セリアがいなくなった後の取調室にはすぐに別の人間が現れて中にいた騎士達に話しかけた
「彼女の所持品は私が預かりますよ、勿論アルボー公爵には話を通してありますのでご安心下さい
彼女の所持品の中に現在位置を特定できる魔道具などが仕込まれていると
この場所が察知されて大変ですからね」
「そのような魔道具が存在するのですか?」
騎士はそう言った魔道具がある事を聞いたことが無いのかそう言った
「ええ、存在してますよ、勿論セリア君が確実に持っているという保証はありませんが
彼女は非常に優秀ですからね用心に越したことはありませんよ」
「なるほど・・・・・」
騎士は先程のボウガンに狙われて恐怖に震えていたセリアを思い出し、彼が言うほどの
脅威を感じていないのか気持ち半分に返事をした
「ええ、あの見た目に惑わされてはいけません、事実シャルル様もアルフレッド様もそれで不覚を取って
虜囚の身となられましたし、結婚式を襲った賊も彼女の関係者ですからね、それでは失礼しますよ」
そう言ってレイスはセリアの衣服や魔道具が入った箱を持って立ち去っていった
(しかしあの状況でも逃げ出さないとは、人型精霊とは完全に別行動をしていると見て間違いないですね)
一応レイス自身、アイシア達がいないか細心の注意を払っているが、なにせ相手が相手だ
どんな方法で隠れていてもおかしくない、だから逃げ出せる隙を意図的に作ってみせたのだが
やはり逃げずにセリアは拘束されて連行されている
(これは黒の剣士とその仲間達を全員この戦争から離脱させるいいチャンスですね・・・・・・・)
そう、黒の剣士もそしてその友人達も全員この戦争とは無関係だ、本来どちらにも肩入れする事は無い
リオはセリア個人の為だけに戦い、他の人間はリオやセリア個人の為だけに戦っている
だからこそセリアを上手く使いこの状況を操作する事によって彼ら全員を戦争から除外させる事が出来る
一方そのころセリアは
何も見えず何も話せない・・・・・裸足で歩かされている為小石などを踏んで足が痛い
手足を拘束され、縄を首に掛けられた状態で罪人の様にノロノロと歩かされていた
そうしてセリアの心はどんどん暗くなっていった
(どうしてさっき、逃げなかったのかな?)
と・・・・そう思った
服を全て脱げと言われて騎士達にボウガンで狙われた時の事だ
確かに凄く怖かったが
油断もあったのだろうあの時の騎士達は全員身体強化すらしていなかった
あの状況を打開するだけなら、≪魔法障壁≫マジックバリア≫で全身を覆えば
3方向からボウガンの矢を幾ら撃たれても大丈夫だし
騎士8人に≪光弾魔法≫フォトンバレッド≫を計16発も撃ち込めば
恐らく一度に半数以上は倒せるだろう、同じ数をもう一度撃てば確実に全員倒せる
私の≪魔法障壁≫マジックバリア≫は魔剣で強化されている天上の獅子団の傭兵の攻撃ですら
受け止められる強度がある
身体強化すらしていない騎士の剣やボウガンの矢なんかじゃ絶対貫けない
そうして騎士8人を全員倒したら≪特大魔力砲撃魔法≫グレーターキャノン≫で天井に穴をあけて
≪光翼飛翔魔法≫フォースウィング≫で尋問室の外に飛んで逃げ出すだけで良かった
今は深夜だから空に逃げれば追跡される心配も無い
(そう・・・多分、私は自分の意思で行動したことによって発生する責任が怖かったのね・・・・・・・)
身体検査を拒否した時点で暗殺未遂の容疑者として扱われると言われ・・・・・・
逃げた後本国にいるお父様がどうなるか、伝令の役割を果たさず逃げた後の
レストラシオンがどうなるか、その責任が怖くて・・・・・・
私は逃げ出さずにこうして捕まっている
逃げずに捕まった後の責任は私にある訳じゃないという言い訳と共に・・・・・
(多分アイシアがあの場にいたら間違いなくあの時に逃げてたよね・・・・・・・)
ロダニアでレイスを発見した時と同じだ、普段彼女はぼーっとしてるように見えるが
状況判断の切り替えは恐ろしい程早いし正確だ、それに常に周囲への警戒も一切怠ってない
だからリオもあれだけ信頼している・・・・・・そして恐らくソラも・・・・・・・
リオの両腕とも言える2人に嫉妬と劣等感を感じて、私は1人で戦う決意をした
しかし恐らく最後であろう逃げ出すチャンスをミスミス逃して
今私は捕らわれの身となって罪人の様に連行されている
もう魔道具の腕輪も無い以上、例え魔封じの枷が外せたとしても
ガルアーク王国まで自力で逃げる事は絶対に出来ない
「ひゅぅぅ・・・・・ひゅぅぅぅ・・・・・ひゅぅぅぅぅ・・・・・」
