シンフォギア×仮面ライダー鎧武・異聞   作:日高昆布

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第二話です

感想・批評よろしくお願いします


その2

 何者、ではなくどこから来た(・・・・・・)。この状況下に於いて出る最初の質問としては、違和感を覚えるものだった。翼が訝しんでいる事に気付いた2人も、口を噤む。その内心を知ってか知らずか、貴虎は事もなげに大いに動揺させる言葉を発した。

 

「……まあいい。こことは違う世界から来た事は確かだからな」

 

「えっ」

 

「何で……」

 

 さして悩む事なく正解を言い当てた事に、翼はともかく2人は動揺を隠せなかった。しかしそれを翼は咎める事はできない。口には出なかっただけで、表情を変えてしまっているのは彼女も同じだったからだ。

 腹の探り合いとは無縁のような反応を見て、貴虎は口を歪め鼻で笑った。

 

「何で、分かったんですか」

 

「……この世界が正にそうして侵略されたからだ。それに、もうここにはお前達の様な目に光を灯してる奴なんていない」

 

 自嘲するような半笑いの顔で言うと、不意に真顔になった。

 

「お前達がどこから何をしに来たのかは知らんが、目を付けられたくないならさっさと帰るんだな」

 

 それだけ言うと、3人の反応を待たずに立ち上がり、歩き出す。

 この世界で出来た唯一の縁であり情報源である貴虎を行かせる訳にはいかなかった。先の装備がアーマードライダーであるならば、彼はこの事態の中心に近い位置にいた事になる。異変の解決には、正に彼の様な人物の協力が必要不可欠であり、この機会を逃せば類似の人物には会えないと言う確信めいた予感があった。それに、物言いや態度はともかくとして、この状況にあって尚、こちらの事を思い警告をしてくれる事から、少なくとも悪人ではない事も確かだった。

 

「待ってくれ、いや、待って下さい。我々はこのまま帰る訳にはいかなし、帰り道も分からない状態なんです」

 

「……」

 

 翼の言葉に振り返る貴虎。どこまでも暗く、澱んだ眼が彼女を見る。次いでクリス、響を射抜く様に捉える。3人でさえ思わず固唾を飲む底無しの闇。

 

「……直に夜が来る。移動するぞ」

 

 それだけ言うと、やはり3人の反応を待たずに、樹木のそばに置いてあった頭蛇袋を肩に掛けると歩き出した。コミニュケーションを取る気がないのか、取れないのか定かではないが、前途多難が確実である事に、そっと息を吐いた。

 

 

 ・

 

 

 飛び出した樹木の根、絡め取られた嘗ての文明の残滓が体力と気力を著しく削っていく。互いに声を掛け合いながら、全くこちらを気遣う様子のない貴虎に必死について行く。頭上を枝葉に覆い尽くされているせいで常に薄暗く、時間経過が全く分からなかったが、気付けば夜の帳が下り始めていた。野営か、と考えていると、貴虎が徐に脇に逸れ、蔦の塊に向かっていく。近付くと、それが民家である事が分かった。

 ドアは金具が外れ、蔦に絡み、宙に浮いていた。頭蛇袋から大ぶりのナイフを取り出すと、蔦を斬り、入口を開けた。土足のままズカズカと入って行く。顔を見合わせ、お邪魔しますと言ってから上がる3人。

 家の中は、一段と暗かった。全体を覆う蔦のせいで太陽の光が全く入って来ないのだ。貴虎が点けたのか、薄らと見える蝋燭らしき灯りを目印にゆっくりと進む。

 リビングに入ると、背の低いテーブルにポツンと蝋燭が1本だけ置かれている。それだけで安心すると共に、暗闇全てを照らすにはあまりに心許ない光量に不安も覚えた。

 貴虎はどこにいるのかと周囲を見回すと、キッチンを物色しているのがぼんやりと見えた。そう言えば何も口にしていない事を思い出し、芋づる式に響の愚行も思い出した。

 

「そう言えばお前、何であの実を食べようなんてしたんだよ」

 

「あ、いや……。あのね、こんな事言うとバカか、って言うと思うんだけど、何か美味しそうに感じちゃったし、何か夢現! みたいな」

 

「なんだそりゃ」

 

「死にたくないなら、この森に成っている物は何一つ口にするな」

 

 何の成果も得られなかった貴虎が、ソファーにどっかりと座り込むと、懐からよれたタバコを1本取り出した。断りもなく、蝋燭で火を点け、煙を吐き出す。あまりに慣れたルーティンに突っ込む暇がなく、普通に正面に吐き出された煙にむせる。そんな光景を前にしても、無感動に吸い続ける貴虎。

 

「吸うなら一言言えよ!」

 

「唯一の娯楽だ。大目に見ろよ」

 

