GVSウィッチーズ   作:つヴぁるnet

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第7話

 

 

 

ブリタニアを発って12日が経過した。

 

まだまだ続くよ航海は。

 

もちろん2日前の後悔も続くよどこまでも。

 

そろそろバケツの騒動は落ち着け。

 

そんなにネタがないのか赤城には?

 

まあ、ないよな、この船には。一応フラッシュ暗算とかそういうのは宮藤博士と考えたって事で赤城の中で流行らせてみた。しかし俺と北郷のやり取りの方が一番話題性が高くて今日は何をしてくれるのだろうか?と期待の眼差しが飛んでくる。俺は君たちの道楽か!

 

まあそこはもう構わないさ。

 

取り繕っても遅いし、諦めてる。

 

それよりもだ!

 

問題はこの空間!!

 

 

 

「おはよう、黒数」

 

「ああ……おはよう」

 

 

 

こっちの方が一番辛いと思う。

 

ちなみに今のおはようの挨拶は北郷章香だ。

 

何故起きたらすぐそこにいるんだって?

 

それは簡単だよ。

 

一緒の部屋で寝ているから。

 

 

いやマジ、何を考えてんだ……???

 

 

 

「やっぱり同室おかしくないか?」

 

「社会的倫理観からするとそうだな」

 

「やっぱり自覚あるよな!?」

 

「だがこれは必要なことだ」

 

「な、何に対してだよ…」

 

「黒数は、私のモノだと言う牽制だ」

 

「ひっ…」

 

「君の事はもう離さないつもりだよ」

 

「ウィッチじゃなくて重ぃッチじゃねーか」

 

 

 

かなり物理的な牽制で驚いた。

 

説明の際も飄々と笑っているが、本気の声色と眼差しに対して流石に俺もふざけ倒す事も出来ずにやや頬が引き攣り、彼女はこうして当然とばかりにギラギラと笑みんでいる。

 

 

「お、俺も、随分と気に入られてしまったみたいで…」

 

「ああ。もしかしたら、ブリタニアで出会った時から君の事は気に入ってたかもかな」

 

「ウィザードごっこしてた偽物英雄の居候土下座野郎にか?だとしたら北郷の目利きは変だと言えるな」

 

「君の良さは私だけが分かれば良い」

 

「強いて言うなら宮藤一郎さんもだな」

 

「…ウィッチでは私が初だ」

 

「なんの張り合いだよ、全く。あと寝癖ついてるよ。後ろ向きな」

 

「色々言いつつも面倒見が良いな。とても助かるよ。前に寝ぼけて梳かしてくれたときは何事かと思ったがとても嬉しかったな」

 

「ああもう、それはやめろ。思い出さすな。だからこうやって朝の寝癖は整えてあげてる。部屋の外では誰にも言うなよ」

 

「ふふふっ」

 

 

実は北郷と同室になった初日、そう簡単に眠れるはずもなく軽く寝不足になった。

 

そりゃそうだ。女性と二人っきり。

 

これで眠れなんて厳しすぎる。

 

それでこの同室は不味いと思い、倉庫に逃げ戻ろうとして北郷に道を塞がれる。ならば途中眠りついたタイミングでこの部屋から撤退しようか考えていたが寝ていたはずのところ不意に「行ってしまうのか?」とか「やはり嫌だったか?」とかすッッッごい不安そうな声色で引き止めようとする。

 

その度に「お手洗いだよ」とか「水を飲むだけだ」と言ってその通りに動いて戻ってきてしまう。

 

ああ!逃げられない!(カルマ)

 

と、頭の中で悶えながら、この件は後日解決しようと諦めてそれでなんとか眠り付こうと頑張った結果、浅い中途半端な眠りになった。

 

それでウトウトしながら目を覚ますも頭がまったく回っておらず、フワッとした脳内では孤児院にいた頃の記憶が体に流れていたようで、テーブルに乗っていた櫛に手を伸ばすと朝から奇妙な状態の俺に困惑している北郷の頭を鷲掴みにして、後ろを向かせると髪の毛を梳かし始めた。

 

 

__もう、まったく、だめじゃないか〜

__また院長におこられぇるぞぉ〜

__髪はだぁいじなぁんだからさぁ〜

 

 

