吸血姫絶唱シンフォキバ   作:イビルジョーカー

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題名を変えました。あと『シンフォギア奏者』じゃなくて
『シンフォギア装者』でした(汗)

あらすじは修正しましたが、まだ他にもあると思うので見つけ次第
修正しますのであしからず。

では、どうぞ



第3話 運命/魔王と奏者の邂逅 後編

 

有象無象と異形たちが跋扈し、ただ歌姫の歌を間近で聞きたかっただけの

人々は異形の魔の手によって灰燼へ帰す。

 

そんな地獄絵図に『歌を口ずさむ戦姫』と『魔を統べし王』が邂逅する。

 

それで何が生まれ始まるのか……あるいは何かが終わり始まるのか……。

 

まずは見据えるとしよう。

 

「あんた、一体何者なんだ? 見た感じ敵じゃなそうだけど…多分、いや

明らかシンフォギア装者ってわけでもなさそうだし……」

 

「そんなことはどうでもいい。今我々がすべき事は、あの害獣どもの

始末じゃないのか?」

 

「……」

 

奏の問いに響はそう言い、困惑と警戒心を孕んだ表情で響…キバを見ていた。

 

「まぁ、確かにその通りだな。でもこれが終わったら、ちゃーーんっと色々

聞かせてもらうぞ!」

 

「はっ、私がそのことを憶えていればな」

 

「はああっ!」

 

一番手として翼が襲い来るノイズを手にした剣で一刀両断に切り裂き、奏は

それに続くように槍を振るい、ブドウのようなノイズとカエルに似たノイズ

を薙ぎ払う。

 

続いてキバが高速さを帯びたキックやパンチを放ち、次々と炭化させていく。

 

キバと奏者の3人による連携プレイは見事なもので、互いに初対面ではある

ものの、『ノイズを倒す』という利害一致から生半可な素人では不可能な連

携が生まれ、次第にキバと奏者側が優勢になって来た。

 

「いや~お見事じゃん。さっすがはキバの継承者とシンフォギア装者って

ところかな? うん?」

 

勢いを帯びた拍手の音と揚々さを孕んだような言葉。

 

それはどちらも、こんな地獄絵図と化した戦場には相応しくないものだ。

 

3人が音と声のする方向を見ると、少し崩れてボロボロとなった観客席の

一席で堂々と座る一人の男がいた。

 

外見だけを見ればライブ会場のスタッフのような風貌だが、ノイズが蠢き

跋扈するこんな場所で、そんな風に余裕でいられる一般人などいない。

 

それに、キバである響を知っているかのような言動と僅かに男から発せら

れていることから一々確認するまでもなく、この男が『魔族』であること

は間違いない。

 

「……何者だ貴様。私のことを知っていることに加え、その身から僅かに

出ている魔皇力……貴様ゴーストだな」

 

「これはこれは、よもや早々に正体がバレちまうたぁ、辛亥に尽きるな」

 

あくまでも余裕な態度を見せつける男に、キバは警戒心を更に上げた。

 

「言っとくが『何が目的だ』とかそういう感じの質問は全部ノーと言わせ

もらうぜ? ……はぁぁぁぁぁぁ、はああっ!!」

 

男が突然口から大量の黒い血を吐いた瞬間、男は『人間の姿』から『異形

の姿』へと変身する。

 

闇霊特徴の黒い布を何重にも巻き、口から黒き血を滴らせる。

 

背中に蜘蛛の足を八本生やし、頭部は人間のままだが目は蜘蛛のような

複眼が顔の上半部分を埋め尽くすように現れる。口はまるで花弁のよう

に四方に割れ、引き裂かれたような形状になり、鋭い牙が異様に並んで

いる。

 

闇霊『蜘蛛式』が人間の姿から本当の姿へと変身した姿である。

 

「ひっ! ばっ…化け物……」

 

「な、何なんだよ、こいつはっ!!」

 

今までノイズを相手に幾多の戦場を駆け、敵を殲滅して来た奏と翼だが

、目の前にいる異形の存在はノイズなどよりも禍々しく、潜在的な恐怖

を呼び覚ますような……まさに彼女等にとって『魔族』とは『そういう

もの』なのだ。

 

「随分と気色悪いな。元来蜘蛛という生き物は人間にとって害虫を食べ

てくれる益虫だが…そんな姿になっては、やることも相成って害虫と何

も変わらないな」

 

「言ってろ、このクソアマがァァァァァァァーーーーーー!!!!!」

 

蜘蛛式は口から糸を吐き出し、威力を込めた弾丸としてキバへと向ける

が、キバはそれを回し蹴りで対処する。糸の弾丸は形を失い、四方八方

へと散っていく。

 