 また半笑いで言う。その笑い方が気に入らず、これ見よがしに窓を開けに行く。

 火をソファーでねじ消し、投げ捨てる。人の目を全く気にしないマナーの悪さに腹立たしいものを感じるが、協力関係を結ぶために胸の内に仕舞い込んだ。

 テーブルに足を投げ出す貴虎。翼はこの人とは仲良くなれそうにないと確信した。

 

「それで、お前達はどうやってここに来た」

 

 促され、ノイズの事、シンフォギアの事、聖遺物の事を掻い摘んで説明した。

 

「……ギャラルホルンについてもう少し詳しく話せ」

 

 異世界でカルマノイズが出現した時にアラートを鳴らす事、ゲートは装者にしか出入り出来ない事、その出入り口は解決後に固定される事を説明していく。

 

「アラートはどんなものだ」

 

「特殊な振動波と発光によってです」

 

「その現象は、ギャラルホルン単体で発生させているのか。外部電源は?」

 

「単体で起きています」

 

「ならエネルギー機関に相当する何かがあると言う事か。ユグドラシルの衛星を使えば見つけられるかもしれん」

 

 光明が見えた事に、皆が前のめりになる。

 

「それでそのユグドラシルの場所は」

 

「分からん」

 

『は?』

 

 声がハモる。見えた光明が一瞬にして陰ったのだ。帰還が大前提と言うのは分かっていただろうに、意図したかのような上げ落としに加えあまりに投げ槍な物言い。これには流石に黙ったままという訳にはいかず、語気を荒くしクリスが詰め寄る。

 

「おい、おっさん! あたしらはどうしても帰らなくちゃならないんだ!」

 

「話を最後まで聞け。ある程度見晴らしの効く場所に出れば見付けられる」

 

「じゃあその場所を」

 

「分からん。この森は今も成長を続けているからな。今日と明日でも景色は変わっているだろうさ」

 

 何でもない事の様に続けられた言葉。その言葉だけを聞けば何もおかしくはない。しかし道が分からなくなる程、と言う意味が込められているとなれば話は別だ。

 水を打ったように静まり返る。

 

「……そもそもこの森は何なのですか? 何故日本はこんな事に」

 

「我々は《ヘルヘイムの森》と呼んでいた。それとこうなっているのは日本だけじゃない。この地球そのものが埋め尽くされている」

 

 あまりに軽く告げられる容赦のない真実。翼は貴虎の言葉の軽さや不躾な態度を取る事に合点がいった。彼はもう全てを諦めているのだ。自らの滅びを、世界の滅びを受け入れてしまっているのだ。

 

「そ、そんな……。人は、人はどうなったんですか?!」

 

「さてな。日本にはもしかしたら生き残りはいるかもしれないが、それ以外は全滅しただろうな。……さっきも言ったが、あの実を口にすれば死ぬより悲惨な事になるから気を付けろ。食料は、そうだな、明日には何とかしてやるからそれまで我慢するんだな」

 

 言うだけ言うと貴虎は立ち上がり、出て行こうとした所で一度振り返った。

 

「適当な時間に声を掛ける。それまでは自由にしてろ」

 

 そう言うと今度こそリビングを後にする。階段とベッドの軋む音。まるで勝手知ったる我が家と言わんばかりの躊躇のなさ。土足で上がる事も、物色する事も、ソファーで火を消す事も、慣れてしまったからなのか。

 

「……」

 

 この世界の状況は、これまでの経験の中でも最悪のものだった。嘗て怪獣に蹂躙された世界があったが、その比ではない。ここには希望がない。ただ人が死に行くだけの世界。これまで幾つもの世界を救って来た。それは驕りではなく事実であり、自負でもある。それだけに、何一つできない事実が重く強くのし掛かっていた。

 

「我々も休もう」

 

 言葉少なくそう言うと、それぞれソファーに体を横たえた。舞い上がった埃が、ここが打ち棄てられた家であり、世界であると響に見せ付ける。

 

 

 ・

 

 

 熟睡できないのは当然であった。入眠しても僅かな音で覚醒し、中々寝付けない。そんな繰り返しをしている内に階段を降って来る音で、もう起きる時間なのかと体を起こす。他の2人も同様だったのか、逆に疲れた顔をしていた。

 

「行くぞ」

 

 ソファーから立ち上がった所で、翼の胃から食糧を求める音が鳴り響いた。防人と言えど乙女。いけ好かないとは言え、男がいる前での豪快な鳴りっぷりに、顔を茹蛸の様に赤くする。貴虎はそれに特に反応を示さず、一瞥もせずに家を出て行く。この時ばかりはその対応がありがたかった。

 

「……お腹、減りましたね」

 

「……そうだな」

 

 却って後輩のフォローの方が辛かった。

 貴虎を追って外に出る。時計がないため、今が何時なのか分からないが、やはり薄暗かった。

 

「おい」

 

