ヒカリ…いいな…ココロ…いいな…
ぼくたちとおなじなのに、どうしてキミはモっているの?
ヒカリも、ココロも…どうして?
『わからない、そんなのボクわからない』
たすけて…たすけて…
ぼくたちもキミとオナジになりたい
ヒカリがほしい
ココロがほしい
『わからない…出来ないよ…』
黒く渦巻いた何かが取り囲むように下から現れる。
白く渦巻いた何かが取り囲むように上から現れる。
ドウシテ…ドウシテ…
ウラヤマシイ…ウラヤマシイ…
『やだ…やだぁ……助けて…助けて』
直後。
咆哮が聞こえた。
咆哮を聞き、渦巻いたモノたちは姿を消した。
-〔大丈夫だよ…キミにはボクがいるから…。もし、本当にどうしようもない時…ボクの力を貸してあげる。大丈夫、ボクはキミのココロにいるよ、いるよ?〕-
『キミ…だれ?だれなの?』
-〔また会いに行くよ。大丈夫、大丈夫!ボクじゃなくても、キミを守ってくれるドラゴンがいるから!呼んであげてね、その時は呼んであげて!〕-
そこでヒカルの意識は薄れていった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
朝、レイジたちは川辺付近に来ていた。
「良かった。増水しているけど、このくらいなら何もしなくてもすみそうね」
〔フゥ!〕
「夜のうちに止んだんだろうな、雨。よかったよかった」
―「昨晩といえば…。ヒカル、昨晩はどうしたんだ?こちらの部屋まで声が聞こえたぞ?」―
どうやら嵐の夜、ヒカルが夜泣きした声がレイジたちの眠っていた部屋まで聞こえていたようだ。
―「いや、覚えていないのならそれでいい」―
『?』
首を傾げるヒカルを真似て
地面についた真新しい足跡にアルヴィンは顔をしかめた。
「どうしたの?」とアオイもアルヴィンの隣へやってきて、足跡を見る。
「ケンタウロスの?」
「ああ、靴の足跡もあるが、人種はわからない。この足跡はルーンベールのケンタウロスたちのものか?それとも…ドラゴニアの…しかし足跡が異なるな…」
「またなの?ルーンベールかドラゴニア…もしくは両方に決まっているわ兄さん。人間たちがフォンティーナに攻めてこようとしているのよ!ドラゴニア帝国の侵攻のドサクサに紛れてね!もしくはルーンベールがドラゴニア帝国と同盟でも組んだに違いないわ!」
アルティナがアルヴィンにそう言うが、「断定は出来ない」とアルティナの意見をアルヴィンはバッサリ切り捨てる。
〔みぃ…みみみぃ〕
「?」
アルトリアへ
それを聞いて何度も頷き、ヒカルを呼んだ。
「マスター」
『なーに?』
「魔法の練習をしましょう」
そう言いアルトリアは濁流が流れている川から泥で濁りきった水を魔力を使って固め、手のひらサイズの泥水の塊をヒカルに手渡した。
「
『え゛……。ボク、どうすればいいのかわからないよ?』
手渡された固まっている泥水をぽにょ、ぽにょ…と弾ませているヒカルにアルトリアは「直感でどうにかなりますとも!」とキラキラした目でヒカルを見る。
それにヒカルは『えー…』と声を上げ、真っ白になった。
悩み出すヒカルに
1匹がヒカルの頭の上に乗り、もう1匹が肩に乗り、耳元で〔みぃ、みみぃ〕とヒカルに話しかける。
『えっと…こう、かな?《ピュリフィケーション》!』
ヒカルが魔法を詠唱すると、泥水はボコボコと気泡を出しだんだんゆっくりとだが泥水特有の土気色が消えていき、透明な水へと変わった。
『できたー!』
〔みみぃ♪〕
「その調子でどんどん行きますよ、マスター!」
『…きゅ?』
アルトリアの手には先ほどと同じように魔力で固めた泥水の塊が。
「じゃあヒカルはそのまま魔法の鍛錬。レイジは私と鍛錬しましょうか、ついでにアルティナも」
「私も?!」
「程々にな、アオイ」
「兄さん!?」
アルティナまでアオイが監督する鍛錬に参加する羽目になり、アルヴィンは助け舟を出さずケンタウロスの足跡を見て考え事をしていた。
「流石に、アオイさんのからかいや無茶振りには慣れましたよ…」
―「怖いものだな、慣れというのは」―
後ろではアルトリアが用意した泥水の塊へ…
『《ピュリフィケーション》!《ピュリフィケーション》!《ピュリフィケーション》!』
と、泥水に触れて浄化魔法を連発するヒカルがいて、その後ろでは水を美味しそうに飲んでいる
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
『きゅぅ~…』
「お疲れ様です、マスター」
