シンフォギア×仮面ライダー鎧武・異聞   作:日高昆布

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第9話です。クライマックスです。

感想・批評よろしくお願いします。


その9

 六角形型のクラックが開き、その向こうに謎の巨大な物体が覗く。既知のものと明らかに違うプロセスだが、誰もそれを注視していなかった。否、注視する事が出来なかったのだ。視線は、ブドウロックシードを使った青年に注がれている。

 貴虎の力ない声に、響達はユグドラシル内で見た写真の事を思い出した。そこに写っていたのは、たった今造り出された青年に間違いなかった。そして自分が殺した、と。

 記憶の中の人物を再構築できると言う脅威的な能力を目にし、響達が抱いたのは怒りだった。自らに置き換えなくとも、それがどれだけ心を傷付けのか想像に難くない。大事な人を尖兵にされるなど、冒涜や侮辱と言う言葉では到底言い表せない、絶対に許してはいけない行為。

 だが胸を焦がす怒りとは裏腹に、響達は動けずにいた。既知のロックシードがあるとは言え戦闘能力が未知である事と、倒した場合に貴虎にどんな影響が出るのか、全く予想する事が出来ないからだ。今度こそ本当に心が壊れてしまうかもしれない。事実、今の貴虎は明らかに精神に変調を来していた。覚束ない足取りで、フラフラと手を伸ばし、剰え変身を解除してしまっている。マリアが引き止めているが、何をするのか全く予想が付かない状態だ。

 奇妙なこう着状態は、3人が動き出した事で終わりを迎える。正気を取り戻させると言う根拠のない可能性に縋るか、貴虎の事を無視して倒すのか。何一つ指針が定まらないまま、戦端が開こうとしていた。

 

 ──オレンジスカッシュ! 

 

 刀身の分厚い、オレンジ色の刀。刃に同色のエネルギーがチャージされ、斬撃が放たれる。

 

 ──バナナオーレ! 

 

 長大の白いスピアー。バナナを模したエネルギーが纏い、そのリーチを更に伸ばし、刺突が放たれる。

 

 ──ブドウスパーキング! 

 

 6連装式ハンドガン。撃鉄が引かれ、粒状のエネルギーが放出。その全てが銃口に収束し、龍を模した一撃が放たれる。

 

「セイハアーー!」

 

「セイイーー!」

 

「ハアーー!」

 

 彼らは皆、人のために戦った。傷付き、何度倒れても諦めず、死ぬその時まで戦い続けた。彼らに宿る黄金の精神は、例え死んだとしても、何人にも侵せない。討つべきは、世界を蝕もうとする悪意、メガへクスだ。

 

「何っ?!」

 

 斬られ、刺され、撃たれる。考えもしなかった攻撃を全て真面に喰らい、大きなダメージを受けながら吹き飛んでいく。

 

「っしゃあ! 行けよ、ミッチ」

 

「お願いします、紘太さん、戒人さん!」

 

 戦線を離脱し、兄の元へ向かう光実。何度も助けてくれた兄を、心の闇から助け出すために。

 

「さあ、ここからは俺達のステージだ!」

 

「俺を操ろうとした愚かさを、その身に教えてやる!」

 

 

 ・

 

 

 光実が2人いる。いつも視界のどこかにいる本物(幻覚)の光実と、現実の光実が。もう目を逸らす事は出来なかった。本物(幻覚)の光実はいつも何かを訴えていた。恨みを晴らさんとしているのだ。殺されたのだから当然だ。ならばこの身を晒し、断罪されなければならない。殺されなければならない。

 

「貴虎!」

 

 2人の光実が近付く。久しぶりに見た顔は、何も変わっていなかった。正義感に溢れ、悩みがちで、大切な人のために戦い、自分を兄さんと慕ってくれた、最愛の弟と何も変わっていなかった。

 

 ──違う。何故そんな目でオレを見る。オレはお前を殺してしまったのに

 

「兄さん。もう自分を許してあげて」

 

 2人の光実は同じ事を言った。

 

「何故だ……。何故お前はオレを責めないんだ……。オレはお前を、殺したんだ。オレは、謝る事さえ、出来なかったんだ……。その上、世界も、救えなかった……」

 

 地面に雫が落ちる。看取った時には流れなかった涙が、溢れ、止まらない。

 1人になっていた光実が言う。

 

「恨んでなんかいないよ。だって兄さんがそうしなかったら、僕はインベスになって人を襲ってたんだ。それに謝らなきゃいけないのは僕の方だ。最後まで一緒に戦えなくてごめん。兄さんにだけ責任を負わせてしまってごめん」

