sis (PSYCHO-PASS)   作:鈴夢

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3話

 

 

・・・・・・・・・・

 

目的地まで約1時間。

飽きることなく、そして止まることなく、2人の会話は続く。

 

 

「ねぇ、聞いていい?

舞白の過去について…」

 

「そりゃ、勿論。答えられることなら」

 

霜月はタピオカジュースを吸い、ドリンクホルダーに戻す。

そして、ずっと気になっていて、聞けなかったこと。

舞白のかつての親友、花橋咲良について。

 

「花橋咲良、あの子って結局どうなったの?」

 

アーカイブで確認する限り、確かになにかの事件に巻き込まれたことは間違いない。父、母、弟、全員が行方不明扱いとなっており、そして花橋咲良もその対象者。

未解決事件として扱われ、今現在その話を持ち出すものも少なくなった。

 

大手ドローン企業の花橋コーポレーションは、咲良の父、花橋宍道代表の後釜として、現在は妹が実権を握り、運営されていた。

 

「咲良の事、知ってるの?」

 

「…まあ、一応。未解決事件ってなってるし、関わったのは旧一係。それに、舞白も被害者の1人でしょ?」

 

チラッと舞白の様子を見ると、無表情。

少し冷めたような瞳の奥底に、彼女は何を映しているのか。

 

その様子を見ると、霜月は眉を下げ、俯きがちに。

そして、とあることを口にした。

 

 

「私、花橋咲良に会ったことがあるの。」

 

「…美佳ちゃんが、咲良に?」

 

どこでそんな接点が?と驚いた顔を向ける。

 

すると、霜月はデバイスを操作すると、1枚の写真を映す。

見覚えのある部屋、そこで10人ほどの女の子達が楽しそうにピースをして、写真に収められていた。

 

その中にいるのは、あの咲良の姿。

そして、霜月の姿も見受けられる。

 

「これ、咲良の家のリビング…

…どういうこと?」

 

霜月は写真のとある人物を指さす。

ショートカットで知的な印象を放つ女の子。

 

「葛原沙月、当時桜霜学園の1年。私たちより学年は1つ下。

…花橋咲良の幼なじみよ。そして、とある事件に巻き込まれて命を落としてる」

 

桜霜学園、事件、幼なじみ…

 

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「「夏休み前くらいにさ、ニュースで、

…覚えてる?桜霜学園の行方不明事件…」」

 

「「…死んだって、

…幼なじみですごく仲が良かったの…」」

 

 

「「体がバラバラだったって…

…変な薬剤で体を固められて…」」

 

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そういえば過去、咲良が口にしていたこと。

 

幼なじみが殺された…

 

 

「大久保葦歌、川原崎加賀美、この2人は私の幼なじみ。

この2人も、葛原沙月と同じように殺されたの。」

 

一緒に写る人物たちをトントンと指で指していく。

"殺された"

 

その言葉に、舞白は眉を顰める。

 

「ちょっとした繋がりがあってね、私もその2人の幼なじみとして、家に招待されたことがあるの。花橋咲良だけは違う高校だったけど、みんな仲が良かった。」

 

「…そっか、それで面識があったんだ…」

 

デバイスの画像を閉じ、視線を外へと移す。

 

「花橋咲良。あの子、明るくて良い子だった。初対面の私にも接してくれて、きっともっと仲良くなれる、なんて思ってたの。」

 

そして、その矢先に行方不明。

一家全員が失踪、当時報道でも騒がれていた。

 

「あなたが巻き込まれた事件。

恐らくは、もう花橋咲良はこの世に居ない…そうでしょ?」

 

その事件は自分が助けられなかったと悔やんでいた事件だった。

体に取り付けられた爆発物。

その解除キーを最後の最後まで見つけられなかった。

 

そして、目の前で無惨にも破裂した咲良の体。

忘れられるわけがなかった。

 

「…うん、咲良はもうこの世に居ない。

家族も全員。殺されたの。」

 

「やっぱり、そうだったのね。」

 

親友を失った舞白。

そして同じく、霜月も大切な幼なじみを2人失っていた。

 

「全ての元凶は槙島聖護の仕業。あの男に、全て奪われたの」

 