と、呂律の回らないまま北郷の髪を、しかも年頃の女性の大事な髪に触って遠慮なく櫛で梳かしていたとかなんとか。

 

それから髪を梳かし終えたタイミングでパタリと倒れて寝ちまったらしい。

 

これが同室となった初日の出来事。

彼女からそう教えられた。

 

まあ当然この寝ぼけ具合の説明を求められて、孤児院暮らしの頃の話も交えて年下の面倒はよく見ていた結果として髪に触れるようなことをしてしまったと謝罪した。

 

そこら辺は許してくれた。

 

それでそのまま倉庫に戻ろうとしたけど既に荷物は動かしたらしく俺の寝所はこの場に定まってしまった。ウッソだろお前。その名だけに光の翼が出てしまうぞ。

 

 

「ちゃんと倫理観あるならもう良い。いや良くないが… しかし俺が寝れる部屋もココしか無くて、ハンモックより寝心地良いから諦めてやる。でもな、ありもしない事は絶対に言うなよ?その髪に触れている事もな?社会的に抹殺されるのはごめんだ」

 

「大丈夫、口は硬い方だよ。仮に真偽関係なくそう言った話が出回るなら権限で根絶する。それで偽話でも流して認識を塗り替えるかな」

 

「職権濫用って言葉知ってるか?」

 

「もちろん。君が昨日教えてくれた」

 

「それはまたベクトルが違うだろ!」

 

 

この子こんな感じだったか??

 

もっと、こう、人格者な雰囲気があって、善悪を理解してる凛々しさを兼ね備えた、物腰柔らかなまっすぐとした扶桑軍人な気がしたんだけどそれは偽りだったか??

 

いやでも、普段はちゃんと北郷章香って感じに振る舞っているんだよな。濁りなき善意でサルミアッキを配るような優しい人。飛行訓練も扶桑の希望になろうと空を駆けるウィッチとしての姿を皆に見せる。最近はすごくやる気が入ってるくらいだ。

 

訓練も真剣だ。こちらの腕立て伏せを倍にさせようと厳しく指導してくる。しかも弛んでいると判定された時は背中の上に水入りバケツを乗せて腕立て伏せをペナルティにしてくる教官っぷりは確かに指導者なんだろう。お陰であだ名がバケツ野郎になってしまいそうだ。こんな辱め、穴があるなら潜りたい。バケツ以外で。

 

 

「とりあえず朝食に向かうぞ」

 

「ああ、共に行こう」

 

「……おう」

 

「ふふふっ」

 

 

了承したことに満足気だ。

 

そして食堂に着けば「おはようございます」の気持ち良い扶桑人の挨拶。こちらも同じように挨拶を返して朝食を貰い受けて適当に座ると調子の良い性格をしている扶桑男児から目線で「相変わらずだな」とか「今日も仲良いな」と微笑ましく投げ込んでくるが、中には「お熱いねぇ」とか「で?進展は?」とか意味深を込めてくる。

 

正直やってらんないわ。

 

こちらも目線で「わかったわかった」とか「やかましい、散れ」と返して扶桑男児は蜘蛛の子のように去ってしまう。ニヤニヤしてる奴も鬱陶しい。好きでこうなった訳でも無いんだけどな。

 

まあ、これも北郷の計画の一部だ。

 

俺を完全に捕まえておくための処置。

 

約束の事も含めて今はこうするしか無い。

 

まあこれもいずれ慣れるだろうと考えて朝の味噌汁を啜る。扶桑の味だ。俺からしたら日本の味って表現になる。世界によって呼び方が違うこの辺りの変化も慣れるしか無いな。

 

 

 

「まったく、困った子だ…」

 

 

 

現実逃避も許されない。

 

寝起きを覚ますように、この現実に覚めようと湯気たつ味噌汁を啜った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、夜ご飯の仕込みを終えて訓練の時間になったので、いつも通り北郷章香に声をかけた。

 

すると「今日は魔法研究だ」と言われる。

 

二人で使用している寝室にやってきた。

 

扉を閉めて、誰も入れないようにする。

 

正直かなりドキッとした。

 

誰もいない部屋で二人っきり。

 

何も起こらない筈が無い。

 

そして始まった。

 

ちゃんと言葉通りの魔法研究が。

 

 

 

「仮にこれがウィッチに秘めてるモノと同じ魔法力としたら、俺もウィッチのようにシールドも張れるってことか?」

 

「ああ。バケツ野郎のあだ名が付く前に見せてくれたあの魔法力、ウィッチの魔法力と大変似たような雰囲気だった。だからこそあの時は不意を突かれてしまった」

 

 

バケツ野郎のあだ名が広まってたことにガッカリしながらも俺は手のひらを見る。

 

やはりこれはウィッチと同じ魔法力か?

