前話の感想で「やべー奴来ちゃったよ」の感想が一杯で、今考えてる倒し方を受け入れて貰えるか今から不安になってます
感想・批評よろしくお願いします
「ここを離れましょう。このままじゃあの人の邪魔になるわ」
未来に肩を貸され、貴虎の背後から移動する3人。戦術的に見れば絶好の獲物だが、貴虎を警戒しているのかメガへクスは動かない。横目で3人が離脱した事を確認した貴虎は走り出す。
ブレードより放たれるエネルギー。臆せず真っ直ぐに突っ込み、回避するでもなく、防御するでもなく、ソードブリンガーにて割断。続く2撃目、3撃目も割断し、走る速度を一切緩めない。
小手調程度の攻撃だったが、メガへクスは貴虎の戦闘力を上方修正した。
近接戦の間合いに到達。
先手はメガへクス。エネルギーを纏わせたブレードの横薙ぎ。スライディングで回避、背後に回り込む。振り向き様に再度振るわれた横薙ぎを、威力が乗る前に無双セイバーで跳ね上げ、空いた胴体を刺突。後退に合わせ前進し、追撃の袈裟斬り。サイドステップで回り込むと、それを追い身を捻るメガへクス。
「《切・呪リeッTぉ》!」
「《γ式百輪廻》!」
背後より飛来する鎌と小型鋸の奇襲。火花を散らしふらつかせる。背後に僅かに意識を割いた瞬間、二刀の振り下ろしが炸裂。地面にぶつけ、跳ね上げさせ更に刺突。手首を柔軟に可動させ、両刀を回転。出だしを悟らせぬ攻撃。それでもメガへクスは僅かな腕の動きから正確に見切り、全ての攻撃を防ぐ。
フェイントは無意味と判断し、攻撃の速度を上げる。二刀だけでなく、足も交え、攻撃の手を休めない。しかしメガへクスはその全てを凌いでいる。寧ろ、人間以上の反射速度を持つメガへクスを相手に喰らい付ける貴虎の技量こそ感嘆すべきものだった。
鍔迫り合いとなり状況が一瞬膠着。突然貴虎のアーマーが小規模な爆発を起こす。メガへクスの目より不可視で小型のエネルギーが放出されていたのだ。小型と言えど威力は絶大であり、着弾跡の周りには亀裂が見られた。
たたらを踏みながらも、無理矢理身を捻り刺突を回避。ブレードが胸部アーマーを削る取る。掠めただけで体に衝撃が伝わる事に、毒付く。そのまま背後に倒れ込むようにバック転で距離を取る。高速移動が可能なメガへクスからすれば、100mだろうが1mだろうが間合いに変わりはない。だがそれこそが狙い。
追撃しようとしたメガへクスの動きを抑えるように、六連ガトリングが火を吹く。ブレードを盾にするが、その圧倒的火力に足が止まる。
──ウォーターメロンスカッシュ!
──ドリアンスカッシュ!
──リンゴスカッシュ!
発射される弾丸が黒一色に変化。メガへクス含め周囲一帯に着弾した弾丸は種となり、発芽し急速成長。捻合い、鋼鉄のワイヤーと化し、メガへクスの全身に絡み付き、締め上げる。
2本の剣ををそのまま巨大化させたエネルギーを、挟み込むようにメガへクスに叩き付ける。そしてそれは攻撃と同時に第2の拘束であった。
「貴虎さん!」
跳躍からの回転斬り。リンゴ型のエネルギーがメガへクスを包み込む。更なる拘束により1歩たりとも動けなくなったメガへクス目掛け、振り下ろされたソードブリンガー。頭部から一直線に縦断された体が左右に分かれ落ち、スパークを放ちながら爆発。
破片が体を叩く。爆炎が晴れると、そこには残骸だけがあった。息を吐き、残心を解くと、ふらつきながら翼の方を振り返る。
「やりましたね、貴」
「どけ!」
悲鳴にも似た怒号と共に、痛みさえ感じる程の勢いで突き飛ばされる翼。急速に離れていく視界の中で、たった今倒したはずのメガへクスが、貴虎を斬り裂いている所を見た。
アーマーが砕け散り、血が飛沫を上げる。2撃目の刺突が胸を穿とうとする。反射が思考を上回る。両手の剣を投擲。攻撃ではなく防御。二重の壁になった剣は確かに刺突の威力を削いだ。しかしゼロにはならない。致命傷こそ免れたが、許容限界を越えたスーツが強制解除され、血を撒き散らしながら生身のまま吹き飛んでいく貴虎。このままではビルに激突する。
「切ちゃん!」
「デース!!」
間一髪。調と切歌が受け止め、激突を免れる。地面に下ろし、止血をしようとするが、貴虎は立ち上がってしまう。
「ちょっと!」
「動いたら危ないデス!」
──リンゴ
