GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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お  ま  た  せ


とりあえず年越しでリアル落ち着いたし、今のところほかに書くものが無いので、しばしこちらの作品に力を入れます。

ではどうぞ


第55話

 

 

1940年5月2日

 

 

私の祖国カールスラント、そのベルリンの街を犠牲にしながらも、多くの民間人と軍隊を撤退させることができたのは奇跡だと、そう溢したくなるくらいに前日の撤退戦は壊滅危機があった。

 

それほどに追い込まれたのは急激なネウロイの強化によるもの。襲いかかってきたネウロイ達は前年とは比べものにならない程の戦闘力を持ってこの欧州を攻め入った。迎え打つカールスラント軍であるが、戦車の砲撃を除いて歩兵やウィッチのために用意された機関銃がネウロイの装甲を砕けれなくなったのが何よりも痛い現状、その結果としてカールスラントの代表とする街ベルリンは対抗策無く陥落した。

 

だからあらゆる国民が、祖国の兵士達が、壊れ逝くベルリンの姿に歯を食いしりながら棄てるこになった。

 

そして私、フーベルタ・フォン・ボニンもラル隊長と共にウィッチ隊JG56部隊を率いてハンブルク付近まで軍と共に撤退を開始。

 

ハンブルク付近に元々あった前哨基地を利用する形でベルリンからバラバラになりながらも運良くカールスラント軍の大体部隊と合流、のちに再編成される。

 

幸運にもウィッチ達の数はまだなんとか確保できているため武器性能さえ目を瞑れば空戦能力は維持出来ている状態である。攻撃力の足りない戦闘面に難を抱えながらも空を能動的に動ける飛行ウィッチ達の存在があるため、日夜の哨戒任務には困らない。そうして敵の先制攻撃に恐れることはまずないだろうと一息付ける状態たが、しかしこのハンブルクにもいずれネウロイはやってくるだろう。

 

まあ当然ながら、再びネウロイに襲われた場合いまの戦力でどうにかなるなど軍は微塵とも思ってもないのだが、それを口に出すのはタブーである。祖国を失う手前まで来て敗北主義の言葉は士気の低下になるから。

 

 

 

 

 

 

ただ、それでも。

 

ひとつだけ、打開策はある。

それは一人の男性に託された思いであるが。

 

これにカールスラントは……

いや、違う。

 

欧州全体は『彼の力』に頼らざるを得ない。

 

 

 

 

「やれやれ、考えることは多いな」

 

 

 

それでも歩みを止めることは許されない。

 

けれど一呼吸分の息抜きは必要だ。

 

私は軍務から遠下がるようにハンブルクにある軍事病棟までやって来た。負傷者の治療に勤しまれるその病棟の奥へと進み、私はとある病室まで辿り着く。

 

ここに最後の砦となる彼がいる。

 

そんな彼は今は眠っている……

 

 

なんて生ぬるい状態ではないか。

 

 

彼は昏睡状態にある。起きないのだ。

この二週間、眠りから醒める気配はない。

 

そうなってしまうまで、彼は強いられた。

あのベルリンの撤退戦はそう言うことだ。

 

 

私は重たく感じる扉を開ける。

 

お見舞いを兼ねて彼の病状を確かめるためようと一歩踏み入れて……

 

 

 

「ぐ、が、ぁ、が……だ、だ、ず、げ、で、ぐぇ…」

 

 

 

その部屋には首を絞められて宙ぶらりになった白衣の男が一人と、この世界で願那夢と謳われる男性ウィッチ『黒数強夏』がその男の首を締め上げていた。

 

 

……は??

 

 

 

「ま、待て!何事だ!?」

 

「フーベルタ中尉!」

 

「マルセイユ!これはどうした!!?」

 

「そ、それが…!」

 

 

まず白衣の男はあまり知らぬ顔だがカールスラントの関係者であることは分かる。

 

そしてもう一人は当然、黒数強夏であることは分かる。

 

だが先ほども言った通り二週間近く目覚めることない眠りの中でその姿はおとなしくあった。

 

しかし目に入ったのは驚く光景。病院服を纏った黒数が片腕を伸ばし、筋肉の衰えを感じさせないその手で一人の研究員の首を絞め上げていたこと。すると研究員の手からひとつの注射器がこぼれ落ちる。注射器の中身は……空だ。

 

ああ………なるほど。

 

なんとなくコレを見て察した。

 

 

 

「黒数!頼む!落ち着いてくれ!」

 

 

 

マルセイユは黒数を揺らして止めようとする。

 

そんな黒数は虚な目で研究員を締め上げ続けていた。

 

もしや、意識は覚まして無い状態で立っているのか?

