黄昏と天秤の組曲   作:剣 紅夜

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【1ノ章―白刃のプレリュ―ド―】


2話 - 導かれた出会い -

 

 

 

『で、出れたー…』

 

 

ようやく洞窟の外に出れたヒカル。

ボロボロに土汚れた服、まともにご飯を食べられていなかったのかどことなく痩せたような気がした。そんな彼女の手には杖代わりにしているのか地面に刺さる金色の刃をした剣が…。

 

ふらふらなヒカルは体力の限界なのか、その場で足を止めてしまう。

無理もない、長く洞窟で彷徨いながら……召喚獣、ガイルナースことコウゲツとサーヴァント(使い魔)から魔法や戦闘の訓練を受けていたのだ。

 

久しぶりの外の空気を思いっきり吸い込んで、吐き出した。そして一気に疲れが出たのかバタ…とその場に倒れて寝息を立て始めた。

 

 

『ぷきゅー…きゅー…』

 

―「ああ、もう、マスター!また服が汚れてしまいますよ!……もう汚れてますけども。はぁ…」―

 

 

剣から声が聞こえ、金色の光を放つと、剣の形をしていた光はだんだん人の姿になる。

光が止むと、そこにいたのは白い衣服纏い後ろ髪を、大きな黒いリボンでポニーテールに結えている15、6歳ほどの少女がいた。

 

 

「マスター。マスターヒカル。起きてください」

 

 

ヒカルの身体を揺すり起こそうとしたが。仮面の鼻あたりからプワー…と鼻ちょうちんが出来たので完全に熟睡しているのが見て分かる。

ため息をついて彼女はヒカルを起こすのを諦め、背中に背負い歩き始める。

 

 

―〔流石のあなたでもため息ものですか?〕―

 

 

ヒカルの星型のペンダント…淡い紫色のガラスがはめ込まれた部分からコウゲツの声が。

 

 

「当然ですよ。人型の姿になれたのは嬉しいことでしたが、まさかこんな子どものお守りとは……サーヴァント(使い魔)も楽ではないのですね」

 

―〔はっはっはっ!その割には楽しそうに見えますがね〕―

 

「ええ、とても楽しいですよ。こんなことは産まれてから初めてですし。……それに、主を持つのも……出会えたのは、必然なのでしょうね…あなたも、私も…ヒカルに出会えたのは」

 

―〔運命とは、わからんものですからな〕―

 

 

そんな会話をしていると『ふえ?』とヒカルがマヌケな声を上げる。

 

 

「あ、すみません。起こしましたか?」

 

『ううん…大丈夫だよ、アルトリア。きゅ……?』

 

 

スンスン、と鼻を鳴らすヒカルに少女ーアルトリアも釣られて鼻を鳴らす。

鼻腔に感じる潮の香りに、歩を進めるとそこには海が広がっていた。

 

 

『ここ、フォンティーナだよね?』

 

「はい。洞窟もフォンティーナへ通じる道を選んで来ましたから」

 

 

クラントールから洞窟を使ってヒカルは再びフォンティーナの【銀の森】を目指していたが、感じる潮の匂いにヒカルは首を傾げた。

 

 

『なにこれ?』

 

 

行った先に見えた海にヒカルは首を傾げた。

アルトリアの背から降りて、海をまじまじと見た。

 

 

「海を、ご存知ないのですか?」

 

『んー…んー?よくわからないけど…多分、ボク知ってると思う』

 

 

やってくる小さな波がヒカルの立っていた場所へ海水を押してくる。

足首まで海水が押し寄せ足を濡らす。

冷たい海水にヒカルはブルリと身体を震わせ、驚いて後ろへ下がった。

 

 

『冷たい…』

 

「だと思いました」

 

 

 

 

 

〔ふぅ!〕

 

 

聞き覚えのある鳴き声にヒカルは反応してそちらを向いた。

そこにはケフィアがいて、その隣にはアルヴィンの妹であるアルティナが。

 

 

「あなた、もしかして…ヒカル?」

 

『あ、アルティナお姉さん。久しぶり』

 

 

右手を上げてアルティナに挨拶するヒカルだったが、慌ててヒカルのそばへ駆け寄ってきたアルティナはヒカルの両肩を掴んで身体を揺らした。

 

 

「久しぶりって!勝手に2週間もどこへ行っていたのよ!あの後兄さんと私であちこち探し回ったのよ!?森には危険な毒草とかもきのみとかも動物とか魔物とかもいるっていうのに!」

 

『きゅ…』

 

 

まるで家出した子どももしくは妹を叱り付ける保護者そのものの口調でヒカルに怒るアルティナ。

ヒカルも心配させた事がわかったのか、シュン…と顔を俯かせて『ごめんなさい…』と小さな声で謝った。

 

 

「よく見たら泥だらけじゃない。そこのあなた、この子に何かしたの?」

 

「何か、と言いますと?」

 

 

アルティナはヒカルを守るように抱きしめた。彼女の行動がよくわからないのかヒカルは顔を上げてアルティナの顔を見つめる。

 

アルティナは、アルトリアを睨みつけていた。その睨みが敵意と判断したアルトリアは先ほどまで百合の花のような微笑みを一変させ…無表情でアルティナを睨み返す。

 

 

「この子を襲っていたとか」

 

「ふふ…いったい何を根拠に?私がマスターを襲うなどと…」

 

