吸血姫絶唱シンフォキバ   作:イビルジョーカー

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けっこう掛かってしまってすみません(汗)

今回はいつもより文章長めでバトルシーンもあります。

書き忘れましたが、冒頭から一部グロテクスな表現がありますので
注意して閲覧して下さい。

では、どうぞ。





第6話 デュエットライブ/獅子と王 後編

 

 

 

そこはとある病院の一室。応接室のソファーに座るのは白衣に身を包んだ男性の医師と

つい最近退院したばかりの20代後半と思しき雰囲気の男性。

 

二人は向かい合うように退院の件を話題に談笑していた。

 

「本当に一時はどうなるかと思ってましたが、先生のおかげでこの通りです。先生には

感謝の言葉もありません」

 

「いえいえ、そんな。私は医者という一人の人間としての勤めを果たしたまでのこと。

感謝を云われる筋合いなんてありませんよ」

 

「謙遜しなくていいですよ。先生は自分の仕事に自信をもって下さい。先生の腕一つで

自分はこうして生き長らえ、家族に会えたんです。ですからそんな悲しいこと言わない

で下さいよ」

 

「三浦さん……こちらこそ、そう言って頂くだけでもありがたいですよ」

 

男性医師と対面しているこの『三浦健一郎』という男性は非常に危険な癌の病を患い、

余命宣告を告げられてしまったほどに何もかもが手遅れの状態だった。しかし知り合い

の紹介の下、ここに入院したおかげで有名な医師『佐崎藤雄』の手術を受け、今では家

族と共に幸せな家庭を謳歌している。

 

「とりあえず今日の検査の結果は今までと同じで健康的なので、もう通院する必要はあ

りません。晴れて完全に退院できましたね、おめでとうごじざいます」

 

「あ、ありがとうございます! これで家族にも余計な心配を掛けずに済みますよ」

 

「また何かあればいつでも連絡して下さい。最善は尽くします」

 

「先生のような方に会えて良かったです。じゃあ、この辺りで失礼します」

 

「ええ。お大事に」

 

互いに笑みを浮かべながら談笑を終え、ドアノブに手をかけ、応接室から出ようとする

三浦。

 

そんな彼の手首に……何かが巻きついた。

 

「え……な、なにこれ?」

 

それは『何かの触手』と表現するのに相応しかった。

 

いやよく見てみればそれは『何かの触手』ではなく、『蛸の触手』と訂正した方がいい

だろう。

 

何故蛸の足のような触手が自分の手に? そんな混乱と恐怖に何も言葉が出ず、震える

しかない三浦を後ろから声が掛かる。

 

「すみません。三浦さんに重要なことを伝え忘れてしまいました」

 

それは間違いようもない、先ほど談笑していた藤雄医師の声だ。

 

三浦はゆっくりと後ろを振り向きその姿を改めて確認する。得に何の変哲もなかった…

……背中から今自分の手首を絡めている蛸のような触手が生えているという点を除いて

は。

 

「手術費用とは別料金で支払って頂くものがあるんですよ。それは…美味しそうな血の

滴る貴方の内蔵です!!」

 

背中に生えていた一本の触手が、今度は何十本にも増えてそのまま三浦を絡め獲る。

 

恐怖と混乱を孕み含んだ、必死の叫び声を上げて抵抗するものの、逆にその声を聞いて

藤雄は愉悦という名の蜜を味わうかのような、そんな風な邪悪な笑みを浮かべる。

 

「ククククッ、いいですねぇ。希望に満ちた人間が急激に絶望に恐怖し、その死に際に

抵抗しようともがく姿は……私はね三浦さん、そんな貴方のような人間をご馳走にする

のが……この上もなく楽しくて悦んでしまうんですよ」

 

その言葉が、三浦という人間の『死』を確立させてしまった。彼は無数の触手によって

まず四肢を捥ぎ取られ、五臓六腑を引き釣り出されるという、そんな惨たらしい『調理

法』で捌かれ後、抉り取られた臓器の一つ一つを五つの大皿に置く。一皿目にとぐろを

巻いた状態の大腸を置き、その上に小腸、そして心臓を乗せる。

 

次に二皿に肺を。三皿に胃と膵臓を。四皿に腎臓と肝臓を。五皿に横隔膜と膀胱を。

 

それぞれ置いて綺麗に仕上がった料理を見て藤雄は更に悦の入った笑みを浮かべる。

 

「では、いただきます」

 

彼の瞳が深い蒼色に染まり、真の姿を現す。

 

まるで蛸そのものを思わせるような頭部に長髪のような蛸の触手、両腕はエビやカニな

どの甲殻類を思わせる緑色の外骨格に覆われており、片手にはカニのハサミがある。

 

胴体は虹色を帯びた魚の鱗に覆われ、両足は蛸の触手を幾重にも絡ませたような形状を

成していた。

 

「美味い……やはり希望に満ち、唐突に絶望へと落とされた人間の血肉はこの上もない

美味だな……ああ、本当に美味い」

 

臓器の一つ一つを、背中の触手の尖端にある花弁状に開く口でゆっくりと咀嚼しながら

味わい、そして飲み込んでいく。その都度彼は至福を味わうのだった。

 

「先生。私達もお腹空いちゃいました」

 

「いつもの賄いを下さい」

 

異形と化した藤雄の背後に二人のナースが現れる。一人は金髪を短めのポニーテールで

纏め、赤い瞳をした20代の女性。

 

もう一人は青みがかった黒髪のショートヘアーをした同じく20代の女性で、こちらも

赤い瞳をしている。

 

二人は顔を赤く染めながら、何処か艶かしい吐息を零しながら藤雄を誘惑するかのよう

に縋り付いて来る。

 

「はぁ、まったく堪え性の無い方々ですね。今日の賄いは、そこに置いてある三浦さん

です。この方の内蔵は実に美味ですので、筋肉も最高だと思いますよ?」

 

「本当ですかぁっ?! ふふ、それじゃあ頂きます!」

 

「……私も、いただきます」

 

二人はそれぞれ、先ほど藤雄が三浦から捥いだ、両腕両脚一つずつ手に取り一気にかぶ

りつく。

 

「んん~~美味しい! 身が引き締まってて、それでいて柔らかいこの歯応えと味…

…今日は当りですね、先輩!」

 

「ええ、一ヶ月前に食した女に比べれば断然当たりね」

 

何気ないその会話は、それが人間の手足を美味しそうに食べる光景でなければ普通だ

ったかもしれない。いや、そうなのだろうがしかし、現状が人外魔境のような凄惨な

光景である以上は異常の一言に尽きるしかない。

 

「食事中に失礼する」

 

そんな悪魔の食卓に一人の男が現れる。オレンジ色の布で身を覆い、その顔にテレビ

のような液晶画面が付いた存在……特異災害認定されている『ノイズ』の特性と力を

得た屍霊『騒霊(ノイズゴースト)』だった。

 

「これはこれは、随分と気が早い」

 

「そうか? まぁこちらとしては一刻も早く『キバ』と『サガ』を排除したいものだ

からな。気が早いのは仕方の無いこと。それで……私に協力してくれるのかな?」

 

