シンフォギア×仮面ライダー鎧武・異聞   作:日高昆布

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新作です。また仮面ライダーです。楽しんで頂けたら嬉しいです。

感想・批評よろしくお願いします。


その1

 いつだって警戒アラートは突然だ。談笑していた者を、訓練に勤しんでいた者を、研究に没頭していた者を容赦なく緊張と不安に陥れる。

 

「これは…?!」

 

「何事だ?!」

 

 動揺するオペレーターを落ち着かせるために、風鳴弦十郎が強く通る声で問うた。

 

「ギャラルホルン保管室に、生体反応があります!」

 

「何だと! 映像を出すんだ!」

 

『ギャラルホルン』。終末の訪れを告げる笛の名を冠されたこの完全聖遺物は、カルマノイズが発生した並行世界とを一方的に繋ぐ力を持っている。また聖遺物を纏わぬと通過できないと言う特性を持っている事もあり、基地内部に侵入しない限り、保管室内に生命体が現れる事はあり得ないのだ。

 カメラの操作は既にされており、弦十郎の言葉が終わると同時に主モニターに映像が表示される。

 

「ノイズじゃないっ。何だこいつは?!」

 

 S.O.N.Gと言う巨大な組織で司令官を務める彼の胆力は並大抵のものではない。しかしその彼をして、その映像にいる正体不明の生物には動揺を隠せずにいた。

 ぬらりとした生理的嫌悪を催す、灰色の外皮。筋繊維のようなものが露出しており、動くたびにそれが収縮を繰り返している。頭部から肩までが甲羅のようなもので一体化しており、ずんぐりとした印象を受ける。その体型や、可動域の狭そうな腕のせいで動きがコミカルに見えるが、口や目らしき器官、鋭利な爪などから文化的な、もしくは友好的接触ができるとは考えずらかった。

 しかし実際に接触する前から敵対的種族として決めつけるのは早計であり、どう対応したものかと考えあぐねていた。取り敢えず隔離したまま、呼び掛けを行おうとした瞬間、その生物は腕を振りかぶり、ドアを叩き始めた。否、それは叩くなどと言う優しいものではない。明確な攻撃であった。

 最重要機密として扱われるギャラルホルンは、情報的、物理的に最も強固な部屋にて保管されている。外壁の強度は装者でも破壊は簡単ではない。その壁をその生物は傷付けていた。

 

「装者を直に向かわせるんだ! どんな生物的汚染を持っているか不明だ! 遠距離で対応させろ!」

 

 

 ・

 

 

 館内放送で流れる指示に従い、立花響、風鳴翼、雪音クリスの3人は保管室へと直行した。司令室へ向かうルートだったため、到着に余分な時間が掛かっていた。

 既にギアは装着されている。強化された脚力に物を言わせ、飛ぶように駆けていく。予め解除されているセキュリティゲートを幾つか抜けると、破壊音が響いた。ドアが破られたのか、と焦りが高まる。

 

『ドアが破られた! 3人とも急いでくれ!』

 

 弦十郎の声がそれを肯定している。

 最後のゲートを抜け曲がり角を曲がると、それの姿を捉えた。

 彼女達を威嚇するように、上体を捻り、振り回し、不気味なうめき声を挙げている。3人を認めると、その歪なバランス故なのかフラフラとした足取りで歩き始めた。

 

「来るぞ! 雪音、手筈通りに頼むぞ!」

 

「あいよ! 手加減はしねーぞっ」

 

 ガンタイプのアームドギアを手に啖呵を切るクリス。引き金が引かれ、弾丸がマズルフラッシュと共に次々に吐き出される。銃を警戒する素振りも見せずに変わらぬ足取りの生物は、易々とその身に弾丸を受ける。

 

「ちっ、固え!」

 

 装填されている弾丸を全てその身に受け、火花を散らした。着弾の衝撃にふらつき、歩行速度の低下も見受けられたが、致命傷と言えるダメージは負っていなかった。

 

