感想・批評よろしくお願いします。
※追記 今回の話はメガヘクスのオリジナル設定が出ます。記載し忘れてたので追記しました。
メガヘクスはギャラルホルンを解析し、完全掌握したのだろう。銀色の装甲が深緑となり、青く光る線が全身に走っている。
「フン」
放たれる斬撃を《火縄甜瓜DJ銃》にて迎撃。相殺。爆炎で互いの姿が見えずとも、思考は同じ。間髪入れず斬撃と銃撃の連撃が、ぶつかり合う。三度、四度と続く中で貴虎は甜瓜をマシンガンから大砲へと切り替える。その威力は重なる斬撃を全て撃ち抜き、ブレードでガードしたメガヘクスをよろけさせる程であった。
「すごい……」
減退して尚この威力。疑っていた訳ではない。だがメガヘクスの脅威をその身で実感しているからこそ、そしてパワーアップしているからこそ勝てるのか、と言う不安が払拭しきれなかった。だが、今この瞬間に、その不安は全て払拭された。この力こそが、この威風堂々たる姿こそがカチドキであり、そして貴虎の真の姿。
勝鬨は既に挙がっているのだ。ならば、もう負けるはずなどない。
「ならば」
ユニットより放出された粒子が収束し、大量のインベスが創造される。初級だけでなく、貴虎の記憶にある上級インベスを含めた全ての個体が現れた。オーバーロードがいないのは、造反を警戒しての事だろう。更に貴虎の一撃を警戒しているのか、インベスは広範囲に広がっていた。こうなれば、確固撃破の形にならざるを得ない。
「すげえ数だな……」
「それに我々にとっては未知数の敵だ」
「でも負ける気は全然ない!」
「──フッ」
何と勇ましき事か。蛮勇ではなく、無知故の恐れ知らずでもない。彼女達は皆恐怖を知っている。そしてその恐怖と向き合い、これまで勝って来たのだ。彼女達が装者である限り、それはこれからも変わらないだろう。
「貴虎、今笑ったでしょう」
え、と皆が言い、視線が集まる。
「頼もしいと思っただけだ。──最初の一撃で風穴を開け、オレはメガヘクスを目指す。インベスはお前達に任せる」
確認も了承もない。だがそれが信頼故の事だと分かる。自分達ならばインベスに勝てると確信しているのだ。
嬉しかった。貴虎が心を開けた事が。そして自分達を信頼してくれている事が。ならばそれに応えるためにも、世界を守るためにも、絶対に負けるわけにはいかない。
「任せなさい!」
「ああ。──光実、共に戦ってくれ……!」
──ブドウ! ロックオン! ブドウチャージ!
チャージされた光弾が龍を従い、発射された。足が地面を割る。射出された光弾に触れる事が必殺。止まらぬ爆音がメガヘクスに迫り、迎撃の斬撃を全て打ち砕く、胸部から発射された特大の光弾で漸く相殺された。だが空間を削ったように射線上のインベスは消え失せ、メガヘクスまでの道が出来ていた。
甜瓜と無双セイバーを合体させ、一本の大剣と化す。
「行くぞ、メガヘクス!」
・
三日月型のオレンジエネルギーを拳に纏わせ、斬る拳撃の下にインベスを捩じ伏せていく。本能に任せた雑な攻撃を払い落とし、胴体に拳を叩き込む。エネルギーに裂かれた肉体を拳が更に蹂躙。なす術もなく爆散。竜の顔を持つ深緑のインベスが襲い来る。口腔から吐かれる超高温の炎。味方の初級インベスを巻き込みながら飲み込まんとする紅蓮の壁。対して響は焦り1つ見せず、呼吸を1つし、関節のしなりと筋力から成る高速回し受けで見事に散らしてしまう。必殺であったはずの炎はただ味方を焼き殺しただけに終わる。
紅蓮の壁が崩れた向こうで、インベスは明らかな動揺を見せていた。見逃す由はない。地を割る踏み込みと共に放たれる一撃。半金属化した外皮に多少の手応えを感じ流が遮る程にあらず。胴体をクレーターのように陥没させたインベスは空中に吹き飛ばされ爆散した。
葛葉紘太の形見であるオレンジロックシードと貴虎の信頼を受け。心が大いに沸き立っている響を止められるものはいない。
・
面で殴り飛ばし、エッジで斬り裂き、先端部の伸縮自在の剣で突き穿つ。更にこの剣は蛇腹剣として長大なリーチを有する遠距離武器にもなるのだ。そして何人にも破れぬ鉄壁の盾。まさに攻防一体の武器。
