Lycoris Record : 彼岸花の回顧録   作:フェデラルジオグラフィック

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政治サスペンスの舞台装置としてのDAとリコリスの便利さよ。

あとぶち込むネタの都合上カレンダーがかなり綱渡りなことになってます。


東京都内 お堀端

 

1960年6月19日 閣議の少しあと 総理大臣執務室

 

 閣議で少しばかり戻った目の輝きが失われ、椅子の背もたれに力なく体を預ける男。執務室の扉が開かれたとき、彼は姿勢を正し椅子をそちらに向けたが、気だるげな表情は変わっていない。

 

「通産大臣か、何の用だ」

 

「いやはや、韓国の()()はすごいものでしたなあ。まさか首都が壊滅するとは」

 

「世間話をするために来たのならさっさと帰って自分の仕事をしたらどうだ?」

 

「次の()()はどこですかなあ?」

 

「…そういうことか。()()なんて、めったに起きるもんじゃないんだよ。だが、いつ起きるかはわからない。それが一番厄介なところだ」

 

「前の()()から15年しかたっておりませんし…()()4()といったところでしょうか?おそらく、()()()()()でしょうなあ」

 

「どうしてそこまで予言できる?君は学者にでもなったつもりか?」

 

()()()()()()ってのにはお金がかかりますからなあ。特に()()()()()を用意すると、ねえ」

 

総理は黙っていた。この男が何をどこまで知っているのか見極めたかったからである。

 

「私が知っているのはこのあたりまでです。ですがここまで分かれば()()()()()()()()()でしょう。そこでですねえ、総理、私と賭けをしませんか?」

 

「賭けだと?」

 

「そうです。海外に気取られることなくこの()()を未然に防ぐことができるか、という賭けです」

 

「君は私ができないと踏んでいるのか。対価は?」

 

それを聞くと通産大臣のメガネが光る。

 

「総理はある派閥の長*1を次の総裁にすると約束されていたと聞いております。私が勝ったらそれを反故にして私を次の総裁にしていただきたい。私が負けたら、私はあなたのご指名に従いましょう」

 

総理は即答こそしなかったが、しばらくして小さくこう言った。

 

「…そうか。ただし条件がある。君自身が言いふらすのは無しだ」

 

「もちろん。私からメディアや外国人に教えることは致しません」

 

「本当だろうな?」

 

「私は嘘を申しません」

 

その後いくつかの打ち合わせを行った後、通産大臣は執務室を出た。足音が遠ざかったの見計らい、総理は電話をかけ始める。

 

「もしもし、私だ。九段下の長船という人にに繋いでくれ。永田と言えばわかるはずだ」

 

◇◆◇

 

Direct Attack 本部 長官室

 

「もしもし、長船です」

 

『もしもし、私だ、永田ノブスケだ』

 

「お世話になっております。その様子ですと、そちらのほうで困ったことがあったそうですね」

 

『そうなんだ。困っているんだ。だから君に相談をだね…』

 

「お言葉ですが、我々に今回の困りごとは手に余ります」

 

『頼む、チチハルで一緒に仕事をした仲じゃないか*2

 

「確かにあなたには相当な恩をいただきましたが…」

 

『その恩を返すと思って。あの時のことを思い出したくはないだろう。』

 

「…」

 

『お願いだ、お上に気取られないように対処できるのは君だけなんだよ。お願いで済まさせてくれ。頼む』

 

「分かりました。あなたのお上に気取られないようにですね。できる限りやってみましょう」

 

『そうか、助かる』

 

「ただし我々を動かすからには困りごとの詳細を教えて下さい。それとどう動くかはこちらで決めさせていただきます」

 

『うむ、その点については承知している。あとで担当者を向かわせるから詳細は彼から聞いてくれ』

 

「承知いたしました。吉報をお待ちください」

 

『よろしく頼む』

 

そう言うと電話が切られた。話し手は受話器を置き、一人ごちる。

 

「アメリカに気付かれないように対処せよ、か」

 

「そういうことならば、すでに手遅れと言わざるを得ませんな、長官殿」

 

