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目的地まで約1時間。
飽きることなく、そして止まることなく、2人の会話は続く。
「ねぇ、聞いていい?
舞白の過去について…」
「そりゃ、勿論。答えられることなら」
霜月はタピオカジュースを吸い、ドリンクホルダーに戻す。
そして、ずっと気になっていて、聞けなかったこと。
舞白のかつての親友、花橋咲良について。
「花橋咲良、あの子って結局どうなったの?」
アーカイブで確認する限り、確かになにかの事件に巻き込まれたことは間違いない。父、母、弟、全員が行方不明扱いとなっており、そして花橋咲良もその対象者。
未解決事件として扱われ、今現在その話を持ち出すものも少なくなった。
大手ドローン企業の花橋コーポレーションは、咲良の父、花橋宍道代表の後釜として、現在は妹が実権を握り、運営されていた。
「咲良の事、知ってるの?」
「…まあ、一応。未解決事件ってなってるし、関わったのは旧一係。それに、舞白も被害者の1人でしょ?」
チラッと舞白の様子を見ると、無表情。
少し冷めたような瞳の奥底に、彼女は何を映しているのか。
その様子を見ると、霜月は眉を下げ、俯きがちに。
そして、とあることを口にした。
「私、花橋咲良に会ったことがあるの。」
「…美佳ちゃんが、咲良に?」
どこでそんな接点が?と驚いた顔を向ける。
すると、霜月はデバイスを操作すると、1枚の写真を映す。
見覚えのある部屋、そこで10人ほどの女の子達が楽しそうにピースをして、写真に収められていた。
その中にいるのは、あの咲良の姿。
そして、霜月の姿も見受けられる。
「これ、咲良の家のリビング…
…どういうこと?」
霜月は写真のとある人物を指さす。
ショートカットで知的な印象を放つ女の子。
「葛原沙月、当時桜霜学園の1年。私たちより学年は1つ下。
…花橋咲良の幼なじみよ。そして、とある事件に巻き込まれて命を落としてる」
桜霜学園、事件、幼なじみ…
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「「夏休み前くらいにさ、ニュースで、
…覚えてる?桜霜学園の行方不明事件…」」
「「…死んだって、
…幼なじみですごく仲が良かったの…」」
「「体がバラバラだったって…
…変な薬剤で体を固められて…」」
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そういえば過去、咲良が口にしていたこと。
幼なじみが殺された…
「大久保葦歌、川原崎加賀美、この2人は私の幼なじみ。
この2人も、葛原沙月と同じように殺されたの。」
一緒に写る人物たちをトントンと指で指していく。
"殺された"
その言葉に、舞白は眉を顰める。
「ちょっとした繋がりがあってね、私もその2人の幼なじみとして、家に招待されたことがあるの。花橋咲良だけは違う高校だったけど、みんな仲が良かった。」
「…そっか、それで面識があったんだ…」
デバイスの画像を閉じ、視線を外へと移す。
「花橋咲良。あの子、明るくて良い子だった。初対面の私にも接してくれて、きっともっと仲良くなれる、なんて思ってたの。」
そして、その矢先に行方不明。
一家全員が失踪、当時報道でも騒がれていた。
「あなたが巻き込まれた事件。
恐らくは、もう花橋咲良はこの世に居ない…そうでしょ?」
その事件は自分が助けられなかったと悔やんでいた事件だった。
体に取り付けられた爆発物。
その解除キーを最後の最後まで見つけられなかった。
そして、目の前で無惨にも破裂した咲良の体。
忘れられるわけがなかった。
「…うん、咲良はもうこの世に居ない。
家族も全員。殺されたの。」
「やっぱり、そうだったのね。」
親友を失った舞白。
そして同じく、霜月も大切な幼なじみを2人失っていた。