頭部に捻れた角を持つインベスが、闘牛のように一直線に迫る。マリアはそれを真っ向から受け止めた。突進の威力に後退こそしたが、盾は微塵も揺るがない。バッシュで角を払い落とし、背中を伝い背後に回り込む。足を軸にターンし無防備な背中目掛け、音を超えるような刺突。地面を削りながら転がっていき爆散。
マリアを囲うようにインベスが接近。薄く笑い、腕を一振るい。バラけて揺れる蛇腹剣を体の回転に合わせリボンをのように巧みに振るう。インベスの接近を一切許さず、何度も振るわれる剣が細切れにする。複雑な軌道を描いていた蛇は従順な僕のようにマリアの元に戻る。
マリアは貴虎が光実の真意を知れた事を、何よりも嬉しく思っていた。これで漸く歩き出せるのだ、と。喪ってしまった大切なものと同じ数、否それ以上の大切なものを見つけなければならないのだ。だから、絶対に負ける訳にはいかないのだ。
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槍と鎌が合体したハルバートを、軽快な声と共に軽快に振り回す切歌。搭載されている推進機関から火を吹かせながらの猛回転。近付けば必殺の刃の嵐にインベスも攻めあぐねていた。だが切歌も台風も止まっていられない。追跡型台風と化した切歌はインベスを木の葉のように散らし、落下するインベスを空中にて穂先で纏めて串刺す。
ドシン、と地面が揺れる。着地と同時に背後から巨大な影が刺す。四つ足の赤い皮膚と、白い外骨格のようなものを付けた巨大なインベスがいた。切歌を押し潰さんと振り上げられる前脚。破壊力は抜群だろうが、欠伸が出るくらいに遅かった。
槍を収納し、鎌の峰側に乗るとスラスターを全開で吹かす。地面スレスレを高速飛行する様は、ギアのデザインも相まり、奇怪な箒に乗った魔女のようであった。しかしインベスも座して待つ事はしない。捻れた光る角からエネルギーの円刃を射出。独自の意思を持っているかのように、それぞれが切歌を襲う。
ニヤリと笑う。ハルバートを地面に傾かせ、空へと急上昇。追従しきれず円刃同士でぶつかり爆発するが、少なくない数が爆煙を抜け、切歌に迫る。峰の上でスラスターの向きを操り、空を自由に駆け回る。見えない波に乗っているようだ。全部の円刃を引き連れ上昇し、急ターン。インベス目指し急降下。その背後に迫る円刃。迫るインベス。接触の直前にスラスターを真横に向かせ、インベスの背中を切りながら滑る。そして切歌の思惑通り、全ての円刃が背中に突き刺さっている。爆発。自らの獲物で致命傷を与えられたインベスは、その巨体をゆっくりと倒す。
渾身のドヤ顔を披露する切歌。
切歌はこの世界がとても好きだ。調と言う親友がいて、頼れる仲間がいて、マリアがいるこの世界が。綺麗なだけの世界ではない事は重々承知している。それでも貴虎にもこの世界を好きになってもらいたいのだ。だから滅ぼさせないし、誰も殺させない。
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予測不能の軌道を描きながら空を飛び、地面を走る乾坤圏。高速回転する刃がインベスを斬り刻み、時には面で殴る。まるで自立兵器のように縦横無尽に暴れ回る乾坤圏。その中心から伸びるピンク色に光る伸縮自在の糸は、調の手元に繋がっている。
インベスが上空から急襲。跳躍して回避、同時に引き戻した乾坤圏を足に装着。巨大な車輪のように使い地面を高速移動し、赤い鬣と翼を持つインベスを並走しながら追う。その強靭な脚力を以って急ブレーキからの急ターン、彼我の距離を一気に詰めてくる。ほぼ同時にハングオンのような深いバンク角で向きを変える調。
相対。同時に跳躍。鋭く長い爪と乾坤圏の蹴りが交差。高速回転する刃が、包丁を入れられた豆腐のようにいとも容易く爪を斬り落とす。戦力差を悟ったインベスはそのまま逃走に移った。乾坤圏を逆回転させ急減速。振り向きながらの後ろ回し蹴りと回し蹴りを繰り出し、脚部から乾坤圏を撃ち出す。空気を斬り裂きながら、あっという間にインベスに追いつき、2つの翼を根本から斬り落とす。更に糸を接続させ、落下するインベスを上下から挟み込むように攻撃。三分割、になる前に体が耐えきれずに爆散。
