もっと感想が欲しい……(涙目)
感想を沢山もらえないって言うのは、やはり堪えますね。
あの日から、少女は変わった。
いや、より正確に言うのであれば『変わってしまった』というのが正しいか。
防人の少女『風鳴翼』はノイズ襲撃のあの日、大切な親友を失ったが故にそれ
を己の弱さと見定め、常に強くあろうと自らに科した。
だがそれは……現代における人としての生き方から外れた修羅の道。
心無ければ物言わぬ、異形の殺戮者たるノイズを相手にたった一人で刃を手に
斬り捨てて行き、常に命を取るか取られるかの戦場に身を置くというのは常人
の観点から見れば酷い話には違いない。
だが、それでも少女は、自らの重荷を投げ出す真似はしなかった。それは悪い
ことではなく、むしろ当然とも言えることなのだが、彼女は自らが防人である
ことに誇りに思っていた。
それを誇りとして抱いていたからこそ、彼女は防人としての生き方を否定せず
、歩み続ける決意をもってノイズとの戦いに挑むのだ。
もう二度と、奏のように守るべき人々をこの手から取り零さないように。
「そこまでにしてもらおうか?」
自らの剣であるシンフォギア『天羽々斬(あめのはばきり)』の切っ先を山羊の
ノイズゴースト『シェール』に突きつけながら、問いかけるように呟く。
蒼き剣士の少女『風鳴翼』は、他言や攻撃的な意思を許さんばかりの殺気で睨
むように一瞥し、切っ先をより近づける。
『ぐっ……』
「貴様等が何者かは知らない。ノイズであるかも定かではない……だが人に仇
なし、その命を奪う異形の者であるということだけは知っている。故にこの場
で私が斬らせてもらうぞ!」
刀身が蒼き閃光を縦に宙に描き、そのままシェールの胴を切り裂こうとするも
その寸前でシェールの剣が天羽々斬の刃を防ぎ、そのまま弾く。
剣と剣が紡ぐ、その攻防戦において両者は互角に見えるかもしれないが、実際
のところそれは違う。翼が若干ながら押されているのだ。
「はァァッ!」
『フンッ!!』
その最たる理由はスピードにある。翼のスピードは『剣』に分があるのに対し
、シェールは『足』。剣戟では翼の方が上回っているが、しかしシェールは剣
で劣っている部分を足で補い、その俊敏性をもって翼を翻弄していた。
「ぐっ!」
『どうした? 少しばかり動きが鈍くなってないか?』
「黙れッ!」
相手の剣を弾くように突き飛ばし次々と連撃を加えていく翼。そんな彼女の意
など知ったことかと断言するかのように容易く回避し、時に剣で流暢に受け流
していくシェール。
『人間如きが魔を滅ぼしうる武を持つなど……身のほどを弁えさせてやる』
侮蔑を含んだ言葉を、風鳴翼に向けて宣言のように解き放つ。
そしてシェールと翼が剣戟による攻防戦を行っているその傍らで、キバとカブ
トムシのノイズゴースト『ビータス』が激しい拳の演舞を繰り広げていた。
「はアアアアアアーーーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!!」
『ゥゥゥゥウウウウウウウウリャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
ーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!!!』
キバと拳とビータスの拳がぶつかり合う。押し合いに負けたのはキバだった。
「ぐあっ!」
「ちっ、なんつー馬鹿力だ! おい響。こいつはあいつの出番だぜ」
「いや、それには及ばん。こいつで決める」
キバは不敵に笑い、緑色のフエッスルを取り出すとそれをキバットの口へセッ
トし、その音色を奏ながらキバットは叫ぶ。
『バッシャー・マグナム!』
音色はキャッスルドラン内部に存在する巨大プールに響き渡り、そこで丁度暇
を持て余していた響の従者たちの耳に届いた。
「この音色……。お前に指名が入ったぞ明久」
水着の半裸状態でイスに腰を降ろし、テーブルに置いてあったブルーハワイの
ジュースを飲みながらプールで優雅に遊泳を楽しむ明久を呼ぶ一夏。
ちなみにマカは友人のメイドたちとビーチバレーを楽しみ、静雄はサイデリッ
ク調のアロハシャツを着て黙々と足だけ電気プール(電気風呂のプールバージョ
ンと思って下さい)をしていた。
『ええっ! マジで?!』
まるで予想もしていなかったかのような、そんな驚きようを少し見せながら、
プール内から飛び上がる明久。しかしその姿はいつもの人間としての姿ではな
く、人間と魚を合わせた様な…俗に言うところの『半漁人』の姿だった。