 

クスクス笑うアルトリアにアルティナは【マスター】という単語に目を丸くした。

そのままヒカルを見る。口に出していないが、表情で(どういうこと?)と混乱している様子だ。

 

 

『アルトリアはボクのサーヴァント(使い魔)だよ』

 

「……えええ!?」

〔ふふぅ!?〕

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「誤解してごめんなさい…」

 

「いえいえ。まさかマスターを知る方とはこちらも存じなかったので、お互い様といたしましょう」

 

『ねえ、アルティナお姉さん。どうしてアルトリアがサーヴァント(使い魔)って、知った途端にすなおになったんだい?』

 

「だってちゃんと英霊として使役できているサーヴァントは…」

 

 

アルティナが説明しようとしたとき。

 

きゅぅううう…。

 

というマヌケな音がヒカルの腹から聞こえた。

それにヒカルは腹を両手で押さえて『きゅぅ…』とうずくまる。仮面のせいで顔色がわからないアルティナは腹痛でも起こしたのかと焦ったが…再度。

 

 

くぅううう…。

 

 

『うきゅう……お腹、すいた…』

 

「お腹が空いたのですね。無理もありません、洞窟の中ではまともな食事はできませんでしたから」

 

「ええ!?それを早く言いなさい!!ほら、行くわよ!ただでさえ小さいのにますます小さくなったらどうするの!」

 

 

アルティナがヒカルを抱き上げると歩いていた浜辺をUターンし、アルヴィンが待つ家へと向かおうとした。

が……。

 

 

〔ふぅ~!ふふぅ~!〕

 

 

ケフィアは何かに気づいたのか、全く違う方向へ飛んでいってしまう。

 

 

「ケフィア!?どこへ行くのよ!」

 

『あっち、何かあるみたいだね』

 

 

アルティナに抱き抱えられているヒカルはケフィアの飛んで行った方向を見る。

無理やりアルティナの腕から離れるとケフィアが飛んでいった方向へ走っていった。

 

 

「マスター!?」

 

「待って!ケフィアー!ヒカルー!」

 

 

ケフィアとヒカルを追って、アルトリアとアルティナも向かった。

 

向かった先に行くと、浜辺で倒れている16歳ほどの赤い髪の青年がいた。

 

ノースリーブの黒いシャツにズボンは黒いジャージ。腰にはジャージの上着と思われる白い服があり、袖を腰に巻きつけていた。

そしてなにより、彼のそばには氷の結晶型の鍔が付いた日本刀と、黒猫が…。

 

 

〔ふぅ!ふぅふぅふぅ~!〕

 

『お兄さん大丈夫かい?しっかりしなよ』

 

 

ヒカルは青年に駆け寄り、彼の身体を揺する。

 

 

「……」

 

 

反応がなく死んでいるのかと思い、ヒカルは彼の胸に耳を当てる。

微かに聞こえるトクン…トクン…という心臓の音にヒカルは生きていることに安心したのか安堵の息をついて耳を離した。

 

そこへアルティナとアルトリアがやってきた。

 

 

「これは……人間!?しかも武装しているわ……。どうして、こんなところに倒れているのかしら。それに、横にいるのは……猫?」

 

 

アルティナが青年を見たあと、アルトリアは彼の脈や体温を確かめ眉をしかめた。

 

 

「ひどく衰弱しています。このまま放置してしまうのは…」

 

『アルトリア、お兄さんのことを運べるかい?』

 

「わかりました」

 

 

即決で答え、アルトリアは青年を抱き抱え、落ちた刀をヒカルが持った。

 

 

〔ふぅふぅ~!〕

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいヒカル!森に他の種族を入れるわけには……」

 

『ボクは良くて、このお兄さんはダメなの?ダメなの?』

 

 

アルティナの方を見て聞くヒカル。もしこれが漫画なら、しゅん…という擬音が付いてもおかしくないほど、気配ではかなり落ち込んでいた。

『ねー…』と首を傾げながらアルティナをジッと見つめるヒカルにアルティナは顔を赤くする。

 

恐らくアルティナの脳内ではヒカルの顔はしょんぼりと目尻を下げてこちらを見ているのだろう…。ヒカルが仮面をつけているからこそ、そう言う風な捉え方をしてしまうの無理もない。

 

 

「っ~…そ、そんなしょんぼりしながら見ないで!仕草と相まって可愛いだけだから!!」

 

『きゅ?』

 

「とにかく、彼は私が運びます。あなたは彼を休めそうなところまで案内をお願いします」

 

 

そう言いアルトリアは青年を抱き抱えた状態から肩に担ぎ上げる。

 

 

『アルヴィンお兄さんなら治してくれるよ。ね、アルティナお姉さん』

 

「お、お姉さん……。こほん、そ、そうね。兄さんならなんとか…」

 

 

お姉さん呼びが嬉しいのか、若干アルティナの長い耳がぴくぴく動いたのは言うまでもなかろう。

アルティナは自分の兄なら、と考えたが、人間を治療するか…。そこが心配だった。

 

 

〔どうするかは、あなたたちの判断に任せるけどこちらとしては、助けてもらえるとありがたいわね……〕

 

 

トコトコとアルティナとヒカルの間に歩いてきた黒猫は2人を見てそう言った。

言葉を発した猫にアルティナが驚いている横で、ヒカルは確認のため名前を呼んだ。

 