貴虎の心に巣食っている悲劇は調には理解しきれない。大切な人を喪った事も、世界を滅ぼされた事もないからだ。だけど、ここには他人の痛みを自分の痛みと感じ、その苦しみを分かち合おうとしてくれる人達がいる。自分がそうであったように、マリアがそうであったように貴虎も救われてほしいと思う。そしていつか皆のように笑って欲しい。
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ミラーデバイスと共に未来の背後の空中にて控えるクナイ。未来が指し示した空間に向かい、一斉に発射されるクナイ。搭載されたスラスターを用い空を自在に舞い、インベスへと迫る。狙いを定め刺さるいくつもクナイ。根本まで刺さったクナイの痛みに悲鳴を上げ悶えるインベスだが、致命傷には至っていない。近接武器としても十分な威力を持っているが、真価は別の所にあるのだ。刺さってからきっかり3カウント。全てのクナイが一斉に爆発。内部から爆発で、インベスは破裂するように爆散していく。
これこそがこのクナイの真価。投擲爆弾なのだ。そしてシンフォギアと融合した事でクナイは更なる強化がされている。ミラーデバイスから照射されたビームを受け、ビーム刃を形成。触れるもの全てを斬り裂く武器となった。
未来の手が動き、クナイが飛ぶ。そして刺された者が内側から爆発し、斬られた者はバラバラになる。あまりに強力、あまりに凶悪。だがインベスに掛ける慈悲はない。
貴虎がここに来てからまだ1日も経っておらず、会話した時間はもっと少ない。しかしその短い中でも、未来は貴虎の中に親友の響と似たものを感じていた。『困っている人を放っておけない』。貴虎が元の世界で孤独に死のうとしていたのは、彼が響達だけを帰還させた事からも確かだ。そんな彼が、元の世界に帰還出来るか定かではないのにこの世界を救おうとしているのだ。元の世界で響達を助けた事も、結局そこに行き着くのだ。
それは尊い生き方であると同時に、辛い事も呼び寄せる。貴虎の場合、響よりもそれが強く出るであろう事は今からでも分かる。だからそれを支えよう。いつかそれが
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トゲ付きのノコギリと言う、剣と言うには些か以上に王道を外れた代物。真面な剣で戦っている彼女だからこそ、扱いに苦戦を強いられた。しかしそれをそのままで良しとしないのが、風鳴翼であり防人なのだ。貴虎を碌に援護できなかったと言う自責から、帰還してから実戦で磨いたのだ。この武器はその外見から中々判断できないが、ノコギリなのだ。ならば使い方も同じであり押し斬るのではなく、引き斬る。
いつもより踏み込んだ間合いで振るい、胴体に当てる。波打つ刃が外皮を幾度も引き裂き、裂傷をどんどん深くする。その傷口は綺麗とは真逆の有様であり、より大きいダメージを与えている事が一目で分かった。
手の力を緩め手の中で回転させ、腹で殴り付ける。
この武器のもう2つの特性がある。それは重量を利用した打撃武器でもある事。身幅の厚い腹の部分に並んだトゲ。ただ力任せに殴打するだけでもトゲと重量のおかげで大ダメージを与えられるのだ。
そして3つ目の特性は投擲爆弾である事。重量がある事からただの投擲武器としても有効なのだが、そこに爆発が加われば途轍もなく高い殺傷能力を持つ事になる。クナイに比べ一度に投擲できる数は2つに限られるが、その分威力と範囲は数体を纏めて倒せるほどのものだ。翼を囲っているインベスの数は加速度的に減少していく。
翼は貴虎の血を吐くような叫びを聞いている。身内を亡くしていると言う点ではマリアと似ているが、自分の無力で大事な人を亡くしたと言う所では翼とも似ているのだ。亡くした痛みと、心を埋め尽くす後悔や無力感は嫌と言う程に分かる。
今、貴虎は漸く未来へ向けて踏み出せたのだ。もう一度弟を看取るという、身の引き裂かれるような出来事を経て漸くだ。だからそれを、痛みを、死を絶対に無駄にさせてはいけないのだ。
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足を大きく前後に開き、前方のインベスの群に向けて両腕を翳す。シールド内に収納されていた三連ガトリングが展開され、トリガーを引くと同時に回転が始まる。回転が規定回数に到達、三連ガトリング二門と言う圧倒的火力が吐き出される。僅かにでも気を抜けば腕が踊り狂いそうな衝撃を、歯を食いしばり必死に抑え込む。