 

見たところやや足元がおぼつかない。

 

 

 

「黒数、落ち着くんだ…!」

 

「……ぅっ、ぅ……ぅぅ」

 

 

私は黒数の腕を掴み、魔法力を流し込みながら揺する。すると黒数は外から注がれる魔法力に反応すると腕の力を抜いて首を絞めていた研究員を手放した。敵意の感じられない魔法力はどうやら彼に伝わったらしい。

 

なるほど。

この者が少しわかってきた。

 

そして地面に落ちた研究員は喉を押さえながら咳き込み、ヨロヨロと立ち上がると黒数に対して怯えたような目を向け、惨めに壁や戸棚に衝突しながら病室を立ち去ってしまう。

 

事態はなんとか治ったと考えるか。

 

すると黒数は糸の切れた人形のように膝から崩れ落ち、隣にいたマルセイユは慌てて彼を受け止めた。

 

 

「フ、フーベルタ…」

 

「マルセイユ、簡潔に説明してくれ」

 

 

先ほどとは打って変わって、穏やかに寝息を立てている黒数をベッドに寝かせながらマルセイユは説明する。

 

流れとしては先ほどの研究員が空の注射器を持って昏睡状態にある黒数から血液を抜き取ろうと忍び寄っていた。

 

するとそこにマルセイユがやってきて「何やっている!?」と叫び止めたようだ。

 

それに慌てる研究員。

 

するとその声に反応した黒数は腕を伸ばして起き上がり研究員の寝首を掴み、そのまま壁に押し付けていたようだ。

 

そこに私がやってきた流れらしい。

 

 

「黒数は悪意などに敏感なんだ。だからさっきの研究員から危害を加えられると察して反応したんだと思うんだ…」

 

「なるほど。昏睡状態にありながらも彼は願那夢として反応するのか」

 

 

今一度、黒数を見る。

 

穏やかに寝息を立てている。

 

同時に深く眠りに落ちていた。

 

目覚めた訳ではないらしい。

 

 

「ぅぅ、なんてことだよ。わ、わたし、少しだけ席を外しただけなのに、まさかその隙に忍び寄っていたなんて……ぅぅ、すまねぇ、黒数……許してくれ…」

 

「そこまで項垂れなくて良いマルセイユ。これは軍の管理ミスだ。彼に用意した病室が病棟の入り口から近い位置だったのが悪い。そのためこれを機に病室を奥に移そう。それで移動が済んだらマルセイユは引き続き彼の安静を見守るんだ。命令違反による謹慎期間はまだ続いているな?」

 

「あ、ああ、まだ一週間はあるぜ。それまで黒数は私が守るさ…!今度こそな…」

 

 

何故、マルセイユに任せているのか?

 

それはベルリンの撤退戦でマルセイユは黒数の援護に向かおうと上官であるバルクホルンの命令を無視して空高く離れた。

 

感情のまま命令無視で向かったマルセイユは黒数と共闘するも実力不足故に彼の足手纏いとなってしまう。そして彼女を見捨てる選択をしなかった黒数に背負われたりと危機的状況を加速させてしまった。

 

撤退戦の終盤にとあるナイトウィッチの援護がありなんとかベルリンの空を切り抜けることはできたが、それでも不用意な援護は仲間を窮地に陥れてしまう危険があることは当然だ。そのためマルセイユは部隊長であるラルを含め上官のバルクホルンからキツ目にお叱りを受けると謹慎期間を言い渡された。

 

また同時に撤退戦でマルセイユは負傷していたため治療も兼ねての飛行禁止である。

 

主な理由はこれだろう。

 

 