戦意が体を動かしている。しかし意志だけではどうにもならない。一歩だけ踏み出し、そのまま倒れる。
ジャリ、と歩く音。メガへクスが貴虎を掴み上げる。足先から血が滴る。
「シンフォギアとは別の戦闘システム。──これはヘルヘイムの果実を戦闘用に転換しているのか。ふむ。これは黄金の果実の贋作か。程度は低いとは言え造り出せる人間がいるとは。面白い」
ロックシードを胸に押し当てると、沈むように吸収されてしまう。
「解析のためにここまでにしておこう。さらばだ」
手を離された貴虎が地面に倒れ込むのは、何とか抑えた2人。眼前に敵がいるのに動けない。倒したはずの敵が、寸分違わぬ姿で現れた事に恐怖を抱いているのだ。そんな2人を一瞥もせず、落着体の方へと飛び去っていく。
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──終わったはずの世界への干渉があったから見に来たが、まだ生きていたとは驚いたな。だが、進化に負けた世界で、役割を終えたお前に出来る事はない。なのに何故まだ生きようとしている。何か目的がある訳でもなく、ただ消費し切るのを待っているだけ。相変わらずお前は課したルールを破れない男だな。だが少し変わったようだな。異世界からの来訪者との邂逅の影響か? 何で分かるかって顔をしてるな。ここはもうヘルヘイムの森だ。分からない訳ないだろう。それでお前はどうするんだ? この干渉はお前に用事があるから起きてるんだ。それこそ侵略者の攻撃を受けてるのかもしれない。ふっ、やる気になったみたいだな。ならこれをやるよ。役割を終えた者が再び舞台に上がるなんて中々ないからな。その贋作の力を使い切れば、そいつは人としての限界の力をお前に授けてくれる。しかし代わりに、ここには戻って来れなくなる。一度だけの代役か、それとも出演を続けるかはお前次第だ
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一定間隔で鳴り続ける電子音。聞いた事のある音だが、それが何なのか、すっかり忘却の彼方だ。むず痒く感じる程に肌触りの良い何かが体を包んでいる。目を開く。人工的な光に、目が眩む。
上体を起こす。傍のサイドテーブルに目をやる。この世界に来る前に渡された、緑色の多面体。この力を、貴虎は使う気はなかった。ここに留まる事を許していないからだ。
布団を退かし床に降りる。人工的な冷たさ。そこで漸くここが病室だと言う事に気付く。体は清拭で身綺麗になり、包帯が巻かれている。元々着ていたボロ切れの様な服から清潔な病院服に着替えさせられていた。ドライバーとロックシードが入った蛇頭袋だけはそのまま置かれており、それを手に取り、テーブルの上に多面体を残したまま病室を出る。
病室を出てすぐにここが普通の病院ではない事に気付く。窓がなく、通路が狭い。
──地下施設か
勘で出口に辿り着くのは難しいと判断し、病室に戻る。否が応にも目に入る多面体。したり顔の蛇を思い出し不愉快になる。荒い手付きで袋の中に突っ込む。ナースコールを押す。暫し待つと、静かな廊下に幾つかの走る音が響く。間違いなく看護師ではない。では誰か、と考えるとすぐに思い当たる。
ここが病室と言う事を忘れたかのように乱暴に開かれる扉。次いでに貴虎を怪我人だと忘れたかのようなタックルを見舞う。当然回避。
「このバカ! 貴虎は怪我してんだろうが!」
「そ、そうだった。貴虎さん! 生きててくれて良かったです。後、助けてくれてありがとうございました!」
「ありがとうございました!」
「貴方のお陰で死なずに済んだ。ありがとう」
3人が代わる代わる感謝の言葉を述べる。当然の遣り取り。しかし貴虎にとっては苦痛でしかない。身を引き裂かれるような痛みを覚える。それが顔に出なかったのは、表情を忘れているから。
「……礼はいい。アレはどうなった」
「貴虎さんのリンゴロックシードを奪い、落着したユニットに戻っていきました」
思わず舌打ちする。頭蛇袋の中になく、彼女らの組織が解析していると言う都合の良い予想をしていたが、現実は最悪だった。リスクはあるが手持ちのロックシードで一番強力なものであり、何より帰還するためには絶対に必要なのだ。
「……奴は何なんだ」