一本の光線に見える程の高速レートで発射される弾丸に、インベスはクリスに一切接近する事が出来ずにいた。ミンチメーカーとはこれだ、と言わんばかりにインベスは粉々にされ、その破片でさえ吹き飛ばされていく。高硬度の外皮を持つインベスでさえ、寿命を僅かに伸ばし、着弾の衝撃に無様な踊りを披露するだけ。
そして地面に着弾した弾丸は発芽し、急速に成長し射線の外にいるインベスを強力に捕らえる。上級インベスであれば、もしかしたら引き千切る事が出来たかもしれないが、それが与えられる事はない。一切合切、例外なく木端となる。
近付く事も、逃げる事も許されない。インベスに許される未来はただ一つ。破壊される事だけ。
メガヘクスに甦らされた光実は、いつも厳しい顔をした貴虎とは似ても似つかない柔和な顔をしていた。でもそっくりだとも感じられたし、仲が良いんだと言う事も感じられた。そんな家族と2度も永遠の別離をしなければならない事が、とても悲しかった。家族との思い出が悲しいものだけであって欲しくない。今はそれしか思い出せなくても、自分のようにいつか笑顔を思い出せるかもしれない。だから、貴虎が生きようとするこの世界を滅ぼさせる訳にはいかないのだ。
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すれ違い様に、甜瓜とブレードが互いを斬る。振り向き二刀の刺突。踏み止まり、真っ直ぐに伸びたブレードを甜瓜で真下から跳ね上げ、胴体を横薙ぐ。
胸部から光弾が射出。甜瓜を振り切った直後の貴虎は直撃を受ける。地面を削りながら転がっていく貴虎を、メガヘクスが上空から追撃。貴虎は躱そうとせず、無双セイバーを引き抜き、大砲を一発。落下を止めるだけではなく、体を打ち上げた。メガヘクスは自身を打ち上げ続ける光弾を払い除け、貴虎目掛け刃型のエネルギーを連射。雨霰のように降り注ぐ光刃が、甜瓜の連射速度を上回る。爆発炎上。
頭部に衝撃。
「何?!」
これまでの戦闘で収集したデータならば、あの爆発から離脱できるはずがなかったのに、無事であり、且つ反撃出来る事に動揺を露わにする。貴虎は誤差を考慮したとしても、データを遥かに上回る異常な速度で移動していた。
「重力制御か!」
背中に装備されたカチドキ旗の持つ重力制御を使った高速移動。身を捻り、光弾を回避。カチドキアームズの持つ未解析の能力もそうだが、それ以上に貴虎の能力が脅威であった。初使用の装備と能力を、しかも怪我を負っている身で熟練者のように扱い、自身と互角に戦っているのだ。
だがメガヘクスは、互角に戦っていると言う事に言語化出来ない違和感を抱いていた。
相対する追跡撃は、多数のインベスを巻き込みながら繰り広げられている。メガヘクスはインベスを撃破している自覚があるが、貴虎との戦闘にリソースを割いているため、新たに創造する数が制限されており、その数はどんどん減少していた。それでも2人の戦いは、僅かずつではあるがメガヘクスに天秤が傾き始めていた。天と地の差。縦横無尽に対し、左右のみ。その違いが、僅かに、しかし如実に現れ始めている。
光刃を躱し切れず、腕に喰らう貴虎。崩れたバランスを即座に立て直す体幹の強さは尋常のものではない。しかしこの局面に於いては、これ以上ない致命的な隙。それを見逃すメガヘクスではない。大量の光刃を放ち、逃げ道を塞ごうとした瞬間、右腕部が命令された動きから数cmもズレたのだ。それだけではない。重力制御の出力バランスが勝手に変動し、立て直せずストール状態に陥る。
それを見逃す貴虎ではない。重力制御の向きを変え、落下しているメガヘクス目掛け加速。組み付き、そのままビルに突っ込む。床に何度も頭部を叩き付けながらビルの中を突き抜けていく。横合いからブレードで頭部を殴打され、手放してしまう。
貴虎より早く立ち上がったメガヘクスだが、今度は四肢が命令通りに動かなくなっていた。
「これは、ギャラルホルンか!」
全身から火花が散り、胸部からギャラルホルンが飛び出す。
千載一遇の好機。甜瓜を大剣へ。
──カチドキスパーキング!