「その件に関してはOKと答えよう。私にとってもキバやファンガイアどもは邪魔で

しかないのでね」

 

「結構。ではプランを実行に移すとしようか」

 

そう言った騒霊(オレンジ)のディスプレイは、まるで呼応するかのように妖しく光を

発した。

 

 

 

 

 

 

 

ドランの最下層に蔓延る入り組んだ迷路……暗闇と静寂が支配するこの空間に存在する

一室で、響は奏の協力の下『魔皇力共鳴』習得の修行を日々行っていた。

 

協力とは言っても奏のすることは、自身の魔皇力を特殊な水晶玉『シールクリスタル』

に注ぐだけで、それ以外はただ響の修行を音夜と見守るだけに過ぎない。

 

「響。もっと集中してイメージしてみろ。波長が大きく外れ過ぎてるぞ」

 

「う、うん!」

 

音夜の指示に従い、より一層意識を集中させイメージを固定化しようとする響だが、ど

うにもイメージが定まらないらしい。

 

しかし修行を始めてまだ一週間。たった一週間でも響は普通に比べればマシだと言える

方だ。

 

「………」

 

精神をより一層と研ぎ澄ませ、自分の意識をさながら睡眠状態のように無意識下に置こ

うとする。同時に水晶玉へ向けて手を翳す態勢を崩さず、自身の魔皇力と水晶玉に込め

られた奏の魔皇力、この二つの魔皇力の波長を合わせようとする。

 

だが結局巧く行かず、水晶玉は無残にも粉々に砕け散ってしまった。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……はぁ」

 

「今日はここまでだな」

 

そう言って音夜は響に近付くとスポーツドリンクの入ったペットボトルを渡し、その頭

に無骨ながらも優しさを感じさせる、そんな手を置いて笑みを浮かべる。

 

「なに、そう焦らなくても響は筋が良い方だ。この調子なら予定通りに習得できる……

と言っても問題は、その後だがな」

 

習得したとしても、それから後になって実を結ぶとは限らない。

 

音夜とて二度しか成功していないのだから、響が行使したとしても成功するかどうかは

定かではない。確証もない。

 

しかし響は……

 

「可能性云々言っても仕方にないよ父さん。今はこれしか方法がないんだから、やるだ

けやってみよう」

 

良く言えば前向き、悪く言えば後先を考えない、と言える発言だが音夜をそれを父とし

て嬉しく思う。

 

「まったく。本当にそーゆーところは紗夜に似てるな」

 

「当然! 僕は母さんの娘だよ?」

 

微笑み合う父と娘。そんな光景を前にして奏も釣られるようにして微笑むものの、その

顔には僅かながらではあるものの、不安を彷彿とさせるものが見え隠れしていた。

 

時刻は現在10時丁度。

 

今日は土曜日…つまり休日である為、思いのほか修行に専念できた。

 

「……ねぇ、一夏。静雄」

 

「ん? どうした明久。そんな思いつめた顔して」

 

「大方くだらねぇことでも考えてんだろ。いつもみたいに」

 

「失敬なっ! 今の僕はズバリ、奏さんの胸の大きさについて考えていたんだっ!!」

 

「「よし、とりあえずお前は相変わらずのバカだな」」

 

キャッスルドランの一室で一夏と明久、そして静雄の3人がそれぞれの自由行動を取り

つつ、そんな会話をしていた。

 

「いやいや、よ~く考えてもみてよ二人とも。あの胸の大きさ……Fカップ以上はある

って絶対!! あの年でだよ?! もうすぐ二十歳になるって言ってもあの年であそこ

まで大きくなるのは異常だよ?」

 

「ハッ、下らん。胸の大きさなど視野の外の外だ。いいか、良い女ってのは匂いと強さ

だ。それ以外は糞だ。この命に賭けてでも断言する」

 

「いや、それってただ単に一夏が匂いフェチなヘンタイだからでしょ」

 

「ヘンタイ言うな。大体胸しか興味が行ってない時点でお前の方がヘンタイだろうが。

自重しろ、この『妖怪半魚ヘンタイ』」

 

「一夏に言われたくないよっ! 自重するのはそっちだろ!!」

 

「なんだと?!」

 

互いに罵り合って睨み合う一夏と明久だが、そこで溜息を吐きながら静雄が割って入る

形で会話に加わった。

 

「やめろお前等。たかが自分の女の好みで喧嘩するってよぉ……恥ずかしくねぇのか」

 

至極真っ当な意見を言う静雄だが、そんな静雄に逸早く食って掛かって来たのは一夏だ

った。

 

「なら静雄。お前の女の好みって何だよ」

 

「は? いやいや、なんでそういう流れになんだよ」

 

「僕も是非聞きたいな。僕等の異性に対する好みをそうやって否定するのなら、自分は

どうなんだ! そこんところを語ってもらいたいな!!」

 

「………」

 

静雄は少し思案する。このバカどもに何を言っても無駄とすぐに理解した静雄は、とり

あえず自分の異性に対する好みを言ってみせた。

 

「アレだろ。一目見て一緒に喋ったりして、で直感的に『こいつに俺のガキを孕ませて

ねーなー』なんて思ったら、それが異性を愛するってことなんじゃないのか?」

 

好みどころか色々な意味で男気溢れた静雄の言葉に対し、不意打ちを喰らったとばかり

に何も言えず沈黙してしまう一夏と明久。

 

「……と、とにかく! 『胸が大きい』っていうのは、女の子の魅力の一つなんだよ。

それに関して言えば、うちのマカはその魅力の一つが欠けてるよ!」

 

「確かに。マカは芯を曲げず貫き通す強い部分に関しては良いことだが、やはり女らし

さは重要だ。あいつは女気じゃなくて『男気』に溢れてる感じがしてならんぞ。うん」

 

「そーそー。この間も『北○の拳』と『ゴ○ゴ13』の漫画買ってたし……ジャンルが

古臭いってのもどうかなって思うなぁ」

 

「マジかよ。花も恥らう女子が『北○の拳』や『ゴ○ゴ13』みたいな劇画タッチの漫

画って……あいつも色々と終わってんだな、春的な意味で」

 

「………おい、お前等そろそろイイ加減にした方がいいんじゃねぇのか?」

 

一夏と明久のマカに対する散々な評価に静雄は再び溜息を吐き、二人を諌める。

 

「でも本当のことだよ静雄」

 

「ああ。否定しようがない」

 

「……後ろ見てみろ」

 

そう言って静雄の指差す方向は明久と一夏の後方だった。そして二人が後ろを振り向く

と彼女が立っていた。

 

笑顔なのに何処かヤバイ空気を漂わせているマカの姿が、そこにあった。

 

「「あっ……」」

 

「へぇ~そうなんだ。そんな風に私を見てたんだ、二人は」

 

「い、いやっ、いやだな~マカ! そんなヤバイ空気なんか漂わせて僕の手首の関節が

向いては行けない方向に曲がってるゥゥゥゥゥゥゥーーーーーッッッッ!!!!!!」

 

「ぐあああああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!! お

、おお、俺の頭蓋骨……が……………ぐはっ!」

 

