Lycoris Record : 彼岸花の回顧録 作:フェデラルジオグラフィック
1995年3月20日 午前
1995年3月22日の9時少し前、私は死にかけていた。
命令通りの場所に展開した。
命令通りに銃を撃った。
命令通りに対象を止めた。
対象からの反撃も無く我々は無傷のはずだ。
何も間違ってはいないはずだった。
それなのに、
目の前では藍と白のリコリス達が私と同じように身体をけいれんさせて横たわっている。一人の白服は顔面が吐瀉物にまみれている。
約48時間前…
あれはまだ本部が奥多摩の手狭な施設にあった頃、DAは少しばかりながら平穏な雰囲気に包まれていた。
最大の脅威であった左翼過激派は理想郷のソ連が崩壊したことで完全に意気消沈していたし、崩壊の副産物だったロシアンマフィアとの戦いも終局を迎えていたからだ。
そんな折、DAは地下鉄での大規模テロ計画の情報を警察庁からリークされた。当時は携帯電話やインターネットを使っている人はほとんどいなかったし、傍受した情報を自動で解析するラジアータなんてものもなかったので、情報収集は主に警察庁警備部からの情報提供と警察や消防無線の傍受に頼っていたのだ。傍受と言えば、当時は今みたいに民間のテレビやラジオ放送を見たり聞いたりすることは情報部の要員を除けば一切禁じられていたから、数少ない娯楽といえば傍受した警察と消防の無線を聞くことだった。出動がありそうだという心構えをつけておくという目的もあったが。
ともあれリークされたテロ計画についておおまかな日付と対象の路線は把握したが、正確な場所が分からない。そのため数日前からリコリス達は手分けして各駅で
―――警視庁から各局 現在日比谷線において一連の事案が発生している
現在詳細は不明なるも電車内シンナーあるいはガソリンがの臭い等がし
病人等が発生している模様である
よってあるいは
現時点から該日比谷線の事案につき
その瞬間食堂の時間は止まった。居合わせた全員が無線を流すスピーカーにかじりついて事態を見守っていた。もっとも私の場合は小伝馬町の単語が出た時点で自分の見落としを疑っていたからだが。そうこうしているうちに事態はどんどん進む。日比谷線から始まり、丸ノ内線、千代田線とどんどん広がる。宰領官である司令統括が「爆発物によるゲリラ事件が発生した」と明言したあたりで傍受無線の放送が切られ、非番含めての非常招集の号令がかかったので食堂にいた要員は全て所定の集合場所へと散っていった。一方すでに現地に行っていた要員で無事だったものはさらなる情報収集のため被害が出ている各駅へ向かうことを指示された。これだけの事態にかかわらず
その後、私を含め前日の警戒に当たっていたものは事情聴取を受け、残りの要員は最低限の予備を残し次なる攻撃を防止するため都心へと急行した。唯一の情報源である無線傍受の結果、列車内での爆発または可燃性液体の散布事案だと思われていた。知っての通り実際は「もっと恐ろしいもの」だったのだが。警察が防毒マスク着用指示を出していたころには、すでに近隣のリコリスが現場内で活動し始めていた。彼女たちは防毒マスクを携帯していなかったから、彼女たちもまた曝された。ただ本部から移動していたリコリス達はマスク使用指示が出た時点で引き返しを命じられた。それがあの日のDAの活動の「すべて」だった。
当日現地で活動していたリコリスは28名、内無傷で帰ってきたのは2名、残りの26名は病院送りになり1名は病院で死亡、12名が何らかの後遺症を負って
リコリコ本編でリコリスの歴史が想像以上に長いことが描写されたので、それならばということで、勢いに任せて書いてみました。作品の都合上原作の人物が出てくることはほとんどありません。リアルの人物を何人かオブラートに包んで出す予定です。
警察無線の文字起こしを中に組み込むのは規約的にどうなんだろ?問題があるなら抜粋に変えておきます。
二次創作込みで小説書くのは初めてですが、今後ともよろしくお願いします。