長い間待たせてすみません!
今回はバトル回ですが、ちょいちょいギャグを挟んでいます。
あと短めです。すみません(汗)
ファンガイアと二課の同盟締結。
それ自体は何ら問題もなく、形にすることができた。
両者共に利害一致、悔恨なし。互いに友好的に接することを否定し、禁じようと提唱する者は
どちら側にもおらず、まさに理想的な関係性と言えるだろう。
それが今後において功を成していくのか。それとも、その逆と化すのかは、両者の努力と手腕
次第によるところだろう。
だが響たちは、差し当たって解決せねばならないある問題を抱えていた。
「なるほど。ならば『Ps』という人物は、響君らと同じダークフリークスの可能性がある…
…ということか」
二課の本部応接室。そこで弦十郎は腕を組み、渋い顔を表情として浮かばせる。
その目前には響と未来、隣には彼や響たちと同じようにソファーに腰を下ろす桜井女史の姿が
あり、その後ろにはオペレーターの『藤尭 朔也(ふじたか さくや)』と『友里(ともさと)
あおい』が控えている。
ちなみに翼は、現在も尚アーティスト活動を続けている為、今日はそちらの方の仕事の関係で
専属マネージャーこと『緒川 慎次(おがわ しんじ)』と共に不在中である。
今、二課とファンガイアの面々がこうして会議の場を設けているのは、上記にある問題の一つ
……風鳴翼を狙う『Ps(ピース)』と呼ばれる連続ストーカー殺人鬼の件だった。
響たちはPsをダークフリークスだと確信しており、その根拠はPsが今までに起こして来た
三つの異常な現象にある。
・Psは狙った人間に犯行予告である『Q』の文字が刻まれた赤い便箋を直接渡すが、その際
被害者は意識が朦朧としたような状態に陥る為、被害者全員がPsの姿を覚えていない。
・予告状を渡される場所には、必ず被害者以外にも人が数人程度おり、その人達も被害者と同
じような状態になっている。
・被害者が警護付きの密室にいるにも関わらず、音も気配も立てず被害者を誘拐する。
更により確実的な証拠は、監視カメラにPsが映っていなかったことだ。そして被害者はPs
が犯行予告を指定した時間帯になった瞬間、まるで気を失ったように倒れ、そのまま煙のよう
に姿を消してしまったという。
通常の理では解明不可能な怪現象。それ成せるということはつまり、Psはダークフリークス
であるという何よりの事実だ。
「一応聞くが、どういった種類のダークフリークスなのかは断定できないのか?」
「そこは何とも……まだ種類を確定するだけの材料が足りないんです」
弦十郎の言葉に響は面目ないといった様子で言葉を紡ぐ。
ただ…それかもしれないという候補はないこともない。
「でも、あくまで仮定ですが、Psの正体は『クイックシルバー』なのかもしれません」
未来が口にした『クイックシルバー』とは、簡略的に言ってしまえばポルターガイストの一種
だ。一般的なポルターガイストは男性の霊が起こす仕業とされているが、このクイックシルバ
ーは女性の霊が起こすものとされ、現れた後には必ず自身の名の頭文字である【Q】を口紅や
赤いクレヨンなどで残していくという。
今回の犯人であるPsは、【Q】の文字が刻まれた便箋を標的である被害者に必ず渡している
という点を鑑みれば可能性はある。が、結局のところ確定する材料には程遠い。
故にあくまで『候補の一つ』に過ぎないのだ。
「まぁ、とにもかくにも情報が少な過ぎますから、この件に関しては調査中ってことですね。
どっちにしたとしても、もっともっと情報を集めないと」
響の言葉に弦十郎が力強く頷く。
相手は何の罪もない人々をその手にかけた卑劣極まりない殺人鬼。なら、何としてでも捕まえ
たいと思うのは弦十郎や二課の面々、そして響たちが共通して秘め持つ思いだろう。
と、ここで弦十郎はあることを響に聞いてきた。
「そう言えば、翼の警護にどんな奴を寄越したんだ?」
実は事前に翼の護衛として、響たちファンガイア側から優秀な人材を派遣していた。その詳細
は弦十郎を含め二課の面々にはまだ伝えられていなかった為、今こうして聞いたのだ。
「あ~それはですね……簡単に言えば、私が一番頼りにできると思う仲間たちです♪」
「………」
「………」
「………」
「………」
そこは風鳴翼がいる、とあるレコード会社の廊下。
翼がいる収録室の前で鎮座している四つのダンボールという光景は、傍から見てみると変な風
な印象を受けてしまうに違いにない。
ダンボールの柄には、それぞれ一つずつ青、緑、紫、白の四色の同じ柄が施されており、結構
前からここに置かれていた。
「………ねぇ、なんでダンボールに入る必要があるの?」