明久はマカの右手によって片手の手首を有り得ない方向に捻じ曲げられ、対する一夏は

マカの左手によって『一体どこにそんな力があるんだ?』と。問いかけたくなる凄まじ

い握力で頭を鷲掴みにされた。

 

もはや弁解の余地などなかった。

 

「人の趣味にケチつけてんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッッ!!!!」

 

そう叫びマカはまず明久を掴むと某鏡騎士ライダーで、カメレオンをモチーフにしたラ

イダーが使ってた『筋肉ドライバーもどき』を繰り出す。続いて一夏にはこれも某鏡騎

士ライダーでホワイトタイガーがモチーフのライダーが使用していた必殺技に似たよう

な感じの、そんな技で締め上げる。

 

「「…………(ちーん)」」

 

二人は完全に床に倒れ伏し、まったく返事がない。ただの屍のようだ。

 

「まったく。あっ、静雄。そのクッキー1個ちょうだい」

 

「ほらよ」

 

静雄はテーブルに置いてあった籠から四角い形のクッキーを1個だけ取り、それをマカ

に投げる。投げられたクッキーは綺麗な放物線を描きながらマカの手に収まる。

 

「う~ん、やっぱここのメイドさんたちの作るクッキーって美味しいわね」

 

「ああ。そうだな」

 

そんな何気ない会話の隅では、現在進行形で死屍累々状態の一夏と明久が倒れていると

いう、まさしく『シュールな光景』という言葉が似合うほどの雰囲気が形成されていた

 

「響の修行具合はうまくいってんのか?」

 

「うん。筋は良いほどだから、予定通り半年後にはできるようになるってキングが言っ

てたから心配ないよ」

 

「だと、いいんだがな……」

 

少し不安げな様子で紅茶の入ったティーカップを手に取り、口に含む。

 

芳醇な甘い味が口内に広がっていき、同時に仄かな香りが鼻腔を刺激しその心を和らげ

る。魔界にある、精神を落ち着かせ安定させる効果を持つ数種類の植物を使用して淹れ

た茶は今の静雄にとっては良い薬となっていた。

 

「不安なの?」

 

「……まぁな。伊達にあいつをちーせぇ頃から世話してたわけじゃねぇよ。それは一夏

や明久……お前だってそうだろ、マカ」

 

4人が響の側近兼護衛役として仕え、響の面倒を見て来たのは響が幼い頃にまで遡る。

 

そして今日まで響の成長を見守ってきたのだ。そんな理由だからこそ、響が行おうとし

ている魔皇力共鳴に対して一切の不安や焦燥など無いと言えば嘘になってしまう。

 

それほどまでに響個人を慕い、どこまでも付いて行くと決めたのだから。

 

「そうだけど、あの子が自分で選んで自分で決めてるんだから、私達がとやかく言って

も始まんないわ。やっぱそこは応援してあげようよ」

 

「ハッ、そうだなぁ」

 

マカの言葉に笑みを浮かべた静雄は、もう一度ティーカップに口をつけると一口ではな

く一気に飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

そこは……なにかで表現するというのなら『地獄』。

 

地獄としか言い表せないような場所だった。背景自体は彼女の知る街並みではあるもの

の、そこ等じゅうに生暖かい血が飛び散り、ある種のアートのようにも見えてしまう。

 

そして地面には数え切れないほどの人間の凄惨極まる死体が横たわっていた。ある者は

頭部を潰れたスイカのようにされ、ある者は四肢を?ぎ取られ、ある者は何らかの鋭利

なもので胴体を切り裂かれ、ある者は内蔵が飛び出ていた。

 

そんな恐ろしく壮絶な光景の中で赤い髪の少女……『天羽奏』は自分の両手を見ていた

。自分以外の誰かの血で染まった彼女の両手。それが意味する答えはつまり、この光景

の最たる元凶が奏自身であるということ。

 

「な、なんだよ……これ……どうして……っ!!」

 

自身の置かれている状況に困惑するしかない奏。そんな彼女の耳に誰かの声が届く。

 

「ママ……起きて……ねぇ、起きてよぉ……」

 

「!っ あれは……」

 

女の子がいた。茶髪をツインテールに纏めたその幼い子は母だったものにひたすら声を

かけて身体を揺らす。しかし、もはやそれは死体でしかない。もう二度と…起きること

はないのだ。

 

「お、おいっ! いったい何が……!っ」

 

何処からか声が聞こえる。同時に胸の奥から沸き起こるもの……それは『捕食本能』。

 

その対象は、目の前の女の子だった。

 

「ふっ、ふざけんな……ふざけんなよっ!! なんであの子を喰いたいって思ってるん

だよ! なんで、なんで………どうしてだアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

アアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」

 

沸き起こり止めることのできない本能にとうとう我慢できなくなってしまった奏は、そ

の姿をライオンファンガイアへと変え、宙に浮く透明な二本の牙『吸命牙』を女の子の

首筋に突き刺す。

 

そして女の子はそのまま……恐怖に声も上げることが出来ず、瞬く間にガラスのような

透明と化し砕け散った。

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

ああああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」

 

「うひゃああッ!」

 

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、夢……だったのか?」

 

先程の光景とは打って変わりキャッスルドランの一室のベッドから目を覚ました奏は、

息を大きく乱しながら周りを見る。

 

「だ、大丈夫ですか? 奏さん?」

 

「………あ、ああ……大丈夫だ。驚かせて悪かった」

 

無理に笑みを作り、不安げな響を安心させるように諭すものの、その様子から逆に響は

心配を強めてしまった。

 

「奏さん。何か怖い夢でも見てたんですが?」

 

「……………ああ、それが」

 

ぽつり、ぽつりと。

 

奏は響に夢の内容を伝え、そして自分の今置かれている現状に関して表には出さないも

のの、非常に恐れていることを赤裸々に語った。

 

「情けねぇよな。家族をノイズに殺されて防人になって、そんで自分なりに死線を越え

て……守りたいものもできて……死にかけた時だってあたしはルークの旦那に会って…

…そんで自分でこの道を決めた筈なのに………今になって私は……後悔してる……」

 

進んで異形の戦士となった筈なのに。

 

またノイズと戦い大切なものを守る為に、ルークの力を継承した筈なのに。

 

奏の心中はいつか自分の手で守りたいものをこの手で壊してしまうかもしれない恐怖と

苦悩、自分の選択に対しての後悔に満ち溢れていた。

 

その姿はあまりに弱々しく、奏をよく知る者達が見れば驚愕するかもしれない。

 

それは……彼女のことをあまり知らない響も例外ではなかったが、ほんの一瞬程度だっ

た。

 

「奏さん。僕は昔、自分の力を制御できなくて……大切な親友を殺してしまったことが

あるんです」

 

「!!っ」

 

突然の告白に目を大きく見開く奏だったが、そんなことなど構わずに響は続けた。

 

「でも、正直に言って『だから貴方の気持ちが分かります』とか『自分がこうなんだか

ら、貴方も大丈夫ですよ』なんて無責任なことは言えません。それはあくまでも他人か

らの視点で自分が自らの手で勝ち取った結果に過ぎません。所詮自分は自分で、他人は

他人ですから……でも、僕は自分で出来る限りのことは、奏さんの為に尽力するつもり

です。それが貴方を信じると決めた僕の選択ですから」

 

真っ直ぐな瞳を向けながらそう語る響の姿は、あまりに高潔だった。

 

高潔で、全てを統べる王としての風格を感じさせるものが、確かにあるのだ。

 

「私は……」

 

「!!っ まさか!」

 

突如として響に伝わるブラッティ・ローズの音色……それが意味する答えは一つ。

 

響の近辺で悪意や敵意を持った存在がいるという証明!!

