新年明けましておめでとうございます!
今年も吸血姫絶唱シンフォキバをよろしくお願いします!
2年という月日は、人間ならば長くも短く、そしてファンガイアのような魔族
ならば瞬く間に感じるであろう時間。
その時間の中で響は次期王として責務をこなし続けていた。
オクトラーケと手を組んでいたノイズゴースト『アブノーバス』を筆頭に次々
と他のノイズゴーストを2体も撃破し、同時に魔の掟に背いた邪悪な魔族を処
刑。
更にビショップと共に人間社会に溶け込み生活している魔族たちの問題解決に
奔走するなど、この2年間という時間は響にとって最も忙しいものとなったに
違いない。
「はぁ~。やっぱ朝はキツイなぁ~~」
「おいおい響、お前いっつもそれじゃねぇか。未来を見習え。あいつはお前み
たいなハーフじゃねぇけど普通に元気してるぜ?」
聖リディアン音楽院。中学を卒業した響が入学することになった学園で、数々
の超有名な歌手やアーティストを輩出して来た実績を誇り、まさに音楽に関し
ての専門学校だ。
その入門前で響はそれほど強くない朝日の光に延々と照らされ、意気消沈とい
わんばかりの元気0%の怠惰ぶりを発揮していた。
本来、日差しがそれほど強くなければダンピールの特性上、魔皇力の低下や心
身における不調などは決して起こらない。しかし魔皇力の使い過ぎ、あるいは
疲労が溜まっていたりすると日光が通常より然程強くなかったとしても、すぐ
ダウンしてしまうのだ。
そして、今この状態は疲労によるものだろう。この2年間で起きた次期キング
としての仕事の数々は、響にとって十分過ぎるほどものだ。
いや、むしろ仕事の大半に関して言えば現キングである音夜が果たすべきもの
なのだが、音夜が自他共に認める『極度の遊び人』であるせいでキングとして
の仕事を半分以上も響に押し付けているようなものだ。
そんなんでは疲労が溜まるのも無理はないが、自分の父の性質をまったく知ら
ないわけでもないので、もはや諦めているも同然である。
「そうは言ったって~~父さんのせいで色々と大変だったし~~」
「はぁぁ………まぁ、あの音夜に関して言えば分かんなくもねぇけどよ、とり
あえず今日一日くらいシャキッとしていけよ」
キバットの励ましの言葉も意に介せず、やはり疲労の溜まった身体に鞭打つの
はつらいとばかりに活気も元気もなく校門を通過し、そのまま学院内へと向か
った。
「おっはようビッキ~」
「おはよう響さん」
「おっっはっようーー!!」
自分のクラスの教室で開口一番に声をかけ挨拶したのは、浅黒い感じの肌に灰
色の短髪をした少女『安藤 創世』。その次に金髪のふんわりとした長い髪を
持ち、雰囲気的におっとりとした少女『寺島 詩織』。
最後に二人よりも元気に挨拶をしたのが、茶髪にツインテールをした髪型で、
響に次いで元気溌剌少女『板場弓美』。
「…………うん、おはよう」
「うおぉっ! なんか珍しく元気がないわね響。もしかして失恋でもした?」
「残念だけど未だ僕、彼氏募集中ですよ~」
弓美の言葉をやはり元気なく返し、そのまま自分の机へと顔を沈める姿はやは
り、どうにも普段の響らしくなかった。
「で、実際はどうなのよ。ビッキー」
「なんていうか……この2年間で労働した分の疲労が今日一気に降りかかった
、っていう感じかな?」
「いや、労働って一体何したのよ。バイト的な?」
「ま、まぁ、そんな感じ…みたいかな」
苦笑交じりに聞いた弓美の質問に対し、何処か適当さを孕んだ曖昧な表現で返
す響。いや実際的な問題を考慮して『私、ファンガイアと人間のハーフです。
そんでもって、いずれ王様になる者です』などと言うわけにもいかず、それ故
の返答なのだ。
「あっ! そう言えば響、あの噂聞いた!?」
突然声を張り上げ、別の話題へと移行しようとする弓美を好奇と見た響は彼女
の話に合わせることにした。
「あの噂って? ひょっとして超絶美味しいケーキ屋…も、もしくは料理店が
オープンしたとかっ!?」
「違う違う、風鳴翼さんについてよ」
「へ? 翼さん?」
意外な人物の名が登場したが、響本人は2年前に起きたノイズによるツヴァイ
ウィングのライブ襲撃事件の際に共闘した為、風鳴翼とは少しばかり縁があっ
た。
とは言え、あくまでも『キバとしてだが』。
「実は翼さん、『ストーカー』につけ狙われてるらしいのよ」
「す、ストーカーに? まぁ、翼さんって世界的に有名な人だし……ありえる
と言えばありえるけど……」
「でもこれがただのストーカーじゃないのよ! なんでも翼さんを付け狙って
