シンフォギア×仮面ライダー鎧武・異聞   作:日高昆布

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第8話です

今作を書いてて思ったんですが、「〜スカッシュ」「〜スパーキング」「〜オーレ」て何がどう違うんですかね。wikiとか本編見てても、共通点はアームズをクルクルするぐらいで、それ以外バラバラでしたね。なので、今作もそれについてはその時の気分で書いてます。

感想・批評よろしくお願いします


その8

 会議が終了して間も無く、貴虎は甲板に上がっていた。これだけの居住性を持つ潜水艦の存在に驚いたが、異世界の地球と言う事で納得した。

 甲板から見える街の景色は戦中を思い出させたが、却ってそれは心に動揺を齎さなかった。クズな思考だと自覚しているが、闇を見続けた眼で光を見てしまえば焼かれてしまうのだ。

 タバコに火を付ける。残りも随分と少なくなった。帰る前に調達してもらうか、と冗談とも本気とも取れない考えが頭を過ぎる。

 

「フウーー……」

 

 どうにも思考にノイズが多い。普段ならこんなにやかましくはないのだが。すぐに原因に思い当たる。この世界にいるからだ。この世界にいて、人と触れ合ってしまったからだ。数年掛けて摩耗していった人間性が、高々数時間で復活してきてるとは、何とも度し難い事だった。

 桟橋が渡され、艦内の観測機器が運び出されており、貴虎の横を忙しなく往復している。非戦闘員だけでなく、装者も作業を手伝っていた。片言で喧しい話し方少女と、ペアのように行動を共にしている小柄な少女が、共に機器を運んでいる。だがどう見ても、少女が2人だけで持つには過ぎたもので、明らかに無理をしている事が見て取れる。そして案の定片方が手を滑らせ、機器を落とし──そうになる寸前に、貴虎が手を差し込む支えた。

 

「……気を付けろ」

 

「ありがとうデス、貴虎!」

 

「ありがとうございます。……あの一緒に運んでもらっても良いですか?」

 

 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるが、まだ半分以上残っているタバコを一気に吸い切り、吸い殻をポケットに捩じ込むと、機器に両手を添えた。

 

 

 ・

 

 

「灰は海に捨てちゃダメよ?」

 

 横合いから差し出される携帯灰皿。手の持ち主を辿らず、胡乱な目付きでそれを取る。吐いた煙の行き先を見て、そのまま吸い続ける。

 

「髪切って、髭剃ったらどうかしら?」

 

「……道具を探す手間を掛けてまでする必要がない」

 

 相当に鬱陶しい外見になっているであろう事は容易に想像が付くが、口径摂取の必要もなく、社会人として振る舞う必要もないとなれば、身嗜みを気にするだけ無駄なのだ。

 

「スッキリすれば男前になると思うんだけれど」

 

「……見る者がいない」

 

「やっぱり帰るつもりなのね」

 

 初めて相手に視線を向けた。年長者の装者──名前は覚えていない──が柵に肘を預けながら、薄く笑みを浮かべ貴虎を見ている。

 貴虎は自分の迂闊さに反吐が出そうになった。あまりに露骨な誘導だったと、今になって理解する。貴虎は初めて会話しない事が脳の働きに影響する事を実感した。

 

「その通りだ」

 

 今更言い繕う事は不可能なのだからと、貴虎は開き直った。思えば、別に隠す必要はなかったのだ。自分の行いを止める権利はないのだから、無理にでも帰ってしまえばいいのだ。

 

「……それは自分を許せないから?」

 

「どうせあの3人から聞いてるだろう。……弟だけじゃない。侵食された仲間を、敵になる前にと何人も、何十人も、何百人、何千人も、何万人も殺した! その挙句、オレだけが生き残った! そんなオレが安寧に生きる事など許されるはずがない!」

 

 感情の抑制が出来ない。八つ当たりのようなみっともない振る舞い。数年ぶりの会話は、貴虎の内に溜まっていたものを吐き出させた。

 

「……許してくれないのは誰?」

 

 誰? そんなもの決まっている。

 

「あの世界で死んでいった者達とオレ自身だ」

 

 貴虎を縛る罪の意識は、嘗ての友を殺してからもずっと肥大化し続けていた。自ら手に掛けてしまった者だけではない。自分以外の全ての人の死を、背負ってしまっているのだ。貴虎が関与していない内紛で死んでいった者達はごまんといる。寧ろ自滅した方が多いくらいだ。だが孤独の中にあった貴虎にはそれさえも分からなくなっていた。

 

「死んでしまった者は何も言えないわ」

 

「知っている」

 

 知っている。死者は何も語らない。死者は何も出来ない。死者の思いを勝手に代弁し、都合の良い苦痛に浸る事など許されないのだ。だからこれは、視界のどこかに(・・・・・・・)いつもいる光実(・・・・・・・)が眼で言っている事(・・・・・・・・・)なのだ。声が聞こえずとも分かる。恨んでいるのだと。