 

「た、大変です! 市街でノイズとゴーストが出現しました!」

 

部屋の扉を勢いよく乱暴に開けるようにして入って来たメイドの一人が二人に異常事態

の発生を告げた。その報告に奏は驚愕を顔に映すが、対する響は自分の考えが的中した

ことに苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。

 

「父さんは?」

 

「それが、音夜様は現在オーストラリアでの魔族調査の為に不在で……クイーンや他の

チェックメイトシックスの方々は別のところにも発生したノイズ及び、ゴーストたちの

対処に向かわれています」

 

「そっか。じゃあ今対処できるのはキャッスルドランにいる私と一夏たちだけってこと

だね」

 

「現状はストリゴイの一部隊が住民の避難と防衛、ノイズ及びゴーストの殲滅を尽して

いるのですが、中に闇霊がいるらしく……」

 

「分かった。すぐ行くよ」

 

そう言って響は部屋を出ようとするが、奏が静止の声をかける。

 

「待てよっ! 私も一緒に」

 

「ダメです。まだ魔皇力共鳴が成功してないのに戦うなんて危険過ぎます」

 

「でも…」

 

「大丈夫! こう見えても僕、鍛えてますからっ!」

 

ウィンクすると同時に片手をピースにして敬礼するようにシュッと、スナップをきかせ

て決めたポーズでそう言う響は、部屋を出て、一夏たちと共に現場へと急行した。

 

 

 

 

 

 

 

「きゃあああああああああああああああーーーーーーーーーッッッ!!」

 

一人の女性が屍霊に襲われ、口付けを交わすようにライフエナジーを吸い取られる。

 

吸い取られた女性はその場に倒れるが数秒後にはすぐに立ち上がり、赤い血を目や耳、

体中から流す屍霊と転生を果たした。

 

「アアアア、アアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーッッッ!!!!!」

 

誕生したばかりで確固たる自我を持たない女性の屍霊は更なる獲物を求めて、まるで

ゾンビのように鈍間な歩みで市街地へと繰り出す。そこは今まで平和だった筈の東京

渋谷区の市街地の一角だったが、今となってはノイズやゴーストが蔓延る魔境と化し

ていた。

 

『これ以上の進行を許すなッ! この無法者どもを野放しにするなど言語道断と知れ

ぇぇッ!!』

 

サイを彷彿とさせるライノセラス・ファンガイアは、自分と同じように本来の姿であ

る怪人形態と化しているファンガイアたちに指示を飛ばしながら、そのパワーを秘め

た豪腕でノイズやゴーストを次々と粉砕するように殲滅していく。

 

部下もそれに負けず、ある者は闇魔術で、ある者は純粋な格闘技で、ある者は自身の

能力を最大限に生かしての攻防でノイズとゴーストたちを一網打尽にしていく。

 

しかしゴーストは冥府門から次々と出現し、ノイズも何処からともなく現れる為、実

のところを言ってしまえばストリゴイの一部隊は苦戦を強いられていた。

 

しかも敵の中には、ゴーストの上位個体である闇霊がいるのだ。

 

『ぐあああああああああああああああッッッッッ!!』

 

『がはァァッ!』

 

『や、やめっ……ぎゃあああああああああああああッッッッッ!!!!』

 

トンボ、バッタ、ハエを彷彿とさせる3体のファンガイアたちが闇霊『透式』が繰り

出す『目に見えない』斬撃と衝撃波でステンドガラスの破片へと砕け散り絶命する。

 

「貴方、と。貴方、と。貴方、には用なんてございませんのですよ。私はこの私に屈

辱的な重傷を負わせた天羽奏に用があるのです。従ってそれを邪魔するファンガイア

一同様には苦しみと絶望に満ちた死を送り届けさせてもらいます」

 

自分の身体を包み込む黒い布が触手のようにくねくねと蠢き、鋭い切れ味を纏うこと

でファンガイアたちへと一気に斬りかかる。

 

即死するほどの強力な技ではないが、それでも多大なダメージをファンガイアたちへ

与え、確実に押している。

 

『ぐぬっ……おのれ……』

 

「ははっ、いいですねぇ。その悔し顔。ではもっともっと痛ぶってあげましょう!」

 

更なる攻撃を加えようとする透式の前に真紅のバイク、マシンキバーに跨ったキバが

駆けつけた。

 

「大丈夫か、みんな」

 

『響様!』

 

『申し訳ありません。我々では足止めが精一杯で……』

 

「気にするな。それよりもお前達は冥府門を破壊してゴーストの増加だけでも阻止し

ろ、こいつの相手は私がする」

 

『御意!』

 

透式によって冥府門破壊の妨害を受けていた部隊の第1班、第2班、第5班はキバの

助力を貰い、冥府門への破壊を決行しに向かった。

 

「キバですか……私の邪魔をするなアアアアアアアアアアーーーーー!!!!!!」

 

キバの登場に対し透式は声を荒げ激昂し、布の刃を繰り出す。

 

しかしキバはそれを見事なフットワークで回避し威力を込めた蹴りを喰らわせる。

 

「ぐっ!」

 

「どうした。貴様の実力はその程度か?」

 

そう口にしながら、不敵な笑みを浮かべて更なる追撃をしようとするキバ。透式

もまた、不敵な笑みを零す。

 

「フフッ、いいでしょう。キバ相手に出し惜しみはできませんよねっ!」

 

透式は自らの身体を覆っている黒い布をパージし、その下の素顔を晒した。

 

「なにっ!」

 

しかしキバはその姿を見ることはできなかった。文字通り何の比喩でもなく……『

透式の姿は無かった』からだ。

 

「クックックック、驚きましたか? 私に元々姿のなど存在しないのです!!」

 

「ぐぬっ!」

 

視覚では感知することのできない『不可視の斬撃』と『不可視の衝撃波』がキバに

襲いかかる。その攻撃の数々を完全に防ぐことは不可能だが、この身に受けるダメ

ージを半減する形で受け流していくことはできる。

 

しかし四方八方…いや、周囲全域に渡る全方位から息つく暇もなく襲い掛かって来

るこの状況下では、反撃することもできずただ防御の態勢を取る以外にない。

 

そしてそんな状態がいつまでも持つ筈もなく…防御態勢を崩してしまったキバは目

視することのできない攻撃の嵐に見舞われ、勢いよく地面へと叩き付けられてしま

った。

 

「くっ……」

 

「ふふふふ。さすがのキバも目に見えない相手にはお手上げですかな?」

 

その姿はやはり目視できないものの、相手に対する蔑みと傲慢に満ちた耳障りな声

が響き渡り、キバの鼓膜を震わせる。

 

「……悔しいが、確かにそうだな。私ではお前を見つけることはできない」

 