るって言うそのストーカー犯は、なんと『Ps』!」
「『Ps』って……最近になって話題になってる、あの『Ps』?」
通称『Predator Stalker(プレデターストーカー)』と呼ばれ
る誘拐殺人犯のことで、『Ps(ピース)』とは二つの頭文字を取った略称だ。
誰もその姿を見た者はおらず、目撃者は当然いない。厳重な警備態勢を敷かれ
ているにも関わらず目当ての人物をストーキングした後に誘拐。そして猟奇的
残虐な手段でその命を奪う。
世界各国で同様の手口による事件を215件も起こし、その中には財政界の大
物もいたことから国際的指名手配犯にも認定されている。
そして、『Ps』が新たに狙いを定めた獲物が……世界的トップアーティスト
『風鳴翼』なのだ。
「ねぇ、それってヤバくない?」
「確かにそんな危険な猟奇殺人犯が翼さんを狙ってるだなんて…怖いですわ」
「で、でも、なんか今まで世界に類を見ない位にすっごい厳重な警備らしいし
、さすがの一流ストーカー犯も無理なんじゃないの?」
創世と詩織の反応が伝染でもしたのか、少し不安と恐怖が混じってはいるもの
のあくまでも大丈夫だと言い張る弓美だがそれを響は内心否定した。
「(相手が本当に只の人間なら……大丈夫かもしれないけど、もしダークフリ
ークスの仕業なら話が違って来る。後で詳しく調べないとね)
1人誰にも気付かれず内心思う響だった。
さて、話は変わり響の学園生活における日常というのは他と比べれば一寸も
違わないだろう。普通に授業を受けて友達と和気藹々と談笑したり、等など
。彼女がファンガイアと人間のハーフでキバの継承者であること以外、その
姿はごく一般的な学園生活における日常の姿だ。
ただある一点だが、どうしても気になることがある。
それは無論『風鳴翼』のことだ。彼女がシンフォギア装者である以上響との
接触を図るに違いない。一応認識阻害の幻術を使い響を別人に見せているが
、何らかの拍子か些細なミスで本当の正体が露見しないとも限らない。
できることならこの際もう色々話してしまった方がいいのだが、無論そうい
うわけにもいかず、とにかく注意だけは怠らないようにしているのが現状な
のだ。
「は~しんどい。翼さんにバレないようにするって大変だな~~」
一日の授業を全て消化し、一日の学園生活を何の問題もなく過ごした響だが
やはり注意を怠らないようにするにはそれ相応のが必要である為、やは
り精神的に体力が消耗してしまうのだ。
「………ヤバい。ちょっと拙い展開になったね」
自分の買い物を済ませようと毎回来ているコンビニのすぐ側まで来た響は、
ある異常な光景に気がついた。
人が1人もいない。大量の煤のようなものがある。
このことから導き出される答えは一つ…『ノイズ』だ。
「キバット!」
「おっしゃ、キバるぜ!」
すぐさまキバットを呼び出し変身する。キバへと変身した響は次々と沸いて
出て来るノイズたちをパンチやキックなどのスタンダードな格闘戦術で一掃
していく。
「また唐突に……何の因果も意味もなく命を奪うのかッ!」
心から湧き出る激情を声として咆哮しながら、向かって来たブドウのような
姿のノイズを拳一つで沈める。
「きゃああーーーーっ!!」
「!!」
突然の悲鳴を聞き、見てみればそこに小さな小学生位の女の子がノイズに襲
われていた。
「クソッ! どけェェェーーーッッ!!」
キバは自分に際限なく群がって来るノイズを回し蹴りの暴風で吹き飛すと、
すぐさま女の子を抱え近くのビルの屋上まで跳躍する。
「大丈夫か?」
「う…うん…」
安否を確かめようとできるだけ優しく話しかけるが、何せ今の格好と雰囲気
からして余計な警戒心を孕ませてしまっているようだ。
「あっ。そ、その……何と言うか…………わ、私は言わば『お助けマン』と
言う奴だ!」
「おい響。せめてそこは『マン』じゃなくて『ガール』だろ……っていうか
、そもそも何だよそれ」
ベルトに収まってるキバットから訂正とツッコミが同時に来る。自分の説明
力に思わず赤面羞恥といった感じのキバだが、目の前の女の子は困惑気味だ
った。
「ええ~っと……つまりお姉ちゃんは良い人ってこと?」
「ま、まぁ、そんな感じだ。だから安心しろ。私が必ずお前を守る」
と、そんな会話をしている内に大勢のノイズがじりじりと距離を詰めながら
湧いて出てきた。
別にノイズ自体は数的にも問題ないが、この場においての絶対的優先事項は
人命…つまり幼い少女の命だ。