『この際、施設へのダメージは気にするな!』

 

 手加減しない、と言っておきながら、基地へのダメージを無意識に気にしていた事を言われたようで少しバツの悪さを感じたクリスは語気を強く言い返した。

 

「したつもりはねぇよ! 《RED HOT BLAZE》!」

 

 巨大なボーガンから放たれる赤い光弾。衝撃波が狭い廊下で荒れ狂う。光弾は真っ直ぐに生物を捉え、廊下の最奥まで諸共吹き飛ばし、内包されたエネルギーを解放させ、爆発を起こした。

 スプリンクラーが作動し、皆を濡らす。

 

「やったねクリスちゃん!」

 

「……良くやった、と言いたいが、もう少し加減しても良かったのでは?」

 

『気にするな、良くやってくれた!』

 

「……」

 

 

 ・

 

 

 驚くべき事に生物は、形を保っていた。直撃による損傷は見受けられるが、著しい程度のものはなかった。生死を確認する術がないため、厳重な拘束のもと、エルフナインのラボに運び込まれていた。戦闘現場では生物的汚染は確認されなかったが、念のために防護服を着てエルフナインを中心にした調査が行われている。

 一方の司令室では、保管室のカメラの記録から生物がどのようにして、出現したのかを調査していた。大方の予想通り、ギャラルホルンのゲートから出現していた。しかし先に述べたように、ゲートの通過は聖遺物を纏った者でなければならない。並行世界の聖遺物を、あの生物が吸収していると言う可能性もなくはないが、そう言った反応は検知できず限りなく低いだろう。

 ゲートは開いており、別個体が来る可能性があるため、早急にゲートの向こうに赴き、原因を究明する必要があった。そのためにも、生物の調査結果が非常に待ち遠しかった。

 解剖台に乗せられた生物がカメラに映し出されている。先の戦闘から通常の医療器具では文字通り歯が立たない事が分かっているため、損傷した部位を起点に工業用のグラインダーを用いた解剖が行われている。火花が散っているその光景は、とても生物の解剖をしている様には見えなかった。

 休憩を挟みつつ、3時間が経過した。疲労の色を滲ませるエルフナインが、レポートを片手に皆に報告をし始めた。

 

「取り敢えず断言できる事は、生命反応は一切検知できず、活動は停止していると言う事です」

 

 何かが解決した訳ではないが、取り敢えず一難が去った事に安堵の息が漏れる。その雰囲気に少し頬を緩めるが、すぐに引き締め直す。

 

「……残念ですが、分かっている事は少ないです。分かっているのは、この生物が遺伝子操作を受けた痕跡があり、しかもそれは既知の哺乳類である可能性が高いと言う事と、この世界には存在しない、少なくとも現在に於いては確認できていない種子のような物が付着していた、と言う事だけです。念のため、保管室のドアと内壁を確認してもらいましたが、そちらには付着していませんでした。あと、体内の残留大気から向こう側の環境は、ここと変わらない事も確認できました。そしてこれは確実な事ではないのですが」

 

 余計な不安を与える事に躊躇しているのか、口を濁すエルフナイン。

 

「今は少しでも情報が欲しい。言ってくれ」

 

「……分かりました。この頭部を覆っている部分なんですが、ここにも筋肉のようなものがありまして、更に内部に歯のような形状の突起物がある事から、形態が変わるかと思われます」

 

 分かっていて促したが、やはり歓迎できる情報ではなかった。

 

「こんな高度な遺伝子操作、相当な技術力を持った組織でなければ不可能です。でも、そもそも何故こんな操作をしたのかも分からないんです。あまりに不合理で、不可解。……今度の世界は、今まで以上に気をつけた方がいいです」

 

 

 ・

 

 

 見慣れたはずのギャラルホルンの輝き。しかし侵入されると言う異常事態のためか、その輝きはいつも以上の警告を発しているように感じられた。これまでと同じように戦力は2分割された。

 調査隊は響・クリス・翼。3人は一度戦闘を行なっているからだ。

 