 

『……リンリン?』

 

 

それに機嫌を良くしたのか黒猫―リンリンは尻尾を振る。

 

 

〔ふふふ、久しぶりね。ヒカル〕

 

『きゅ…』

 

 

嬉しそうに近づくリンリンにヒカルはビクッと怯えたように後ろに下がり、カタカタと震え始める。

 

 

〔?どうしたの?震えて…〕

 

『あ、あの人、いない?』

 

〔え?もしかして、彼女のこと?一緒ではないわ〕

 

 

それを聞いてホッとしたのかヒカルは警戒をやめてリンリンに近づき頭を撫でた。

リンリンは頭に?を浮かべながら大人しく撫でられる。

 

 

―「なんだ、この子どもと知り合いなのか?」―

 

『きゅ!?』

 

 

持っていた青年の持ち物である聞こえた声にヒカルは驚き、落としてしまう。

砂浜の上に落ち音は立てなかったがドス…という思い音が響く。

 

 

―「こら落とすな!」―

 

 

また刀から聞こえた声にヒカルは反射的に『ご、ごめんなさい』と謝った。

 

 

「剣が言葉を…」

 

 

青年を担いでいるアルトリアは目を丸くして刀を見つめた。

アルティナはすぐに刀の近くにいるヒカルを抱き上げた。

 

 

「あなた、何者!?まさか、ドラゴニア帝国の手先!?」

 

 

警戒するアルティナへアルトリアが「待ってください」と静止させる。

 

 

「霊刀・雪姫…で、間違いありませんか?」

 

―「ほう?私のことを知っているようだな。いかにも、我が名は霊刀・雪姫だ」―

 

「やはり。となると…彼は」

 

 

担いでいる青年の正体を察したアルトリアは眉をしかめる。

何故ここに彼が?というような表情だ。

 

わかっているアルトリアに対してヒカルはアルトリアへ聞いた。

 

 

『アルトリア、もしかして刀さんのこと知ってるの?』

 

「ええ、色ーと。確か…クラントール王国を守護し、闇を滅する霊刀・雪姫…ですよね?」

 

 

確認のため雪姫に聞くと「いかにも」と刀―ユキヒメから言葉が返ってきた。

 

 

『ん?ボクたちがいたところを守ってたの?』

 

 

クラントールと聞いてヒカルは首を傾げながらアルトリアへ聞き返す。

もちろんそんな言葉をアルティナが聞き逃すはずがなかった。

 

 

「ええ?!」

 

 

今まで姿を消していた2週間。

船で何日もかかるクラントール王国にヒカルはいたというのだ、驚愕するのも無理もない。

 

 

「そうですね。ですがあれは地下でコウゲツは恐らく彼女が使い手を決めたのを知らないかと」

 

『そっか、コウゲツが知らないなら仕方ないのかな?あ、お兄さんを休ませてあげないとだよね?だよね?ね、アルティナお姉さん』

 

またアルティナは悩んだがヒカルにジッと見られ続け…流石に折れたのか「わ、わかったわ…連れていきましょう…」と答えた。

 

 

〔ありがとう!これでようやく一安心ね…〕

 

 

アルティナの返答を聞いてリンリンはホッと安堵の息をついた。

 

 

―「レイジ!おいレイジ!聞こえるか?もう大丈夫だぞ、おい!レイジ!」―

 

 

気を失っている青年―レイジへユキヒメは元気付けるように声を上げながらその刀身を青白く光らせた。

 

アルティナはヒカルが落としてしまった雪姫を拾い、ヒカルを抱え直すと先導して歩き始める。

 

 

『……ボク歩けるよ?歩けるよ?』

 

「2回も同じこと言わないの。また勝手にどこか行かないように抱っこしてるの」

 

『うきゅぅ…』

 

 

何も言えないヒカルは落ちないようにアルティナに抱きついてそのまま運ばれた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

アルティナとアルヴィンの自宅へ戻って、ヒカルとアルトリアの登場、そしてレイジを見てアルヴィンは驚いたが…訳を聞き仕方なくレイジの治療をアルヴィンは始めた。

かなり渋ーに…。

 

 

「ふむ、体温が低下しているくらいで目立った外傷はあまり見当たらないが…これはドラゴンから攻撃を受けた傷だな」

 

 

そう言いアルヴィンはレイジの打撲傷を見て言った。

 

 

―「ああ、あちら側にまさかドラゴンを使役する召喚士がいたとは思わなくてな。サーヴァント(使い魔)相手ならまだしも、流石のバカもドラゴン相手には太刀打ちができなかった」―

 

〔そもそも、ドラゴンを使役できる召喚士なんてまずいないわ。それだけ強い魔力を持った〕

 

 

ドラゴンを使役する召喚士。

それを聞きヒカルは黙り込んだ。

そんな主に気づいたのかアルトリアは俯いたヒカルの顔を覗き込む。

 

 

「マスター?」

 

『きゅ…なんでもないよアルトリア』

 

 

顔を上げてそう言った後、ヒカルは背負っていたリュックを床に置いてリュックの口を開くなり手を突っ込みゴソゴソと漁り始める。

 

 

『ねえアルヴィンお兄さん』

 

「なんだ?」

 

『この薬草、いっぱい摘んできたからこのお兄さんに使えないかな、使えないかな』

 