何処か思わせぶりなものを感じさせるキバの言葉に透式は怪訝な表情を浮かべるが

、すぐにそれを認識させられた。

 

背後から迫る殺気。それに透式は横へバックして避けようとするが、それよりも早

く狼の爪が見えない筈の透式を切り裂いた。

 

「視覚で感知できないのなら、嗅覚かそれ以外で感知すればいいわけだ。幸い俺は

鼻がけっこう効く方なんでな」

 

狼の爪……その正体は肩のみを本来の姿へと変身させた一夏だった。

 

「すまない。助かった一夏」

 

素直に礼を言うキバだが、そんな言葉を鼻で笑うかのような表情を浮かべた一夏は

青い炎のようなオーラを発しながらそれに答える。

 

「業腹だったらにしろ……あまり先走るな響」

 

「そーそー。僕等がいることを忘れちゃ困るよ」

 

「まぁ、響らしいけどな」

 

「同感ね」

 

一夏の後を追うように明久と静雄、そしてマカの3人が姿を現し、一同に集結した

ことで透式の有利に置かれていた形勢は一気に逆転した。

 

「き、き、貴様等! たかが王様気取りの小娘の下僕如きが! なに私に傷をつけ

て……!!っ」

 

ここで透式は自分の失態に気付いた。

 

先程の一夏からの攻撃によって胸と背中の部位に傷を付けられてしまったことで、

自分の位置が完全に把握できる状態にされてしまっているのだ。これでは『不可視

の身体』という戦術的利点など、何の意味もない。

 

傷から流れていく自らの黒い血を見ながら、透式はヒステリックのような叫び声を

上げゴーストの『召喚術』を行使する。

 

「冥府にて蠢きし我が同胞達たちよ! 我が声を聞き届け、今ここに顕現せしめん

とせよオオオオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーッッッッ!!!!!!」

 

透式の言葉に呼応するかのように通常よりも一際大きな冥府門が地面へと出現した

。底知れぬ沼のようなおぞましさを孕んだ冥府門から、青みがかった灰色の人間の

ような腕が出て、やがてすぐにその全貌が明らかになった。

 

全長は10mにも匹敵する人間の頭部。その表情は嫌悪感を無意識に起こさせる、

そんな不気味さを滲ませた笑みを浮かべている。

 

次にその頭部を支えているであろう脚は人間のそれと変わらず、3対で6本という

形で頭部の顎の下に生えていた。

 

更に続いてそんな脚の生えた頭部の上にはミミズかナメクジのような、むしろその

二つを合わせたようなワーム的生物が付いており、その口から悪寒を奔らせる唾液

と鳴き声を漏らしている。

 

それが計5体ほど存在しているという光景は、もはや悪夢そのものだろう。

 

「ククックックックック!! 美しいでしょう? 幾多の我が同胞が絡み合い凝固

し、形を得た存在! その名も『堕天式』!!」

 

透式が呼び出したのは、ゴーストにおいて一度死んだことで肉体を失った闇霊と屍

霊が集合体となって誕生した巨大ゴースト『堕天式』。

 

「う、うわ~キッモイ。あんなのと戦うの?」

 

「わ、私もさすがにアレはちょっと……」

 

あまりにグロテクスな堕天式の容姿にかなり引き気味な明久とマカだが、それを一

夏が切り捨てた。

 

「文句を言うな二人とも。戦場に立った以上は相手の選り好みなんぞ期待するな」

 

「どっちにしろ……敵ならぶっ潰せばいいっつー話しだろ!!」

 

腕を元に戻し、上半身に着ていたタキシードを切り裂くように脱ぎ捨てる一夏。

 

その肉体は精錬された筋肉が引き締まっており、中々に戦士を匂わせる風貌だ。

 

やがて一夏は両手をクロスさせ目を閉じ、そのまま無意識の深淵へと入り込むかの

ように意識を集中させる。

 

この動作は意識を集中させることで自分の中に秘め持つ、ありとあらゆる感覚を研

ぎ澄ましていくもの。そして全てが一気に解き放たれる、『その時』をじっと待つ

のだ。

 

その時はそう長くは掛からなかった。

 

極限まで神経と感覚が研ぎ澄まされた瞬間、爆発とも捉えることのできる蒼い魔皇

力を全快に開放し、その姿を大きく変えた。

 

「アオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーンッッッッッ!!!!」

 

轟くは狼の咆哮。恐怖が澄める静寂の闇夜の森を支配する人狼種族の叫び。

 

その姿を狼の獣人『ガルル』へと変えた一夏は、ウルフェンの得意技である俊足を

生かし、堕天式の背後へと回り込む。そして鋭利な爪でズタズタに切り裂いていく

 

『■■■■■ーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!』

 

おぞましい、それこそ地の底から地獄の責め苦を受ける亡者のような絶叫を上げ、

頭部のワームで背後にいるガルルを飲み込もうとする。しかしそんなことなど歯牙

にかけることでもない。と、言わんばかりにワームの攻撃を回避、そのまま怖気の

奔るワームを縦一閃に切り裂いた。

 

更に叫び声を上げる堕天式だが、そんなことをしたところでガルルの攻撃が終りを

告げることなどない。

 

『やかましい。これでも喰らっとけ』

 

そう言い、ガルルは鋭い牙で堕天式の天辺へと噛み付く。

 

無論ただの噛み付きで終わらすほど一夏もバカではない。

 

噛み付くその瞬間。自身の魔皇力を牙を通じて堕天式の体内へと送り込み、魔皇力

同士の食い合いを引き起こし暴走を促す。

 

体内で他者の魔皇力と自分の魔皇力がその存在を喰い合うのだとしたら、一体どう

なってしまうのか……その明確な答えは、ダークフリークスの『破滅』を意味する

 

『獰猛なる狼牙の浸礼(ガールル・フェン・テスプ)……』

 

その言葉が、まるで引き金の役割を果たすかのように、おぞましい断末魔の悲鳴を

上げながら堕天式の1体が黒い血飛沫を噴出し沈黙する。

 

『所詮は亡霊の寄せ集め。こんなもので俺をどうにかできると思うな』

 

「チィィッ!! 貴様等! こいつ等を足止めしとけ!!」

 

透式は残っている堕天式やその場にいる屍霊たちにそう指示を飛ばすと、その場の

指揮を放棄し自衛の為の逃走を決行。その姿は、軍団を指揮する者にはとても見え

ない。

 

『響、お前はあいつを追え』

 

「「「ここは俺(私)(僕)達で食い止める!!」」」

 

「……わかった。我が命は一つ『死なずして敵を殲滅しろ』」

 

そう言い残すと、キバはマシンキバーに再び跨りエンジンを吹かし、すぐさま透式

の追跡を行う。無論そうはさせまいと響の下へ立ち塞がろうとするが彼女が信頼す

る側近達によって、その目論見は阻止された。

 

『さぁ来い。我等13魔族の戦士を相手に何処までやれるか……見せてみろ!』

 

亡霊の群れの前に立ち塞がりながら、ガルルを筆頭に次期ファンガイア王に仕えし

戦士たちは、無数のゴーストとの戦いの火蓋を切った。

 

 

 

 

 

 

 

