シンフォギア×仮面ライダー鎧武・異聞   作:日高昆布

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リバイスも終わっちゃいましたね。例年通りツッコミどころは多かったけど、楽しんでましたので寂しいですね。

第6話です。
感想・批評よろしくお願いします


その6

「何て言えば、貴虎さんの心を救えたのかな、てずっと考えちゃうんです。貴虎さんが人類を救おうと戦い続けた事が、間違いであるはずがないんです。でも……私達の言葉は何も届かなかったんです」

 

「……私は直接会った事がないから、3人から聴取した印象でしか物を言えないけど、その人はとても責任感の強い人なのよ。立場も実力も気概もあったから、尚更。それこそ、自分で逃げ場を作れないくらいに」

 

「逃げ場、ですか」

 

「そう。わたしだったら、人類救済。翼だったらノイズの殲滅。要は心を誤魔化して打ち込めて、許しを得られると思い込める何かよ。……もしわたしがセレナを自分の手で殺めてしまってたとしたら、もっと過激な手段を取ってたと思うわ。だから、彼がどれだけ深い絶望と悲しみを味わったのか、少しだけ分かる気がする」

 

 ぶつかり合った時の事を思い出しているのか、薄く笑った。そして大事な家族を失った身として、思いを代弁する。

 

「でも貴虎さんは、そもそも許しを求めていない気がするわ。自分の罪を見続けて、苦しみ続けて、その果てに死のうとしてる、そんな感じがするわ」

 

「そんな……」

 

「仮にギャラルホルンが再び繋がって、通過の諸問題が解決したとしても、彼をここに連れて来る事は難しいと思うわ。救おうと言う意志そのものが苦痛になってしまう。……彼が自分を許せるとしたら、それこそ死んだ人の言葉が必要になるわ」

 

 

 ・

 

 

 心を救えず、重傷のままの別離は、3人の心に暗い影を落とし、後を引き摺らせるものだった。言い方は悪いが、死亡が確定していればここまで思い悩む事はなかっただろう。安否は不明であり、且つ無理矢理にでも連れて来れたかもしれない、と言う事実が影を色濃くしていた。最早どうにもならない事であり、時間が解決するしかない事なのだが、彼女達は若く、まだそこまでの割り切りが出来ずにいた。

 

「……」

 

 下手な慰めが出来る内容でない事が分かっている未来は、何も出来ない自分に歯噛みしつつ、努めて明るく振る舞い彼女達を元気づけようとしていた。未来の気遣いに気付きつつも、貴虎の事が頭から離れず、ぎこちない対応をしてしまい、級友達も訝しむ程の奇妙な空気が出来上がってしまっていた。

 そんな日常が続いていたある日。幾分か明るさを取り戻しつつある3人を、更に元気付けようと食事会が計画された。休日であり訓練のある日でもあったが、弦十郎「存分にやれ!」と言う言葉で、張り切って計画されていた。

 貸し切りの店で行われた食事会は、大成功の内に終わった。徹底して隠されていた事もあり、3人は驚きと共に皆の気遣いに心を暖かくした。とりとめの無い事で笑い、誰かの粗相でまた笑う。

 貴虎の事を忘れた訳ではない。彼の事を、救えなかった痛みとして覚えていたくなかった。世界を救うために戦い続けた強き人、と記憶したかった。これもまた自分の心を守るための誤魔化しだと言う事は分かっているが、戦士として生きていくのなら必要な折り合いの付け方なのだと言う事も分かっていた。

 

 

 ・

 

 

 気付けば終了時間まであと少しと言う所まで迫っていた。楽しい事ほど時間が経つのが早い、と皆が口にした。しかしそこに寂しさはなく、いつでも会えると言う事が心を軽くしてくれる。

 会計を済ませ、店を出る。辺りは夜の帳が下り、人出も少なくなっている。そんな中で7人もの団体で、しかも皆が眉目秀麗であればとても目立つものだ。まあ度が過ぎるため、誰も声を掛けたりはしないのだが。

 

「みんな! 今日はありがとう!」

 

「気を使わせてしまってすまなかった」

 

「……あんがとな」

 

 良き友を持った、と心が暖かくなる。この絆を失いたくない、と、貴虎の世界の話を聞いている分より強く思った。

 さあ帰ろうと、足を踏み出した時、遠くの空で光る物を見た。

 

 

 ・

 