 

リュックから満月草を取り出しアルヴィンに見せた。

薄く淡い金色の輝きを見せる満月草にアルヴィンは目を見開いた。

 

 

「それは、満月草か?!本当に見つけてきたのか…」

 

『うん、ノーム(土の精霊)さんにゴロゴロされた先にあったんだ』

 

「ゴロゴロされた先って……」

 

『ゴロゴロされたはゴロゴロされただよ。いきなり穴の中に落とされちゃったんだ』

 

 

呆れてるアルティナにヒカルは言い返した。

ヒカルから満月草を受け取りアルヴィンはそれを眺め「確かに本物だな」と言い、調合する為薬学に関する本だろうものを本棚から取り出した。

それらを持ち調合する為別室へ移動して行った。

 

カチャカチャとアルヴィンがすり鉢を使って調合する音が聞こえてくる中、アルティナが「さて…」とヒカルを見た。

 

 

「ヒカル、浜辺の続きを教えてあげる」

 

 

そう言いながらヒカルの頭を撫でるアルティナへヒカルは中断させていた話しの内容を思い出す。

 

 

『サーヴァントのこと?』

 

「ええ、そうよ。アルトリアはそこの人間…えっと、レイジだったかしら。彼の様子を見ていてもらえる?」

 

「構いませんよ」

 

 

アルティナは羊皮紙と羽ペン、インクを取り出し机へ置くとヒカルにサーヴァント(使い魔)の事を教え始めた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

「いい?使い魔は2種類いるの。1つは妖精や精霊、魔物が英霊の名付けによってアルトリアみたいな使い魔、つまりサーヴァントになる場合。もう1つは名付けによって魔物を使役、こっちは使い魔と呼ばれるわ」

 

 

羊皮紙に書きながら説明をするアルティナにヒカルは話を聞きながら羊皮紙に書かれた内容を読み『ふーん』と返す。

 

 

『その2つの違いってなんだい?』

 

「簡単に言えば英霊の名前を付けたか付けないかの違いね」

 

 

別な羊皮紙を取り出し今度はヒカルのような子供でも分かるように絵を書き、説明を始める。

ケフィアのような精霊に英霊の名前を付けたることによってケフィアは強くなるという感じの簡単な絵だ。

 

 

「サーヴァント。つまり英霊の名前をつけられた妖精、精霊、魔物はそのサーヴァントとしての性質を持つことで進化した存在。アルトリアがそうね。アルトリアは、アーサー王から取った名前よね?」

 

『うん、でも女の人だから幼名を少し変えた感じにするといいってコウゲツが言ってた』

 

「ふふ、そうね。それによってアルトリアは元ーの精霊の姿からサーヴァント、アルトリアとしての性質を持ち進化、それが現在の彼女でありヒカルのサーヴァントということ。この先の難しい話はヒカルがもう少し大きくなったらね」

 

『む、ボクわかるよ!わかるよ!』

 

「はいはい。多分理解できないと思うからまた今度ね」

 

 

子ども扱いで理解が難しいと判断した範囲でアルティナが止めようとするのが嫌なのかヒカルは反論。

右手を握ってあげてブンブン上下に振りながら理解できると言うが、そんな反論もアルティナにとっては可愛いもので頭を撫でてヒカルを落ち着かせる。

 

腕を振るのをやめてヒカルは不服そうに『うきゅー…』と声を上げた。

 

ヒカルを見て慰めに来たのかケフィアまでヒカルの頭を小さな手で撫で始める。

 

 

〔ふふぅ〕

 

 

ケフィアを見てヒカルは首を傾げた。

 

 

『きゅ?ケフィアはアルヴィンお兄さんたちが付けた名前じゃないの?ケフィアは…お兄さんたちの使い魔?』

 

 

先ほどの話でただの名付けでは使い魔として使役できることを知ったヒカルはケフィアの存在に疑問を感じた。

ならば、ケフィアという名前を付けられているケフィアは使い魔なのか?

 

 

「違うわ。精霊や妖精たちは使い魔として使役することは出来ないの。彼らは自分の本当の名前があるの。それを教えるということは精霊たちに認められたということになる。認められる、つまり力を借りる許可が降りているようなものね」

 

 

ケフィアの頭を撫でながらアルティナは説明を続ける。

 

 

「といっても、許可されているのは名前を教えてあげた人に限るから、ケフィアの力を借りることができるのは、兄さんね」

 

〔ふふぅ~〕

 

『そうなんだ。じゃあ、アルトリアやコウゲツみたいに元ー名前があるのに英霊以外の名前をつけるのはよくなかったのかな』

 

 

ヒカルの発言にアルティナは耳を疑ったのか目を丸くして驚いた。

 

 

「え!?それ、まさか心名契約?!」

 

『きゅ?』

 

 

また新たな単語が現れてヒカルは首を傾げる。

アルティナは頭を抱え「ありえないわ…あれには魔力が……英霊の名付けにもかなりの魔力を取られるのに」と色ーブツブツ早口で言うアルティナにヒカルは困惑した。

 

 

『アルティナお姉さん、心名契約ってなんだい?』

 

―「心名契約とは、名前を持つ精霊や妖精の類に本来の名前以外に主人がつけた新たな名を持たせ、使役する契約だ。その契約をまたの名を守護騎士契約とも呼ぶ。が…お前まさかそれをそのサーヴァントに行使したわけか?」―