「チッ!」

 

「奏者たち。ここは私に任せて残った害獣共を排除しろ……なに、あの

ような手合いとは幾度も相手にしている身。ここは互いの領分で戦う方

が得策と判断するが?」

 

「………ああ~~~もうっ! わかったよ。あの化け物はお前に任す。

でも死ぬんじゃねぇぞっ!!」

 

「もちろんだ。あんな害虫風情に負けてたまるか」

 

「さっきからゴチャゴチャ、言ってるんじゃねェェェェぞォォォッッ!」

 

激昂した蜘蛛式が3人へと襲い掛かる。

 

それに対し逸早く反応したキバは、蜘蛛式の腹部へと通常より強めの

ストレートパンチを繰り出し、それは見事命中した。

 

「ぐぎゃァァッ!!」

 

「来い蜘蛛男。私が相手をしてやる」

 

観客席へと戻される形で吹き飛ばされた蜘蛛式にキバは、大胆不敵な笑み

を向けそう言った。

 

そして人間ではありえないほどの跳躍力で観客席へと移動し、蜘蛛式と

対面する位置でその身を着地させる。

 

「て、てんめぇぇ~~……『蜘蛛の罠(トラップアウト)』っ!!」

 

蜘蛛式は花弁のような口の奥から一筋の、直径10cmほどの太さの蜘蛛

糸を吐き出し、吐き出された糸は蜘蛛の巣状に広がりキバを捕縛した。

 

「ひゃはっ! 俺の術式『糸武伸』は変幻自在だ。ある時はダイヤ以上の

強度を誇る剣や盾になり、またある時は驚異の伸縮性を秘めた拘束具へと

変化し、またまたある時はいかなる角度からでも獲物を射抜く弾丸となる

! しかしこうやも容易いとはな。キバも所詮、アバズレの人間の女と愚

かで無能極まるファンガイア王の紛い物……!?っ」

 

長々と調子に乗り喋っていた蜘蛛式は、突然キバから発せられている途方

もない威圧感(プレッシャー)から無意識に後ろへ数歩下がる。

 

「お前は今、私が愛し誇る父上と母上を愚弄した……私は人間である母と

父であるファンガイアにして王の娘として生まれた……確かに私は紛い物

、故にどっちつかずの曖昧な存在……だが、だがなっ!!」

 

魔皇力を発することで生じた衝撃波で糸を簡単に、造作も無く、それこそ

赤子の手を捻るという言葉が相応しいほどに苦もなく打ち破った!

 

「貴様如きが両親を侮蔑し冒涜するなど、思い上がるなッッッ!!」

 

「ひィィッ!」

 

殺意を込めた凄まじい威力の飛び蹴りが炸裂するも、蜘蛛式は紙一重で避ける。

 

一瞬こそキバの威圧に臆し隙を見せたものの、腐っても上級ゴーストである

ピープル。早々に倒されてくれる道理などない。

 

「コケ脅しで俺を討てると思ったら大間違いだっ!

『蜘蛛男爵の涙(タラン・ロ・レインス)』!!」

 

口から吐き出された糸は、今度は無数の棘状へと変化し、糸の一本一本が殺戮の

雨となってキバへ降り注ぐ。

 

「我が証は盾にして拘束と処刑、『魔王の紋章(シルヴァニアス・キバ)』」

 

詠唱を口ずさみ、赤いキバの紋章を出現させたキバは紋章を上へと翳すことで、

落ちて来る糸の暴雨を防ぐ。そして同時にキバの紋章をもう一つ出現させ、それ

を蜘蛛式の足元へ展開させることで拘束を成功させた。

 

「ぐあああああああああああああっ!! な、なんだ……これはっ?!」

 

「波動結界という、我々ファンガイアの魔法術『闇魔術』の一つだ。とりあえず

貴様に対する質問は一つ……何故ゴーストがここにいる。大量のライフエナジーが

目当てか? しかし、そうだとしてもツヴァイウィングのライブ会場を選んだ理由

が分からない。ここよりも人間が大勢いる場所などいくらでもある。ただ単に理由

もなくここを狙っただけか?」

 

「………フッ、フフッ、クキキキキキキキキキキキキキ!! お前……俺なんか

に構ってないであの二人を心配した方がいいぜ?」

 

「!っ」

 

その言葉に不吉なものを感じたキバは、咄嗟に二人のいるステージを見る。

 

そこで彼女が見たのは……『もう1体の闇霊』に後ろから剣で脇腹を貫かれる

奏の姿だった。

 