守り抜きながらの戦いは不利と判断したキバは助っ人を呼ぶことを決め、腰
のベルトにあるフエッスルホルダーから黄金色のフエッスルを取り出すと、
それをキバットに吹かせる。
「ブロン・ブースター!」
解き放たれた音色と共に黄金の魔方陣が形成され、そこから燕尾服を身に纏
った1人の老執事が姿を現す。
「ふむ。どうやらノイズのようですな、響様」
老執事は今この現状に大して驚きをもっておらず、それどころか悠然と余裕
さえ持っている。
「ああ。ともかくこの娘を頼む。守りながら戦うのは少しキツイ」
「承知しました……むうゥゥんッッ!」
老執事が両腕をクロスし神々しい光を放つと共にその姿を徐々に変えていく
。やがて光が収まるとそこに老執事はおらず、あるのは威圧的な存在感を醸
し出すモアイのような黄金の巨像。
魔界において貴重な特殊金属『アトミディアス・ゴールド』を使い練成され
たゴーレム『ブロン』。
自らの意思を持ち、キバの愛用するバイク『マシンキバー』のブースターと
なる存在だが、時としてその防御力を発揮し、他者の守り手としての役割も
果たす。
「安心しろ。あいつ等なんかに一切手は出させない。私とこのブロンがいる
限りな」
柔らかな笑みを浮かべ、頭を撫でながら少女にそう語りかけるキバ。そんな
彼女の行為のおかげで少女もどこか安心感が出てきたのか、つられるように
して笑みを作ると頭を縦に振り、力強く頷いた。
「うん!」
「いい子だ。では、始めるとしようか!」
その言葉を合図にノイズたちが一斉に襲い掛かる。ブロンは自分と少女の周
囲に淡い黄金に輝くドーム状の結界を張ることでノイズが少女に触れるのを
防ぎ、キバは近付くノイズを格闘戦術で次々と打ち倒していく。
次第に数は減少していき、ノイズ側に増援が来る気配もない。
これで行けれると一瞬ばかり思ったキバだったが、それは二つのある存在の
唐突な登場により、その考えは否定されると同時に思考の外側へと破棄した
。
『キバ…我等が同胞の仇』
『ここで討たせてもらうぜぇぇぇぇぇーーーーーーーッッッッ!!!!!』
ノイズゴースト。ダークフリークスとノイズ、この両者の特性を同時に持つ
敵の来襲にキバは苦虫を噛み潰したかのような苦々しい表情を作る。
1人は頑丈さと重厚さを彷彿とさせるような鎧の外骨格を身に纏い、背中や
頭部にカブトムシの意匠が施されている紫色のノイズゴースト『ビータス』
。
もう1人は黄色で、頭部や下半身に山羊の意匠が形作られている風貌で背中
には蝙蝠のような両翼が備わっているノイズゴースト『シェール』。
「チッ、こんな時に!」
『ハアァッ!』
キバの苦言など意に介さず、シェールはサーベル形態の剣と円形の盾を装備
し、キバの首めがけ剣を振るう。それを手の甲で防いだキバは剣の刀身部分
を掴みそのまま突き飛ばす。
シェールは慌てることなく空中で着地の態勢へと移ったことで何の問題もな
く地面に足をつけ、再び追撃を開始する。
『ガハハハハ!! たかがゴーレム如きの守り…この俺様が打ち砕いてくれ
るわァァッ!』
『ぐうゥッ、ムゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンッッッ!!』
対し、ビータスは己が誇りである怪力を利用してブロンの張った結界を破壊
しようと両腕の拳によるラッシュを決めていく。
やはりそれなりの威力が篭っている為か結界が揺らぎを見せ、徐々に不安定
な状態になって来ている。
「ブ、ブロンッ!」
すぐさま助けに向かおうとする響だがシェールがそれを妨害する。
『行かせんぞキバ!』
「ぐっ! 邪魔をするな!」
シェールの妨害によりブロンの助力は不可能……このままでは拙い。キバが
そう思っている矢先だった。
「はアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!」
突然聞こえた、凛とした少女の咆哮。やがてその声の主たる青い影はその手
に持った剣でシェールの剣を弾き飛ばし、その切っ先をシェール本人の顔の
眼前へと突き立てた。
「そこまでにしてもらおうか?」
青い影の正体……それはキバが自らの正体がバレるのを警戒していた世界的
トップアーティスト、『風鳴翼』だった。
今回は短めです。
以降も文章が短めになると思いますが、ご了承ください。
今週のドライブは結構面白かったですけど、いや薄々は思って
ましたけど、まさかチェイサーがプロトゼロだったとは(汗)
今後のドライブが楽しみになって来たイビルジョーカーです。