 

「司令! 大気圏外より飛行物体が接近! 街に落着します!」

 

「何だと?! 隕石か?!」

 

「いえ、この物体、コースそのままで減速しています。推進装置を備えた人工物の可能性があります」

 

「衛星からの映像来ます!」

 

 自然的ではなく、人工的でもなく。それは人が持ち得るセンスから逸脱した物体であった。強いて言うなれば、未開の花のような形をしたその物体は、非常に巨大であり、優に数百メートルを越えている。

 雲を割り、空中で垂直になるとそのまま落着。その圧倒的質量で街一帯に甚大な被害が発生。影響は港に停泊していた本部にも及んだ。局所的に発生した津波に押し流され、港に激突。衝撃にオペレーター達は椅子から投げ出され、破損したコンソールから火花が散っている。艦内照明が非常灯に切り替わる。 

 

「つう……! 被害状況知らせ!」

 

 弦十郎が声を張り上げるよりも早く、オペレーター達は動いていた。生きているコンソールから基地全体を迅速に把握していく。浸水箇所複数あり。通信装置ダウン。私用の携帯端末から連絡を取ろうにも、回線がパンクしており、繋がる状態ではなかった。また、外部からの映像の受信も出来なくなっており、落着した物体の様子や、街の被害状況を知る事も出来なくなっていた。

 

「通信の復旧を急がせろ! 外に人員を出して、直視で確認させるんだ!」

 

 転倒の際の怪我で流血している事も厭わず、矢継ぎはやに指示を出していく。しかしその胸中には得体の知れぬ不安が渦巻いていた。これだけの被害を齎した存在が、友好的な存在であるとはどうしても思えず、そしてそれが人類を超越した存在なのだから。

 

 

 

 ・

 

 

 響達がいたのは、落着地点より1km圏内であった。体が浮き上がる程の衝撃に意識を失い、目覚めた時には視界の全てが砂塵に埋め尽くされていた。ほぼ同じタイミングで皆も意識を取り戻しており、染み付いた習慣が、周囲の人に避難を促させた。

 

「何あれ……」

 

 砂塵の向こうに見える、聳え立つ白銀の巨大な物体。それが動き出した。上端部が四つに分かれ、花弁のように展開していく。更に四方へとアンカーの様な物が射出され、直線上にあるビルを貫き地面に打ち込まれた。

 アレが何であるのか、響には想像する事も出来なかった。しかし一つだけ確かな事がある。アレは悲劇を齎すものと言う事だ。

 

「みんな!」

 

 多くの言葉はいらない。

 基地との連絡が取れず、無断でのギア装着になってしまうが、その判断を間違えてるとも思わないし、覆す気もなかった。ギアを纏い、空を駆ける。

 落着地点の被害状況を少しでも把握しようと強く踏み込み、上空へと飛ぶ。落着地点はより濃い砂塵に覆われており、詳細な状況は掴めないが、僅かな切れ目から妙な光が発せられていた。何かが太陽光を反射したのかと考えたが、その光が収まらず、広がり続けている事で、尋常な光でないと判断した。

 着地。

 

「どうだった?」

 

「あの落ちて来たのを中心に、何かが広がってます! もう一回見て来ます」

 

 少しでも情報を得られれば、と言う思いだった。しかし僅かな時間で状況は加速度的に悪化していた。その光はありと凡ゆるものを侵食していた。ビル、道路、標識、街路樹。侵食されたものは全て姿を消し、非幾何学模様が描かれたヘキサゴンパネルが広がっていく。背筋を凍らせる光景。今まで戦って来た敵対的存在の攻撃とは明らかに違うものだった。明確な意図を感じながらも、そこに敵意や悪意を見出せなかった。

 

「急ぎましょう! 良くない事が起きてます!」

 

 落着地点付近に辿り着いた時には、砂塵は大凡散り、見通しが効くようになっていた。背後から迫るヘキサゴンパネルから逃げようとしている女性がいた。一もなく二もなく手を伸ばす。助かるんだ、と女性が涙を流しながら歪んだ笑みを見せた。

 手は空を切った。掴めたはずの手は光の粒子となって消えた。その事実を嘆き、怒るよりも先に、戦士としての本能が鳴らす警鐘に従い、足元に迫っていたヘキサゴンパネルから距離を取った。

 あのパネルは人をも塗り潰すものだと、見せ付けられた。

 