さて、ここでいつもならマルセイユは反論するなど起こして上官に反発するのだが、今回の事に関してはお叱りも謹慎命令も素直に受け入れた。随分と素直なマルセイユに同じ新人同期のハルトマンも驚いていたのは記憶に強い。

 

それからマルセイユは命令通り撤退戦で負った怪我の治療を受けながら、昏睡状態にある黒数強夏の守衛を任されてハンブルクの病棟にいる。

 

それで、ラルや私は黒数の事をよく知るマルセイユなら安心だと思い任せていた…… が、しかし、病棟の浅いところで彼の身柄を置いてたため他所者の出入りを許してしまった。マルセイユが少し病院から席を離した隙にこれである。

 

やれやれ頭を抱える。

 

ただでさえ再編成後の軍拡に勤しまれてると言うのに問題を増やさないでほしいものだ。

 

後で部屋も奥に移すよう関係者に話しておくのと同時に、勝手な真似をした研究員に関しては見つけてキッチリ締め上げるとしよう。

 

何、すぐに見つかるさ。黒数がかなり強めに首を絞めてたから跡が残っているはず。

 

探すのは容易だ。

 

そう考え、私はこの場をマルセイユに任せて病室を出ることにして…

 

 

 

「なぁ、くろかず……バルクホルンの言う通りでさ、考えも無しにさ… 私は死んでもおかしくなかった戦域に飛び込んでしまった事は確かなんだよ。そんな私はあんたのお陰で今こうして生きていることが出来たんだ。だから、なぁ…頼むよ。お願いだから目を覚ましてくれよ。私なんかよりも強いお前が目を覚ましてなきゃおかしいんだよ……なぁ、たのむ、よ……」

 

 

いつものように気丈に振る舞っているよに見えて実は随分と参っているマルセイユ。

 

自分がやったことを理解しているらしい。

 

 

 

「…」

 

 

まだまだ日も浅い殻のついたヒヨッコが、経験もしたことない戦力の前に立ち塞がる。

 

今回は願那夢がいたから奇跡的に助かった。

 

だが、もし理性を持って立ち止まり、感情のまま動かない選択を取れていたら黒数はこんなことにならなかったのかもしれない。

 

されど目の前の現状は結果論であるがそれでも不用意に追い込んだのは彼女だ。

 

マルセイユはそれを考えれるくらいの脳がしっかりとある。彼女自身まだまだ未熟であるがそこまで馬鹿ではないのは私も知っている。

 

寝静まった彼の前で項垂れるマルセイユに私は何も言わず立ち去る。

 

そのまま病棟を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ああ、この感覚。

 

随分と懐かしいな。

 

たしか舞鶴でテスト飛行をした時の頃か?

 

いや、テスト飛行というより暴発?

 

あれは季節早めの打ち上げ花火。

 

両足がお釈迦になる勢いでストライカーユニットが爆発して、天井を突き破って、それで格納庫の天井に落ちたんだっけか。

 

今考えるとアレは相当酷かったな。

 

八羽中尉(ハッパさん)からも囃し立てて悪かったと相当謝られたな。

 

まあでも俺自身、章香と飛ぶためだとか、幼少期に亡くなった親の代わりに空のフライトを叶えるべくストライカーユニット越しに感じたいとか、色々と理由やら感情を募らせて舞鶴の空に憧れていた。加減を知らなかった己の自己責任でもある。

 

そんな苦々しい記憶はもう懐かしい。

 

それであの後どうしたんだっけ…か?

 

ああ、そうだ。

 

舞鶴の病院で寝かされたか。

 

 

 

それで……

たしか……

 

 

 

 

 

「わんわん!」

 

 

 

 

足元にいる、扶桑犬。

 

それは知っている存在。

 

 

「君はたしか……ああ、章香に渡した香水箱の中に折られた白鳥となって、それで奇跡を起こしたら扶桑海から何処か遠くに飛んで行ったはずだ。だから俺としては折り紙を通して宮藤芳佳から貰った奇跡は一度限りだと、そう考えていたけれど…」

 

「わん!わん!」

 

 

俺は過去に宮藤博士の手紙を渡しに宮藤家に訪れたことがあり、そのお礼として宮藤芳佳から扶桑犬の形をした折り紙を受け取ったことがある。ただその折り紙の先端には宮藤芳佳の折る際に指を切ってしまい、先端に彼女の『血』が付着していた。