 

「ええ、そのまさかです」

 

 

ニコニコ笑うアルトリアにヒカルは首を傾げる。

 

 

『名前つけて欲しいっていってたから名前つけたんだけど、良くなかったのかい?』

 

 

アルトリアの方を見て言うヒカルに、アルトリアは近づいて後ろからヒカルを抱きしめた。

 

 

「いいえ?そんなことはありませんよ?あなたについていきたいからこそ、私たちはあなたに名前を付けて欲しかった、ただそれだけです」

 

『ふーん、ならいいのかな?いいのかな?』

 

「良くないわよ!ヒカル大丈夫なの?気持ち悪くなったりしてない?名前を付けた時」

 

『?ううん、なってないよ?なってないよ?』

 

「え…」

 

〔驚いたわ。サーヴァントの名付けだけでも相当の魔力を消費するのに…〕

 

 

驚きを隠しきれないアルティナとリンリンにヒカルはますます首を傾げた。

 

きゅぅうう…。

 

 

『うきゅ…』

 

 

ヒカルの腹の虫が鳴る。

そういえばレイジを見つける前まではこの家に帰宅次第なにか食べるつもりでいた。

レイジの事がありすっかり頭から抜けてしまっていたのか、今になってヒカルの身体が空腹を訴え始める。

 

 

『おなかすいたぁ…』

 

「あ…そういえばそうだったわね。うーん…ちょっと待っててね?」

 

 

アルティナが席を外した後もヒカルの腹の虫は治る事なく、きゅぅ…と鳴り響いた。

 

 

〔アルトリアが2週間洞窟を彷徨っていたとか言っていたけど、その間の食事はどうしていたの?〕

 

『んー……満月草とか、草から生えてた実とか、青いトカゲとか…赤いヘビとか…カエルとかズバってやってから焼いて食べてた。お腹空きすぎて虫も食べようとしたら、アルトリアに止められた』

 

〔……。…彼女たちが聞いたら卒倒ものね…〕

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

もふもふ、もふもふ、もふもふ。

という擬音が出るように頬いっぱいにパンを食べてるヒカルに、アルティナは疑問を持つ。

 

 

「あのお面付けたまま、どうやって食べてるのかしら…」

 

「私も2週間共にしていましたが、1番の謎です…」

 

『けぷ…』

 

 

仮面の口元の周りにパンの食べカスを付け、満足したのか『きゅー』とヒカルは声を上げた。

パーカーの袖で口元を拭おうとすると「こら!」とアルティナが声を上げ、持っていたハンカチでヒカルの口元を拭き始める。

 

 

『むきゅ』

 

「満足した?」

 

『うん!久しぶりにお腹いっぱい食べれたよ』

 

「ふふっ。ヒカルはまだまだ小さいんだからいっぱい食べないダメよ?」

 

〔ふぅ~ふふふぅ〕

 

 

アルティナからもケフィアからも頭を撫でられヒカルは首を傾げた。

 

 

「和んでいるところ悪いが、治療は終わったぞ」

 

―「助かる。あとはコイツがどれくらいすれば目を覚めるかだが…」―

 

「起きたとしてもすぐに動くことはできまい。こちらとしては起きてすぐ追い出すわけにもいかん」

 

「え、じゃあ兄さん…」

 

「仕方あるまい。目を覚ましてから森の見回りをすれば落ちた体力も回復していくだろう。回復次第出て行ってもらうがな」

 

〔そうさせてもらうわ。ありがとうアルヴィン〕

 

「構わないさ。お前がいるのを見て彼女たちが絡んでいるのだろう?だとすれば、この人間を助けない選択肢はない」

 

 

そう言いアルヴィンはため息をつき、軽くヒカルの頭を撫でる。

 

 

『きゅ?』

 

「ヒカルもしばらくいていいってことよ」

 

『そっか。でもボク…』

 

 

 

「うわぁあああああっ!」

 

ヒカルの声を遮るように眠っていたレイジが飛び起きた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

眠っていたソファから飛び起きたレイジに驚いてヒカルはビクリと身体を跳ねさせアルティナに抱きついた。

 

 

 

―「レイジ!」―

 

〔目を覚ましたようね。安心したわ…〕

 

 

レイジが目を覚ましたことにホッと安堵の息をユキヒメとリンリンは吐いた。

 

ユキヒメとリンリンの方を見た後レイジは辺りを見渡した。

 

 

「え?こ、ここは……」

 

 

見覚えのない場所。

いつの間にか傷も癒えていて、いったい何が起きたのか混乱しているレイジへアルヴィンが答えた。

 

 

「フォンティーナの銀の森にある我ーの家だ」

 

「全く、人間ってどうしてこう騒ーしいのかしら。目を覚ますときくらい静かに出来ないの?ヒカルが驚いたじゃない」

 

 

呆れながら未だにびっくりして固まっているヒカルの頭をアルティナは撫でながら言った。

 

 

「フォンティーナ?そんなところにまで流されちまったのか?……ていうか、誰だお前ら」

 

「私の名はアルヴィン。こっちは末妹のアルティナだ。お前が倒れているところをヒカルが見つけ運んだのだ」

 

「え!?そ、そうだったのか。それは、悪かった、ごめん。状況が飲み込めてなかったもんだから…」

 

 