アルトリアに膝枕をしてもらい、疲れたのかぐるぐるとヒカルの仮面の目が回っていた。
その一方でレイジとアルティナもある意味で死屍累々となっていた。
「ふーん?中々やるじゃないアルティナ」
「当然。
「あなたが鍛えていたのなら納得ね、アルヴィン」
足跡を見て未だに考え事をしているアルヴィンがアオイへそう告げるとアオイはクスクス笑う。
アルティナはゆっくり起き上がって、未だに地面の上で仰向けでバテているレイジへ謝罪した。
「レイジ…ごめんなさい。むしろ尊敬するわ、あんな鍛錬を毎日受けていたなんて…」
「アルティナも、すげぇよ…。ハァ…ハァ…アオイさんの、鍛錬に…少し追いつけてたし…さ…」
「さて、もう一回やりましょうか♪」
「「勘弁してください!!」」
アルティナとレイジが2人揃ってアオイに言った。
不意に、アルヴィンはまたヒカルを見る。ヒカルの周りには倒れているヒカルを心配している精霊たちが集まってきていた。
「ドラゴニア帝国の影響で、この森にもやってくる闇の力に対して怯えていた精霊や妖精たちが、なぜあの子の近くでは姿を現すのだ?」
―「ヒカルが
「ただの
「ヒカルは人間よ?今はまだね」
アオイの「今はまだ」その言葉に疑問を持ち質問しようとした矢先、突然精霊たちが怯え始め森の中へ姿を消してしまった。
『あれ、みんな?』
突然いなくなった精霊たちにヒカルは首を傾げるが、アルトリアは何かを察したのか立ち上がり武器を持った。
アルトリアの様子にレイジが「どうした?」と聞いている時、ケフィアが慌ててやってきた。
〔フゥ!フゥフフゥ!〕
「ケンタウロスたちが?!」
「噂をしていれば、ね」
アオイはため息をつき、腰に帯刀していた刀に触れる。
レイジも起き上がりユキヒメを担いだ。
「行こう!」
『ボクも!』
「え、ヒカルはダメよ!危ないわ!」
自分も行くと名乗りあげるヒカルにアルティナはダメだと止めた。
「アルトリア、ヒカルを…」
アルトリアは頷き、ヒカルの腕を掴もうとしたが…。
『レム!やめて!』
「っ!」
恐らくアルトリアの心名なのだろう名前を呼ぶとアルトリアは固まり隙ができた瞬間ヒカルは走って行った。
「ちょっと、ヒカル!止まりなさい!!」
〔フゥ!フフフゥ!〕
「どうやら別の方向にもいる様だな。3手に分かれよう、ヒカルならアルトリアがいる、問題はなかろう」
「でも!」
「片方は私1人で対処するわ、アルヴィンはレイジと、アルティナはアルトリアとヒカルを追って。そうすれば問題はないでしょう?」
アオイが指示を出し「一刻も争うわ」と語る。それに一同は頷き3手に分かれて行動した。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「マスター!」
「待ちなさいヒカル!」
アルトリアとアルティナは走りヒカルを見つけた。
まだ走って向かっているヒカルと合流し、アルティナはヒカルの腕を掴んだ。
『やー!』
「『やー!』じゃないの!あなたはまだ小さいの!だから私たちに任せて!」
腕を振ってアルティナから逃げようとするヒカルに対してアルティナは小さなヒカルを戦わせるわけにはいかないと言い始める。
『むぅ、ちっこくない!』
「小さい子どもに戦いなんてさせられないわ!」
『むきゅ……レム!!』
ヒカルの指示にアルトリアはため息を付いた。
「心名で呼ばれると、逆らえないというのは難儀ですね…守護騎士って。ですが、アルティナ、残念ですが…来てしまいましたよ?」
そう言いアルトリアの視線の先には黒い鎧に黒い盾…黒い槍、そして何よりその種族の姿はケンタウロスだった。
「こんな時に!」
アルティナはヒカルの前に出て武装型アーティファクトを発動させ、その手に水色の弓を持ち矢筒から矢を取り出して弓を引き、構える。
「ヒカル!私が引きつけるから逃げなさい!」
『やだ!』
「ワガママ言っている場合じゃないの!分かって!」
近づいてくるケンタウロスーーダークナイトへアルティナは矢を放つ。
本気の攻撃ではなく威嚇射撃。
しかし相手は止まらない。
焦りの表情がアルティナに現れる。
いくら1人とはいえヒカルを守りながら戦うのは遠距離攻撃を得意とするアルティナには不利だった。
アルトリアも武器を構えるが、彼女はダークナイトの相手よりもヒカルの護衛を最優先させてしまう。
もう一度矢を放ち、今度は的確に鎧の隙間へ矢を撃ち込む。
確実に当たった、しかし止まらない。
「どうして?!」