これこそ、響の従者である水井明久の本当の姿。
水棲の最強魔族『マーマン族』の『バッシャー』なのだ。
『よ~し、久しぶりの指名! はりきっちゃおうか!!』
陽気喝采と言わんばかりの雰囲気でそう言うバッシャーは、彫像形態に変身す
ると緑色の魔方陣に吸い込まれていき、そのままキバの下へと向かった。
魔方陣を通じてキバへと手に取られたバッシャーは、彫像形態から銃形態へと
変化し、自身の水の力をキバへと付与させる。
それによってキバの右腕は無数の鎖が巻きつき、弾けるように開放されると同
時に『魚のヒレ』の意匠が施された緑色の腕と胸部『バッシャーエメラルド』
へと変化。
更に腰部分に右腕と同じような意匠と色が施されたスカート『フィッシャー・
バレエ』が展開され、胸に対魔族拘束用リボン『バッシャー・バタフライ』が
出現する。その姿はフィギアスケート選手を彷彿とさせ、そしてバッシャーの
幻影がキバに吸い込まれると同時にキバ・ペルソナの複眼が緑色に染まる。
マーマン族の水の力を得た形態『キバ・バッシャーフォーム』だ。
「僕、参上!」
『アア? なんだそりゃ。たかが色を変えたぐらいで俺をどうにかできるとで
も思ってんのかぁ?』
「できると思うからなってるんだよ。そんなことも分かんない虫さんなの?」
やはり外見や雰囲気がそうなのか、キバの何気ない挑発が琴線に触れたらしく
、怒り心頭と言わんばかりの怒気を放ちながら拳を握る。
『調子にのってんじゃあ……ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぞぉぉぉぉぉーーーーーー
ーーーーーーーーッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!』
どうやら、沸点の低い脳筋のようだ。
「フッ!」
キバめがけて突進を行使するビータスに対応するように、キバもバッシャーマ
グナムを構え水の弾丸を発砲する。
しかしビータスの防御力が勝り、ただ当たるだけで殆どノーダメージだ。
『ガッハハハハハハハハハ!! 笑止! てめぇのダセぇ水鉄砲で何とかなる
ほど俺のこのすっげー硬い外骨格の装甲は伊達じゃねぇよッ!』
「うん。知ってる」
ビータスの攻撃をジャンプすることで回避、そして後ろから水弾を発射するが
、今度はビータスの足元へと狙いを定めて撃ち込む。
「だから、その為の『策』なのさ」
『!!っ な、なんじゃこりゃアアアアアーーーーーーッッ!!!!!!』
水弾は不定形の奇妙な動きを見せたのかと思えば、ビータスの両足から腰部分
を拘束し徐々に溶かしていく。
「『王水』。人間世界の奴だと濃塩酸と濃硝酸を3:1の体積化でできる代物
だけど、魔界における王水っていうのはね。方法によっては結構な効果を齎し
てくれる薬水になるけど、本来の性質は『大抵の物なら、どんなものでも溶か
して気体へ変換させる水』を意味するんだ♪」
「! ま、まさかこいつは!」
「言わずもがな。正真正銘の『王水』さ」
そんな会話をしている内に王水はビータスの全身を包み込み、溶かしていく。
『く、クソがアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア
アアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!』
断末魔の叫びを上げ、完全に溶かされ水となったビータスに向けてキバは一言
「ばーいばいっ♪」
終始余裕に満ちた満面の笑みを絶やさず、ピースしながらそんな言葉を送った
。
「!……ビータスめ。紛い物のキバなんぞに敗れおって」
相方の死を見たシェールだが特に悲壮に煽られる様子はない。むしろ、キバに
負けたビータスを忌々しそうに吐き捨てた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
片膝を地面へと突き、全身傷だらけになりながら息を荒げ、何とか立ち上がろ
うとする翼だが思いの他与えられたダメージが大きいせかいか、まともに立つ
ことさえままならない状態だ。
『さすがに連戦では分が悪い。ここは撤退させてもらうとしよう』
「ま、待て!」
翼の静止を聞かず、その見事なまでの跳躍力でビルとビルの間を駆け巡りなが
ら去っていくシェール。
その姿をただ見つめることしかできない翼は自身の無力さを噛み締め、その手
の力をより一層強めた。
「やれやれ、しくじったのかい?」
『ほっとけ! あれはビータスの非だ。さすがの私とて連戦はキツイ』