路地裏の拓けた平地で足を止めた透式は、マシンキバーで自分を追跡しているキバ

を待ち構える。そして、ビルとビルの間の道を駆け抜け、キバは平地で透式と対峙

する。

 

「どうした。降参というわけでもあるまい。何かの罠でも仕掛けているか、あるい

はここで正々堂々と決着でもつけるつもりか?」

 

「クッ……ハハッ。言っておきますが、何も私は、無策無知で貴方相手にここまで

してるつもりはありませんよ?」

 

あくまでも余裕を崩さない透式の口調とその雰囲気にキバは更に警戒を強めながら

、周囲の気配を探る。そして、それを感じ取ったのは、透式が自分の足元に目がけ

放った不可視の斬撃が地面に着弾した瞬間だった。

 

「なっ!」

 

キバの足元の位置にある地面。そこから無数の青白い植物の根のようなものが生え

たかと思えば瞬く間のキバを身に巻きつくかのように彼女を拘束する。

 

「魔族の中でも最強種として君臨するファンガイアにも天敵に成り得る生物がいる

。ファンガイアの魔皇力を餌に増殖し、ファンガイアにとって有害な猛毒を分泌す

る魔界産の植物『カーズラッヅ』。魔皇力を搾り尽くされるか、それとも、猛毒に

蝕まれるか。どちらをとっても死ぬのは変わりありませんけどね!」

 

「ぐ、が、ああ、あああああああああああああああああああああああああーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 

キバの身体を拘束しているカーズラッヅの蠢く枝から管のような突起物が発生し、

それが体の様々な箇所に突き刺さり、キバは刺される痛みと魔皇力を吸い取られる

と同時に猛毒な物質を流し込まれる苦しみに対し、思わず声を上げる。

 

「天羽奏に与えられた屈辱を晴らすというのも、ちゃーんと目的に入ってはいます

が、それだけじゃ仲間が煩いものでしてね。だから私の言い分を正当化させるには

それ相応の手土産が必要なんですよ。次期ファンガイア王の骸という土産が」

 

「がぁぁッ! き、き、貴様……」

 

抵抗しようにも途方もない苦痛がその身を蝕み、キバの命を徐々に削り取っていく

。このままではあと数分もしない内に死に至るだろう。

 

「そいつを、放せぇぇぇぇぇぇーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」

 

薄れていく意識の中で、キバにとっては聞き覚えのある声がその耳に伝わって来る

。その正体は、瞳を虹色に光らせ顔の下部をステンドガラスの模様を浮かび上がら

せた、天羽奏本人。

 

彼女は自分の両手の爪を鋭く伸ばし、カーズラッヅを切り裂く。

 

その際、ダメージによって変身が強制的に解かれてしまった響を抱かかえ、透式と

3ヶ月ぶりの対面を果たす。

 

「よう。あん時は世話になったな」

 

「こちらこそ。私も貴方を殺す日を常に待ち焦がれていましたよ」

 

透式はそう言って『不可視の衝撃波』を繰り出す。しかしその衝撃波はキバットが

生み出した風圧で防がれた。

 

「このバカヤロウがッ! なにルークの力使ってんだ!! いくら俺がコントロー

ルで抑えてるからって、いつ暴走するか分かんねぇんだぞ!」

 

いつものお調子の良い壮快な態度ではなく、本気の義憤をもってして怒鳴るキバッ

トに奏は少し怯みながらも、はっきりと答える。

 

「んなこと、あたしだって分かってるよッ! でもな……あたしだってもう、見て

るだけなんてのは嫌なんだよ。戦える力があるなら……使って守りたいものを守る

んだよ!!」

 

奏は忘れない。

 

自分を逃す為にノイズに襲われて炭の塵と化した両親、そして守ると決めた筈の妹

が両親と同じ末路を迎える、その不条理で無情な光景を。

 

だからこそ、彼女は立ち止まれない。

 

例えその身が人外になろうともその足で、立ち上がり、最期の瞬間まで自身の選ん

だ道への歩みを止まらせはしない。

 

そんな奏にキバットは何を思ったのか……深い溜息を吐く。

 

「………ちっ、しゃーねぇーな。ここは俺が食い止めてやるから、モディリアーニ

の姐ちゃんは響を連れてキャッスルドランに戻れ。マジでヤバイ猛毒に身体が侵さ

れてるから、全速力でルークの力を解放しないよう守りながら、キャッスルドラン

に行け。ちーっとばかし無理難題だが……できるな?」

 

「わ、分かった!」

 

キバットの言葉に従い、響を抱えたままその場を離脱しようとする奏だが、当然の

ことながら透式が見逃す筈などなかった。

 

「な~にふざけたことを言ってるんですかねぇ、貴方達はッ! 纏めて土産にして

やりますから、やられちゃって下さいよォォッ!!」

 

透式の両手から不可視の斬撃が繰り出され奏と響を狙うが、キバットはそれを赤い

オーラ状の、先程よりも威力のある風圧でまたも防いでしまった。

 

「チッ、古くからファンガイアに媚び諂うだけの下等魔族が私の邪魔をするな!」

 

「下等魔族? おいおい、そいつはちっとばかり聞き逃せねぇぞ」

 

小さき身でありながらもキバットは凄まじい魔皇力の赤いオーラを放出する。

 

「下等かどうか、直々に教えてやる。このキバットバット三世がな」

 

赤いオーラがキバットの身を包み、彼を変化させた。

 

やがて姿を現したのは、あの蝙蝠に似た姿ではなく『人間の男性』のその物の姿だ

った。袖と襟の部分が赤く漆黒のロックミュージシャン風の格好をした、少し伸び

た金髪が目立つ青年となったキバットは、自身の横に魔方陣を出現させその魔方陣

から一振りの剣を取り出す。

 

それはポーンに仕えしキバット族最高の魔工器製作の名匠『モトバットバット四世

』が鍛え上げた魔皇剣『フレイムバットソード』。

 

「来い性悪亡霊。二度と現れないよう成仏させてやる」

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ、こんのクソがァァァァァッッッッ!!」

 

キバットが透式を相手にしている頃。自身の心身を侵して行く、ルークの魔皇力に

抵抗し苦しみながら、ひたすらに走りキャッスルドランへと向かう奏。

 

響の容態は深刻だった。

 

カーズラッヅが注入にした猛毒は、確実に響の身体を蝕んでいく。

 

48℃の高熱に呼吸困難、激しい痙攣など。普通の人間なら確実に死んでいる筈の

その他諸々の症状が響の身一つに降り掛かっていた。

 

そんな状態でも生きていられるのは、やはり。その身体に流れているファンガイア

の血のおかげと言わざる得ない。

 

 

「シャァァッ!」

 

「なにっ?! ぐあッ!」

 

得体の知れない奇声と共に一本の白い粘着質を有する糸の束が、奏の足を絡め取っ

たせいで転倒してしまい、響が前方へ投げ出されてしまった。

 

やがて頭上から、糸を伸ばした犯人が姿を現す。

 

「悪いなぁ、お二人さん。俺の手柄の為に死んでくれや」

 

蜘蛛のような特性と外見を有した闇霊『蜘蛛式』。

 