「立花、大丈夫か?!」

 

「は、はい!」

 

 あと少し。あとほんの少しだった。掌には何もない。あの女性がいたと示すものは何もない。全て虚空に消えてしまった。しかし、今その後悔に身を浸し足を止める訳にはいかない。いち早くこの現象を解決する事が、彼女への手向けになるのだ。

 

「────!」

 

「何か足音がするデス!」

 

 硬質な足音と、それに混じって聞こえる駆動音。下手人が姿を現そうとしている。皆が構える。

 砂塵の奥で光が蠢いている。現れたのは人型の機械。全身が銀色の金属で構成され、胸部にある水色の球体と、頭部のアンテナらしき部分が光を発している。一見しただけで分かる硬質さを有しながら、人体と同じ関節の可動を可能とする金属。両肩から背後に流れているマントの様なものも、風に靡きながらも、金属光沢を放っており、その人型が人類を超越した技術で造られている事は明らかだった。

 

「■■■■■■■■」

 

 理解不能な音声。コンタクトを取ろうとしているのか、と考えた瞬間、人型の目が光り、地面が破裂した。足裏から感じた違和感ですぐさま散開した事で誰もダメージを受けなかったが、明らかな敵対行為であった。

 その事実が響の頭を沸騰させる。目の前で女性が消えていく所を見ていた分、湧き上がった義憤は激烈なものだった。

 戦術もクソもない、吶喊。

 

「やあああああ!」

 

 渾身の順突き。しかしそれは容易く掌に収まってしまう。パワー系ファイターを自認しているからこそ、一歩も動かせない事に戦慄する。

 腕を捻られながら背後に回り込まれ、膝裏を蹴られ、片膝を付いてしまう。拘束を解こうとするが、それよりも早く頭部を掴まれる。腕が光り、響の頭部から何かを吸い出すように光が流れた。

 

「響さん!」

 

「1人で突っ込むなこのバカ!」

 

 響の攻撃を容易く受け止めた事から、近接戦闘は危険と判断し、調とクリスが攻撃を放つ。響をあっさりと解放し、攻撃を回避。

 

「迂闊だぞ立花! 何をされた?」

 

「すみません。ダメージはないです」

 

「言語習得完了。我が名はメガへクス」

 

 突然発せられた流暢な日本語。

 

「まさかさっきの光は」

 

 マリアが呻くように言う。驚異的であるのは極短時間で学習した事ではない。接触しただけで脳から直接情報を引き出すと言う超技術を有している事。

 

「何故こんな事をするんですか?!」

 

 言葉が通じるなら、と響が吠える。

 

「貴様の記憶にはヘルヘイムの森があったな。我らは機械になり意志を一つに統一する事で森の侵略に打ち勝ったのだ」

 

 人型──メガへクスの語った事は、衝撃を齎した。特に森の脅威をその目で見ている3人はより強い衝撃を受けており、そして同時に納得するものも感じていた。

 

「森はどこにでもいて、どこにもいない。故に全生命体は、我らメガへクスと融合し統一され、侵略に打ち勝たなくてはならないのだ」

 

 言葉だけを聞けば、森の恐ろしさを知っているが故の行き過ぎた善意に聞こえるかもしれない。しかしこれは善意からの提案ではない。決定事項であり、拒否を認めないと言う傲慢さが感じられるのだ。

 

「さっき消えていった女性は、融合の結果か?」

 

「そうだ。生身の肉体を持つ生命体は脆弱過ぎる。意志を持つ生命体は森を超越への邪魔になる。個を消し、全となるのだ。我らに恭順せよ人類」

 

 それが融合であり統一。それが最適解。それ以外に森に打ち勝つ手段はない。そこには敵意も悪意もない。あるのは圧倒的な傲慢さと、自分達が森と同じ厄災に成り果てた事を理解できない愚かさだけ。

 

「……これ以上の問答は不要だ。奴は、人類の敵だ!」

 

「融合を否定するか。残念である。しかし抵抗は無意味だ。シンフォギアと言う優れた戦闘システムを有しているが、所詮は不完全であり、惑星の中で完結したもの。我らメガへクスには敵わない」

 

 マントが粒子となり、両腕に移動。幅の分厚い攻防一体型のブレードに変化した。振るわれた刀身から水色のエネルギーが高速で放たれた。

 

「行くぞ!」 

 