「全ての元凶は槙島聖護の仕業。あの男に、全て奪われたの」
ふと、舞白は自身の首元に触れる。
まるで全てを乗っ取るかのように、まだ舞白の中に生き続けていた男。首にとんでもないものを最後の最後に埋め込んで…
「舞白と狡噛慎也が追い掛けた、史上最悪の犯罪者。利用された、王陵璃華子。その男に、私の幼なじみも殺されたようなもの。」
接点が多い2人。
そしてまさか、自分の親友が霜月と会ったことがあるという事実に、不思議と互いに謎の縁を感じていた。
「まさか、こんな繋がりがあったなんてね。」
両手を組むと、舞白へ目を向ける。
「新疆ウイグルで出会って、それっきりの関係だと思ったけど。まさか外務省の捜査官として戻ってくるし、仕舞いには刑事課の監視官…」
"直感だが、霜月とはいいコンビになる"
以前の宜野座の言葉通りの状況に。
まるで分かりきったかのように言われた言葉に、気に入らない気持ちは若干ありつつも、決して悪くない相性。
そして大切な友人を失った境遇。
2人は自然と引き寄せられていた。
そして、やたら自分の身の回りのことをいつも聞いてくる霜月に、意地悪そうな笑みを向ける。
「美佳ちゃんって、そんなに私の事気になる?ちょっとは信頼してくれてる証?」
「やめてよ、その言い方…、なんか嫌」
「へへへっ、かわいい〜
美佳ちゃんて、ツンケンしてるのに、実は可愛いところあるよね?」
「……っ」
「大丈夫大丈夫!誰にも言わないから!
あ、写真撮っとこ〜
…髪の毛も今日は下ろしてるし、可愛いスカートも履いててレア…」
必死に照れている霜月の横顔を写真に収めようと、デバイスを向ける。
「あんた絶対その写真、宜野座さんとかに見せるでしょ?」
「え?何で?」
「何で!?ってとぼけないで!
この前だって、あんたの家で飲んだ時の写真、宜野座さん知ってたんだから!」
寄って顔を赤くした、普段絶対見られない霜月の抜けきった表情。そしてその隣でピースする舞白のツーショット写真。
ついこの前、仕事中の車内で
宜野座に突っ込まれたばかりだった。
「あぁ、あれは見せたんじゃなくて、デバイスで表示してたのを見られたの、だからワザトジャナイヨ??」
明らかに、意図していたと決まっていたような発言に口を尖らせる。
それに対抗しようと、霜月も言葉を発す。
「そういえば、あんた、私知ってるんだから!
宜野座さんの部屋に出入りしてるの、やっぱり付き合ってるんでしょ?」
「えー?どうだろう〜、付き合ってるのかな?」
意外と呑気な返答に、ガクッと首を落とす。
「いや…、ていうかおかしいでしょ?そうじゃないと。」
「まあまあ、その話は秘密ね?
仕事はちゃんとしてるし、問題ないでしょ?」
仕事では一切そんな"風"には見えない2人。
正直、一係に舞白が来た時はどうなる事か案じていたが、きちんと仕事は仕事で監視官、執行官という立場を弁えている2人。
少しは突っ込んでやりたいと、密かに霜月は考えていたのに、そのような隙は一切見せない関係に、少しモヤッとしていた様子。
「…でも、この先どうする訳?
外務省にまた戻れば、離れ離れになるのは確実でしょ?」
「うーん…そうだね。
…どうなるのかな〜」
笑みを浮かべていた舞白の表情が若干曇っていく。
まだ何か、誰にも言えないような何かを抱えてそうな瞳を、霜月は見逃さなかった。
しかし、そこまで入り込む事はまだ出来ない、そう考える。
「ていうか、私の話ばかりつまんない。
…ね?美佳ちゃんの話を聞かせてよ?恋愛でも私生活でも何でも!」
「私は何も無いわよ、聞いても何も出てこないわよ。」
「えー、絶対一つや二つ、何か面白い話あるでしょ?」
舞白はグイグイと霜月の腕を引っ張り、やたら自分のことは話さない霜月に口を尖らせる。
再び車内は、舞白を中心に騒ぎ声が響き渡っていた。
そして、車は目的地へと近づいていく。
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