「気を付けるのよ。何かあったらすぐに帰還する事」

 

「皆、怪我しないでね。響もちゃんと言う事聞いてね?」

 

「武勇伝、楽しみに待ってるデスよ」

 

「こっちの事は任せて」

 

 互いを信頼し合っていても、手の届かない所に行く者を見送るのは辛く、不安になる。だから、言葉でそれを伝え、そして感謝を伝えるのだ。

 

「分かっている。そちらも、ノイズやあの生物が出たら気を付けろ」

 

「未来は心配しすぎだよ。未来こそ、こっちで無茶したりしないでね」

 

「お望み通りしっかり聴かせてやるから、こっちの事頼むぜ」

 

 

 ・

 

 

 ゲートを通り抜けた響の視界に入ったのは、文字通り視界を埋め尽くす密林であった。そして突然の浮遊感。短い悲鳴と共に落ち、そしてすぐに着地。次いで同じように着地する2人。全員に怪我が無い事に安堵したのも束の間、何か不穏なものを感じ、一斉に上を見上げる。

 太陽の光を遮るように、頭上の全てを覆い尽くしている極彩色の植物。異様な外観の植物しか(••)ない事に驚くが、それよりもゲートがない事が何よりも重大な異変だった。

 

「……なあ先輩。あたしら、一体どこから落ちて来たんだ?」

 

 浮遊感を覚える前に垣間見えた景色。それは詳細こそ覚えていないが、高所ではなかった。現在地と同じように、地面から伸びる大樹があり、背の低い種類のものが生い茂っていた。落下した事が事実であるだけに、この矛盾している事態に、やはり今までの事例とは何か違うと言う事を実感していた。また、ゲートを中心に捜索すると言う大前提が崩れた事で、早々に手詰まりになっていた。

 

「ん? あれって」

 

 途方に暮れていると、辺りを見回していた響が何かを見付けていた。指差す方に視線をやると、蔦に完全に覆い尽くされているが車体の一部が見えた。3人で顔を見合わせると、周囲の警戒をしながら接近していく。

 赤の普通車。目に見える損傷はなく、表面の埃で色が燻っているぐらいか。

 

「えっ。これ日本車ですよ?!」

 

 露出していたナンバーは確かに日本のものであり、更にここが関東圏である事も分かった。それは3人に大きな驚きと警戒を与えた。これだけの規模の密林だったため、無意識の内に外国だと考えていたからだ。ここが関東圏だとすれば、どんな天変地異が起きればこんな環境になると言うのだろうか。

 また、翼にはもう一つ気になった点があった。

 

「車体が綺麗すぎる」

 

 表面に埃が溜まっているが、それも地の色を微かに曇らせているだけ。サビや経年劣化は車外にも車内にも見当たらなかった。それが意味する事は、この環境になってから、まだ然程時間が経過していないと言う事だ。

 

「……」

 

「……」

 

 背筋を寒くさせる事実に目を背けるように、車両から視線を外すクリス。しかしその先で更なる異常な光景を目にしてしまう。同じように蔦に覆われた車両だけでなく、大樹に飲み込まれ地上から数mまで持ち上げられた車両や、樹木が貫通した車両があった。そんな車両が奥にまでずっと続き、左右に分かれて前後を向いている事から、ここが嘗ての車道だと言う事にも気付く。

 絶句する3人。

 

「ここが車道なら、辿っていけば何かしらの建物があるかもしれない」

 

 暫し沈黙していた翼が言う。ここでこのまま手を拱ね続けている訳にはいかない。

 幸いと言うには弱いが、車両がある事である程度の道標になっている。漠然とした不安を抱えながら、一向は歩き出した。

 

 

 ・

 

 

