昼下がりの時間
レストラシオンの代表、クリスティーナ=ベルトラムの書簡を持ったセリア=クレールは
アルボー公爵が書簡で指定してきた第一の待ち合わせ場所である関所へとたどり着いた
ここから先はセリアは1人で行く事になりガルアーク王国の騎士達も同行する事は出来ない
そしていつもなら密かに護衛してくれるアイシアも今回は連れてきていない
アルボー公爵の近くには恐らくプロキシア帝国の大使レイス=ヴォルスががいるからだ
レイスはなぜか超越者になったリオの事を忘れていないらしい
レイスは知らないふりをしていたがロダニアで会った時のリオの直感では
レイスはリオの事を覚えていると言ってた
そうなるとアイシアが霊体化していても精霊術士であるレイスは気配を察知出来てしまう
だからセリアは1人で来る決心をしたのだ
そして自分はリオとアイシアのお荷物じゃないと証明する為にも!!
ベルトラム王国の関所にはアルボー公爵の指示を受けた部隊が控えていて馬車でセリアを
アルボー公爵が待つ予定の砦まで護送する事こととなった
しかしその馬車は
(まるで罪人を運ぶ為の馬車ね・・・・・・)
まず窓が一切無く外装に飾り気も無く全て鉄で出来ていて外から施錠可能
こんな鉄製の箱を魔法で内側から破壊しようとしたら間違いなく中の人間は黒焦げだろう
つまり、一度この中に入ってしまえば、もうセリアは自分の意思で馬車の外に出る事は出来ない
ごくり・・・・・・・・・
「さあどうぞ、セリア様」
護衛と言う名の敵国の騎士がセリアに早く入れと促してきた
「分かりました・・・・・・・」
セリアとしては文句の一つも言いたいが、レストラシオンとベルトラム王国本国は内戦状態にあり
つい先日、レストラシオン本拠地である領都ロダニアが本国の軍によって陥落させられたばかり
そのレストラシオンの伝令に礼節など不要な事は自分でも分かっているので
何も言わずに大人しく馬車に乗った
セリアが馬車に乗ったらすぐさま
ガシャ!!
と言う音がして、馬車の戸が絞められた上で施錠された
もう自分の意思で馬車の外に出る事は出来ない
(本当に罪人扱いね・・・・手枷を付けられていないのがせめてもの救いかしら?・・・・)
馬車の中でセリアは女性騎士に挟まれ、正面にも女性騎士がいて合計4人の
敵国騎士に囲まれた状態である、そして馬車の外にも敵国騎士が10人程いる
(本当に随分な歓迎ね・・・・・・)
そうして馬車は走り出したが、どこに向かっているか聞いても女性のの騎士達は
「自分達も知らない」の一点張り
馬車の中からは外の景色が一切見えない為セリアは自分がどこに向かっているかすら分からず
5時間もの間馬車は動き続けた、後2時間もすれば日も暮れる頃になってようやく
目的地についたのか馬車が止まりしばらくしたら
ガシャ!!
と音をがして馬車の戸が開けられた
「セリア様お疲れ様でした、どうぞ馬車からお降りください」
そう女性騎士に促されてセリアは5時間ぶりに地面へと降り立った
(ずっと座っていたからお尻が痛いわね・・・・それに一体ここは何処なのかしら?)
周りを見渡すと近くに湖のある砦だ、湖には魔道船が停泊している
周囲の地形から見て現在地は書簡で指定された
第一の待ち合わせ場所の最寄り砦から2つ先の砦かしら?
「やっと着いたの?随分と遠くの砦に来たのね」
私はそう女性の騎士に訪ねたが
「セリア様、ここから先はこの魔道船に乗ってアルボー公爵のいるお屋敷まで向かいます
こちらからご乗船下さい」
女性の騎士は更に遠くの場所に行くから魔道船に乗れと言ってきた
「どういう事?、私は書簡を届けに来ただけなのにどうしてそんなに遠くまで行く必要があるの?」
そう私は疑問を口にしたのだが
「申し訳ありませんが私も理由は存じません、わたしは公爵から命令された任務を
遂行しているに過ぎませんのでそれらの質問はアルボー公爵本人にどうぞ」
とそっけなく返された
(本当に私を返すつもりが無いのかしら?でも伝令の任務を放棄してここで帰る訳にもいかないし・・・・)
出発前にもこの伝令の任務は罠である可能性が高いと言われてきたし
私も危険だとは理解していたが改めて配になってきた
そうして護衛とは名ばかりの敵国の騎士達に早く乗れと促されて
セリアは魔道船の中に連れて行かれた
そしてやはりここでも、セリアが魔道船の中で過ごす部屋は
窓が一切無く外から施錠可能な部屋だった
そしてまた馬車の時と同じように
4人の女性騎士に囲まれた状態で身動きすら取れずに座らされた
「あなたに言っても仕方がないかも知れないけど正直な所、クリスティーナ王女殿下の伝令に
この扱いは伝統あるベルトラム王国の貴族として最低限の礼節を弁えてるとは思えないわよ」
そう私が抗議の言葉を口にしても
「申し訳ありませんセリア様、わたしはアルボー公爵からの命令を
遂行しているだけで詳しい事情は何も知りませんので」
騎士達は頭を下げ、そして同じ言葉が返ってくるだけだった・・・・・・
(本当に帰ってこれないかも知れないわね・・・・・・・・・・・・)
セリアは段々と心細くなってきた、セリアをレストラシオンに返すつもりがあるなら
わざわざこんな遠くまで連れてくることも無い筈だ
魔道船の往復の燃料代だってバカにはならない
(でも私だって新しい力を手に入れた、アイシアにだって認められる位強くなった)
だから何があってもクリスティーナ様の元に戻ってみせる!!
そうセリアは強い決意を胸に抱いた
しかし、この時セリアは強くなった自分の力に大きな思い違いをしていた
それは強者には2種類がいて
1つはただ強い力を持っているだけが取り柄の素人
もう1つは強い力を1つの武器として扱う戦士である
セリアや勇者達は前者であり、リオやゴウキは後者だ
模擬戦でアイシアと戦えたからといってアイシアと同じように実践で戦えるとは
限らないという事をセリアは分かっていなかった
実戦とは、日常と戦闘の境目をどう見分けるかで生死が決まる
その事実をセリアはこれから嫌と言う程思い知ることとなる