ボールギャグから唾液と呼吸の混じり合ったような卑猥な音が響く
「セリア様段差があるからお気をつけて下さい」
連行している騎士にそう注意されたが、後ろ手に縛られて、足鎖で不自由な歩みしか出来ない私は
その段差に引っかかって転びそうになった
「セリア様、お気をつけて下さい」
監視の騎士が倒れないように支えてくれた
「せぇぇてぅあぃぃぃかぇぇぅぅぅふぐぅぅぅ」
セリアはせめて足枷を外してほしいと懇願の言葉を言おうとしたが、全く言葉にならず
また騎士達もセリアの発言らしきうめき声には一切耳を貸さない
そうして立ち止まっていると、さっさと歩けと言わんばかりにまた後ろから
鞘で頭を小突かれ、しぶしぶセリアは歩き始めた
(さっきまでは土を踏んでいたけど、今の感触は絨毯ね?、ならここはロビーかしら?)
裸足だから石片を踏むと痛いけど、踏んだ感触で現在の位置がある程度分かるのは幸いだ
「セリア様、階段を下りますので注意して下さい」
今度は騎士が階段を下りると言ってきた
(私が今向かっているのって・・・・・・・・)
目隠しをされているからハッキリとは分からないが、ほぼ間違いなく
地下牢に向かって歩かされている、段々と汚物臭と腐臭が強くなっていってる
(臭いわね・・・・・・・)
そうしてしばらく地下牢らしき場所を歩かされ
ギィィィィィィィ・・・・・
恐らく鉄格子のようなものを開けるような音がした
「セリア様、こちらのお部屋にお入りください」
(部屋じゃなくて牢屋でしょ?)
そんな感想が頭に浮かんだ、と言っても、どうする事も出来ず
大人しく私は牢屋の中に入りここで止まれと言われた場所で立ち止まった
「閉めるぞ?」
男性のそんな声が聞こえた・・・・・
ギィィィィィィィ・・・・・ガシャン!!
(牢屋の鉄格子を閉めて施錠したのね・・・・・・・・・・)
牢屋の中に入れられた以上罪人みたいと言うのは
揶揄でも何でもなく事実になったわね・・・・・・
自分の事ながら呆れてしまった
「セリア様、後ろを向いてください」
女性騎士にそう言われて私は後ろを振り返った、私と彼女は牢屋の中で待機するみたいだ
「それでは、アルボー公爵が来るまでここでお待ちください」
そう女性騎士は言った
キュッキュ
何かを結ぶ音と私の首に掛けられた縄が上に引っ張られる感触がした
(私の首の縄を何かに固定したのかしら?・・・・どうせ身動きなんて取れないのに・・・・)
どうやらアルボー公爵とは鉄格子越しに会う事になりそうね
ほんと・・・・書簡を見せた後に大人しくレストラシオンに返してくれることを祈るしか無いわ
自分でも虚しい願いだとは分かっているけど・・・・・・・
この状態のまま10分ほど経ったかしら
「ひゅぅぅ・・・・・ひゅぅぅぅぅぅ・・・・・・・・」
セリアのボールギャグから零れる唾液と呼吸の混ざったような卑猥な音だけが地下牢に響いてくる
後ろ手に縛られたまま立ち続けるなんて初めてだし、首を縄で固定されているから
少しでも前後左右に動こうとすると首が締まる、勿論しゃがむ事なんて出来ない
その上口呼吸もロクに出来ないから非常に息苦しい・・・・・・
「せぇぇめぇぅぇてぇえぇすぅぅぅわぁゎゎらぁぁぇぇせぇぇぇてぇぇゎ」
せめて座らせてと言ったつもりだが、やはりボールギャグのせいでまともに喋る事が出来ない
呪文の詠唱を妨害する意図がある拘束具だけあって、ほんとに言葉が話せなないわね
ただ、今の状態を見れば何が言いたいかは大体分かるだろうし
監視の・・・・いいえ看守の騎士に座らせて貰える事を祈るしかないわね・・・・・
ただ・・・・・・・そんな私の願いとは裏腹に
カラカラと滑車がゆっくり回るような音がしたかと思うと
私の首に掛けられた縄が少しづつ上に上がって行き私の首を吊り上げていく
(ど・・・・どういう事・・・・・・・・苦しい・・・・・・)
私はつま先立ちしなければ呼吸も出来ない位に首を吊り上げられた
まさか書簡の中身を見る前に問答無用で殺しに来るなんて予想さえしてなかった
(つま先立ちしていないと、首が締まって・・・・・・呼吸が出来ない・・・・・・・・)
あまりの恐怖に涙が出てきた、あと・・・ほんの少しだけ縄を上に引っ張り上げられただけで
地面に足がつかなくなり私は死ぬ・・・・・・・
≪疾風魔法≫ウインドカッター≫で縄を斬るしかない・・・・・・・
そう思い、私は無詠唱魔法を発動させようとしたが・・・・・・・
魔封じの枷のせい??魔法が発動しない??