 

そしてある日、俺はテスト飛行に失敗して意識のない入院中、ベッドの傍に置かれていた扶桑犬の折り紙に付着していた彼女の血が反応したのか俺の足を回復した。すると同時に俺の意識の中にこの扶桑犬が現れた。ちなみに扶桑犬なのは宮藤芳佳の使い魔が扶桑犬だからだ。俺はそう捉えている。

 

そしてこの奇跡(まほう)は一度きりじゃない。

 

第十二航空隊所属中の夜間飛行、ウラルでバンシィに叩き落とされてしまい、現世に回帰してしまった俺だがストライクウィッチーズの世界に足を踏み入れた記憶を忘却した。まるでエクバのように撃墜ペナルティーとして支払われたコストのようにだ。あの世界で空から落ちた俺は二度目を許されなかった。

 

しかしこの扶桑犬は俺の傍にいた。まるで空に繋げる橋渡し。だから意識を、この魂を、願い願われた者として元の空に導いた。

 

だから俺はこの扶桑犬の折り紙が魔法(きせき)を起こしてくれる魔法なんだと知り、扶桑犬に折られた紙を一度開いて『白鳥』に折り変えるとお守り代わりとなる香水箱に入れて章香に渡した。そしてそれは再び奇跡にした。

 

扶桑海事変、魔女の可能性を守るために自軍の戦艦に立ちはだかり、砲撃を受け止め、そして砕けゆく彼女の空は香水箱から飛び出した白鳥によって護られ、そして、その奇跡(まほう)は願われるべくして彼女の約束を果たそうと俺その隣に運ばれた。

 

これが宮藤芳佳から貰い受けた折り紙。

その血に救われた幾つかの魔法と奇跡。

 

 

「そして奇跡の魔法を起こした『白鳥』は遠くに飛んでいった筈だ。だからもう俺の中にこの奇跡は無いと思っていた。だがまだこうして刻まれていたとは思わなかったよ」

 

「わおん」

 

「そうだな。これは俺が願った形。扶桑犬の君は宮藤芳佳の魔法の形。ならそこに馳せた想いや願いはまだ"軌跡"として踏み残るのだろう」

 

「わん!」

 

「だからそのまま俺の中で見守ってたのか?ありがとうな」

 

 

頭を撫でる。

 

ふさふさの毛皮。

 

ただほんのりとしっとりとしている。

 

手のひらに触れる、水滴。

 

思い出す。宮藤家に泊まった夜、風呂上がりに部屋までやって来た芳佳からお父さんの話を聞かせてとせがまれて、それで濡れた紙をタオルで拭いて、髪を梳かしてあげて、この手のひらでまだ幼い頭に触れながら彼女が寝落ちするまで話してあげた日。

 

後の主人公となる彼女とさりげない出会いだったが、欧州から届く父の話に目を輝かせる手のひらの幼子は、それは孤児院で暮らしていた時に足元に寄りついて来た年下の子供達を思い出した。可愛かったな。

 

 

「わおん!」

 

「よしよし。君も可愛らしいぞ」

 

 

扶桑犬を通して過去の記憶を懐かしみながら周りを見渡す。やはりこの精神世界の中に俺はいるらしい。まあ俺はニュータイプ。それにこの程度ガンダムなら良くあることだから特に驚きもしない。それでも「やはりオカルト極まっているなぁ」と再確認しながら立ち上がる。

 

 

「誰かが外から魔法力を流してくれたお陰でちゃんと目は覚ませたが、外の肉体はまだ消耗を引きずって醒めないらしいな。さて、どうにかならないかねぇ」

 

「わん?」

 

「別に肉体が目覚めるまでまた眠りついても良いけど今は君がいるし、しばらく話し相手にでもなってもらうか。なんなら今からお手とお座りでも覚える?」

 

「わん!わおん、わふっ!」

 

「いや、既にできるかーい!あー、もう、やることなくなったらじゃないか。やれられ。このまま不貞寝するしかないぞ」

 

 