「………響の提案曰く『Psをその場で捕まえる為に相手に私達の存在をバレないようにする
』策らしいわね」
「あまり喋るなよお前等。そしてダンボール作戦を甘く見るんじゃないぞ。かの名高き傭兵も
愛用している策だ。絶対にバレないことは保証してやる!」
「………いや、バレるだろ……こんなの」
中身は一夏、静雄、明久、マカの4人だった。
彼らこそが翼の護衛であり、響にとって未来と同じように最も信頼することのできる仲間たち
だ。
「でもさ、本当に現れるの? そのPsってやつ」
明久の言葉に対し、少し疑問系なれどマカが答える。
「たぶん…かな? そもそも犯行予告から誘拐するまでの期間が被害者によってバラバラだか
ら、正確なところがよく分からないのよね」
「どっちにしろ、奴が現れるまで風鳴翼を護衛すりゃいいってことだろ」
「………だから何でダンボールに入るんだよ」
いいっぽいことを台詞にして吐く一夏だが、そんな彼に静雄の冷静なツッコミが入った。
ちなみにそのツッコミに共感したのはマカや明久も同じな為、一夏のみが孤立状態ということ
に本人は呆れるほど気付いていない。
そして時間が2時間ほど経とうとした時、それは起きた。
「!っ この臭い……ダークフリークスだっ!」
鼻に自信のある一夏は誰よりも早くダンボールを脱ぎ捨てると、そのまま本来の姿である青き
狼の獣人『ガルル』へと姿を変え、その鋭い爪をもって収録室のドアを紙の様に容易く切り裂
く。
それに続き、他の3人もガルルと共に収録室へと入る。中はスタッフの全員が意識を失ってお
り、奥の方には翼と緒川がスタッフと同じように意識を失い倒れているが、その隣には黒いロ
ーブのマントで姿を隠した、謎の黒装束の人物が佇んでいた。
「チッ、キバの側近どもか。残念だけど貴様等に用はない。僕の狙いは彼女だからね」
『待てっ!』
ガルルの静止を聞かず、黒装束の怪人物は翼にそっと触れた瞬間。彼女と共にまるで煙のよう
に消えてしまった。
「!っ どうなってる?!」
「空間移動の術式…にしては妙ね」
『そういう考察は後だ。まだ臭いは残ってる! 追うぞ!』
黒装束の残り香を地図に、ガルルを筆頭とした4人はその足取りを追うこととなった。
「やれやれ。まさかキバの側近どもが護衛に付いてるとは。まぁ、予想通りだけどね♪」
黒装束の人物……いや、正確に言えば、ウェールと手を組んでいるダークフリークスの女性だ
った。彼女は意識のない眠ったままの状態の翼を近くの廃墟のビルへと連れ込み、無造作にビ
ル内にある一室のコンクリートの床へと放り出す。
そして己が身を包み込んでいた黒装束のローブマントを脱ぎ捨て、その姿を曝け出した。
下には何も着ておらず、まさしく全裸という名の生まれたままの姿。
やはり女性だったらしく、その身体のラインと豊満な胸は女性そのもので、顔は美しいほどに
中性的。
髪は黒く長いロングストレート。一見すれば人間と左程大差などないだろうが、それを否定す
るかのように人間ではありえないものが彼女の身体の一部分に付属されていた。
それは『手』。彼女の両手はあまりに異形なものと化していた。
全体的に刺々しく、同時に禍々しさを纏わり尽かさせたような赤と黒、そして黄色の三色を用
いたサイデリックな色合い。
更によく見てみれば、彼女の肌は死人のそれと同じように蒼白く、生きている心地など微塵も
備えていないかのような風貌。その異様極まる姿こそ彼女が人間などではなく、魔性の存在で
あるという答えを在りのままに示していた。
「ああ~美しい。片割れの翼を失いながらも、その気高き信念の為に奔走し足掻く姿……僕は
貴方のような人間が好きです。今まで殺して来た人達もそう。ですが、貴方ほどの逸材は今回
で初めて……クッ、くひひひひひひひひひひッッ!!! 貴方をただ普通に殺してしまうのは
惜しい! なので…僕の従順な愛玩ペットにしてから、じっくり殺してあげましょう!」
光悦とした赤みのある顔を曝け出し、自身の心中に延々と渦巻くその欲望を満たそうと、女性
はその魔手を伸ばす。
だが、その手を阻む者がいた。
『ガルアアッ!』
「なっ?! ぐっ!」
突然現れたガルルの猛攻。
それを受けた女性は、苦悶の声を上げ翼から数歩下がってしまった。
「翼さん!」
すぐさま明久とマカが駆け寄り、翼を介抱する。
眠らされている以外に外傷や骨折などの傷害はなく、至って健常な状態だったことに安堵する
が、状況が状況なのであまり油断はできない。
『貴様がPsって奴か』
「そうだけど? それよりもさ~、あんまり無粋なことしないでくれないかなぁ本当。マジで
殺したくなっちゃうよ」
『黙れっ!』
