精霊幻想記 捕らわれた白き魔導士   作:hide_hide

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第六話「偽の書簡」

 

 

なんなのこれは・・・・・・・・

 

アルボー公爵の前で書簡を読み上げクリスティーナ王女殿下のご意向を存分に叩きつける

私はその為にここに来たのだ

 

しかし今私の目の前でありえない事が起こっている

夢だ、これは悪夢に違いないと現実逃避したくなる

 

「ふむふむ、なるほどクリスティーナ様はこう仰っている訳ですな城塞都市ロダニアが陥落した以上

無意味な内戦をこれ以上は続けずレストラシオンは降伏して全ての王侯貴族は本国での裁判を受け入れると」

 

「ほほう・・・それは大変結構な事ですな、そう言う事なら我々も喜んで降伏を受け入れましょうぞ」

 

アルボー公爵とシャルルは揃って意味が分からない事を話している・・・・・・

しかし自分の目の前にある書簡を見てもそれと同じことが書かれている

 

「そ・・・・んな筈無いわ、この書簡は偽物です!目隠しを・・・・私が拘束されている間に

すり替えられた偽物に違いありません!!」

 

私は必死にそう主張した・・・・・

 

「セリア君これは異な事を仰る、これは間違いなくクリスティーナ様の公印と魔術印ですぞ?

 

「はい父上そしてこれは姫様の書簡に使われる王族専用の羊皮紙でありますな」

 

「セリア君、君はいかなる了見でこの書簡を偽物扱いするのかね?、まさか事前に知らされていた内容と違うから・・・・・・・・とでも言うつもりかね?」

 

アルボー公爵はニヤニヤと私を見ながらそう言った

伝令に書簡の中身を偽って運ばせる事などよくある事だ・・・・・・・と

 

(ど・・・・・・どうやってクリスティーナ様の書簡を偽造したの?)

 

これは間違いなくクリスティーナ様が書いた文字だし

書面に押す公印と魔術印、書簡の封蝋に使う印そして王族の書簡に使われる専用の羊皮紙は

クリスティーナ様の補佐として公印を持ち運ぶ事もあり、間近で現物を何度も見たから分かる

目の前にある書簡の全てが間違いなく本物である事にセリアは強い焦りを覚えた

 

セリアは知る由も無いが、クリスティーナが王城で軟禁生活を送っていた時に

アルボー公爵は第一王女の公印と羊皮紙の複製を行っていたのだ

魔術印も公務の際クリスティーナが身に着けている、指輪に細工をして彼女が魔術印を刻んだ時に

指輪の方にも魔術印が刻まれるよう細工したわけだ

そして筆跡に至っては、訓練すれば筆跡模写など難しくはない

 

「そして2枚目には、降伏の証としてセリア君を我がアルボー公爵家に差し出す旨が記載されているね

セリア君は一度我がアルボー公爵家を裏切り結婚式に賊の手引きを行い我が国の威信を失墜させた

その罪状を加味し今後二度と裏切れぬようセリア君には隷属の首輪の着用を義務付ける事

クレール伯爵家は以降アルボー公爵家へ絶対の服従を誓う事を命じる・・・・と書かれているね」

 

「もしこれにクレール伯爵家及びセリア君が同意しなかった場合先の協定で決まったクレール伯爵家の安全保障は全てレストラシオン側から破棄され、以降のセリア君及びクレール伯爵家がどうなろうともレストラシオンは一切関与しない・・・・・と書かれているね」

 

(なんなのこれは・・・・・・)

 

一語一句違わず暗記した書簡に書かれた文章は全く覚えのない内容になっていて

そこに書かれているのはアルボー公爵にとって都合の良い・・・・・・・・・

私達にとっては悪夢のような話ばかり

そしてアルボー公爵が先程言った言葉と同じ内容が私の目の前にある書簡にも書かれている

 

アルボー公爵の言う通り、これにクリスティーナ様の公印が押されている以上

ベルトラム王国ではこれは姫様の公式文章として・・・・・レストラシオンの降伏宣言として・・・

私達クレール伯爵家へのアルボー公爵家への服従を命じる命令書として・・・・・・

そして結婚式に乱入した賊の手引きをしたのが私である動かぬ証拠となる

 

「さて、まずはこの書簡に受け取りの証明として私の魔術印を押さなくてはならないな」

 

そう言いながらアルボー公爵は、この身に覚えのない書簡に受け取った事を証明する魔術印を押し

 

「次はセリア君、君が持っている書簡にも魔術印を押す必要があるので渡したまえ」

 

そう言うと、セリアの横にいた騎士がセリアが持っていた書簡を奪い取りアルボー公爵に手渡した

そしてアルボー公爵が2つ目の書簡の内容が1つ目の書簡と同じであるかの確認をしてから魔術印を押した

 

「さて本来なら伝令である君がこの書簡を持ってガルアーク王国に戻る必要があるのだが・・・・」

 

「クリスティーナ様は降伏の証としてセリア君を差し出すと仰っている以上この書簡は我がアルボー公爵家の使いの者に持たせるとしようか」

 

「そもそもセリアは伝令の癖に書簡を読み上げる事すら満足に出来ていないからな」

 

「そう言うな、シャルルよ、クリスティーナ様に売られたのが余程ショックなんだろう」

 