とある廃工場まで逃げおおせたシェールは、自身と同盟を結んでいたダークフ
リークスの嘲笑を交えた言葉にシェールはあくまでも自分に非はないと断じる
。
そんな彼の様子に黒いフードとマントでその姿を秘匿するダークフリークスは
、独特の高い声から察するに女性のようだ。
「まぁ、いいさ。あくまでも僕は僕の目的を達成するだけ。その上で目障りな
連中の足止めは君達の責務じゃなかったのかな?」
『……そうだな。わざわざ人間一匹を始末するのに私自身が手を下すのは面目
に関わる。その為にお前を雇ったのだ。風鳴翼の命を狙っているお前にな。だ
と言うのに貴様は何だ! ビータスと私がキバを相手にしたのだぞッ?!』
「だから、なんでその隙にさっさと風鳴翼を殺さなかった……って言いたいの
かい?」
『そうだッ!』
激昂するように叫ぶシェールを見て、女性のダークフリークスは呆れたように
溜め息を零す。
「なんだか勘違いをしてないかい? 僕は僕のやり方で風鳴翼の命を奪うって
確かに言った筈だ。君達は確かに今回の計画を僕に伝えこそしたけど、僕はそ
の計画に対して『OK』は出さなかった」
『し、しかし沈黙は肯定だ! 協力関係にある以上は貴様も我々に協力すべき
筋合いだろうッ!』
「うん。確かにそうだね」
シェールに背を向けていた女性のダークフリークスは振り返り、マントからま
るで死人のような蒼白い肌の手を出したかと思えば、それを翳すように広げ、
衝撃波を放つ。
『ぐああッ!!』
放たれた衝撃波に吹き飛ばされ倒れるシェール。そんな彼に容赦なく彼女は自
らの足でシェールの胸辺りを踏み込む。
やはり手と同様に人間のそれではあるものの、蒼白く死人のようだった。
「だけど僕に命令するなんてどういう了見かな? 一応協力はしてあげるけど
それって風鳴翼を殺すことであって、つまり僕個人の目的でもあるわけでしょ
? だったら僕のやり方でやらせてもらうし、いちいち指図される道理なんて
……ないんだよッ!」
『ガッ……ァッ……や、やめろ……くるじいぃ……』
より一層足の力を強める彼女にシェールは情けなく懇願する。そんな無様さに
嫌悪感が滲め出たらしく、見下しながら女性はシェールの胸から足を退かした
。
『わ、分かった……お前のやり方を尊重する。タイミングや諸々もお前の判断
に任せる。とにかく風鳴翼を殺してもらえるならば、文句はない』
「ふん。言わずともさ」
そう言って女性は少し早々とした足取りで廃工場を去っていく。それを忌々し
げに見るシェールは無意識ながらに拳を握り締める。
『あの女ァァ……こっちが下手に接すれば調子付きおって!』
憤慨するシェールだが、彼も彼だ。
そもそも彼女と同盟を組む理由は『風鳴翼の抹殺が嫌だから』というもので、
風鳴翼の抹殺自体は幹部である蛾式からの勅令である為、逆らうことなどでき
ない。
だから同盟を組んだという、あまりに幼稚で呆れた動機だろうか。
しかし彼はそれほどまでに人間を見下し侮蔑しているのだ。
取るに足らない虫も同然。
存在している価値がない。
我等ゴースト族の為にただ消費されていればいい……等々。
そんな思考であるが故に、自分が人間如きを殺すことさえおこがましいと考え
る程の選民思想主義者。その主義者としての無駄なプライドがあったせいで、
先程の女性ダークフリークスとの同盟という結果に至ったのだ。
つまり、今彼自身の立場を追い詰めているのは彼自身の浅ましいまでの幼稚的
な思考に他ならない。
『まぁしかし、人間なんぞと組む幹部どもよりはよっぽど有意義だ。フィーネ
とかいう人間の女風情と同盟を組むなどゴーストの…いや、魔族としての恥だ
』
シェールが言うゴースト族の幹部とはつまり、蛾式。狼鳥式。鳥式のことだ。
いかに目的の為とは言え、彼からして見れば人間に同盟を持ちかけるなど狂気
の沙汰であって、まともな思考とは言い難い。
だがそれでも、自分は所詮下の者。
結局は上の意見に指図できるほどの権力も何もないことなど承知の上だ。なら
ば従うしかないのは認めるが、この時点でシェールにはある疑問が心中に浮か
び上がっていた。
『しかし解らん。何故キバを最優先にせず、風鳴翼を? 意図が読めん…』
シェールたち『ノイズゴースト』に与えられた最優先事項は他ならない『キバ
』と『サガ』の継承者の抹殺だ。だが蛾式を含め幹部たちはその命令を一時的
な中止とした。
そして風鳴翼の始末をシェール並び、今は亡きビータスに下したわけだが何故
そんなことをする必要があるのか?