 

 

 

奏がそうなるまでに至った時間を少し遡ろう。

 

「はぁ、はぁ、はぁ、くそっ! 時限式はここまでかよ」

 

キバに蜘蛛式を任せ、ノイズの殲滅に当たってから3分。

 

その短い時間で奏は自身の活動限界を迎えていた。

 

そもそも奏は翼とは違い、LiNKER(リンカー)と呼ばれるシンフォギアの

正規適合を果たしていない者でも、聖遺物との適合率を上昇させる特殊

な薬品を使った、自身曰く『時限式』にして『インチキ適合者』。

 

リンカーのおかげとは言え、これを投与しても適合率の上昇は正規

適合者よりも劣り、時間経過での適合率の低下、過剰投与によって

肉体がボロボロになるなどの欠点を多く持っている。

 

今まさに、その『デメリット』が奏への枷となって重く圧し掛かっている

と言っても過言ではない。

 

「随分とお疲れのようですが、大丈夫ですかねぇ」

 

「!っ」

 

突然の声と気配に反応し、咄嗟に自分の横側へと視線を向ける。

 

するとそこには、あの蜘蛛式と同じような黒い布に包まれた…まさしく、

『ミイラ男』と称するに相応しい外見の男が立っていた。

 

「だっ、誰だお前! あの蜘蛛の化け物の仲間か?!」

 

「もし。もしも、もし。そうであったとしても……そんな状態になるまで

弱ってしまった貴方に何ができますかな?」

 

明らかな挑発的発言。普段の奏ならばこの程度の挑発に乗ることなどあり

えないが……今は制限時間の限界というデメリットの焦りから油断が生じ

敢えなく乗ってしまった。

 

「なめんじゃねぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!」

 

閃光のようなスピードを帯びた槍の一撃。

 

大抵の人間なら五体満足にならず、細切れと化すだろうが……生憎相手は

『普通でなければ人間でもない存在』なのだ。

 

これで呆気なく終わるほど甘くなどない。

 

「!! どこに…」

 

「ここですよ、お馬鹿さん♪」

 

ドシュッ

 

まるで、何かが肉に食い込み刺さるかのような……そんな鈍い音が奏の耳

に届きその鼓膜を震わす。

 

「え?」

 

そして気付く。その音の発生源が……『自分の脇腹を貫く一本の剣』だったと。

 

「がっ……はっ……」

 

血を吐きながら、その場に倒れ伏す奏。

 

「奏ぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーッッッッッ!!!!」

 

悲痛な叫びを上げながら奏の下へ向かおうとする翼だが、小型ノイズを生み出す

能力を持った大型ノイズが新たに生み出した大勢の小型ノイズに対応するだけで

精一杯だった。

 

「貴様はそこにいろっ、害虫!」

 

翼が動けないと知ったキバは、すぐさま跳躍し一気に奏の下へ向かおうとするが

それを空中から突然出現した飛行型ノイズの奇襲によって阻まれる。

 

「くっ! 邪魔だ害獣どもっ!」

 

今のキバの姿である、この『基本形態』では飛行型ノイズに分がある。

 

ならばと『緑色のフエッスル』に手をかけようとした時……。

 

「Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolronzen fine el

baral zizzl Gatrandis babel ziggurat edenal Emustolron

zen fine el zizzl………」

 

突如として、天羽奏という一人の少女によって紡がれる歌『絶唱』。

 

シンフォギア奏者自身が保有するエネルギーの運用効率を高めるアームド

ギアを介する、つまりアームドギアの延長に位置づけられる技である。

 

本来ならば、それは『命と引き換え』というほど危険なものではない。

 

ただ『シンフォギア装者に著しく負荷のかかる技』であるだけ。

 

その負担自体も適合係数が高ければ高いほど軽減できる為、問題はない。

 

しかし……その歌を『奏が歌っている』という点が問題なのだ。

 

リンカー頼りの後天的なシンフォギア適合者である奏は、適合係数が格段に

低いことに加え、『ネフシュタンの鎧』という完全聖遺物の起動実験の邪魔

となるシンフォギアのガーベッジ(不確定要素)を抑制するために薬剤投与を

控えた状態なのだ。

 

そもそもこのライブ自体、『ツヴァイウィング』の歌によってネフシュタン

の鎧を起動させる実験的意味合いも孕んでいたが故の奏なりの事情なのだ。

 

そんな肉体的状況で絶唱を行使すれば…耐久限界を超えた負荷を一身に浴び

『死』は免れない。

 

「ぐぬっ、があああああああああああっっっっ!!!!」

 

