精霊幻想記 捕らわれた白き魔導士   作:hide_hide

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第九話「伯爵家長女の最後の夜」

 

 

(彼女にはまだ使い道があります・・・・か、ならその使い道とやら位は説明して欲しいものだがな・・まあその為にわざわざあの小娘を奴隷にする工作をした訳だが)

 

 

ロダニア陥落の貸しは金額換算すればロダニアの税収30年分以上の金額になる

1000人を超えるレストラシオンの貴族達が各々の屋敷に保管していた財が金額としてとにかく大きい

本来あれの所有権の大半はロダニア陥落の第一功であるプロキシア帝国にあると言って良い

それをこちらに全て回して貰い自国の貴族達に分配できたからこそ

押し返されていた勢力図を一気にこちら側に引き戻す事に成功した

勿論ロダニア陥落の戦果によって落ち目だった名声も取り戻した

その大きな借りゆえアルボー公爵はレイスからの要請に余程の事情が無い限り断れない

 

 

「分かった・・・ではマリア君とゲオルグは気絶したセリア君を穴蔵牢に放り込んどいてくれ、奴隷になってもまだ反抗する元気があるのなら、懲罰房で少々反省して貰わねばならん」

「ソフィアは退席したアンジェラとソフィに元主が反抗を企てたとして連帯責任として2人も穴倉牢へ入るようう通達を」

 

穴蔵牢は1メートル四方の狭い穴の中に違反者を閉じ込める懲罰房

勿論立つことはおろか足を伸ばす事すら出来ない

 

「それと穴倉牢に入れてから48時間経過したらセリア君に自分の体内にある術式を全て取り除くよう命じてくれ」

 

魔導士は体内から術式を全て取り除けば魔道具が無ければ一切魔法が使えなくなる

勿論この命令が実行されればセリアは名実ともに魔導士では無くなる

 

「アルボー公爵もしセリアが術式解除を断ったら?」

 

マリアは断った場合どうするかを尋ねた、先程の話で彼女に反抗する意志があるのなら

何かしらの理由をつけて断る事が予想される

 

「その時は姫様の書簡に書かれた絶対服従を違えたこととなり伯爵家の保護は消滅する、見せしめとしてまずはセリア君の母君の両腕を斬り落とせと伝令を出せ」

 

術式解除を断るなら先程のクリスティーナの書簡に書かれた命令に反するのは確実だから通信の魔道具を

使って伯爵家全体にセリアの不服従を伝える事も出来る

 

「父上セリアも穴倉牢に入れてしまうのですか?」

 

シャルルは自分の妾になる女をあんな不潔な場所に入れたくないのかそんな事を言い出した

 

「それがどうした?先程の話を聞く限り、彼女は奴隷になってもまだ我々に反抗する意志があるのだぞ?」

「だが実際に反逆した訳では無い以上処刑しては先の条約に違反する事になるが素行の悪い奴隷を懲罰房に入れるだけなら何の問題も無い」

 

(あの小娘のせいで半年近くも虜囚の身となったにも関わらず未だに気にかけているとは・・・・)

 

この後に及んでまだセリアを妾にしようとしているシャルルの考えにアルボー公爵は半ば呆れてる・・・・・・・

 

「他の人はどうなっても構いませんが、くれぐれもセリア君だけは殺さないで下さいね、彼女にはまだ使い道がありますので」

 

そうレイスは絶対にセリアだけは殺すなとくぎを刺した

 

「それは目や手足を潰すといった行為もするなと言う意味か?」

 

「父上!!」

 

「はい、治療不可能な怪我は負わせないで下さい」

 

「レイス殿には大きな借りがある・・・面倒だがまぁ良いだろう・・・・・・」

 

「ありがとうございます」

 

そうレイスはアルボー公爵へ頭を下げたのだった

 

(逃亡や反乱の恐れのある魔導士など両目を潰した方が面倒な心配も無くなって良いのだがな・・・・・)

 

魔封じの枷も隷属の首輪も万能ではない、魔道具である以上壊れる可能性と言うのは常につきまとう

彼女を拘束しておくだけで貴重な隠れ家の屋敷と優秀な部下をずっと監視として使い続けねばならない

そもそもこの状況下ですらまだ反抗するつもりの女など

いつ寝首をかかれるか分からなくて五体満足な体で息子の妾になど到底出来ないのだが・・・・・

 

その点目を潰すのは非常に効果的だ、一度潰せば絶対治る事が無い上に目が見えなければ人間は

家の中を歩くことすら満足に出来なくなる

逃亡や反乱は先程のセリアの自白同様計画性が重要になるが、目が見えなければ計画の立てようも無い

 