声を上げて驚き、レイジはアルティナやアルトリアの方を見た。

 

 

「お礼を言わなきゃな。助けてくれて、ありがとう」

 

「いいわよそんなの。あと、お礼ならヒカルに言ってよね」

 

「そっか、確か見つけてくれた子が……えっと、君?」

 

 

レイジはアルティナの近くにいるアルトリアへ聞くがアルトリアは首を横に振る。

 

 

「私はアルトリア。あなたを助けたのはこちらの私のマスターです」

 

 

イスから降りてヒカルはレイジに近づいてレイジの身体に巻かれている包帯に触れる。

 

 

『お兄さん、大丈夫かい?』

 

「おう。あらためて、助けてくれてありがとな。……?」

 

 

レイジはヒカルの服装に首を傾げる。

 

 

「(これ…パーカー…だよな?こっちの世界にもパーカーなんてあるのか?そうじゃなくても、なんで糸目猫のお面なんかつけて…)」

 

『なんだい?お兄さん』

 

「いや、なんでもない」

 

 

ヒカルの服装に疑問を持ちながらもレイジはガシガシとヒカルの頭を撫でる。

 

 

「ま、体が元通りになるまでは、せいぜいここで養生していく事ね。野垂れ死にでもされたら寝覚めが悪いし」

 

 

ため息混じりにアルティナはレイジを見て忠告する。

 

 

「そうだな。薬が効いてすぐに起き上がれたとしても体力までは元には戻らないからな」

 

 

アルヴィンが「しばらく居るといい」と言うがそんなアルヴィンの言葉を申し訳なさそうにレイジは「ありがたいけど」と言い出し、アルティナたちは次の言葉に目を丸くする。

 

 

「そうノンビリもしてられない。オレ、もう行かないと」

 

「え?」

 

「は?」

 

「はい?」

 

 

何を言っているんだこの男は。

という心の声が聞こえるような反応をアルティナ、アルヴィン、アルトリアは見せた。

 

 

『お兄さん、どこにいくの?』

 

「友達が、オレの助けを待ってるんだ。急いで見つけ出さないと…。行こう!ユキヒメ!」

 

―「お、おい!?レイジ!?」―

 

「リンリンはここで待っててくれ、できるだけ早く戻ってくるからな。じゃあ、行ってくる!」

 

 

リンリンは出て行こうとするレイジを止めようとしたが、そんな声をかける前に雪姫を掴んでレイジは扉を開け外へ出て行った。

 

 

『……ボクも行く!』

 

「マスター!?」

 

「ちょ、待ちなさい!」

 

 

ヒカルを止めようと手を伸ばしたアルティナの腕を擦り抜けヒカルはレイジの後を追って外へ出て行ってしまう。

 

 

「待ってくださいマスター!」

 

「兄さん悪いけど留守をお願い!」

 

「構わない。早く行ってこい」

 

〔ふぅ!〕

 

 

ヒカルとレイジを追いかけてアルトリアと指輪型武装用のアーティストを指に嵌めてアルティナも外へ向かった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

『(お兄さんのあの目。何にも考えていない目をしてた!あのまま動いても動かなくなっちゃうよ!)』

 

 

走り続け、ヒカルは脳裏によぎるのは、目覚めなくなった母親の目に似ていたレイジを追いかける。

何も考えず行動し、道を誤り、目覚めなくなる。

 

嫌な寒気がヒカルの身体を震わせた。

もしかしたら、なんて怖い発想が頭の中を巡っていく。

 

 

 

「うぉりゃぁああ!!」

 

 

レイジの声が近くで聞こえ、ヒカルはハッとしてすぐさま走る向きを変え茂みの中に突っ込んだ。

 

ガサガサと茂みの草木をかき分けて行くと、息を荒くしながらもグリーンペーストの群れと遭遇し戦闘をしていたレイジの姿があった。

目覚めたばかりで体力も戻ってない身体で何体かは撃退できたと見えるが、体はフラフラだ。

 

 

「ハァッ……ハァッ……くそっ!!」

 

―「レイジ!無茶をするな!」―

 

「けど、早く行かないと、ローゼリンデが!」

 

 

隙を見せたレイジへ、グリーンペーストたちが一斉に飛びかかろうとした。

それを見てヒカルは咄嗟にレイジの前に出る。

 

 

「ヒカル!?」

 

―「バカモノ!下がれ!」―

 

 

深く息を吸い込み、ヒカルはバチバチと電気が走る塊を手のひらに生み出した。

 

 

『《ライトニング》!!』

 

 

魔法で生み出した塊が一直線上に雷光を放つ。グリーンペーストたちを巻き込み、そのまま森へ。

魔法が打ち込まれた後の惨状にレイジは目を丸くし口を開け唖然とした。

 

一直線に地面は焦げてしまっているが、所詮は未熟なヒカルが使った魔法だ。

森の草木は焦げてはいたが形は残っていた。

 

魔法を放った本人はと言うと、衝撃で体がよろめいたのか尻餅をつき、魔法を放った焦げ跡を見て…『うきゅ…』と怯んでいた。

 

 

「すげぇ…なんだ?今の魔法」

 

『は、はじめて使ったから、こんなのなんて知らなかったよ、知らなかったよ』

 

 

涙声になっているヒカルに気づいたのかレイジがヒカルをみると、仮面の目の部分から涙がポロポロ出ていた。

 