あのライブの事件以降、透式と同じくその姿を冥府にて潜ませていたが、どうやら

透式の計画に便上する形でこの場に現れたようだ。

 

「ぐ、こんの……」

 

「おっと。お前、ルークになったんだってな。だったら尚のことルークの力を全開

にしない方が身の為だぜ。『チェックメイトシックスの成り立て』ってヤツはすぐ

暴走しちまう危険性があるからなぁ~」

 

「か、奏…さん……」

 

頭の中が混沌とし、意識が蒙昧という状態でも立ち上がろうとする響。そんな彼女

に対し蜘蛛式は裂けた花弁状の口でおぞましい笑みを浮かべると、倒れている奏の

背中を一気に踏み付ける。

 

「がっ、あああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!」

 

「お前はそこで大人しくしてろ。そんでもって、自分の超が付く無能さで大切なも

んが壊れる様を見ながら、懺悔の一つでも祈ってろ!」

 

生々しい音が嫌になるほど周囲に響き渡る。自分の中のルークを抑える苦痛に加え

蜘蛛式が与える二重の苦しみ……それはいかに戦士として鍛えられた奏とは言え、

想像を絶するものだった。

 

そんな奏の姿を蜘蛛式はより一層と嘲笑い、今度は腕、肩、足、様々な箇所を踏み

付け、その都度に悲鳴を上げる奏の姿を眺めることでその残虐心を満たしていく。

 

その陰湿ともとれる凶悪さは、かの名高き13魔族の一つだった『レジェンドルガ

族』に匹敵するものがあるだろう。

 

そしてその光景を間近で見ている響は、心の根底から義憤と焦燥が浮かび上がり、

同時に脳内に『あの日の出来事』が投影される。

 

幾多に渡る異形の者達の屍と、『自分にとって最愛だった男の子の首』を抱え込み

、天を穿つようにして泣き叫ぶ血だらけの自分。

 

その記憶と共に鮮明に沸き起こる二つの感情がある……それは。

 

何者をも壊すことのできない盾の如く、大切な皆を守りたいと言う堅い『意志』。

 

何者をも貫き切り裂く剣の如く、大切な皆に仇成す者を討つと言う鋭い『決意』。

 

決意と意志が、響に力を与えた。

 

「奏さんに……手を……出すなアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア

アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーーーーーーー

ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!」

 

まるで叫びをキーとするかのように彼女の足元に強烈な赤い光を放つ『キバの紋章

』が描かれた円形の魔方陣が現れ、凄まじい魔皇力の嵐が吹き荒れる。

 

「はぁぁぁぁ…………はァァッ!!」

 

しかし嵐は響が一喝することで急激に静まり、ある変化が現れ始めた。

 

「!っ……こいつは……体が回復してる?! いや、それだけじゃない!!」

 

その異変は奏の身体に負ったダメージを瞬時に回復させ、尚且つ暴走しかけていた

ルークの魔皇力を抑え沈静してみせた。

 

奏は意を決してルークのファンガイア形態……『ライオンファンガイア』へと肉体

を変化させたが、あの時のように暴走することはなかった。

 

『おいおい。まさかこれ……魔皇力共鳴に成功したってことなのかよ!』

 

「ど、どうやらそうみたい、ですね」

 

少しフラつきながらも先程よりかは顔色が良い響は、苦笑を挟みながら答える。

 

『だ、大丈夫なのか?』

 

「あははは……火事場の馬鹿力ってヤツですね。完全にじゃないけど、僕も戦える

ぐらいには回復できました」

 

大分回復したとは言え、病み上がりの身体に鞭を打ちながらも響は立ち上がり叫ぶ

 

「キバット!」

 

「呼ばれて来たぜ! オラァッ!!」

 

いつもの蝙蝠形態に戻っていたキバットは、両足で掴んでいた『それ』を地面へと

投げ捨てる。それは身体全体が緑色の鱗に覆われ、何重にも巻いた長い尻尾を持ち

、顔の形状は一般男性のそれと変わりなく髪も生えているが、両目がカメレオンの

眼そのものとなっていた。

 

まさしく『怪人カメレオン男』とでもネーミングしてしまいそうな外見だが、口を

含め身体の何箇所から黒い血液が滴り落ちているのを見る限り、闇霊であることは

間違いない。

 

「そいつはあの透明人間野郎だ。見た目どおりのステルス能力に長けてたみたいだ

ったが、俺様にかかればこの通りだぜ!」

 

そう自信満々に言うキバットだが、蜘蛛式はそれを見て動揺する以外になかった。

 

「透式?! てめぇ、何やられてんだよ!」 

 

「うるさい!! それよりも二人係で奴等を仕留めるぞ!」

 

もはや後がない。そう確信した透式と蜘蛛式は互いに並び構えを取る。

 

『ハッ、上等だ。今までの借りはここで清算させてもうぜ!!』

 

「ギャブッ」

 

ライオンファンガイアである奏も構えを取り、響は当然の如くキバットを使い変身

する。

 

場所を先程の平地に戻し、両者は互いに激突する。

 

「嘆きし蜘蛛男爵の咆哮(イボス・レーン)」

 

蜘蛛式は自らの術式である『糸武伸』を駆使した技を使い、奏ことルークを攻撃。

 

竜巻状に向かって来る蜘蛛の糸などに屈さず、ルークは自身の専用武器である身の

丈ほどの棍棒を振るい回し、その絶大な回転力で蹴散らすように防ぎ切る。

 

「今度はこっちの番だ!」

 

ルークは、自らの魔皇力を電気状に棍棒へと溜め込み術式を行使しようとする。

 

ここで説明を加えるが、魔法術の術式というのはその種族が共通して使う『共同術

式』と共同術式を個人が派生させ、独自に編み出した『固有術式』の二つがある。

 

また共同術式でなく、自らの能力そのものを術式として編み出した固有術式もあり

、蜘蛛式の『糸武伸』がその例に該当している。

 

では、今ルークが発動しようとしている術式は?

 

答えは……初代ルークが編み出した術式を自分なりに改良し、独自にアレンジした

もの!

 

『散り穿て、『千雷の棘(レオ・ン・ルーニ)』』

 

それはかつて奏が使用した技の一つを術式として組み換えた技。棍棒は実体を持た

ない幾千もの雷の棘となり、蜘蛛式を容赦なく貫いた。

 

「ガァッ……そん……な…馬鹿なことがッッ!」

 

そんな最期の言の葉を紡ぎ、蜘蛛式はその身を迸り致命的なダメージを負わせ続け

る青白い火花を散らせる雷に抱かれ爆死した。

 

時を同じくして一方、キバはステルス能力を失った透式を相手に善戦するものの、

透式はあの不可視の攻撃を用いたトリッキーな戦法で責めて来る為、実際のところ

は互いに五分五分といったところか。

 

「くひ、ひひひひひひひひひひっっ!! いくら、いくら私自身の透明化が失われ

ても……私自身の攻撃までは可視することなどできはしないっ! これが私の固有

術式『透化水月』の力ですよ!」

 

「(厄介だな。攻撃を繰り出した瞬間、魔皇力を使った痕跡はあるが、衝撃波自体

に空間の歪みや砂埃の舞、微小な風の動きが殆どない。まるで本当に存在していな

いかのような……それなのに確かにダメージは受けている。そんな攻撃だ)」

 