 

「それともう一つお願いがあるのですがアルボー公爵、ガルアーク王国へレストラシオン降伏の旨を伝える伝令の任ですが私に行かせて頂いても宜しいですか?」

 

そうレイスはアルボー公爵に提案した

 

「伝令に行くのは構わんがハッキリ言って命の保証は出来んぞ?」

 

そうアルボー公爵はハッキリ告げた

こっちが伝令に来たセリアを拉致したんだから

こちらの伝令だって相手に拉致されたり殺される可能性は十分にある

 

「構いませんよ、勇者であるレンジさんと一緒に行きますのでもし向こうから襲ってきたらそのまま逃げてきますよ」

 

(ふむ・・・・・・・・伝令が上手くいけばそれでよし、もし仮に戦いになってもプロキシア帝国とガルアーク王国との戦いだから別にこちらには損は無いむしろ得と見て良い、それにレイス殿が伝令なら向こうへの強い牽制にもなる)

 

そしてレイス側からの依頼である以上、最悪彼が死んでも責任を取る必要は無い

レイスの思惑が何にあるか不明なのは不気味だが

どう転んでもこちらに損失が無い以上断る理由は無い・・・・・・・・か

 

「レイス殿、殺されても責任は取れないが、それでも構わないと言うならそなたに伝令の任を任せよう」

 

「ありがとうございます、アルボー公爵」

 

(ふう第一関門クリアとにかく人型精霊とリオさんがここに乗り込んでくる前にガルアーク王国に出向いて話し合いを済ませないといけませんからね)

 

超越者となったあの2人・・・ソラを含めれば3人はどんな手段を用いても倒す事が出来ない以上

交渉によって撤退させる以外方法は無いその為のカードが今のセリアだ

 

(仮面が後いくつあるか分かりませんが私とアルボー公爵を殺すだけなら1枚あれば十分ですからね、殺される前に交渉するに限る)

 

「それとレイス殿伝令から戻って来てからで良いからセリア君に≪探知魔法≫ディテクション≫をかけて体内から全ての術式が取り除かれたか確認して貰って良いかな?」

 

「勿論です、お安い御用ですよ」

 

そうレイスはほくそ笑んだ

 

通常1人の人間を拘束するのに術式の全解除は行われない、解除も手間がかかるし

再度術式契約するのにも手間がかかる

 

しかし奴隷として使役する場合、体内の術式の全解除は割と一般的だったりもする

かつてのラティーファもユグノー公爵の暗殺者として使役されていた時

≪身体強化魔法≫フィジカルエンチャント≫以外の魔法が一切扱えなかったがこれは別に彼女が

他の術式契約に全て失敗していたからでは無く意図的に他の魔法を習得させて貰えなかったからだ

複数の魔法が使えるとそれらを組み合わせて脱走や反逆に使われるケースが多々あるからだ

 

先程の反抗を企てていると言う話を聞いた時点でアルボー公爵の中で

セリアの使い道は高い魔道の才を持つ子供を産ませる事だけ

もう二度と魔導士としても研究者としても働かせるつもりは無い

 

ハッキリ言えば子供を産む機能以外を残しておく必要が無いと思っている

そしてセリアの子は父親が誰だか分からない方が都合が良い、

奴隷の母と父親不明の子供なら問答無用で奴隷に出来るし

セリアの子供がどんな手柄を立てても父親がその手柄を自分の物として騒ぎ立てる事が無いからだ

 

(シャルルの妾として子供を産ませた後で母子共々反逆でもされたら目も当てられないしな)

 

アルボー公爵はそう考えセリアを穴倉牢へ入れたのだ

あそこに一度入ると1か月近く体に臭いが残るそんな臭い女などシャルルも抱く気など起きないだろう

その間に適当な男共の慰み者にしておけば

そんな穢れた女をシャルルも妾にする気も無くなるだろうと言う計算だ

特にセリアは既に21歳、女性が子供を産める期間は限られている以上

公務に忙しいシャルル専用の妾にしては最悪1人も子供が出来ない可能性すらある

 

(最もあの小娘の所有権をレイス殿に譲り渡してそれでロダニアでの借りを返した事にするが理想ではあるがな)

 

普通に考えれば幾ら優れた魔導士とはいえ、伯爵家の小娘1匹の身柄と

城塞都市+1000人の高位貴族達が所有している財との交換などどう考えても釣り合っていない

そう言う意味では最初はそれほど期待はしていなかったが、これまでのレイスの発言から見ても

実現出来るかもしれない手ごたえをアルボー公爵は感じた

 

 

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