蒼き狼が激昂の咆哮を上げる。
ガルルは己が爪の刃を横一線に素早く振るうことで、女性の頭部と胴体を別々に分断させよう
とする。しかし女性はそれを回避し、同時に真の姿へと変貌を遂げた。
ナース姿を連想とさせる刺々しい外骨格の鎧。体色は両手と同色にサイデリックな禍々しさを
醸し出し、胸には『Q』の字が紋章のように刻み込まれている。
更に注目すべきは彼女の背中にも両腕があり、その両腕の手首から先が巨大な注射器と化して
いるという点だ。
中には謎の液体が一定の量で存在し、妖しく光を発している。
『僕は【クイックシルバー】の【ゲール】。人間社会では君が言った【Ps】って名前で色々
やらせてもらってるよ』
『自己紹介なんざに興味はない。ここで死ね!』
そう吠えるガルルは、自らの俊敏性をもってゲールに肉薄し、一気に爪で切り裂く。
だが、爪は空を切りるだけでゲールの肉体を裂くには至らなかった。紙一重でゲールが身体を
横へ何cmかずらすことで回避したからだ。そしてそのまま背中の両腕の一本を伸ばし、注射
器の針でガルルを刺し貫こうと迫る。
しかしガルルは片手の爪でそれを防ぐと、空いたもう一方の手の爪でゲールの右肩を抉るよう
に切り裂いた。
『うぐっ!』
口からは苦悶の声を漏らし、右肩からは紫色の血液を流すゲール。
更にもう一撃加えようとするガルルの鋭爪は、寸前のところで横から現れた一本の剣の刀身に
よって妨害された。
『!っ』
『チッ、遅いじゃないかウェール。君のおかげで僕はこの通りだよ』
『フンッ! 礼の一つも言えないのか……つくづく三下の無礼者だな、貴様は』
山羊の特徴を意匠した、黄色のノイズゴースト『シェール』。
ガルルを薙ぎ払い、距離を作った上で皮肉を述べ立てる彼女に対し、嫌味を含んだ台詞を吐き
捨てるようにシェールは答える。
まさしく戦況は2対1。実力ではイーブンと言ったところか。
しかしその戦況を覆すかのように、ガルルやゲールたちのいる部屋の天井の一部がバラバラと
崩れ落ち、一人の男がその姿を現わした。
「見ィィィィィ~~、つゥゥゥゥゥ~~、けェェェェェ~~、たァァァァァ~~ぜっ!!」
執事を思わせる燕尾服の上を脱ぎ捨て、その手に持つのは何処かの道路から抜き取ったと思わ
れる【止まれ】の道路標識。
それは紛れも無い、『力島静雄』だった。
『………お前、何してんだよ』
呆れたようにガルルはそう質問してみるが、静雄はギロリと睨むように一瞥しながらも答えた
。
「あ゛あ゛ァァ? テメェらが勝手に俺にノイズどもの始末を押し付けたせいで、俺の一張羅
がダメになっちまったんだよ。おまけにクソ機嫌悪いってのに、テメェらはテメェらで先にお
っ始めてるじゃねぇか………そーいうーのがよ、すっげー腹立つんだよゴルァァ!!」
血管をブチ切れんばかりに浮き上がらせ、ヤンキーかもしくはヤクザのように首をコキコキと
鳴らし鬼のような睨みを利かせる静雄。
おまけに一回足を踏み付けただけでコンクリートで構成された床に蜘蛛の巣のような放射線状
の亀裂を生じさせ、少し陥没させている始末。
はっきり言って怖い。
「うわ~やばい。すっかり忘れてた」
「結構ご立腹のようね、アレ」
思わず声を口から漏らし、そんな感想を述べ立てるマカと明久。
簡単に要約すればガルルたちがここへ来る道中、突如出現したノイズの群生による妨害を受け
ていた。
そして、そのノイズの群生の相手を静雄に押し付け、残りのメンバーは勝手に追跡を続行。
ノイズの群生はフランケンの怪物としての圧倒的パワーを有する静雄によって悉く壊滅。ただ
そのせいで結構オーダーメイドしてまで気に入っていた燕尾服の上着部分をお釈迦にされてし
まい、『勝手に任せられた+一張羅を台無しにされた』という負の方程式が彼の怒りを頂点に
まで滾らせているのだ。
『またキバの側近か。まぁいい。さっさと来い側近風情め』
と、ここで敵(特にシェール)からの挑発的な台詞により、その燃え滾り爆発しかねない怒りの
矛先がガルルたちからシェールへと変更設定されてしまった。
「………おい。こいつは今から俺の獲物だ。手ぇ~出すなよ?」
『ああ、任せた。俺はあの注射器女をやる』
これで戦況は2対2だが、イーブンではなくなった。
何せ、静雄とガルルは互いに13魔族の一端であり、その実力もそれぞれの種族内では強者の
部類に入るからだ。
「おい山羊の三下野郎。俺とお前、どっちが格上なのか…その身体で直々に叩き込んで教えて
やるよ」
身体から紫電を漏らすように迸らせ、お気に入りのサングラスを取ってニヤリと不敵な笑みを
浮かべる静雄の顔は、まさしく悪鬼羅刹のそれに近いものだった。
感想待ってます!