 貴虎の眼は虚空ではなく、虚空にある何かを見ている。これは相当に根深い、とマリアは憐憫の念を抱く。ちょっとやそっとの言葉を重ねた程度では、心を覆い尽くす罪に亀裂を入れる事さえ叶わない。

 

「……アタシも、妹を亡くしてるの。目の前で瓦礫に潰されて、助けられなかった。その犠牲に報いるために、人類救済って言う馬鹿な事をやろうとした。セレナもそれを後押ししてくれてると思ってた。でも結局、全部自分にとって都合の良い言葉を勝手に代弁させてるだけに過ぎないの。本物のセレナなら絶対に言わない事なのに、それも分からなくなっていた」

 

「……それで?」

 

「自分の中にいる本物を見つけて上げて。貴方の弟ならそんな事は言わないと思うわ」

 

「知った風な口を聞くな。オレの事も、光実の事も知らないだろう」

 

「弟さんの事は知らないわ。でも貴方の人となりなら分かる。貴方はとても優しい人よ」

 

「どこがだっ」

 

 吐き捨てるように、そしてバカにするように言う貴虎。

 

「さっき切歌と調を手伝ってたでしょう。それに森でも3人を助けてるし、ここに来た時もアタシ達を助けてくれた。見て見ぬ振りしても良かった、見捨てても良かった。でも貴方は自分を蔑ろにしても、他者にする事は出来ない。それって優しいって事でしょう?」

 

 したり顔で、分かった風な口を聞く目の前の女が腹立たしかった。そしてもっと腹立たしいのは、何故自分がそうした行動を取ったのか分からない事だ。

 タバコを吸い終わる。携帯灰皿に押し込み、それを頭蛇袋に仕舞い込むと、そのままハッチに向かって歩き出す。

 

「これは貰っておく」

 

「ええ、良いわよ。……そんな優しい貴方を兄に持つ弟さんが、貴方を恨んでるなんて、どうしてもアタシには思えないわ。だから、ちゃんと見つけて上げて」

 

 そこにいる光実が本物に決まってるだろう。そう言い残して甲板を後にした。

 

 ・

 

 

 病室への帰り道の道中で、開きっぱなしになっているドアを何の気なしに覗いてみた。会議の時に解説を務めていた少女が、嘗ての親友を思い出させる速度でタイピングしていた。モニターにはユニットと、戦極ドライバーが写されている。

 

「……ドライバーを解析したのか」

 

「うわっ! あ、貴虎さんでしたか」

 

 肩を跳ね上げ、振り向く少女。子供特有のあどけなさを持ちながら、大人と同じ表情と話し方をする。違和感が凄まじいが、どうせ長くいないのだから、違和感を払拭しようともせずそのまま話し続ける事にした。

 

「ええ、元々シンフォギアの戦力向上に繋がれば、と思って解析してたんです。あ、まずかったですかね」

 

「構わん。……複製出来たのか?」

 

「片手間になっちゃってたので、何とか1台だけ間に合いそう、と言った所です」

 

 表情こそ全く変わらないが、外見からは想像の出来ない頭脳を有している事に驚いていた。現物があるなしの違いはあるが、一大プロジェクトとして時間と予算をふんだんに注ぎ込み、人体実験もした上で完成した代物なのだ。それをこんな短時間で解析は疎か、複製にまで漕ぎ着けているのだ。

 

「そうか。ならこいつを使え」

 

 イチゴロックシードを投げ渡す。

 

「もしメガへクスがヘルヘイムの森の特質を獲得していたら、生身で傷を負えば致命傷になる。爆発するクナイを生成する。遠近どちらでも使えるが、本領を発揮するのは遠距離だ。誰に使わせるかは、お前達で決めろ」

 

「ありがとうございます! ロックシードだけはどうやっても複製出来なかったので助かります!」

 

 感謝の言葉を否定も肯定もせず、そうか、と一言だけ呟くとそのまま歩き出す。

 

「響さん達の言ってた通りですね。無愛想だけど、優しいって」

 

 そんな訳があるか。今度は明確な否定の言葉を口の中で呟く。

 

 

 ・

 

 

 今度こそ病室に戻ろうとすると、突然レッドアラートが鳴り響く。壁に設置されている受話器を取る。

 

「何があった」

 

『ギャラルホルン保管室前にメガへクスが突然現れて……!』

 

「ここからの道順を教えろ」

 

 ルートを頭に叩き込み、走り出す。ドライバーを装着。

 

 ──メロン! 