 

『どうしよ、どうしよぅ…』

 

「な、泣くなよ…ほら、誰だって失敗ってあるだろ?」

 

 

仮面の上から流れてる涙に疑問を持ちながらもレイジは膝をついてヒカルの頭をポンポンと撫でる。

 

ドシン…ドシン…。

重い足音が聞こえ、レイジはハッと立ち上がり雪姫を構えヒカルの前に出る。

 

何かが近づいてきている。

 

重い足音が聞こえて来る中、未だに姿を現さない。

レイジは気配を探るが分からない、冷や汗が額を伝い顎に移り…そのまま汗は地面に落ちる。

 

 

―グルルル…ガルルル…―

 

『きゅ?』

 

 

聞こえた唸り声にヒカルは後ろを振り返ると。

 

 

見たこともない黒い獣がいた。

目も鼻も耳もなく、ただ白い牙を剥き出しにした口があり、禍ーしい吐き気すら感じる気配を纏った四つ脚の獣がいた。

 

 

「ヒカル!!」

 

 

獣の牙がヒカルの眼前に迫った。

 

 

その時ヒカルには痛みではなく謎の浮遊感を感じた。

レイジが目にしたのは獣の上を飛んでいた…。

 

ヒカルを小脇に抱え、刀を持った銀髪の薄紫の着物を着た女性だった。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

黒い獣の背後に着地した女性。

彼女に気がつき黒い獣は獲物であるヒカルを見て飛びかかろうとした。

 

 

「危ない!」

 

 

レイジの声に気がつき女性は刀を腰帯にさしてある鞘に納めようとしており、レイジの方を向くと…にこりと笑う。

 

銀髪で赤い目をした女性。

その目はどこか吸い込まれそうな…何かを感じたが…。

 

―チン…

 

と、刀を納める音が響いた直後。

彼女の目の前で、レイジの目の前で…。

黒い獣は肉片へと姿を変えた。

 

ボト…ボト…ボト…と黒い獣だったソレは1つ1つが刀によって斬られており、あの一瞬で彼女は見えない速度で黒い獣へ幾つもの剣戟を与えていたのだろう。あの黒い獣にも分からない程に。

 

黒い獣の返り血が地面や木、草、花に飛び散った。

もちろん女性やレイジにも。小脇に抱えられたヒカルにもかかっていた。

そして、そんな光景を目にしたからこそ…起爆剤になった。

 

 

『ふえ…ふえ…!』

 

「あ、えっと…お、お願いヒカル、本気で泣かないで!」

 

 

女性が慌ててヒカルを地面に下ろすと頭を撫でたり抱きしめたりしてヒカルが泣かないようにあやそうとした。

 

が。

 

 

『ーーーーーーーっ!!』

 

 

叫び声にも似た泣き声が、いや泣き叫ぶ声が森の中を木霊した。

まるでマンドラゴラの叫びのような泣き声が。

 

 

「み、耳がぁああっ!!」

 

―「お、おいレイジどうした!?しっかりしろ!気を保て!!」―

 

 

雪姫を落としレイジは耳を両手で抑えながら地面に這いつくばってしまう。

大慌てなユキヒメは大声でレイジを応援する。

 

 

「ごめんヒカル!ごめんなさい!お願いだから泣き止んで!ね!」

 

 

両手で耳を塞ぎながら慌てて女性はヒカルを泣き止ませようとした。

泣きながらヒカルは彼女を見たが、両耳から血が出てきていた。

 

鼓膜が破れたらしい。

 

 

『ふぇええ!!血が出てるぅうう!!ボクやっぱり悪い子なんだぁああ!!』

 

「え、えっと、呪符!静寂(サイレンス)の、呪符!」

 

 

慌てて彼女は懐から取り出した札をヒカルのお面に貼り付けると途端に泣き声は止むがヒカルはまだ泣いていた。

 

 

「っ~…なんだよ今の…耳逝かれるかと思ったぜ」

 

―「あの子娘…無意識に声に魔力を乗せて超音波を放ったんだ。この姿である私にはただ大声で泣いてるだけだったからな」―

 

 

泣いてるヒカルを女性は抱きしめて落ち着くまで背中を優しく手で摩る。

だんだん落ち着いてきたのか、コテン…とヒカルは倒れそうになるが彼女が抱き抱える。

 

札を取るのを見てレイジが慌てて耳を塞ぐ。

 

 

「あ、大丈夫よ?ヒカルったら泣き疲れて寝ちゃったみたいだから」

 

「そ、そっすか。えっと、アンタは…」

 

 

何者か、レイジが聞こうとした瞬間。

 

 

「貴様ぁああああああああっ!!!」

 

 

怒声を発した金色の何かがやって来て黄金の剣が彼女へ向けられる。

が、すぐに帯刀していた刀を抜き受け止める。

 

互いの剣撃が衝撃波としてビリビリと肌に伝わってくる。

アルトリアは一度離れ女性を睨みつけた。

 

 

「危ないじゃない。ヒカルが怪我でもしたらどうするのよ」

 

「マスターを離せ!この醜女!」

 

「ほ~う?」

 

 

バチバチ、今度は衝撃波ではなく睨み合いの火花が。

アルティナも息を切らしながらやってきて。

 

 

「え…なに、この状況」

 

 

目を丸くしてアルティナは視界に入れた情報を整理しようとした。

 