 

だがコレは…

 

 

「今の魔法力と同じかわからないな。もしかしたら仕様が違うかもしれん」

 

「魔法陣から力を引っ張りあげた際に得たものと説明してくれたな。それはつまり魔法陣の中に秘められていた魔法力は現代と毛色が違うと言いたいのか?」

 

「そうだ」

 

「それなら血筋の関係から矛盾する。ウィッチとなる少女は皆等しく魔法力を解き放つ同じ力を得ている。それは皆同じと言うことだ。大昔からな」

 

「ならブリタニアにあったあの魔法陣は特別違うって事になるんじゃ無いのか?それこそ大昔いたかもしれないウィザードの事だって」

 

「あれはあくまでおとぎ話だ。黒数は宮藤博士のところで魔法陣の研究のため歴史に軽く触れていたみたいだが、そもそもウィザードは存在も怪しい創作に近い存在だ。もしウィザードの存在が本当なら君を除いてこの世に生まれた男性の誰かしらが魔法力に目覚めている。それに魔法力は厄災を討ち滅ぼす力だ。取り扱いが危険な武具ならともかく人類がその魔法力を魔法陣に封印するなど考え難い」

 

「今も残して当然ってことだな?」

 

「そうだ。しかしそうで無い現実。ウィザードは存在しない。男性魔法使いは何百年も認知されて無い。だからその力はウィッチの魔法力に似たナニカだ。もしくは変化だな。黒数の体に備わるために魔法力の質が変化した可能性もある」

 

「…… とりあえずシールドを出してみればわかるんだな?シールドの種類でどこの国の血筋とか分かる。それで見たことない紋章だったらまた意味も変わる… ってことか」

 

「ああ」

 

 

手をかざす。

 

シールドを出そうと念じる。

 

手のひらから青白い光は放たれる。

 

しかし、シールドは出ない。

 

だが魔法力は充分に集まっている。

 

シールドを構成できるほどのエネルギーが。

 

だが、展開されない。

 

 

いや、違う。

 

これは何かが違う。

 

そう、なんというか、言葉にするなら。

 

 

「シールドとしての在庫がない??」

 

「どういうことだ?」

 

 

 

俺はシールドじゃない遠距離武器のジム・ライフルを取り出した。瞬く間に召喚されて手元に収まる。念じれば簡単。それが叶う。

 

しかしシールドは出ない。

 

いや、召喚されない。

 

これはつまり…

 

 

 

「俺のこの力は兵器の召喚系だとしたら、召喚するためのシールドが体の中に無いんだ」

 

「なんだと!?」

 

「だって魔法力で武器は出せる。いや、これから魔法力かはわからないが。でも魔法力で構成されたシールドを念じて出せないという事は展開する才能が無い以前に空っぽなんだよ。この世界で言うシールドって存在そのものが」

 

「なっ…」

 

 

 

いや、でも、考えろ。

 

そもそも防ぐためのモノがイコールとしてウィッチが使うようなシールドじゃない、この力らしさで引き出せる、ナニカだとしたら?

 

考えろ…… いや、感じろ。

 

これの正しさを。

 

 

シールド……

攻撃を防ぐ……

ガンダム……

 

 

 

ああ…

 

なるほど。

 

それなら。

 

 

 

ビームシールド…!!」

 

 

ガッツポーズのように腕を展開する。

 

すると前腕(まえうで)、つまり手首の下あたりから魔法力が放たれ、リストバンドのように青白い光が前腕に渦巻く。そして前腕に渦巻く光から縦長の五角形で展開されたビームシールドが正面に広がる。

 

目を見開いて驚く北郷。

 

