魔道船が出発してから既に5時間ほどの時間が過ぎもう深夜と呼んで良い時刻だ
夜に明かりの無いこの世界では通常、魔道船は日が出てる時間しか空を飛ばないのだが
夜になっても関係なくセリアを乗せた魔道船は空を飛び続けている
「ねえ、もうとっくに日は暮れてるよね?、どうして何処かに停泊しないの?」
外の景色が見えなくてもとっくに日が暮れている事位は分かる
暗闇で空を飛ぶ事がどれ位危険な事かセリアだって理解している
職業軍人である彼女達の方がより理解しているだろう
だからそんな疑問を口にしたのだが
「申し訳ありません、セリア様、我々の任務はセリア様の護衛であって
魔道船の運航状況には携わっていないのでお答えすることが出来ません」
彼女達に質問しても常に同じ答えしか返ってこない
(この船落ちたりしないわよね?)
そんな疑問が頭に浮かんできた
普通に考えればセリア1人を抹殺するのに高価な魔道船を1隻使い潰すなんてあり得ないのだが
こんな深夜に空を飛んでいれば操舵を誤って山に激突してもおかしくない
そんなセリアの心配をよそに魔道船は安定した飛行を続け
「セリア様、もうすぐ魔道船が湖に着水します、衝撃に備えてください」
と部屋の外から騎士の声が聞こえた
それと同時に左右の騎士達がセリアの体を支える始めた
そうして1分も経たず
魔道船が大きく揺れて
ざばん!!!!!!!
と大きな音がした
そうして魔道船はやっと目的地に到着したようだ
それからしばらくして
ガシャン!!
施錠されていた部屋の鍵が開けられた
「セリア様、魔道船での長旅お疲れ様でした、お疲れとは思いますがこれから
アルボー公爵がおられるお屋敷へとご案内致します」
そう言って護衛の騎士達が扉を開けて、セリアに付いて来るよう促す
「分かったわ、ここまでの護衛誠にありがとうございます」
そうセリアもお礼の言葉を言い頭を下げたが、内心はかなり焦っていた
(どう考えても生かして返すつもりが無いわよね?)
こんな深夜に危険な飛行をしてこんな遠くの場所まで移動している時点で普通の状況では無い
仮にアルボー公爵の公務の関係でここでしか伝令の書簡を受け取る事が出来なかったとしても
なら最初から早朝にセリアを第一の待ち合わせ場所に来させれば良いだけの話だ
それなら日中にここまで移動出来る
(危険を承知で深夜に魔道船を飛行させたって事は、この場所に私がいるって事を
誰にも知られたくないって事よね?)
カツンカツンカツン
セリアと護衛の騎士達は魔道船のタラップを降りて、小舟に乗り換えた
後はこれで湖の畔まで移動をしてそこにある馬車に乗り換えて、お屋敷まで行くだけだ
(これだけ暗いと、ここがどこだか全く分からないわね・・・・・)
時刻は既に深夜、お屋敷に明かりがついてるから分かるだけで明かりがついていなかったら
あそこにお屋敷がある事すら分からない
状況的にはアルボー公爵が所有しているお屋敷の1つだろうが
こんな湖の畔にポツンと建っているお屋敷とかまず間違いなく隠れ家の1つだろう
湖にも魔道船の停泊所としての設備が一切無い
(仮にここから逃げ出すとしても深夜じゃどっちの方角に向かえば良いのかさえ
分からないのは辛いわね・・・・・)
もし仮にここから逃げ出した場合、近くの森に潜伏して翌朝
太陽の位置から方角を割り出して東に向かうしか手は無い
問題は新しい魔法を使えるようにはなったが、魔力の総量が上がった訳では無いので
リオのように無尽蔵の魔力に物を言わせて何時間も飛び続ける事がセリアには出来ないことだ
魔道船の移動時間から考えてもここが王都ベルトラントより西側である可能性が高い
そうなればセリアの保有魔力だけではガルアーク王国にたどり着く前に魔力が無くなってしまう
(道中の街で宿を取って休みながら飛び続けるしかないかしら?)
本当にガルアーク王国に、クリスティーナ様の元に帰れるのかセリアは心配になってきた・・・・・
自分は強くなったと昨日まで内心自惚れていたがそれはただの思い違いだったのか
自信が無くなってきた
セリアは知らなかったが、この回りくどい護送方法は
プロキシア帝国の大使レイス=ヴォルスの発案だ
彼は先日のロダニア陥落の戦果によってベルトラム王国に対して強い発言権がある
まず長時間の馬車での移動でセリアを尾行している人間がいないかの確認を行い
魔道船で空を移動する事によってセリアの友人でもあるサラ達の鋭い鼻でも追跡不能にする
また夕方に魔道船が飛び始めたのは、夕日が西側に沈む為だ
ベルトラム王国はガルアーク王国から見て西側にある為
魔道船は逆光の中を飛ぶ、つまり後ろから追跡している者がいた場合非常に魔道船を見失いやすい
逆に魔道船側からは追跡者がいた場合非常に発見しやすい
移動中は常にセリアを外が見えない部屋の中に閉じ込めたのは部屋の外にいるレイスの存在を
セリアに気づかせない為、相手がセリアなら視認さえされなければどんなに近くにいても
気づかれる心配は無い、そうしてレイスはセリアのすぐ近くで探知の精霊術を使い
アイシアやリオやソラが隠れていないか確認をしたという訳だ
そして道中セリアが閉じ込められた部屋は通気口以外一切隙間が無い閉鎖空間
つまりもしアイシア達が何処かに隠れていたとしても
通気口から≪火炎弾≫ファイアーボール≫1つ室内に放り込むだけで
逃げ場のない閉鎖空間で爆発、一瞬でセリアは護衛の騎士諸共黒焦げになる
強くなったと言っても所詮セリアは素人
現代で例えるなら子供がマシンガンを持っているに過ぎない
つまり、どれだけ強くなっても彼女だけなら幾らでも対処のしようがあるという訳だ
実際彼女はこの護送中、自分がいつでも殺害可能な状態にあった事にさえ気づいていない