技を繰り出すのであれば、例えばサッカーボールを思いっ切り蹴ったとすれば、砂

か埃が舞い空気の動きにも変化が生じる。

 

しかし透式にはそれがまったく見受けられない。姿を消したとしても、そこにある

限り物体が動いた際の周りに変化が生じるのは当然の理だが、それがまるで無いと

言うのは非常におかしな話だ。

 

そうなると……ありもしない偽りの幻影を見せる『幻術』による術式が当て嵌まる

が、幻術はあくまでも精神を汚染し、相手の情報暴露やマインドコントロール……

または弱みに漬け込む、といったタイプのものなので、直接的な肉体へのダメージ

は不可能だ。

 

だとしたら……ますます謎が深まってしまう。

 

「おい響! こいつはヤベぇぞっ! 早く何とかしないと…」

 

「ええい、わかってる! こっちだって考え中だっ!!」

 

響に間を取らせず、その脚力から生み出されるスピードを駆使して、トリッキーな

戦法を続けている。正直言ってかなりウザったらしいのが本音だ。

 

そんな戦法の前にキバは最初こそ格闘戦術で地道にダメージを与えていたが、今の

現状は防戦一方だ。

 

「ん? 待てよ………………ああ、そうか。それなら合点がいくか」

 

キバの中である方程式が浮かび上がり、それに対して納得を感じたキバが口の端を

吊り上げ小悪魔的な笑みを作り出す。

 

そして足元に魔皇力共鳴の術式魔方陣を発現させ、キバットとの魔皇力共鳴を行使

した。

 

「!!っ ま、まさかお前……もう習得したのかよ!」

 

「ああ。何度成功できるか分からんがな!」

 

キバの魔皇力とキバットの魔皇力が喰い合いを起こすことなく調和し合い融合する

。まさしくパーフェクトハーモニー……『完全調和』と言ったところか。

 

「はははっ! 何をやろうとしても無駄だァァッ!!」

 

またも繰り出す不可視の斬撃と衝撃波。しかし今度は喰らうことなく、キバは何食

わぬ顔で首を傾げる。

 

まるで『どうした?』とでも言わんばかりに……。

 

「な、何故だ! 何んで攻撃喰らっても平気なんだよ?!」

 

「はっ、白々しい。元々『そんなものないんだろ?』」

 

その言葉に驚愕を浮かべる透式を捨て置き、キバは解説を始める。

 

「貴様の術式『透化水月』の本質は『プラシーボ効果』のそれと似ているな。ある

と思い込ませることで、肉体に影響を及ぼさせ『ある筈のないダメージを作り出す

』。それが正体だ」

 

プラシーボ効果とは、偽薬(一見薬のように見えるが、実際は薬として効く成分が

まったく入っていない偽物の薬を指す)によって相手を信じ込ませ、病の改善効果

を促すことを言う。

 

精神が肉体に影響を及ぼす事例というものは実際にあり、上記のプラシーボ効果以

外に上げるならば、妊娠していると妄想することで本当に子宮が膨らみ、あたかも

本当に胎児がいるかのように見える『想像妊娠』などがある。

 

ようは『信じ込ませるという暗示によって肉体にその作用を促す』、というのが透

式が行使する『透化水月』という術式の実態だ。

 

透式の場合は幻術を使い、相手を知らぬ内に催眠状態することで通常のプラシーボ

効果よりも強力的に底上げすることで、あの不可視の斬撃や衝撃波……それを受け

た時のダメージなどを現実に有る物として錯覚させたのだ。

 

そしてそれを知ったキバは、キバットとの魔皇力共鳴によって幻術のせいで乱れて

しまったお互いの魔皇力の流れを正常に戻し、催眠状態を強制的に解除したのだ。

 

「魔皇力のコントロールに長けたキバット族との共鳴は、催眠状態を打ち破るには

効果的だ。おかげでこの通り、というわけさ」

 

「へっ、どうだ? これでも俺を下等魔族なんて言えるかよ? カメレオン野郎」

 

「き、貴様等~~~ァァッ!!!!」

 

いきなりの形勢逆転でどうしようもない状態にまで追い込まれた透式は逃亡を図る

が、キバが作り出した波動結界によって拘束されてしまい、同時に波動結界から溢

れる魔皇力によってダメージを徐々に負っていく。

 

「よし響! そろそろフィナーレと行こうぜ!」

 

「ああ。行くぞっ!」

 

キバットとそんな会話を交わしたキバは、ベルトの両側についているスロットから

赤い色のフエッスルを取り出し、それをキバットに吹かせる。

 

「『ウエイク・アップ!!』」

 

何かを呼び寄せるような、そんな音色が周囲に響き渡った瞬間。世界は一変した。

 

まだ夕方だった筈の茜色の空は漆黒の夜の闇へと覆われ、三日月が浮かび上がる。

 

同時にキバの右脚にある鎖の拘束具『トライシルバニア』と呼ばれる魔界産の銀で

作られた『カテナ』を解き放ち、『地獄の門』の名を冠する魔工器『ヘル・ゲート

』がその血の様に紅い蝙蝠の両翼を広げ、同時に魔皇力を開放する。

 

「はぁぁぁぁぁ………………ハアァッ!!」

 

右脚を空高く上げ、その姿勢のまま天高く飛び上がるキバ。

 

そして。空中で一回転しキックの態勢を作るとそのまま透式の下へと急降下する。

 

それはまさしく、受ける相手から見れば地獄からの使いにして『死の宣告』と同義

に等しいキバの必殺技の一つ『ダークネス・ムーン・ブレイク』が透式の全てを滅

ぼす!!

 

「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

あああああああーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!!」

 

まるで地獄へと落とされたかのような。そんな苦痛と後悔に満ち溢れた断末魔の叫

びを上げ、透式は無残にも爆死した。

 

自分が立っていた位置にキバの紋章を残して……。

 

「チェックメイト……だな」

 

「こっちも終わったぞ、響」

 

人間態へと戻った奏が笑顔を向け、ピースすることで勝利のサインを送る。

 

キバも変身を解き、同じくピースすることで勝利のサインを返す。

 

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ

ッッ!!!!!!!!!!!」

 

やがてキャッスルドランが現れ、2体の闇霊のライフエナジーを捕食した後。

 

天上を震撼させるかのような、そんな咆哮を上げる。この戦いに勝利した二人を祝

福するかのように……。

 

 

 

 

 

 

 

『ふふっ、蜘蛛式様と透式様は死にましたか。まぁ、そもそも何の命令もなくキバ

を倒そうしたのですから、当然と言えば当然の報いですけどね』

 

先程の戦闘を近くのビルの屋上から見ていた一体の騒霊(オレンジ)。その姿をまる

で蝉を彷彿させるかのような、そんな生物的特徴を有した形状に変化した彼は溜息

を吐きながら、そう呟く。

 

『他の騒霊共もそうだが、誰にもキバは渡さない……キバは、私の獲物だ』

 

そう言って彼は、頭部のモニター部分をより一層と妖しく光らせながら、姿を消し

ていった。

 

 

 





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