愚痴の相手にはなってくれるが随分と仕込みがいのない扶桑犬だ。ブリタニアにいるビショップ姉妹もそうだったけど教える隙もないほど賢すぎるのはやはり困りモノだ。

 

 

 

「ワン!ワン!ワン!」

 

「?」

 

 

すると扶桑犬は興奮したように吠える。

 

そして俺を置いて奥に走って行った。

 

 

「お、おい!?」

 

 

「わおーーーん!!」

 

 

 

何もない精神世界だからこそ遠吠えに近い扶桑犬の声は響き渡る。

 

それは魔法によって作られた精神体だからこそ奥に進むごとに光となって行く。

 

そしてその光はこの精神世界を埋め尽くすように広がり。輝き。俺すらを埋め尽くす。

 

 

「!」

 

 

あまりにも眩しく、目を開けれない。

 

光によって体すら押される感覚。

 

腕で視界を守り、ほんの少し奥を見る。

 

そして…

 

白鳥のような美しい白い羽が光に舞った。

 

 

 

 

 

 

____願われた貴方だから、起きて。

 

 

 

 

 

 

落ち着いた女性の声が響く。

 

それは聞いたことがある。

 

この世界に来る前に何度も経験ある。

 

画面越しに、聞き。

画面越しに、見た。

 

だからその者の行方を俺は知っている。

 

それは『白鳥』のような女性であることを。

 

 

 

 

「これは英雄達(パイロット)の声っ!!まだ俺の中に終わってなかったと言うのか!?」

 

 

 

この世界に来たばかりの頃、それは幻聴のようにあらゆる英雄達の、モビルスーツに乗り込んだパイロット達の声が聞こえていた。

 

有名なセリフの数々が俺を後押しした。

そしてこの世界で俺を願那夢にした。

 

そしてネウロイが現れます舞鶴の空、章香との約束を果たそうと再び飛んだ時、声を届かせるガンダムの英雄達はエールを送るように俺の背中を押して、そして俺の中から消え去った。

 

俺がこの世界の英雄とならんから。

彼らに並んだから。

 

だから後ろから英雄達の声は聞こえることは無くなる。そう思った。

 

 

けれど、数年前のあの頃と同じか。

 

 

俺は一度のみ。

このひとつの奇跡のみ。

 

声を聞くことが許されたらしい。

 

___この声の正体はララァ・スン。

 

ニュータイプと『白鳥』を意味する女性。

 

それが俺の___意識を起こそうとする。

 

 

 

「っ、ああ!わかっている!これは俺の記憶!都合の良い記憶の中で生まれた声!本来は実在はしない!ああっ、でも…!でも!!俺が画面越しに認識した存在だと言うのならっ!」

 

 

 

俺は手を伸ばして、そこに意識を届かせる。

 

眩くて、痛くて、眼を開けられない。

 

でも覗き込む、この奇跡の魔法に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして____魂は、外に導かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の病棟は雰囲気がある。

 

静かだ。

 

まあそれもそうだ。

 

彼を奥の部屋に移したから。

 

だから……起きないソレはとても静かだ。

 

 

 

「…」

 

 

 

ジッとしてるのは嫌いだ。

 

動いてたいのが私の性格。

 

しかしまだ怪我が完治してないから激しい運動は無理だ。だがこうして薬品の香りに包まれた部屋で何もしないのは辛く思うだろうな……前までの、私なら。

 

 

「…」

 

 

今の私は彼を……黒数強夏を見守る。

 

見守るだけ。

それが今何もできない私の役割。

 

別に苦痛とは思わないさ。

私はそれほどに落ち着いている。

 

むしろ一番の苦痛に感じるのは、彼だ。

こんなにボロボロになって…

 

ああ、それもそうだ。

 

ベルリンの空で飛べなくなった私を見捨てず、私を背負って彼はネウロイと戦った。

 

もしあの場面でナイトウィッチのレント大尉の援護が無ければ私達は死んでいたのかもしれない。想像にたやすい。だから私は憧れた彼を殺しそうになったのかもしれないと、今でも心中で自罰し続ける。悔いる。あまりの自分の代わりようにハルトマンも心配していた。私も驚いてる。これほどに後悔と己の愚かさを許せなくなったのは。

 

そして私は生きている。

 