至近距離にいたミイラ男の闇霊『透式』は膨大なエネルギーの本流を喰らい

、周囲のノイズは大型や小型諸共消し炭へと変化して消滅していく。

 

圧倒的威力。そう言っても決して過言ではないかのように、ノイズも闇霊も

いなくなった。

 

ただあの蜘蛛式は運良く絶唱を利用して波動結界から脱出したらしく、透式

も大ダメージは受けたものの、何とか蜘蛛式と共に絶唱の嵐に紛れることで

免れたらしく、この場にはもういない。

 

「ちっ、逃げ足の速い死霊どもが…」

 

「おいっ! あの赤毛の姉ちゃん、ヤベぇぞっ!!」

 

キバットの焦ったような声を聞き、キバは倒れている奏とそれを介抱している

翼の両者を見据える。

 

「奏っ……どうして……」

 

「ははっ……悪い……でもいつか、こんな風に全部空っぽにして歌いたかった

んだよなぁ……」

 

命を炎を燃やしてまで歌った奏。その表情は何処か安らぎに満ちていて、これ

から死に逝く少女の顔とは到底思えないほど美しかった。

 

「もう……目は見えないし、翼の……声も……少ししか聞こえないよ……でも

…よかった……最後に歌えて……」

 

「いや、いかないでぇぇっ! 奏ぇぇぇぇっっっ!!」

 

「……くっ!」

 

キバにはどうすることもできない。救う手立てがないのだから。

 

ただ、ただ、自分の不甲斐なさを嘆き悔やみ拳を強く握るしかできなかった…。

 

 

 

 

場所は変わり、今一人の少女の命が消えようとしていた時。

 

魔界の荒野に聳えるチェックメイトシックスの一つ、ルークの本家。

 

そのレンガで覆われた城砦の一部を思わせるような屋敷の地下室にそれはあった。

 

チェックメイトシックスには、その証たる『遺伝魔皇力(ゲノム・フォース)』と

呼ばれるものがあり、遺伝の字の如く『その代ごとに受け継がれていく力』だ。

 

遺伝魔皇力は言わば『六家の初代当主たちの思念と魔皇力が融合したもの』で、

そうであるが故に『力』は次代の当主となる者を選定し託そうとする。

 

各々の遺伝魔皇力は新たなる次代の当主が現れるその日まで、『魔像王』という

特殊な石像に封じられる。

 

ルークの現当主は1年前に既にこの世にいない為、当然ながらルークの遺伝魔皇

力は獅子を象った魔像王に封印されている……しかし、今その魔像王は一人でに

震えていた。

 

何故か? 簡単だ。

 

『彼』は見つけたのだ。自らの力を継承するに相応しい者を。

 

魔像王の異変を逸早く察知したのは、代々においてルーク家に仕えて来た伯爵に

して執事『プローンファンガイア』へと変身することができる中流者『ヴァロン

・マーダック』。

 

地下室へと赴いた彼は、魔像王が放つ魔皇力の嵐に驚愕し、そして確信を得た。

 

「まさか……継承者が見つかったのか!」

 

『オオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーッッッッッ!!!!』

 

ヴァロンの言葉に答えるかのように、獅子は吼えた。

 

そして石像から解き放たれたオーロラのように輝く魔皇力は、魔界と人界の境界

線を苦も無く飛び越え、選べれし者の下へと向かった。

 

 

 

 

「う、うん……ここは?」

 

気付けば、天羽奏は見知れらぬ空間にいた。

 

まるでアフリカの大草原を彷彿とさせる光景。

 

夕陽が全てを照らし、何処か奏の心を安らげていく。

 

そして全てを…思い出させてくれる。自身のあの最期を。

 

「そっか。あたし……絶唱を使って死んだんだっけ?」

 

『貴様はまだ死んでいない。だが風前の灯ということに変わりはないがな』

 

突然の声に振り返る。

 

自分の後ろに立っていたのは、まさしく『獅子』を彷彿とさせる特徴を持ち

、両肩には石膏の彫刻に旗をつけ、ステンドガラスのような体組織の異形の

怪人だった。

 

彼の名は『初代ルーク』、『ルーク・フリッツマン』。

 

かつて初代ファンガイア王にしてキング、ドラキュラと共に戦魔大乱を生き

抜いた豪傑にして、『城砦の獅子』と謳われたその人である。

 

「あ、あんたは誰だ? まぁ人間じゃないのは分かるけどさ」

 

『……随分と冷静なんだな。普通は驚くものだぞ?』

 

「ノイズっていう化け物みたいな連中と今までやりあって来たし、最期の最期

でマジもんの化け物見ちゃったし、何てゆーか……まぁ色々慣れたわ。うん」

 