焼け焦げた地面と焦げた草木

転がっている獣か何かの肉片やその血で染まった地面

近くには唖然としているレイジが血塗れでいて

もう一方では血塗れの女性が血がお面に付いているヒカルを抱き抱えていて

女性に対してアルトリアが金色の剣を持ち威嚇している。

 

 

「どういう状況よ、これ」

 

 

全くもってその通りである。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 

自体を整理するべくアオイと名乗る女性を警戒しつつも、アルヴィンとアルティナの自宅へ戻ることになった。

 

 

「つまり、あなたはある人物の使役する魔物を追ってここまで来たら、いきなり魔法が飛んできてそれを警戒した魔物がそちらへ向かった。その魔法を放ったのがヒカルで魔力を回復させるためヒカルを狙おうとした獣をあなたが倒した、でいいのかしら?」

 

「ふふ、まあそんなところね。アルヴィンにまさか彼女以外に妹さんがいたのが驚きだったけれど」

 

「私はそもそもあなたが山から降りているのが驚きなのですがね」

 

 

アオイはクスクス笑いながら呆れてため息を吐いているアルヴィン。

 

 

「ていうか、兄さん。知り合いだったの?」

 

「少しな。ある山の調査に行った際にワイバーンの群れから助けられた。それ以来アオイからはあの山のみで採れる薬草類で物ー交換を行なっている」

 

「あ、あの薬草類はそうやって仕入れていたのね…どうりで見たことのない薬草ばかり兄さんの部屋にあると思ったわ」

 

「ふふふ、アルヴィンは薬師としても才能はあるもの。そこで、その才能を見込んでお願いがある…と言う前に、ヒカルー、彼女へのお説教は終わった?」

 

 

アオイがヒカルの方を見るとアルトリアを床に正座で座らせてヒカルがずっとポコポコと怒りながらアルトリアを叩いていた。

 

 

『なんでアオイさんにひどいことしたの!めっ!アルトリアめっ!』

 

「し、知らなかったんですよ…」

 

『ひどいことも言ったでしょ!アオイさんも悪いところあるけどアルトリアも誤解で悪いことしたから謝ってね!』

 

「あぅう…」

 

 

一同してその光景に対し、微笑ましく見守っていたのは言うまでもない。

 

外からレイジが髪を濡らした状態で戻ってきた。

服は恐らくアルヴィンの借り物だろう服を着ていた。流石に返り血塗れで家に入れたくはなかった様でアルヴィンも服を貸した様だ。

 

因みに、アオイとヒカルに関してはアオイの魔法によって服についた血は消えていた。

 

外にある井戸水で血を流してきたレイジは2人に礼を言った。

 

 

「悪いアルティナ、アルヴィン。助かった」

 

「別にいいわよ。それで、アオイさんはこれからどうするんですか?」

 

「出来れば、ヒカルを連れて戻りたいけれど…」

 

 

アオイの言葉が聞こえたのかヒカルはビクリと身体を震わせて、アルトリアに抱きつき後ろに隠れる。

 

それにアオイはヒカルに近づき目線を合わせるため両膝をついた。

 

 

「ねえヒカル。勝手にいなくなった理由は深くは聞かないわ……でもね?半年間も連絡なしは良くないわ…あなたのことを心配している人がいるのよ」

 

『……いるわけないよ』

 

「……いるの」

 

『いないよ。みんな、ボクのことが嫌いだから』

 

 

それにアオイはため息をついた。

 

 

「ヒカルはどうするの?これから」

 

『ボクはまだここにいるよ。レイジお兄さんの見張りしたいなって』

 

「なんでオレの見張りなんだよ!」

 

『お母さんと同じ目をしてるからだよ』

 

「はあ?」

 

 

レイジが訳がわからないと呆れてヒカルを見るが、ヒカルはジッとレイジの方を向いていた。

 

横目でアオイはレイジを見て、目を細めた。

立ち上がり何か考え始める。

 

 

「よし。じゃあ、私もしばらくご厄介になろうかしら」

 

「ええ!?」

 

「構わないが。眠るところは限られるぞ」

 

「別に気にしないわ。その間、レイジ君やヒカルの鍛錬を見てあげるから」

 

「いいんスか!?」

 

〔アオイ…あなたまさか弾幕使わないでしょうね〕

 

「しないわよ。安心しなさい」

 

 

アオイの足元に来たリンリンは呆れながらそう言い、レイジの肩に乗り。

 

 

〔レイジ、一言だけ言っておくわ〕

 

「私からも言わせてもらおう」

 

「ん?なんだよ」

 

「〔死なないようにな/ね〕」

 

 

「へ?」

 

 

翌日。

アルヴィンとリンリンの言葉の意味を痛感するレイジなのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記録。

 

記録対象が勇者クリストフの血筋たら勇者レイジと接触。

そして心亡き者が操るハートレスと接触するも吸血姫、アオイによって救われる。

 

しかし、半年間活動を停止していた心亡き者が活動を開始したものと見られる。

が、対抗策としてアオイ自ら強化指導にあたる思われる。

 

 

彼女が目覚めてからの記録時間。

1年5ヶ月24日6時間25分30秒。

 

 

記録、続行。

 

 

 

 




次回
【1ノ章―白刃のプレリュ―ド―】

【3話】
― (悪夢)の夜 ―


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