ふと、舞白は自身の首元に触れる。

まるで全てを乗っ取るかのように、まだ舞白の中に生き続けていた男。首にとんでもないものを最後の最後に埋め込んで…

 

「舞白と狡噛慎也が追い掛けた、史上最悪の犯罪者。利用された、王陵璃華子。その男に、私の幼なじみも殺されたようなもの。」

 

接点が多い2人。

そしてまさか、自分の親友が霜月と会ったことがあるという事実に、不思議と互いに謎の縁を感じていた。

 

「まさか、こんな繋がりがあったなんてね。」

 

両手を組むと、舞白へ目を向ける。

 

「新疆ウイグルで出会って、それっきりの関係だと思ったけど。まさか外務省の捜査官として戻ってくるし、仕舞いには刑事課の監視官…」

 

"直感だが、霜月とはいいコンビになる"

 

以前の宜野座の言葉通りの状況に。

まるで分かりきったかのように言われた言葉に、気に入らない気持ちは若干ありつつも、決して悪くない相性。

 

そして大切な友人を失った境遇。

2人は自然と引き寄せられていた。

 

そして、やたら自分の身の回りのことをいつも聞いてくる霜月に、意地悪そうな笑みを向ける。

 

「美佳ちゃんって、そんなに私の事気になる?ちょっとは信頼してくれてる証?」

 

「やめてよ、その言い方…、なんか嫌」

 

「へへへっ、かわいい〜

美佳ちゃんて、ツンケンしてるのに、実は可愛いところあるよね?」

 

「……っ」

 

「大丈夫大丈夫!誰にも言わないから!

あ、写真撮っとこ〜

…髪の毛も今日は下ろしてるし、可愛いスカートも履いててレア…」

 

必死に照れている霜月の横顔を写真に収めようと、デバイスを向ける。

 

「あんた絶対その写真、宜野座さんとかに見せるでしょ?」

 

「え?何で?」

 

「何で!?ってとぼけないで!

この前だって、あんたの家で飲んだ時の写真、宜野座さん知ってたんだから!」

 

寄って顔を赤くした、普段絶対見られない霜月の抜けきった表情。そしてその隣でピースする舞白のツーショット写真。

 

ついこの前、仕事中の車内で

宜野座に突っ込まれたばかりだった。

 

「あぁ、あれは見せたんじゃなくて、デバイスで表示してたのを見られたの、だからワザトジャナイヨ??」

 

明らかに、意図していたと決まっていたような発言に口を尖らせる。

それに対抗しようと、霜月も言葉を発す。

 

「そういえば、あんた、私知ってるんだから!

宜野座さんの部屋に出入りしてるの、やっぱり付き合ってるんでしょ?」

 

「えー?どうだろう〜、付き合ってるのかな?」

 

意外と呑気な返答に、ガクッと首を落とす。

 

「いや…、ていうかおかしいでしょ?そうじゃないと。」

 

「まあまあ、その話は秘密ね?

仕事はちゃんとしてるし、問題ないでしょ?」

 

仕事では一切そんな"風"には見えない2人。

正直、一係に舞白が来た時はどうなる事か案じていたが、きちんと仕事は仕事で監視官、執行官という立場を弁えている2人。

 

少しは突っ込んでやりたいと、密かに霜月は考えていたのに、そのような隙は一切見せない関係に、少しモヤッとしていた様子。

 

「…でも、この先どうする訳?

外務省にまた戻れば、離れ離れになるのは確実でしょ?」

 

「うーん…そうだね。

…どうなるのかな〜」

 

笑みを浮かべていた舞白の表情が若干曇っていく。

 

まだ何か、誰にも言えないような何かを抱えてそうな瞳を、霜月は見逃さなかった。

しかし、そこまで入り込む事はまだ出来ない、そう考える。

 

 

「ていうか、私の話ばかりつまんない。

…ね?美佳ちゃんの話を聞かせてよ?恋愛でも私生活でも何でも!」

 

「私は何も無いわよ、聞いても何も出てこないわよ。」

 

「えー、絶対一つや二つ、何か面白い話あるでしょ?」

 

舞白はグイグイと霜月の腕を引っ張り、やたら自分のことは話さない霜月に口を尖らせる。

 

再び車内は、舞白を中心に騒ぎ声が響き渡っていた。

 

 

そして、車は目的地へと近づいていく。

 

 

 

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