 

 欠けたアーマーを着込む。

 迂闊だった。クラックを生成できるようになっている事は、十分に考えられた事だった。その上ギャラルホルンまで吸収したとなれば、この世界だけではない。もっと多くの世界が狙われる事になる。何としても食い止めなくては。

 

「貴虎!」

 

 マリアが合流。

 

「非戦闘員はどうしてる?」

 

「もう退避させてる!」

 

 聴覚センサーが破断の音を拾う。保管室に侵入された。

 

「メガへクス!」

 

 浮遊しているギャラルホルンを自身の手に追従させながら、悠々と現れるメガへクス。

 

「これの完全掌握にはかなりの時間が掛かりそうだな」

 

 2人を意識していないかのような言動と共に放たれる光弾。ある程度のチャージで放たれたそれは2人目掛けたものではなく、真横、つまり壁を狙ったものだった。いとも容易く船殻を貫通し、海中で爆発する光弾。

 大穴からの大量の浸水。自動で通路の隔壁が閉鎖され、区画は一気に水没した。

 貴虎は何ら問題はなかったが、問題はマリアだった。貴虎は知る由もないが、マリアは時限式の装者なのだ。少しでも継戦時間を稼ぐためにギアを装着しなかった事が、最悪の形で裏目に出た。加えて、全く予想しない行動だったため、咄嗟に空気を吸い込む事もできず、マリアの意識は急速に遠い退いていった。

 

 

 ・

 

 

 潜水艦から真っ直ぐに離れていく光と、水柱を上げる程の爆発。更に艦の側面の海面に大量の気泡が上がってくる事で、戦闘が既に始まっており、且つ内部から穴を開けられたのだと悟る。そして戦闘が始まったと言う事は、そこにマリアか貴虎のどちらか、あるいは両方共がいるかもしれないと言う事。

 

「助けなきゃ!」

 

 躊躇なく飛び込もうとした響だが、激しく揺れる海面の下に何故か生身の貴虎と、彼に抱えられたマリアの姿を認めた。

 

「2人がいました!」

 

 そう言ってから飛び込む。2人脇で抱えると、脚部のパワージャッキを作動させ、一気に浮上。海上に飛び出し、地上に降り立った。

 貴虎は自身の足ですぐに立ったのに対し、マリアが反応しない事で失神している事に気付く。

 

「彼女を寝かせろ! 呼吸が止まってる!」

 

 怒鳴る貴虎に言われるままに、マリアを横たわらせる。自身の髪を鬱陶しそうに掻きあげ、人工呼吸を行う。海中の時点で行っていた事が功を奏したのか、すぐに咳き込み、水を吐き出した。顔を横に向けさせ、気道に入らないようにする。

 

「後は任せた」

 

 傍で固唾を飲み見守っていた響に言う。はい、と元気よく返事をするが、これ以上何をすれば良いのか全く分かっていなかった。

 立ち上がり、弦十郎のところに向かう。

 

「ギャラルホルンを奪われた。さっさと取り戻すか、破壊しなければ、取り返しが付かなくなる」

 

「間違いなく並行世界の地球にまで手を伸ばすな。マリアくん、大丈夫か!」

 

「ええ、貴虎に助けてもらったみたいね」

 

「ああ、見事な対処だったぞ」

 

「…………そうみたいね」

 

 

 ・

 

 

「未来さん。これ、ドライバーです」

 

「え、私に?」

 

 戸惑いながらも、差し出されたドライバーとロックシードを受け取る。説明を求めるようにエルフナインを見つめる。

 

「貴虎さんから借りたロックシードの特性を考えると、未来さんが一番合ってるんです」

 

「そうなんですか……。分かりました! 貴虎さん、ありがとうございます!」

 

 一瞥だけすると、すぐに視線を戻す。

 

「貴虎」

 

 そんな貴虎に弦十郎が話し掛ける。

 

「皆を頼んだ」

 

「未来ある世界の未来ある者達だからな。なるべく死なせないようにはするさ」

 

 濡れてダメになったタバコを咥えながら、皮肉気に言う。

 

 

 ・

 

 

 ユニットの半径5Kmは完全に無人となっている。メガへクスの持つ侵食機能を考えると、避難そのものが無駄に思えるが、どう言う訳か最初の侵食以降は拡大が止まっているのだ。これについてエルフナインは、奪ったロックシードの解析にリソースを割いているからでは、と予想した。時間が掛かると明言している今が最後の攻撃のチャンスなのだ。

 ユニットを視認した瞬間、クラックが出現し、メガへクスが現れた。

 

「最後通告だ。抵抗を停止し、我らの融合と統一を受け入れよ」

 

 言葉による意思表示の段階は既に過ぎ去っている。

 

「そうか。残念である。──行け」

 

 メガへクスが手を振るう。それは攻撃ではなかった。その手振りと同時に、ユニットの天頂部から水色の粒子が噴き出し、メガへクスの傍らで形を成していく。細かな機械が結合し、パーツを成し、組み上がっていく。

 中空にて形成された戦極ドライバー。それを中心に更に機械が集まり、人が造り出されていく。

 造り出された3人は青年だった。

 快活な雰囲気の、オレンジ色のベストを着た青年。

 冷徹な目付きの、赤と黒のロングコートを着た青年。

 思慮深く、既視感のある顔立ちをした青年。

 

 ──オレンジ! 

 

 ──バナナ! 

 

 ──ブドウ! 

 

「貴虎、あの3つはどう言う物なの!」

 

「──────」

 

「貴と──」

 

「みつ、ざね」

 

 あまりに容易く、あまりに残酷。世界を救うために心身を犠牲にした兄弟は、再び世界の命運を掛けた戦いの中で、敵と味方に分かれ再会を果たした。

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