柄を両手で握り締め、甜瓜を肩に担ぐようにし走る。
「はあああああ!」
雄叫びと共に振り下ろされる甜瓜。放出されたエネルギーがビルを割る。
三重のシールドが一撃を阻む。刃に収束したエネルギーが弾かれ、ビル内部で荒れ狂う。
押し切れない。
「光実! もう一度力を貸してくれえ!」
──ブドウチャージ!
シールドが一気に砕け、最後の砦のブレードと激突。その瞬間、メガヘクスが動く。もう一方のブレードにエネルギーを纏い、貴虎の脇腹に叩き付ける。激痛が走る。だが手が緩む事はない。血を吐きながら叫ぶ。
「ああああああああ!!」
ブレードに亀裂が入る。メガヘクスの内部で広がる動揺を示すように、大きくなっていく亀裂。貴虎への攻撃に回していたエネルギーをも注ぎ込み、打ち勝とうとするメガヘクス。
──もう少しだ、兄さん!
光が目と耳を塗り潰していく中、貴虎は確かに自分を応援する声と、柄に添えられた手を見た。
ブレードが切断され、甜瓜がメガヘクスを斬り裂いた。
・
インベスを倒し切った装者達は、貴虎に加勢しようとビルへと走った。
内部から緑と紫の混ざった巨大な光刃がビルを斬り裂いた。それにより外壁の一部が落下。そこに残心を取る貴虎を見た。
「貴虎さん!」
響が跳ねながら手を振る。ギャラルホルンを持ちながら、飛び降りる貴虎。
「やりましたね!」
「いや、まだだ」
甜瓜を振り、光弾を弾く。
「円陣を組め」
これまでの物量は小手調と言わんばかりの数のメガヘクス。恐怖を感じずにはいられない光景。たった今、たった今貴虎が死力を尽くして倒したと言うのに、それを嘲笑うように増殖し続けるメガヘクス。
ジリジリと狭まる包囲網。諦める気は毛頭ないが、気概だけでこの状況を覆せるとは思えなかった。
全体がブレードを構える。万事休止か、と思われた瞬間、メガヘクスの全身からスパークが発生し、ノイズが走り、その姿がブレる。
「突破するぞ!」
「どこへ!」
「あそこだ!」
動揺するメガヘクスの中で、何体かがユニットを差し示している事に貴虎は気付いた。そして何かがあそこで起きているのだ、と確信したのだ。
我が意を得たりと、貴虎とクリスと未来の一斉射で、ユニットまでの道を開く。
ユニットの下に辿り着くと、入口と思わしき部分が開いている事が分かり、そして何とそこからエルフナインが姿を現した。
「ええー?! エルフナインちゃん!」
皆が何故ここに、と問い詰めようとするのを貴虎が制止、何か分かったのかと尋ねる。
「はい。まずこのユニットは、この星を造り変えるための装置なんです。地球そのものを一度コード化して、メガヘクスの望む環境に造り変える。そしてボク達生命体はコードにされた後、あのクラックの向こうにあるメガヘクスそのものに吸収されて融合を果たすんです」
「どうすれば倒せる」
「あの本体を倒さなければ、戦闘用の個体は無限に復活します。今、本体を倒すために情報を打ち込んでいる所です」
「必要時間は?」
「5分、いや後3分
そう言うと、内部に引っ込むエルフナイン。
「全員聞いたな。奴らは直に元に戻るが、3分間守り切るぞ」
・
このユニットを調査していく中で発覚した物質をコード化する機能、そのコードを書き換える変換機能、コード化されたものを再物質化する出力機能、そして物質を直接上書きする機能。
目的と手段が逆転する程に意志の統一に執着しているのに、原住生命体とコンタクトを取ろうとする矛盾を持っていなければ、戦わずにして負け、1時間も掛からずにメガヘクスの望む環境に書き換えられていただろう。だがそのお陰でこうして反撃の狼煙を上げる事が出来るのだ。
クラックの向こうに見えるメガヘクス本体は、見える範囲だけでも途轍もなく巨大であり、下手をすれば惑星と同じ程の質量を持っているとエルフナインは考えている。月の欠片とは訳が違う。だがこの上書き機能を使えば話は変わって来る。メガヘクスを
惑星規模のノイズを撃破可能化なのか、など考えていない。可能だと信じているからこそ、この作戦を思い付いたのだ。
「よし、これで!」