『痛みを感じない魔法でもかかってるのかな…。痛みが感じられないなんて、なんか可哀想そう……一撃で、どうにかできないかな、できないかな』
「早く逃げなさい!あなたはまだまだ小さいし子どもなのよ!」
『……アルティナお姉さんくらいなら戦ってもいいの?』
「そういう問題じゃ!」
アルティナが後ろにいるヒカルを見た。すると、ヒカルは『レム』とアルトリアを心名で呼んだ。
アルトリアは頷き、彼女の身体は光に包まれ、その場には金色に光る剣が…。
「あ、アルトリアが、剣に!?」
ヒカルはその剣を手に取る。
『術式解放!React Module《Assassin》!』
ヒカルの足元には紫色の星の術式魔法陣が現れ、首から提げていたペンダントも紫色に光を放つ。
光を金色の剣で払うと、そこにはヒカルがいた。
糸目猫のお面を見てアルティナはヒカルだと確信できた。
黒の帽子を被り、首には紫色のマフラー。
紫色の長袖ジャージに黒短パン、黒い膝下ブーツ。
ヒカルの服装は変わっていたが、なによりアルティナが1番唖然したことは…背丈だ。
『これだけ大きくなれば問題はないよね?』
「ちょ、と…待って?ヒカル、なの?」
『うん、ヒカルだよー』
手をひらひらと振るヒカルにアルティナは頭が追いついていないのか混乱していた。
6,7歳ほどの背丈だったヒカルが、16,17歳ほどの見た目に変わっていたからだ。
―「来ます」―
剣から聞こえたアルトリアの声に2人はダークナイトの方を向いた。
蹄を鳴らし、手に持つ槍をこちらに向け走ってくる。
『いっくぞー!』
「ちょ、ちょっとヒカル!」
アルティナの静止も聞かずヒカルは走り武器を構える。
スゥウウ…とヒカルは息を吸い込み、右足を強く前に出す。
ビシ…と、地面には亀裂が走りヒカルはその場から高く飛ぶ。
ダークナイトはヒカルの姿を捉えるが、ヒカルは既に頭上にいた。
槍を構え串刺しにしようとしたが、ヒカルは両手で剣を持ち、自身の頭上まで振り上げ…
『《
振り下ろした。
まるで金色の月のような輝きを見せる刃から斬撃が放たれる。
文字通り、斬撃が、放たれた。
三日月にも似た斬撃がダークナイトの首と胴体を切り離した。
クルリと身体を捻らせたヒカルはダークナイトの背後に着地した。
胴体と首を切り離されたダークナイトはグラリとそのまま地面に倒れる。
「うそ…」
『………』
ヒカルはジッとダークナイトの亡骸を見て、ペコリと頭を下げた。
『無事、アストラル界へ行けますように。成仏してください』
開いた口が塞がらず唖然とするアルティナの傍へヒカルは小走りで向かった。
『アルティナお姉さん。あの人、埋めてもいいかい?』
「その、必要はないわ。なぜかケンタウロス達の死体は姿を消すのよ。ほら」
『え?』
後ろを振り返れば、そこには血で汚れた地面しかなかった。
ヒカルが倒したダークナイトの死体が消えていた。
『なんで?』
「わからないわ。ただ言えるのは、闇の力を使う者の末路だって、兄さんは言っていたわ」
―「闇に飲み込まれていた者の魂は、闇に帰ってしまうと言う事でしょうか」―
『なんか……悲しいね』
そう言い、ヒカルはダークナイトがいただろう場所へ近づき、剣を地面に刺した後。
両手を合わせてお祈りを始めた。
「相手は、敵だったのに」
―「どんな者にも理由はどうあれ平等の命があります。
光の存在だろうとも、闇の存在だろうとも。もとは同じ命なんです」―
「………本当に、ヒカルって不思議な子。
(それに、サーヴァントと合体して、身体が大きくなるなんて…。まるで、ドラゴニア帝国の死神姫みたい………私、何を考えているのかしら)」
首を横に振り、アルティナは脳裏に浮かんだ考えを払い、未だにお祈りをしているヒカルの背中を眺めていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
記録。
ハートレスの動きは未だに掴めず、記録対象者を探している様子。
実験結果。
月煌竜の加護を衣として纏い、守護騎士の契約を結んだ精霊を
訓練の成果が出ているものと考えられる。
魔力の制御が出来てきたものと考える。
実験第2段階。
【召喚】を行うかは彼女次第だが、夢の中にて彼と接触。
彼はヒントを与えるだけで姿を消した。
【召喚】によってどのような結果になるか今後も観察し、経路を進みを記録するものとする。
彼女が目覚めてからの記録時間。
1年5ヶ月28日15時間57分03秒。
記録、続行。
次回
【1ノ章 ― 白刃のプレリュード ―】
【5話】
― 漆黒の騎士団と祝福せし