Lycoris Record : 彼岸花の回顧録   作:フェデラルジオグラフィック

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お気に入り登録が地道に増えています。大変ありがとうございます。
ところで各事件の元ネタ把握したうえで読んでいる方はどれだけいらっしゃるんでしょう?

9/7 話の都合上日付を調整(年号を丸一年チョンボと日付の具体化)


1960年 事件は事故に スクープは誤報に
日本国有鉄道 第一番列車


1960年 6月21日 20時06分

 ジリリリリリリン…

 駅員が発車ベルを鳴らす中、駆け足で車両の脇を走り、車両の各扉を手動で閉めていく。自分の担当する最後の扉については自分が乗り込んで内側から閉める*1。ガチン、という錠の落ちる音がするの待って扉があかないことを確認。少ししてから金属がぶつかる音と共に体がゆすられ、扉の外の景色が横に流れ始める。日本国有鉄道第一番列車、通称さくら号は定刻通り門司駅を発車する。次の停車駅は下関駅。その間には関門トンネルがある。私は車掌補。車掌をはじめとした他の乗務員とと共にこのさくら号と乗客の安全を守り、定時運行を支える役目である。走り始めたことから少し緊張が解けかけたとき、隣の車両との連結部にある扉が開く。レールの継ぎ目の音とともに入ってきたのは青い学生服に学生鞄をつけた10歳を過ぎたあたりのお嬢ちゃん。

 

「ん?やあお嬢ちゃん、一人で列車に乗っているのかい?」

 

「うん、名古屋のおばあちゃんに会いに行くの!」

 

「おお、そうかい、そんなに小さいのに頑張るねえ!」

 

「だけど、一人で乗るのは初めてで、慌てて乗ったから場所を間違えちゃって…」

 

「切符を見せてもらえるかな?……ああ、これはこの二両先の車両だね。このまま進んで二番目の車両に入って手前から三番目の席だよ。」

 

「わかった、車掌さんありがと!」

 

「ちょっと!お嬢ちゃん!走ったら危ないぞ!」

 

私がお嬢ちゃんにかけた声は関門トンネルに響く轟音に完全にかき消されてしまった。その姿も寝台の影に隠れてすぐに見えなくなってしまった。お嬢ちゃんに注意したほうがいいだろうか?少しその場で考える。さっき聞いたときに彼女は一人だと言っていた。親御さんがいないのが少し気になるので様子を見るついでに一言言ってやろうと彼女が走ったはずの車内を歩く。

 

 関門トンネルを抜けるあたりで隣の車両との連結部を渡って扉を開ける。車内から異臭がする。これは何というか…血の臭い!車内を見てみると寝台のいくつかから血が廊下にあふれている。列車は下関駅へ向かう上り勾配を走り、私は車両の後ろ側に立っていたので、あふれた血が一直線にこちらに流れてくる!

 

「ひい!」

 

怖くなった私は慌てて一つ手前の車両に戻る。私の悲鳴を聞きつけたのか乗客が寝台から顔を出してこっちを見ている。

 

「お、おい、車掌さん、なにかあったのかい?」

 

「な、なにもありません!皆さんはその寝台から動かないでください!」

 

何とか言葉を絞り出し車両の扉へと駆け込む。ちょうど下関駅のホームに差し掛かったあたりであった。列車が完全に止まり、ガチンと扉のかぎが開けられるや否や私は扉を開け放ってホームに出る。そのまま手近な駅員のところへ駆ける。

 

「おい、どうした?」

 

「一番列車を発車させるな!人死にが出た!」

 

「なに!?わ、分かった、助役と信号係に連絡する!」

 

 下関駅は大騒ぎとなり、一番列車は下関駅で運転を打ち切られた。鉄道公安官がやってきて現場検証と事情聴取が行われた。私は関門トンネルに入る直前に会ったお嬢ちゃんの話をしたが、彼女が持っていたはずの切符の寝台は長崎駅の管理台帳上では()()になっていた。*2下関駅の改札係が言うには列車が入って少ししてから青い学生服の少女が()()()()()()()()*3を持って下関駅を出て行ったらしい。そしてその後の彼女の行方は誰も知らなかった。

*1
当時の客車列車は自動で扉が閉まらないので人が閉める必要がある

*2
座席管理が自動化されるまで、特急列車の空席管理は出発駅管理のの台帳上で行われていた。該当欄が空白ということはそもそも一回も座席が予約されていない(=どの駅からも切符が売られていない)ことになる

*3
福間から下関間の切符は有効期間が二日間になるので、いつ福間駅に入ったのかが掴みにくくなる





リコリスの活躍を第三者から見たらこんな感じになっちゃいますよね。

10話についてはあえてノーコメントで。
ただどうやって3話で収拾つけるんでしょうね?
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