・
轟音と共にユニットが噴射煙を上げながら飛び立つ。10mを超えた所でエルフナインが飛び降りる。
「何を?!」
カチドキ旗の重力制御を使い飛翔。空中でその華奢な体を受け止める。
「無茶をするな!」
「すみません、揺れのせいで上手く脱出できなくて」
着地し、下ろすとユニットを指差し言う。
「アレがメガヘクス本体に刺さる事で、本体をノイズに上書きする事ができます。アレぐらいの大きさでも、皆さんなら倒せます!」
そう信じて疑わぬ目に、苦笑いする翼。
クラックをくぐり抜けたユニットに戦闘用メガヘクスが殺到するが、撃墜する事も軌道を逸らす事も出来ずに、落着を見届ける事となった。
「よし、じゃあ貴虎。貴方はここで待ってて」
「……そうだな。流石に宇宙には」
行けん、と続けようとした言葉が途切れる。貴虎の手に収まっていたギャラルホルンが輝き、その輝きが彼の体を包む。光が収まる。外観には何も変化はないが、貴虎は何かを感じ取っていた。
「礼を言うギャラルホルン。これで共に戦える」
「貴虎、貴方最高ね。これ以上ないくらい、盛り上げてくれるじゃない」
・
広さを定義する事さえ出来ない宇宙に於いて、惑星メガヘクスは異様さと脅威で確かな存在感を放っている。対してメガヘクスに迫る光点は儚く、ともすれば星々に埋もれてしまうそうだった。だが孤独ではなく、そこに込められた思いと力は何者にも負けない。数多の生命体と融合しようと、統一に執着し個を認めないメガヘクスは、どこまで行っても孤独でしかない。どれだけ大きく、どれだけ武器を備えていようと、恐るに足らず。
「これで最後だ」
──カチドキチャージ!
──イチ! ジュウ! ヒャク! セン! マン! オク! チョウ! 無量大数!
──オレンジスパーキング!
──メロンスパーキング!
──バナナスパーキング!
──キウイスパーキング!
──イチゴスパーキング!
──ドリアンスパーキング!
──ウォーターメロンスパーキング!
貴虎の背中に、翼のように連なる装者達。繋がれた手から、力が貴虎に集う。掲げられた甜瓜から光が放たれ、それが巨大な甜瓜となる。どこまでも大きくなる光。どこまでも伸びる手。1人では出来なくとも、仲間がいれば成し遂げられる。それが、今やっと分かった。こんなにも簡単な事だったのだ。
装者が歌を紡ぐ。言の葉は力となり、勇気となる。
自身の脅威の接近に気付いたメガヘクスが迎撃行動に移る。光線、光弾、質量兵器。ありとあらゆる方法で撃墜を試みるが、その悉くが甜瓜に弾かれていく。迫り来る脅威にメガヘクスは恐怖し、何故拒絶するのだと叫んだ。
「最早交わす言葉はない! お前達が滅ぼした生命体と同じように恐怖を抱きながら滅びるんだ!」
歌により存在を調律されたメガヘクスにその一撃を耐える手段はない。甜瓜が表層を砕き、深層を蹂躙し、そして貫いた。メガヘクスの意識の崩壊と同時に、惑星全体に亀裂が入り、一瞬にして破砕した。統一に執着したメガヘクスの欠片が宇宙に散っていく。それがふさわしき末路だ。
・
8人がクラックを抜け、地上に降り立つと、役目を終えたようにクラックは閉じられ、消えていった。
メガヘクスがコード化を優先した事で死者が出る事はなかったが、街の被害は非常に甚大だ。復旧には相当の時間を要すだろう。だが、人にはそんな逆境を跳ね除ける力があるのだ。ここにいる7人を見ていると、そう心から信じられるのだ。
「立花響」
「! はい!」
「風鳴翼」
「はい!」
「雪音クリス」
「おう」
「小日向未来」
「はい!」
「暁切歌」
「デス!」
「月読調」
「はい」
「マリア・カデンツァヴナ・イブ」
「ちゃんと覚えてるじゃない」
「礼を言う。ありがとう。お前達に会えたお陰でオレは──」
言葉が途切れ、貴虎の体がゆっくりと倒れていく。受け身も取らず、力なく倒れた。
「貴虎!」
体を抱えながらドライバーを外す。途端に地面を濡らす赤い液体。初戦の怪我もそのままに激戦を制した貴虎の体は限界を超えていた。
マリアの声が空に溶けていく。