

対して俺はストライカーユニットのプロペラを逆回転に回してエピオンの前格を受け止める。

 

ガチガチ!バチバチ!バリバリ!と耳を劈くような音が響き渡る。

 

盾と剣。

 

それらが負けずに競り合う。

 

するとエピオンは装甲を赤くして強化状態に入りビームソードの火力を最大まで上げる。

 

このまま押し切ろうと判断だ。

 

俺のありったけの魔法力をマルセイユのストライカーユニットに注ぎ込みプロペラの逆回転数を上げてエピオンのビームソードを押す。

 

 

 

「うおおおお!!!」

 

「ギギギィ!!!!」

 

 

 

 

 

 

単純な力の押し合いなら、大人よりも、一回りか二回り大きな相手が勝つ。

 

体格に合わせてボクシングなどが階級分けされてる理由と同じだ。

 

俺は身体強化込みでも人型ネウロイの体格差で負けるだろう。

 

過去バンシィとの戦いででそれは理解してる。

 

何より接近戦特化相手だ。

 

競り合いに勝てるなんて見込み。

最初から持ち合わせてなんかいない。

 

 

 

「ギギギィ!!?ギィィ!?」

 

「もう少しッッッ、でっ!!!」

 

 

 

プロペラの逆回転による推進力。

 

それはまるでエピオンのビームソードに押し付ける如く、前進しようとする。

 

だが、同時にカラクリを一つ。

 

俺には『一つ』だけとある技術を持っている。

 

いつも使っているビームシールドは魔法力を腕に纏わせて壁にする。これは防護。

 

それは肉体だろうが、魔力だろうが、関係なく外部から上書き、また上乗せして展開する。

 

そしてその魔法力は変幻自在だ。

 

ビームシールドに攻撃性を加えればそれでネウロイを斬ったりとF91の真似事が可能だ。

 

もしくはフェネクスのように結合性を高めて魔法力を飛ばすことも可能だ。

 

まるで粘土のように変化させる。

 

それは外部から『授けられた』形で魔法力を持つことになった俺の特性。

 

生まれつき備わったモノと違う。

 

俺はこの世界で生まれてない。

 

俺は招かれた側で、与えられた側。

 

だから手に握るようにコレが使える。

 

それが俺の『技術』だ。

 

ではその技術を持って何を成すか?

 

 

 

「ギギギィ!!???」

 

 

プロペラが逆回転するストライカーユニットと競り合うエピオンのビームソード、それが少しずつ威力が減っていた。

 

 

「ユニットはマルセイユのだが!放たれるこのエーテルは俺の魔法力だ!それがどういうことか分かるか!紛い物ッ!!」

 

 

ビームソードがガリガリと削れる。

 

いや、違う。

 

エーテルの光にエネルギーが絡みつき、そしてプロペラの回転の威力によってガリガリと吸い取られていた。

 

俺の魔法力によって防護、またはそのエネルギーを上書きするように握られる。

 

そしてパチパチとビームソードが消えそうになった瞬間…!!

 

俺は一気に引き抜いた!!!

 

 

 

「ギィィィィィィ!!!????」

 

 

 

マルセイユのストライカーユニットはエピオンのビームソードが貫通して壊れる。

 

しかしそのエネルギーは俺の手元に伸び、そしてエピオンの握っていた柄はビームソードが引き抜かれて何も光らない。

 

ただの棒が握られてあるだけ。

 

 

 

「これで……ッッッ!!」

 

「!!?!!??」

 

 

 

俺は召喚したビームサーベルに、エピオンのビームソードから引きちぎったエネルギーを噛ませ合わせる。

 

するとエピオンのビームソードやサイサリスのビームサーベルの何倍も大きなエネルギーを放つビームサーベルが完成した。

 

青白い光が欧州の空を希望色に染める。

 

俺はそれを握り、怯むエピオンに向かって。

 

 

 

 

「トドメだぁぁあ!!!!!!」

 

「ギギィィアァァア!!!_____

 

 

 

呼応するようにけたたましく弾けるビームサーベルが欧州の空を。両断した。

 

 

つづく







戦闘描写で12000文字だってよ。
疲れたんだが??(白目)



【黒数強夏】
今回は本気で武装が限定された戦いだが主人公補正マシマシなので生き残ることが出来た。久方ぶりに長時間戦闘を行なって疲れた。ビームサーベル握るよりチェロス握ってたい。

【ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ】
願那夢補正もあったのか新兵ながらよく耐えた方。あと過去のお姫様抱っこに続いて異性に背負われた経験は今回が初めて。その背中は大きく、もう黒数強夏以上の男じゃないと靡かなくなったりとマルセイユの男性観は見事に破壊されてしまったらしい。

【ヨハンナ・ヴィーゼ】
今回の件で脳が完全に焼かれた。むしろ焼き焦げた。

【ヘルミーナ・レント】
脳が焼かれてる側だが、黒数の脳に伝える側になった。しかも脳波コントロールができる(嘘)


ではまた

どの程度の描写が好きですか?

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  • 日常3割・戦闘7割
  • 日常1割・戦闘9割
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