「ふむ・・・・レイス殿の言う通りセリア君にそのチョーカーを身に着けせて緑色の液体を飲ませたら彼女は気絶してしまったようだが私にとって悪くない状況とはどういうことかな?」
そうアルボー公爵はレイスに質問をした
これまでの行動から見てセリアは王家への忠誠心が厚く自分達から見て
全く信用に置けない人物である事は明白だ
だが彼女程の魔導士にはまだ使い道がある以上この場で使い潰すには正直惜しい人物だ
レイスがセリアに執着している理由は不明だが、先のロダニア陥落においてベルトラム王国は
プロキシア帝国に莫大な借りが出来てしまった
だからこそレイスの指示に従い今回のセリアの護送をここまで面倒な手順にしたに過ぎない
本来城塞都市ロダニアはプロキシア帝国が勇者と亜竜騎士団を率いて単独で攻め落として
その後交渉にてベルトラム王国本国に譲り渡せば良い、アルボー公爵が逆の立場ならそうする
それをしなかったのは、最近失態が続いて求心力が低下している
アルボー公爵とシャルルへロダニア陥落の手柄を譲ったに過ぎない
貸し借りの天秤は政治を行うにあたり最も重要な感覚だ
何故なら貸し借りを正しく認識出来ない人間はまず味方から信用されないからだ
これはフランソワ国王がかつてのリオに言った言葉・・・・手柄には恩賞で報いると根本は同じ
「いえいえアルボー公爵、ここからが本番ですよ」
そう言いながらレイスは気絶したセリアの頭に手を当てると何やら呪文を唱えた
そうすると首にはめたチョーカーが光り気絶したと思ったセリアが虚ろな目をしてこちらを見ている
「ほう・・・・・」
アルボー公爵とシャルルが見慣れない魔術に関心を示しながら様子を見ている
「さて質問です、セリア君、今貴方は大変厳しい状況ですが、この状況をどうすれば打開出来ますか?」
突然レイスはセリアに訳の分けらない事を聞き始めた
(どういうつもりだ?、そんな事聞いても答える訳が無いだろ?)
奴隷になったと言ってもセリアと自分達は今でも敵対しているようなものだ
もしこの状況から我々を倒す手段があるなら当然それは隠さねばならない
質問した所で馬鹿正直に答える訳が無い
そんなアルボー公爵の思いとは裏腹にセリアは
「はい、アルボー公爵とシャルルに服従の意を示し、魔封じの枷を外して貰い外れたら魔力が全開するまで待ちます」
驚いているアルボー公爵とシャルルを尻目に虚ろな目のセリアはペラペラと
目の前にいるアルボー公爵を倒す為に自分が出来る手段を喋り続けている
「魔力が全開になれば、アルボー公爵が近くにいるタイミングで反撃に出ます隷属の首輪は魔力操作で
一時的に制御権を奪えるのでその隙に≪解呪呪文≫ディスペル≫で首輪を外して」
「≪憑依型剣王英雄模造魔法≫を使用してアルボー公爵以下周囲の騎士を全員制圧その後公爵を人質に奪われた魔道具の腕輪を取り返して≪光翼飛翔魔法≫でアルボー公爵を抱えてガルアーク王国まで空を飛んで逃げます」
(やはり白の魔導士も油断がなりませんね、まさか無詠唱魔法だけでなく≪賢神魔法≫までも複数取得しているとは)
「なるほど・・・・・では次の質問ですが、先程の書簡は偽物と仰いましたが本物の書簡の内容をここで話して頂けませんか?」
そうレイスが次の質問をするとやはりセリアは虚ろな目のまま
書簡に書かれている内容をそらんじた始めた
そうしてしばらくすると書簡の最後の条項まで話し始めた
「ベルトラム王国第一王女クリスティーナ=ベルトラムは第一王位継承者としてここに宣言する」
「私、クリスティーナ=ベルトラムはベルトラム王国の女王に即位する事を宣言する・・・・・・・・・・」
「期限内に伯爵が現れない場合国王フィリップ三世は私クリスティーナ=ベルトラムの女王即位に異論がない物と見なす、以上」
「レイス殿、これは一体?」
アルボー公爵とシャルルは驚いたようにレイスに質問をした
「簡単に言えば相手を自白させる魔道具ですよ、尋問と違って自白した事を相手が覚えていないし虚偽の発言で騙される心配も無いから便利なんです」
「そのような魔道具があるのですか・・・・・・」
アルボー公爵もシャルルも軍人として捕虜の尋問において虚偽の言葉に騙されるのは日常なだけに
真実を必ず喋らせられるという魔道具には強い関心を持った
それに2人ともセリアが話した本物の書簡の内容を知っているだけにこの魔道具の効果は本物だと思えた
(勿論嘘ですけどね、本当は意識を刈り取る精霊術を付与した液体を飲ませて気絶した所に精神系の精霊術をかけて自白させただけですが、魔道具と霊薬の効果と偽った方が色々と便利ですからね)
これはアイシアが得意とする精霊術だ、レイスはアイシア程自由自在に自白させたりは出来ないが
相手の体内に術を込めた薬液を入れられるならこの通りだ
「さて、霊薬の効果も切れました、まだこちらに服従するつもりは無いようですし彼女は厳重に拘束しておいた方が良いですよ?間違っても魔封じの枷は外さないように」
レイスはアルボー公爵とシャルルにそう忠告した
「つまり、この状況下でもまだ我々に逆らうつもりという訳か?この小娘は・・・・・」
「セリア・・・・・・・・・」
アルボー公爵は憎々しい目でシャルルはショックを受けたような目で
気絶しているセリアの方を見ながらそう言った
「まぁそうなりますね、護送方法にあんな面倒な手順を踏んだのも彼女の友人の魔剣使い達に万が一にも追跡されている可能性を考えてですよ」
そうやってレイスは何が楽しいのか分からないが楽しそうに語った
「そう言えばレイス殿≪憑依型剣王英雄模造魔法≫や≪光翼飛翔魔法≫とは一体?」
シャルルは自分が全く聞いたことも無い魔法をセリアが語っていた事に興味を抱いた
「どちらも私は使えませんが、≪憑依型剣王英雄模造魔法≫は身体強化と同時に剣術などの技能も一緒に向上させる魔法ですね、簡単に言えばこれを使えば誰でも王の剣と同等の力が手に入ります」
「≪光翼飛翔魔法≫は空を飛ぶ魔法です、私も別の魔法ですが飛翔魔法を扱えます」
「つまり王の剣と同等の剣技を用いて私達全員を制圧して、アルボー公爵を人質に取って空を飛んでガルアーク王国まで逃げるのがセリア君の作戦という訳ですね」
「本当にセリアにそのような事が出来るのですか?」
こんなか弱い女性でしかないセリアにそんな事が出来るのが信じられないのかシャルルはそう言った
「さあ?、彼女自身がそう思っているだけで実際出来るかどうかはやってみないと分かりませんよ?」
「まぁ私はこの程度の事出来ると思っているからこれだけ警戒をしている訳ですが」
「止めて置けシャルル、それでレイス殿、我々はどうすれば良いのだ?私としてはセリア君をこの場で始末しても構わんが」
アルボー公爵は先の結婚式の二の舞を避けたいからか
服従する意志の無いセリアの殺害を主張しだした
「申し訳ありませんが彼女にはまだ使い道がありますので拘束するに留めて、殺すのは止めて下さい」
(ならその使い道とやら位は説明して欲しいものだがな・・・まぁレイス殿には大きな借りがあるしその借りを返すと思えば多少の無理は聞くしか無いが)
そうアルボー公爵は思った