(魔法が・・使えない・・・息が・・・苦しい・・・・助けて・・・・・リオ・・・アイシア・・・・)
魔法の使えないセリアは無力な小娘でしかない
生殺与奪の権利を他者に一方的に握られる恐怖というものを今日初めて知った
そして一人で戦うと決意したセリアが初めてリオやアイシアに助けを求めた瞬間だった
しかしリオもアイシアもここにはいない・・・・・・・・・
誰の助けも来ないままセリアの首吊りは続いていった
首吊り状態で窒息死寸前の苦しみを味わっているセリアを見ている人間が4人いた
セリアと同じ牢屋の中に入って彼女を監視、護送中のセリアとの受け答えの全てに対応
女性騎士 マリア
牢屋の外でセリアを監視、
女性騎士マリアの妹でソフィア
そして現在滑車を操作してセリアの首を絞め続けている
男性騎士 ゲオルグ
そして少し遠くから、この3人に念話によってセリアの首を吊れと
指示を出したフルフェイスの兜を被った男
プロキシア帝国大使 レイス=ヴォルス
(ほう・・・無詠唱魔法まで使えるようになっていますか・・・・やはり人型精霊だけでなく彼女も要注意ですね)
魔封じの枷のせいで魔法自体は発動しなかったが間違いなく先程は
≪疾風魔法≫ウインドカッター≫を無詠唱で発動させようとしていた
(まだ何か力を隠しているかも知れませんし、念のためもう少し嬲った方が良いかも知れませんね)
そう思ったレイスはゲオルグに死なない程度にセリアの首を絞め続けろと念話で指示を出した
そうしてセリアが嬲られ続けてしばらくし時間が経過して・・・・・・・・
(おや・・・・・失禁しましたか・・・・・まあ彼らもプロです死なない程度に嬲れと言えば殺す事は無いでしょう)
それに万が一死んだとしても殺したのはアルボー公爵だから自分がリオに恨まれる事も無いですしねぇ
そう思いレイスは苦しんでいるセリアをそのまま眺め続けているのだった
オリジナルキャラクター紹介
男性騎士 ゲオルグ=バランタイン
アルボー公爵派の若手貴族 侯爵家長男、口は軽いが非常に優秀
セリア護送の際は馬車の外、部屋の外の警護を担当
母親は9年前のフローラ王女誘拐事件時、王女直属の護衛隊長を務めていた
フローラ王女が誘拐された責を問われ護衛を解任、その後投獄 獄中にて死亡
女性騎士 マリア=ガートルード
アルボー公爵派の若手女性貴族 伯爵家次女、生真面目で非常に優秀、死んだ姉を尊敬している
セリア護送の際は馬車の中、部屋の中でセリアの警護及びセリアとの受け答えを担当
姉は9年前のフローラ王女誘拐事件時、王女直属の護衛隊の一員でゲオルグの母の部下
フローラ王女が誘拐された責を問われて護衛を解任、その後投獄、獄中にて死亡
女性騎士 ソフィア=ガートルード
アルボー公爵派の若手女性貴族 伯爵家三女、少し気弱で頑張り屋
3姉妹の末っ子、優秀な姉達を尊敬している
セリアの護送の際は馬車の中、部屋の中でセリアの警護を担当
連行中は鞘で頭を小突いたのは彼女
姉を殺した当時の貴族牢を管理していたフォンティーヌ公爵派閥が大嫌い