 散開し回避。地面に着弾し爆発。獲物を構えた翼とマリアが先陣を切る。

 

「千ノ落涙!」

 

 中空に出現した千を超える剣型のエネルギーがメガへクスへと降り注ぐ。先と同じように振るわれ射出される二振りのエネルギーが、その全てを破壊。

 予想を超える破壊力に顔を顰めるが、元よりそれで決着が付くなど考えてはいない。迎撃のために意識を割き、ブレードが振るわれている。背後に回り込んだマリアが、すれ違いざまに胴薙を放つ。しかし不可視の攻撃を前傾で回避。

 

「ちっ」

 

 舌打ち一つ。メガへクスは機械らしく、全周を観測できるセンサーを持っているようだ。事実、マリアに続き上空から敢行された調と切歌の攻撃を見もせずに躱している。

 

「合わせろ!」

 

「クリスこそ!」

 

 射線が確保された瞬間に放たれる光線と弾丸の嵐。しかしそれでさえも、胸部より放たれた光弾が全ての弾幕を消し飛ばしてしまう。光弾を回避するため跳躍する2人。圧倒的な火力に歯噛みするが、再度攻撃しようとしてメガへクスの姿がない事に目を見開く。どこに、と探そうとし、視界の端で何かが動いた。メガへクスがそこにいた。

 ──何でそこにっ? いつ移動したのっ? 早い! 瞬間移動?! 

 無意味な究明をしようと、頭の中に矢継ぎはやに言葉浮かぶ。ブレードがエネルギーを纏っている。

 

「未来!」

 

 間一髪、響が救い出す。外れた攻撃はビルを斬り裂いた。

 ありがとう、と言おうとして、メガへクスが残像を刻みながら背後に急接近したのを見た。未来の表情の変化で接近された事に気付き、咄嗟に腕を掲げる。幸運、と言っていいのか、刺突はギアの最も分厚い部分であるガントレットに当たった。

 

「うわああああ!」

 

「きゃああああ!」

 

 しかし衝撃そのものを殺す事は出来ず、弾かれるように吹き飛ばされる2人。真下のビルの屋上に激突し、2階、3階と突き抜け、漸く止まる。

 

「くうう……!」

 

「響!」

 

 刺突を受け止めた右腕が力なく垂れ下がっている。肩関節を脱臼したのだ。

 足音。メガへクスがそこにいる。何の言葉もなくブレードが振り下ろされる。

 

「やらせない!」

 

 壁をぶち抜き、2本の短剣をクロスしブレードを受け止めるマリア。瞬間、圧倒的な威力に耐えきれず、フロアが崩壊。更に散ったエネルギーがビル全体を破壊、崩落する。砂塵が巻き起こり、外の装者達の視界を潰す。

 

「マリアさん、しっかり!」

 

 未来が助け起こす。ビルの崩落でのダメージではない。受け止めたのはごく僅かだった。たったそれだけで、全身に痺れるような痛みが走っている。もしフロアが崩れず、真面に受けていたらこんなものでは済まなかっただろう。口から滴る血を拭いながら、戦慄していた。

 

「早くそこから離れろ!」

 

 声が聞こえた瞬間、突然視界が晴れた。メガへクスの光弾が、砂塵を全て吹き飛ばし、地面を抉理ながら3人に迫っていた。気付くのが遅く、そして弾速が速い。防御も回避も不能。迫り来る死に、意識が白くなっていく。

 

 ──リンゴスパーキング! 

 

 青い光弾と赤いエネルギーが激突。僅かに拮抗するが、赤いエネルギーが蹴散らされる。稼げた時間は極僅か。依然として3人の絶体絶命に変わりはない。だが、割って入る時間を稼ぐ事は出来た。

 アップルリフレクターを携えた貴虎が、光弾を受け止めている。全身がバラバラになりそうな衝撃に晒されながら、四散したエネルギーにスーツを裂かれながら、シールドを溶解させながら受け止め続けている。それどころか、彼は前進していた。少しでも、その圧倒的暴力から背後の者達を護るために。

 やがて無限に思えた時間が終わりを告げる。全エネルギーを消費し切った光弾が消える。全身から煙を立ち上らせながらも、貴虎は立っている。

 

「貴虎さん!」

 

 鉄屑一歩手前の盾を捨て、ソードブリンガーと無双セイバーを抜刀。メガへクスと対峙した。

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