俺も驚いたが、それに力をグッと込めて魔法力を流すとさらにビームシールドは拡大して頭の額から足の肘まで伸びた。その代わり薄く展開されてるため強度が落ちているらしい。つまり縮めると強度が増すということか。わかりやすい仕組みだ。

 

 

「これだ…!ウィッチとしての展開では無い!俺の中にある記憶で展開する!」

 

「それも…教材(ガンダム)から、か?」

 

「ああ。これはガンイージの力だな。たしかに毛色は違うけど恐らくウィッチと似ている。いや、似せているんだ。恐らく俺が知っている戦争(きおく)からこの世界に合わせて形作ったんだ。厄災と戦うウィッチと同じように」

 

「なるほど……君だけの構成(魔法力)か」

 

「毛色が違うとはつまり、俺の記憶に合わせた魔法力なんだ。それはこの世の魔法力ではガンダムの力を発揮できないから…!だと思う。でも原理はこの世界で理解している魔法力と同じ。北郷の勘違いはそこから。例えるなら。俺が『日本』であり北郷は『扶桑』なんだ。構成は似ている。でも別物なんだよ」

 

「ああ!なるほど!そこの違いか…!」

 

 

腕に流れる力。

 

なんとなく分かる。

 

不思議な感じ。

 

それを弱めて解放する。力を抜くように。

 

するとビームシールドは消えて、前腕に絡み付いていた魔法力は散布しながら引っ込んだ。

 

 

 

「また一つ引き金を理解した。これは大きな収穫だな。ありがとう北郷」

 

「いや、私も面白いものを見せてもらった。そうかそうか。君が呼吸してきた世界の空気に魔法陣は合わせた。…… あっ、それって!」

 

「ああ。俺も分かる。儀式の一つ。それは指先の皮膚に傷を入れて血を流しながら魔法陣に俺の血を注ぎ込んだ。そうして起動者である俺に与える魔法力は別世界の肉体に合わせて変化した。俺専用としてな」

 

「ッ〜!! これを論文に書いていいか!!?」

 

「ヤメロォ!俺が危ない!!」

 

 

 

文武両道な彼女は素敵だが、文の方は今回の事も考えて抑えてほしい限りだ。

 

 

 

「しかし、突然魔法学の話に入ったから何事かと思ったけど、でも今日の発見は俺の身を守る知識になってなってくれる。ありがとう北郷」

 

「武器を振るうだけが全てじゃ無い。身を守る事も大切だ。今日はそう考えただけだよ」

 

 

 

目をキラキラさせながらほんのちょっと涎を垂らして興奮していた彼女だが、俺の感謝の言葉を聞いて表情を正すと、柔らかく笑みんでポニーテールを揺らす。

 

指導者として導けたことが彼女の幸福になったらしい。これが器ってことを言うんだな。

 

 

 

「……もう一度、今の続けてみるか」

 

「?」

 

 

 

再び腕に力を入れて魔法力を纏わせる。ビームシールドは展開されないが魔法力は放たれたまま、立てかけていた木刀を握る。

 

 

「今は、まだ、この部屋で…だが!」

 

「なるほど。そう言うことか」

 

「っ、これは結構、意識、しないと、なっ!」

 

「……全て手動でやるのか」

 

 

体から魔法力を放ちながら木刀を素振る。

 

まるで頭で因数分解を行いながらランニングでもしているみたいだ。

 

結構、きつい…ッッ!!

 

 

「北郷っ!ビームシールドを展開するからそこに木刀で叩いてくれっ!」

 

「!」

 

「攻撃も防御もそれぞれオマケ程度の力にしてたまるか。全部100%で…!」

 

「……ああ、わかった!手加減はするが、甘いと剣先で射抜く!」

 

「上等、じゃ、ねーか!」

 

「いくぞ!」

 

 

 

腕立て伏せの方がまだ単純でマシだ。

 

それよりも苦しい、訓練を始める。

 

まるでモビルスーツを乗りこなすために修練するパイロットのようにそれ相応の血反吐は覚悟しよう。

 

彼女のためにと思うなら助けれるくらいには。

 

 

 

 

つづく





こいつらいつまで赤城でイチャイチャしてんだよ…
どうせ扶桑に到着しても同じやぞ


ではまた

スピンオフ『1937扶桑海事変』は読んだことありますか?

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