 歩き出して2時間が経過した。不安定な地面に変わらぬ景色、帰還の目処も立たずとなれば心身への負担は相当なものになる。

 比較的露出した建物、恐らくはコンビニの敷地に入り、外に置かれた椅子に座り込む。翼は、壊されていたドアから店内に入り、情報収集を行なっていた。

 移動を開始してから、何の進展もなかった。緑に支配された街並みを見続けただけ。歴戦の戦士と言えど、中々に堪えるものだった。

 ややすると、黄ばんだ新聞紙を持って出て来た。

 

「やはりここは2012年の日本のようだ」

 

「結構前なんですね。何か情報ありました?」

 

「この植物がいつどうやって発生したのかは書かれていないが、ユグドラシルと言う企業が対処していたと書かれている」

 

「じゃあその会社は失敗したって訳か」

 

「そうだろうな。それと、この事態には《アーマードライダー》と言う装備を付けた者が対処していたようだな」

 

「……バイク乗り?」

 

「詳細は分からん。緊急事態だと言うのに、情報があまりに少なすぎる。もしかしたらかなりの力を持った企業なのかもしれない。……おい、立花どうした」

 

 会話に加わらない響が気になり、様子を伺うと徐に立ち上がり、少し呆けた様な顔で前方を見詰めていた。

 

「……何か、甘い匂いがしませんか?」

 

「あん? 甘い匂い?」

 

「……特にしないと思うが、ちょっと待てどこに行く?!」

 

 ここでは埋もれる程度の大樹に足早に近づいて行くと、絡みついている蔦に成っている、毒々しい色合いの実の様な物を手に取っていた。外皮を剥くと、薄いピンク色をした果肉が姿を見せた。熱に浮かされるように響は、それを口にしようとしていた。

 瞬間、彼女の手元でそれが弾けた。

 

「えっ、うわあ!」

 

「おい、バカっ! 何やってんだよ!」

 

 クリスに罵倒されずとも、自分が如何に危険な事をしでかそうとしていたかの自覚が、今更ながらに芽生えていた。

 

「ご、ごめん! 何でか凄く美味しそうに感じちゃって」

 

 そして困惑もしていた。何故匂いが強くもない未知の植物に引き寄せられてしまったのか。まるでこの実が食べられるために誘惑している様ではないか。

 

「立花、雪音」

 

 響の行動を咎めるものでは無く、警戒を促す声色。翼の視線の先、自分達の背後に素早く視線を向ける。

 そこにいたのは、白い軟質性のスーツの上に緑色の装甲を纏った人型だった。

 剣の柄、いや、銃口を3人に向けたまま微動だにせずにいる。そして響達も動けずにいた。こう着状態、と認識した瞬間、銃口が僅かに動き、そして軽い発砲が響き、それは翼のすぐ後ろで何かに着弾した。

 咄嗟に振り向くと、基地に侵入した生物がもんどりを打ちながら倒れた所だった。疑問に思う間もなく、周囲に足音が集まりつつある事に気付く。慣れぬ環境に、白い人型の出現で、接近に全く気付けなかった。

 獲物を構えようとするよりも先に、突然肩を掴まれると後ろに投げられた。

 

「何を……!」

 

 それをやったのは、白い人型だった。気怠げな足取りで歩くと、腰に装着されているベルト型の機械を操作。

 

 ──メロンスカッシュ! 

 

 音声が響くとその足取りは一変。一気に生物達の前に躍り出ると、エネルギーを纏った剣を一閃。実寸のリーチを遥かに超える範囲の生物までを、一撃の元に葬り去る。生物は全て爆散した。

 白い人型は大きく息を吐くと、また気怠げな足取りで歩き出し、響達が先程までいたシートにどっかりと座り込む。その振る舞いから、少なくともすぐに敵対する意思はないと判断し、皆を促し後を追う。

 3人が来る事を待っていたのか、敷地内に入ると、腰元の機械を再び操作した。

 

 ──ロックオフ

 

 音声が流れるとスーツや装甲が溶けるように消えてなくなった。

 その下にいたのは、解れや汚れの目立つ黒のスーツを着た、隈が濃く、そしてそのどれよりも暗い眼をした男だった。

 

「俺は貴虎。お前達はどこから来た」

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