「メガへクス。ヘルヘイムの森に打ち勝つために、個を捨て、機械になった存在だと言ってました。地球も同じようにして侵略に勝つ、と」
「道理だな」
皮肉気に笑う。身体を機械化すれば傷付いても侵食を受けずに済み、意志を融合し統一すれば内ゲバを防げる。決定権を相手に持たせないと言う点を除けば、これほど有効な手立てはない。いや、元の世界の戦中の惨状を見れば、決定権を与えない事こそが正解なのだろう。そうすれば──そうすれば光実を殺さずに済んだかもしれない。
「自己紹介するわよ」
パン、と拍手の音。恐らく年長者の女性が自身を注目させてそう言った。どうせ帰るのだから覚えるだけ無駄だ、と言おうとしたが、有無を言わせずに始まっていた。
「わたしはマリア・ガデンツァヴナ・イヴ。こう見えてもトップアーティストなの。後で聞かしてあげるから」
「私は小日向未来です。さっきも言いましたけど、本当にありがとうございました」
「アタシは暁切歌デース。マリアを助けてくれて、ありがとうデース!」
「月読調。怪我は大丈夫ですか?」
「そして俺がここの司令官の風鳴弦十郎だ!」
殊更うるさい赤シャツの男性が締めた。その後に訪れる妙な静寂。皆の視線が自分に集中している事で、促されている事に気付く。が、それに乗る気は全くなかった。
「そうか。それでメガへクスへの対処はどうするつもりだ」
「……うむ。それについては、撃滅、もしくは撃退が大前提だ。しかし我々にとってはあまりに未知の敵。実際に戦った貴虎君の意見も聞いておきたい。怪我人にはすまないが、ミーティングに参加してもらいたい」
「分かった。怪我の事はいい。内臓にも骨にも達していないからな。それよりそっちが把握している情報も知りたい。早く案内してくれ」
──聞きしに勝るコミュニケーション不全、と言うよりは拒否、ね。彼は事が終われば帰るつもりなんだ。
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「収集出来た戦闘記録を見る限り、爆発の前後の個体に差異はありません。同一個体です。現場で回収された残骸の総量からも、間違いなく1体は貴虎さんによって倒されています」
端末を操作しながらエルフナインが話す。大人顔負けの胴の入りっぷりに、口を挟まずとも流石の貴虎も困惑していた。
「つまり複数体いるって事でいいのよね」
「そうだと思います。ただどう言った理由で複数体いるのかによって、状況は変わります」
「理由、デスか?」
「例えば倒された時用のバックアップとしてユニットに積まれているのか、あるいは敵対戦力に応じて数を増やすためなのか、あるいは」
「本体ではなくただの端末でしかなく幾らでも送り込める、だな。もしそうだとすれば、つくづく奴らはヘルヘイムの森とそっくりだな」
貴虎の言葉に表情を暗くしながらも、肯定するエルフナイン。彼女が考える中でも、それが最悪のケースだ。もしそうだとすれば、本体を見付けない事には端末をいくら倒した所で無駄でしかなく、いずれ押し潰される事になる。
「だがヘルヘイムの森と違い、少なくとも落着したユニットと言う実体を持った手がかりがあるし、それに奴が言った侵略に打ち勝ったと言う事が本当ならば、侵略を受けた星があると言う事だ。少なくとも実体を持たない厄災ではないはずだ。どうにかして見付け出すしかない」
その予想の前提自体が合っているかは、今の所不明だ。しかし最悪を想定して動けと言う鉄則に従い、計画が建てられていく。
「今ある観測機器を全て陸に上げろ!」
「ドローンでユニットの船殻を採取できないか? 後、侵入口も探すんだ!」
「民間からも映像を集めろ!」
「あのヘキサゴンパネルはどうやって防ぐ」
貴虎の提示した手がかりは、あまりに弱すぎる風前の灯火も同じの希望でしかない。だと言うのに、誰も諦めていない。自分達が出来る事を探し、最大限に注力している。地球のためではない。家族のために、友人のために、大事な人のために。そして血を流す装者達のために、己が役割を全うしようとしているのだ。
──本当の絶望を味わっていないからだ
だとしても、彼らは、彼女らは明日を生きるために今、この瞬間を足掻いている。仲間が支え、仲間を支える。分厚い壁の向こう側に見えるそれが、貴虎には羨ましかった。