 反応を待たずに何かが投げられる。響がワタワタと受け取る。貴虎が腰に付けている装置と同じものだった。中央に窪みがあり右側にはデフォルメされた日本刀のようなパーツが付いている。

 

「俺の真似をしろ」

 

 不安げにクリスが響を見るが、持ち前の気質で素直にそれを腰に当てがった。自動的にフィッティングされたベルトが腰回りに展開される。そしてまた何かが投げられる。手に取った感触に覚えがある。それが彼女が口にしようとしていた実であった。食べたら死ぬより悲惨な事になると言っておきながらそれを渡して来た事に、クリスが噛み付く。

 

「おいおっさん! こんなモン寄越してどう言うつもりだ!」

 

「待ってクリスちゃん!」

 

「何だよ!」

 

「これっ」

 

「これって、実はどこに行ったんだよ」

 

 赤や青の極彩色に彩られていた実は、黒と白の縦縞模様をした、錠前のような形をした何かに変化していた。

 

「急に変わっちゃった」

 

「ドライバーに近付ける事で自動的にその形にコンバートする。側面にあるスイッチを押せ」

 

 言われるままに、スライド式スイッチの様なものを操作する。すると上部にあった逆U字型の部分の左側が持ち上がる。その形はやはりロックを外した錠前にそっくりであった。貴虎を見ると、それをドライバーと呼んだものの中央にセットし、ロックを下ろしていた。同じようにセットし、ロックを下ろした瞬間

 

「お腹一杯になった!」

 

 満面の笑みでそう叫んだ。

 

「全員の補給が終わったら出発する」

 

 背中を向けて離れようとする貴虎を、響が呼び止める。振り返らず足を止める。

 

「貴虎さん、ありがとうございます!」

 

 何も言わず、また歩き出した。

 

 

 ・

 

 

 行軍を再開する一行。腹を満たす事が出来たため、昨日に比べると足は驚くほどに軽かった。

 貴虎は歩きタバコをしている。煙が後ろに流れて来るから、止めさせたいのだが、昨夜の言葉を思い出すと流石に憚られた。とは言え、ポイ捨ては見逃せなかった。モラルではなく、こんな所で引火でもしたら大惨事になるからだ。

 

「火で燃えてくれるなら、世界が侵食されるものか」

 

 森についての詳細な情報を持たない者の口から出た素っ頓狂な意見なのだろうが、その一々小馬鹿にする物言いはやはりとても腹立たしいものだった。帰還のための協力もしてくれているし、食糧に関しても解決してくれたし、悪人ではないのは確かなのだ。確かなのだが、クリスは好きになれそうになかった。

 

「止まれ」

 

 貴虎が突然手で遮る。

 

「持っていろ」

 

 頭蛇袋を後ろ目掛け、適当に投げる。自分の所に飛んで来たのでクリスは渋々受け止めるが、予想外に固いものが入っており、それが顔にぶつかり涙目になっていた。何が入っているのかと、紐を緩めるとドライバーがいくつも入っていた。

 

「ここを動くなよ。変身」

 

 ──メロン! 

 

 貴虎の頭上にて形成される巨大なメロンの様な物体。それが落ち、貴虎の頭が刺さる。更に天頂部から放出されたエネルギーがスーツを形成し、展開されたメロンが上半身を覆う鎧となった。腰に刺さった刀、無双セイバーに、片手には巨大な盾、メロンディフェンダーを備えている。

 その視線の先にはこれまでに遭遇した生物と明らかに異なるものがいた。頭部と肩部に枝角を、腕部に鋭利な突起物を持ち、体表を青い血管の様なものが走っている。

 前傾になると、土煙を上げながら猛スピードで走り出した。その速度を維持しながら、激しい蛇行を混ぜながら接近して来る。それに対し貴虎は、同じ様に走り、真っ直ぐに距離を詰めていく。あっという間に縮まる距離。上体を更に倒し、頭部と肩部の枝角を構える。

 接触。枝角にディフェンダーを添え、押し込む。進行方向をズラされた生物は、大樹に激突。枝角を根元まで埋める程に突き刺さり、1mを超えるクレーターを作った。3人にはその絶大な威力を物語っていたが、貴虎にとっては自縄自縛。致命の隙を晒しているに過ぎない。

 ──メロンスカッシュ! 

 斬り裂かれた生物は、爆散し絶命。

 翼は貴虎の見せた一瞬の攻防に絶句していた。

 互いに高速を維持したままの、すれ違いの刹那で見せた受け流し。否、受けずに流していた、あの絶技。装備に倍力機構が内蔵されていようと、反射神経や技術は変わらないし、それを行える度胸は生まれない。途轍もない強さの男だ。

 そして戦慄していた。個人の強さが組織の強さになる訳ではない。しかしそれだけの強さの男を抱えた組織を打ち破った敵がいると言う事実に。

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