眠る彼に変わって、私が生きている。

 

 

 

「ぁぁ、もうっ!私は本当に……ッ!」

 

 

 

苛立ちは加速する。

 

つい半刻前、彼はとある研究員に血を抜かれそうになっていた。

 

恐らく彼の強い遺伝子を欲したのだろう。

 

その研究員は私が少し席を外した隙を見て侵入した。そして私は血を抜かれる手前で病室に戻って来れた。

 

だがその瞬間を見た私は心臓が恐ろしほどに鳴っていた。

 

私は「何をやってる!」と叫んで止めたが同時に体の震えが止まらなかった。

 

 

__ また…!また私が…!!

__彼を危険な目に合わせてしまう!!

 

 

カールスラント軍人として厳しい訓練をこなして来たからこそ鍛えられた精神力が震える体を支えてくれたが、軍人であるとを忘れて狂乱しそうになる心情は実のところギリギリだった。

 

でもフーベルタが来てくれて助かった。

 

私一人では足が動いたかもわからないから。

 

そして病室を奥に移して、彼はまだ眠る。

 

ここは三階で外が見える。

 

そう容易く人は入って来れない

 

謹慎期間中とはいえ四六時中この病室に居ろとは言われていない。戻るべき基地はある。

 

でも私はポツンと一つだけ用意された椅子から立ち上がることなく布の上で眠る彼の横顔を眺めているだけ。息はある。しかし浅い呼吸。ひたすら深く眠る。

 

目覚める気配もない。

 

それほどに、黒数は願那夢を全うした。

 

そして同時に思う。

 

もしあんな人型ネウロイがまた現れたら私は彼の代わりに立ち向かえるか?

 

 

ああ、無理だ。

不可能だ。

黒数以外、あの空は無理だ。

 

支給される機関銃が今よりもまともならまだ考えれるが、しかし現状何も対抗手段を持ち合わせてない欧州が何かできるわけもない。

 

それとも扶桑のウィッチなら刀を振るって戦えたか?極東の人間達は銃も使い、必要なら刀も扱う。あの者達は遠近共に屈強であることは有名だから。それなら私も彼と同じ扶桑人として生まれたかった。自分の弱さを思わず笑う。

 

 

「独りよがりとは、このことなんだな…」

 

 

私はこれまで好き勝手を繰り返し、軍規違反を何度も犯し続けながら『ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ』って私自身を作ってきた。

 

それでいて同時に空の私は強かった。

自分の強さを信じていた。

 

でも、二週間前の撤退戦はどうだ?

 

今の私はただ守られただけで、足手纏いになってしまって、悔いている。

 

この謹慎期間もラル隊長が気を利かせてくれた結果、私に彼の身柄を守衛させようと側に置いてくれた。甘さが体を締め付ける。何より半刻前の失態に対して自分の愚かさを何度も殴りたくなる。許せない。弱すぎた自分が許せない。

 

 

 

「こんな私が……ウィッチであるなんて……」

 

 

 

嫌な考えは、繰り返すほど負が大きくなる。

 

怪我した体は私の心を弱らせるに充分らしい。

 

コレまで感じたことのない影が私の魂にも蝕もうとする。

 

ああ……私ってこんなに弱かったんだ。

 

自分よりも強い誰かがいなければハンナ・ユスティーナ・マルセイユなんて大したウィッチでもなんでも無いんだ。

 

 

なら……この彗星に憧れるする烏滸がましい。

 

 

こんな私は彼の隣に立つ資格がない。

 

彗星が走る夜空を見上げて想い馳せる意味すら抱けない。私は折れ切った。

 

 

 

私は…

私って……

 

 

 

 

 

そして____目の前が眩しく光った。

 

 

 

「!!?」

 

 

 

外からだ。

 

窓の外は眩しく光る。

 

 

 

「もしや誰か来たのか!?くっ!懲りずによくもまた!!」

 

 

 

落ち込む己を奮起して椅子を立ち上がる。

 

いつでも黒数を守れるように身構えた。

 

同時に息を飲む。

夜すら照らす、異常なほど眩しい光。

 

もしやこれは閃光弾なのか?

 

いや、それにしては光源に持続性がありすぎるから閃光弾にしてはおかしい。

 

 

 

もしかしたらネウロイか!!?