風鳴翼は戦闘能力に関して言えば中々の物だと言えるが、それを差し引いたと
してもキバとサガを後回しにしてまで優先させるべきものだとは考えにくい。
『まぁいい。不本意であろうと命令は命令。私のやり方で行くだけだ』
しかし今、そんなことを長々と考えたところで明確な答えが出るわけでもない
。仕方ないと先程の思考を頭の片隅に置き、シェールもまた廃工場を後にした
。
「(どうしてこうなったんだろ……いや、当然かぁ……)」
そんなことを内心呟きながらキバの変身を解除した立花響は今、何人かの黒服
の男性達&風鳴翼によって黒い車に乗り、護送されてしまっていた。
こうなったのはノイズを一匹残さず殲滅した後だ。あの後響が救出した少女は
無事に母親と合流し涙ながらの再会を果たした。ここまでは問題なかったのだ
が、ここで上記の黒服の男性たち一同が登場。
逃げる隙など一切与えない、その異常なほど素早い手際さで四方八方響を取り
囲んだのだ。そして『緒川慎次』と名乗る、穏やかそうな好青年にして黒服の
男性一同の1人が代表として現われ、響の両手に手錠を強制的に装着させた。
そして文句一切無用。逃げる余地さえもなく、捕まってしまい護送されている
というわけなのだ。
そんな経緯をもって連れて行かれた場所は何と自分や未来が通う『リディアン
音楽院』だった。
「あの……ここってどう見てもリディアンですよね?」
苦い笑みを浮かべながら、そう質問する響だがそれに答える者はいない。唯一
緒川だけは優しい笑みで答えてくれたがそれだけ。
後は無言だった。しかし何故よりにもよってリディアンなのか? という疑問
が出て来る響だがすぐに『彼らという組織の本拠地がおそらくリディアン内の
地下か何処か』にあるのだと察し、とりあえず今は抵抗や攻撃の意思を見せず
、ただ状況に乗ることを最優先に判断した。
しばらくしてリディアンの中央棟に入った緒川、翼、響の3人はエレベーター
へと乗り込み凄まじい勢いで急降下していく。
最初こそ驚いたが、伊達にキバをやっているわけでもないのですぐに慣れてし
まった。
「あ、ははは……」
「愛想は無用よ。これから行く場所に微笑みなんて必要ないから」
エレベーター内の異様な沈黙と化した空気に耐えられず、思わず反射的に愛想
笑いを作る響に対し、翼は否定するように口を開けた。
より空気が重くなった気がする。
「(キバット。こうなった以上は僕達の事情諸々、話すかもしれないよ)」
「(マジかよっ! そんじゃあ、奏の嬢ちゃんのこともか?)」
「(……そうなるかも)」
念話術で互いに連絡を取り合う響とキバット。
自らの力たるキバのことを話す以上は、ダークフリークスや魔界の諸々を話す
必要性が出て来る。風鳴翼が『シンフォギア装者』として属している組織が特
務の防衛組織であることは既に奏やビショップから情報として知り得てはいる
。
だが、だからといってファンガイアやダークフリークスの情報を話す理由には
成り得ない。下手に出て最悪な結果に成り得る可能性があるからだ。
人と魔の境界線たる均衡は何が何でも守らなければならない。崩壊すれば未曾
有の災厄が齎されることは、決して過言ではないからだ。
しかし事ここまでに至ってしまった以上、自らに関わる全てを話す他にないの
もまた事実だった。
「ようこそ! 人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へ!」
…………さて。色々と思考しながらも着いたわけだが、先程までの重く息苦し
かったシリアスを吹き飛ばすほどの、ある意味において異様極まりない光景が
そこにはあった。
服を着ていても解るほどの筋肉隆々とした、巨躯の肉体を有する赤髪の男性『
風鳴弦十郎』を筆頭に大勢の組織の職員と思わしき男女の方々がパチパチパチ
と拍手を奏で、クラッカーを鳴らす。
そして天井や壁には響自身を迎え入れる気満々の飾りつけが施されている。
「へ?」
「……なんじゃこりゃ」
響は呆けたような声を出し、認識阻害の魔法術で存在を隠蔽しているキバット
さえも間の抜けた声を出すしかないような…そんな陽気且つ熱烈満載のお出迎
えだった。
「いや~強制同行をしてしまってすまない。我々も知りたいことがあったから
な」
「は、はぁ……」
赤い長髪の男性にシリアスのシの字など一切なく、むしろそれとは対極的な空
気で邪気のない笑みを浮かべ、白い歯を覗かせる。
「はいは~い、笑って笑ってぇ~♪ お近づきの印に一枚」
そう言って白衣を着た1人の女性が手にスマホを持って響に近付き、文字通り
写真を一枚撮ろうと図る。しかし響は慌てて抗議する。
「い、嫌ですよ! 手錠したままの一枚ってどんな写真ですか! それ以前に
翼さん!」
「な、なに?」
「さっき言いましたよね。『微笑など必要ないから』って」
つい先程の自分の言葉をジト目で指摘され、思わず頬を赤く染め恥らうように
目線を響からずらす翼。
そんな光景に対し緒川は、やはり苦笑を浮かべる他に成す術がなかった。