あまりに呆気なく、普通に淡々とそう答えてしまう奏にルークは少し面白さを

感じ、思わず吹いてしまった。

 

『ブプッ! ハッハッハッ!! そうかい。随分と神経が図太い娘っ子だな』

 

「そう言われると否定できないんだよな~~……っていうか、本当おたく誰?」

 

『ん? ああ、悪い悪い。俺の名前も含め色々教えてやるよ』

 

 

 

 

~~しばしお待ちを~~

 

 

 

 

『っていうわけだ。覚えたか?』

 

ルークがその口から語るもの全て、奏にとって信じられないものばかり

だった。

 

何せ自分たち人類がいる地球。その地球が存在する宇宙とは異なる次元

の空間の世界『魔界』からやって来た吸血鬼の種族だとか、今目の前に

いるルーク本人がその種族の中で最強の六人の一人や諸々など。

 

あまりの常識外な情報の数々に頭がどうにかなってしまいそうなほどだ

ったが、何とか自分でもできるだけ把握することができた。

 

「ま、まぁ~一応は……お浚いすると、ルークの旦那は『吸血鬼』って

ことでいいのか?」

 

『ああ。そうだ。そして死の淵にいるお前を救済する者でもある。この

まま死ぬか、さっき言ったルークの継承者となってファンガイアとして

転生するか……二つに一つしか選べないがどうする?』

 

「オッケー。じゃあ転生するって方向で」

 

『即答だな、おい。自分が人外になるんだぞ? 恐くないのか?』

 

ルークの奏に対する質問は正しいと言える。

 

そも、自分が人間で突然まったく別の生き物へと変貌してしまうという

のは……恐ろしいことに違いない。

 

更に言えば、ファンガイアの本能に自我を食い潰されてしまう危険性がある。

 

そうなってしまっては……後に残るのは、自身の哀れな『死』の結末のみ。

 

だが、奏は断言する。

 

「私にはまだ、やりたいこと。やらないといけないものが一杯あるんだ。

だから……今はどうあっても死ねないし、少しでも生きれる可能性がある

んだとしたら、あたしはそれにかけたいっ!」

 

確固たる決意が宿った戦姫の瞳。

 

それを見たルークはゆっくりと頷き、手を翳す。

 

すると奏の手の甲が光り輝き、一つの紋章が浮かび上がる。

 

城砦に薔薇を重ねたような意匠の紋章。

 

『これよりお前は、新たなるルークとなる。よってお前にはルークとして

の力を授ける。そしてキング……キバと共にその道を歩め』

 

「ああ、わかった」

 

『んじゃっ、そろそろ時間だ。せいぜい頑張れよ……天羽奏』

 

この言葉を最後に、ルークは目の前から姿を消し、奏も現実世界へと戻ろ

うとしていた。

 

 

 

 

現実世界のツヴァイウィングのライブ会場に舞台を戻そう。

 

突然降って来たオーロラのように輝く遺伝魔皇力が奏へと吸い込まれるように

入っていった瞬間、奏の体から凄まじい魔皇力が溢れ出る。更に彼女の顔には

ファンガイア特有のステンドガラス状の組織が浮かび上がり、瞳も美しい彩色

に染められた瞳へ変化する。

 

そして手の甲には『ルークの紋章』が刻まれていた。

 

「グルル……ウ゛ウ゛アアアアアアアアアアアァァァァーーーーーーーーーー

ーーーーーーッッッッッ!!」

 

獣のような咆哮を上げ、奏はキバ同様『人間では不可能な跳躍力』を発揮して

その場から去って行く。

 

「おいおいっ! 何であの嬢ちゃんが『ルーク』をっ?!」

 

「考えるのは後だっ! 追うぞキバット」

 

キバはすぐさまルークとなって暴走した奏を追うが、翼は呆然とし立ち尽くし

、そしてゆっくりと膝をついた。

 

何故キバのように後を追わないのか?

 

理由は簡単だ。『アレ』はもう奏ではないから。

 

未曾有の要因的な何かによって『人間ではない存在に変えられてしまった』。

 

少なくとも、あの豹変した奏を見ただけで翼は……本能的にそう感じたのだ。

 

「………奏………………ぅぅ……うわああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!」

 

もう既に陽は落ち、静寂の闇に包まれた会場で一人涙を流す戦姫の姿は……無残

にも痛々しかった。

 




奏がルークに覚醒! 

個人的に奏がルークってすごい合うと思うんですよ。髪型もライオンファンガイア
の鬣みたいだすし。

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