 

 

 

全身に魔法力を駆け巡らせる。

 

いつでも固有魔法を発動できるよう迫り来る光に対して意識する。

 

 

 

そして………

 

光の中から『白鳥』が現れた。

 

 

 

「なっ、なっ…!?」

 

 

 

その白鳥はあまりにも美しい。

 

するとその白鳥は私を見る。

 

そして次に眠る黒数を見た。

 

敵意はない。

 

それでも……伝わるプレッシャーは身体を容易に震わせる。

 

するとその白鳥は翼を大きくはためかせ、綺麗な羽が舞い散り、同時に病室は光に染まる。

 

私は眼を開けられずにいた。

 

同時に体が仰け反る。

 

この体を押し除けるような圧力。

 

何もできない。

 

また、何も……できない?

 

 

 

 

……ッッ!ふざけるなよッ!!!

 

 

 

 

「黒数にっ…!手を出すなァァ…!!」

 

 

 

振り絞るような喉から声を出す。

 

 

それでも眩い光がこの声をかき消す。

 

重たい。

光によって体が焼き焦げる感覚。

 

私はこの重圧感に膝をついてしまった。

なんてプレッシャーだ。

 

憎悪も悪意も感じないのに、ただ、ただ、魂を押し退かせるような重さが全身に襲いかかる。

 

 

 

 

 

____起きて、この世に願われた英雄。

 

 

 

 

耳に響く、女性の声。

 

光とプレッシャーによって意識を刈り取られそうな私は意識を繋ぎ止める。

 

すると眩い光は収まった。

 

 

 

「ぅ、ぅ?」

 

 

もうプレッシャーは感じ取れない。

 

私は椅子を支えに立ち上がる。

 

 

すると白鳥は小さな小さな光の粒になり。

 

黒数に浸透した。

 

 

「!?」

 

 

先ほどの騒がしさが嘘のように病室は静か。

 

私が一人、崩れていただけ。

 

 

 

「な、何が、起きて…」

 

 

 

もう、訳がわからない。

 

ネウロイじゃないのは確かだ。

 

だが同時に異常なナニカだ。

 

それが黒数に反応していた。

 

ダメだ、情報量が多すぎる。

 

と、とりあえず、私は報告を……

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぅぅ、この魔法力……マルセイユなのか…?」

 

 

 

「!!???」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

聞きたかった、声が聞こえた。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

 

 






宮藤芳佳の魔法強すぎぃ!!!

奇跡を起こし過ぎてもう顔中が魔法塗れ。
あぁ〜^、たまらないぜ〜^

まあ、ね?この世界に願われた黒数強夏ってのがもう願いを叶えるような願い星こと彗星なので魔法のようなご都合主義にも愛されていることよ。そしてストライクウィッチーズってそういうこと。奇跡はなんぼあっても良いですからねぇ。その分敵さん強すぎるけど。これでバランス調整とかバカじゃねぇの?やっぱネウロイってクソっすね。


【黒数強夏】
ベルリン撤退戦から二週間近く昏睡状態にある。莫大な魔法力の枯渇から回復するのに時間はかかるけど宮藤芳佳ブーストがあったので実はブレイブウィッチーズの雁淵孝美の20倍以上の速さで回復していた。やっぱりコイツ頭おかしいわ。とりあえず栄養補給にチェロス食べたい。

【フーベルタ・フォン・ボニン】
ベルリン撤退戦後も休む暇もなく軍の再編成に勤しまれている。黒数の件で随分と落ち込んでしまったマルセイユに内心驚くも、だが同時にそんな彼女と同じくらい黒数の目覚めを待っている。しかしそれは戦力的な意味でか。また精神的な意味でか。それはどちらもだろう。

【ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ】
ラルの計らいにより謹慎期間を設けて黒数の守衛を任される。それでも不出来な数々故にすっかりと自信を砕かれてしまい、自身の愚かさに強い嫌悪感を抱きながら贖罪を心の中で溢しているところを更に正体不明な白鳥からプレッシャーを受けて追い討ちをかけられたりと正直かわいそうな気はする。



ではまた

どの程度の描写が好きですか?

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