「しかし父上、売られたと言うのは誤解があるのでは?、レストラシオン降伏後に裁判を受ければクレール伯爵家の有罪は確実、そうなれば一族全員斬首になる、それを服従で済ませようとする姫様の温情と言えるのでは?」

 

「確かにそれは言えるな・・・伯爵家の服従そしてレストラシオンの降伏宣言を了承したという旨を伝えねばならないね」

 

「それでは父上、クリスティーナ様のご命令通りセリアには隷属の首輪を付けて貰わねばなりませんね」

 

「確かにその通りだな、セリア君、きみには我がアルボー公爵家への忠誠を誓いシャルルの妾になるにあたって自分の意思で奴隷になる為に奴隷契約書を書いてもらうよ隷属の首輪は我が国の法では奴隷か犯罪者以外、着用を認められていないからね・・・・・・」

「嫌なら・・・・・・まぁ・・・・・私はどちらでも構わんがね」

 

アルボー公爵とシャルルは私に妾に・・・そして奴隷になれと言ってきた

そして暗に・・・・・自分の意思で奴隷になりたく無いのなら、裁判で一族全員斬首にした後でお前を犯罪奴隷にしても構わんのだぞ?・・・・・・・と

 

「おい、ゲオルグ!隷属の首輪と後は奴隷契約書一式を持ってこい」

 

アルボー公爵がそう言うと配下の騎士に命じて

隷属の首輪と奴隷契約書後を持ってこいと指示する

 

(一体なんなの・・・・・私の目の前で悪夢のような話が次々と決まっていく)

 

「アルボー公爵・・・・何度も言いますがこれはクリスティーナ様がお書きになられた

書簡ではございません、王族の公文書の偽造は我が国では重罪ですよ?」

 

「ふむ・・・・・全く身に覚えのない話だがな・・・・・だがもし仮にこの書簡が偽物だとしても

その真偽の解明はクリスティーナ王女がする事であって君がする事では無い筈だが?」

 

お前の仕事は伝令であり、クリスティーナ王女の臣下の1人でしか無い

なら黙って書簡に書かれた命令に従え、そうアルボー公爵は私に言っている

 

「それに私はクリスティーナ王女が国法に定められた手順をもって書簡の偽造を訴えるのであれば、それはそれで一向に構わんよ?」

 

アルボー公爵は余裕を見せながらそう言った

そう・・・・王族の書簡の偽造は重罪だが、その真偽を判別する鑑定を行うのは

宰相が任命した鑑定官であり最終判断は宰相・・・・つまりアルボー公爵本人が行うのだ

負ける筈が無い

 

かつてリオが言っていた言葉だ

「冤罪を押し通すだけの権力があれば無実の人間でも罪人に出来る」

「権力の濫用を歯止めするシステムがあれば話は別かも知れませんが」

 

ベルトラム王国は権力者にとって都合の悪い人間は無実であろうと罪人に仕立て上げる事が出来るし

権力の濫用を歯止めするシステムだって存在しない

だから書簡の偽造をアルボー公爵がした所でこの国には権力者である彼を裁く法律そのものが存在しないのだ

 

偽造されたクリスティーナ様の書簡に結婚式に現れた賊の手引きは私がやったと明記された時点で

裁判になればクレール伯爵家の有罪は既に確定している

つまり私がシャルルの妾となりアルボー公爵家への服従を誓い奴隷とならなければ

先の協定の効力さえ無くなりクレール伯爵家は滅亡する事になる

 

「セリア君、研究者である君には理解出来ないかも知れないがレストラシオンと本国は

今戦争をしているのだよ?、戦争とはどんな手段を使っても勝てば良いのだ

君は公文書の偽造を罪だと言うが、例えばもし仮に君がそこにいるプロキシア帝国大使のレイス殿の

公文書を偽造出来ると立場だとしてそれを使い彼を追い落とす事に何か罪悪感を感じるのかね?」

 

「惰弱なユグノーの失態によって我が国は過去に重要な拠点をプロキシア帝国に奪われた事があるが

あの頃も今も君たちは最悪のケースを想定し無さ過ぎている」

 

「君は私がクリスティーナ様の公文書を偽造したと言うが、そもそも偽造したと言うのなら

私が作った偽の公印や羊皮紙とやらを見つけてからにしてもらいたいものだね」

 

アルボー公爵は偽造された書簡を叩き笑いながらそう言った

 

(アルボー公爵は追い詰められたクリスティーナ様がレガリアを使い女王に即位する可能性を考えて私をここに連れてきた・・・・・偽の書簡を予め用意して)

 

本来の書簡の内容は、レガリアを使いクリスティーナ様がベルトラム王国女王に即位するという内容だ・・・・・・・・

しかし、降伏宣言をしたクリスティーナ様が今更女王に即位すると言っても誰も付いてこないだろう

 

そして本物の書簡の中身を確認されている以上レガリアがクリスティーナ様の手の中にある事も

アルボー公爵にバレてしまった

 

主であるクリスティーナ様の危機に私は自分に出来る事は何か無いか必死に考えた・・・・・・

しかし魔封じの枷をつけられ牢屋に繋がれている自分に出来る事は何もないという現実を思い知るだけだった

 

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