DA長官の独り言に人を食ったような言い回しで答えるのは、スーツを着てパイプを吹かす恰幅のいい白人の男である。

 

「あなた方の組織を残し、Direct AttackとLicoriceの名前を与えたのが我々G-2(アメリカ陸軍情報部)であることを彼は知らないようですな。」

 

「まあそう言わないでください。私もあなた方がいなければ巣鴨の絞首台*3でしたから」

 

「それは因果なことですな。さて、さっそく本題に入るとしましょう。お話から察するに、先の電話はこの国のPrime Minister(首相)からでしょう。内容は…ばれないように片付けろ、といったところでしょうか」

 

「本職からすれば朝飯前、というところでしょうか。そのとおりです」

 

その言葉に白人はしてやったりの表情を浮かべ、日本人はやや複雑な表情をしている。

 

「それはよかった。我々としても今回の一件を表沙汰にすることは両国にとってはなはだマイナスであると考えております。できる範囲での()()は行いましょう」

 

「それはありがたいのですが、あなたもご存じの通り我々は暗殺部隊、武器は刃物や毒物が主体です。銃を使える人員はとても限られています。とてもじゃありませんがライフル背負った正規兵と正面切って戦うことなどできません。だから…」

 

「武器は問題になりませんよ」

 

「え?それはどういう意味でしょうか?」

 

()()()()()()()といっているのです。我々は情報機関ですがその前に()()です。銃ならいくらでもあります。間もなく新型のライフル*4が完成するので、その入れ替えで捨てられる予定の銃をそちらに引き渡せばいい」

 

「…銃はあなた方が用立ていただけるとしても、訓練と頭数が間に合いません。あなた方の情報が正しければ実施時期は6月21日夕方以降、人員は東京以外の関東圏と九州から総勢1,000人前後とのこと。すべてのリコリスを動員しても頭数でやや劣る集団を訓練不足で送り出すことになります」

 

「我々は()()()()()()()()()()()()、と言いました。我々がこの国にいる根拠となっている条約をよく考えていただきたい。あと数日で見直される条約ではありますが」

 

日本人は白人に困惑と疑念の目を向ける。白人は続ける。

 

日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約 第1条 日本は国内へのアメリカ軍駐留の権利を与える。駐留アメリカ軍は極東アジアの安全に寄与する他、直接の武力侵攻や外国からの教唆などによる()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「…!まさか、それは…」

 

日本人は驚愕の表情を浮かべている。

 

「その通りです。我々は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()といっているのです。クーデター軍を待ち伏せて正面から戦うのは我々G-2が選んだ部隊とし、あなた方には待ち伏せ地点の選定とそこまでの道案内を行うとともに、戦闘中は我々の部隊の指揮下で戦ってもらう。戦うために必要かつ十分な銃を我々はDirect AttackとLicoriceに供与し訓練を実施する。これならいかがでしょう?」

 

「そ、それならば確かに我々でも対応はできる…」

 

「必要なのはDirect Attackがクーデター軍と戦い、後始末を済ませたという事実でしょう」

 

「それはおっしゃる通りです」

 

「勘違いしないでいただきたいのは我々はあくまでクーデター軍との戦闘を引き受けるだけです。戦闘後の後始末と情報統制、隠ぺい工作等についてはあなた方の責任となることを承知いただきたい。これは九州から急行列車でやってくるクーデター軍関係者4名の排除も含まれます」

 

「その点については我々の専門です。お任せください」

 

「左様ですか。ではわたくしは一度戻らせていただきます。Prime Minister(首相)の使いがいない所で詳細を詰めることといたしましょう」

 

「最後に、この件は可能な限り内密にお願いできませんか?」

 

「本件はペンタゴンには報告します。それは了承いただきたい」

 

そういって白人は部屋を出ていき、総理の使いが来るまで長官室はしばしの静寂に包まれるのであった。

 

 

*1
大野 伴睦

*2
岸 信介の政界入りは満州での人脈の力が大きいといわれている

*3
戦犯として処刑されること

*4
M14




リコリスは銃を手に入れた!

本件があと何話で完結するか分からなくなってきていますが頑張って書ききります。
できればアニメ版が完結するまでにはけりをつけたい…。
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