 

 そっくりな兄弟だ、と不謹慎だと分かっていても、笑いを堪えられなかった。

 

「僕達の世界が負けたのは、兄さんだけのせいなんかじゃない。僕達みんなのせいなんだ。もっと団結出来ていたら、もっと信頼する事が出来ていたら変わっていたのかもしれない。でももう過去は変えられない。そして僕には未来も変えられない。でも兄さんにはそれが出来る。この世界の未来を変えられるんだ」

 

 光実がマリアを見る。

 

「でも責任感の強い兄さんだから、簡単には自分を許せないよね。だから、僕からの、呉島貴虎の弟の呉島光実からの、最後のお願いだ。兄さん、この世界で生きて、幸せになって」

 

 その手伝いをして欲しい、と光実はマリアに言っているのだ。彼の痛ましいまでの兄を想う姿にセレナを思い出し、涙が溢れた。彼を心配させまい、と声だけでも気丈に振る舞おうとしたが震えを抑えられなかった。

 

「良かった。兄さんの近くに、優しくて、強い人達がいて」

 

 マリアを見て、そしてメガへクスと戦う響達を見た。この世界なら、決して自分達の世界のようにはならないだろう。そう確信する事ができた。

 

 

 ・

 

 

 メガへクスの斬撃が、紘太と響を纏めて薙ぎ倒す。中空で体勢を直し、着地。

 強い。調と切歌が遠距離からの援護に徹しているとは言え、5対1でも圧倒する事が出来ない。装甲表面に赤が混じってる事から、ロックシードの影響がある事は確かである。初戦より強くなっている。更に戦いの中で、明らかに戦闘力が上昇しているのだ。ギャラルホルンの解析が進み、徐々に己のものにしつつある証だ。

 斬撃が飛ぶ。威力、速度共に今し方受けた物より上だ。

 

 ──オレンジスカッシュ! 

 

 ──オレンジスカッシュ! 

 

 拳と刀による迎撃。押し切られる。

 

「ぐう!」

 

「うあああ!」

 

 受身を取れず転がる2人。クリスと翼に支えられ立ち上がった所で、響は自身のギアが通常形態に戻っている事に気付く。ドライバーに目をやると、ロックシードが破損していた。これでは真面に戦う事すら出来ない。

 

「ぐあっ!」

 

「ぬううう!」

 

 突然、紘太と戒人の体からスパークが走った。攻撃は何も見えなかった。

 

「離反する個体に用はない」

 

 その言葉で、3人がどのようにここに現れたのかを思い出した。戦力のためだけに命を生み出しだけでなく、都合が悪くなったら破壊すると言うのだ。

 

「命を何だと思ってるんだ!」

 

 自身が戦えなくなっている事も忘れ、食って掛かる響。戦いの中で多くの死を見て来たからこそ、何の葛藤もなく命の創造と破壊をするメガへクスが許せなかった。

 

「個体を認識するから、それを喪失した時に悲しみを覚えるのだ。全となれば、それもなくなる」

 

「違う! 命は1つしかないからこそ、誰かを守るときに人は勇気と力を得られるのだ!」

 

「そしてそんな悲しみを味わったからこそ、皆に笑顔でいて欲しいって戦えるんだよ!」

 

「そんな命の力と大切さが分からなくなった貴方なんて、ヘルヘイムの森と変わらない侵略者じゃない!」

 

 翼とクリスはと未来は絶望的な状況でも、決して諦めずに果敢に飛び込んでいく。

 全身を襲う苦痛に呻きながらも、皆の魂からの叫びを聞いた紘太は笑っていた。

 

「この世界は大丈夫そうだな、戒人」

 

「口先だけでない事は確かだな」

 

 そう言うと、彼らは戦闘中にも関わらずドライバーを外し、変身を解除してしまう。生身になっても、全身から溢れるスパークは変わらない。

 自分達の命はもう尽きる。最後まで共に戦えない事は残念だが、託す事に何も不安はなかった。

 

「おーい、そっちのピンクの子! こいつを使ってくれ! ロックシードは良いのをミッチが持ってる!」

 

「お前にもくれてやる! 精々上手く使え!」

 

 紘太が調にドライバーを、戒人がバナナロックシードとドライバーを切歌に投げ渡す。

 

「デス?!」

 

「何で?!」

 

 紘太はそれにサムズアップで答えると、戦線に加われない事に歯噛みしている響の下に向かう。

 

「俺のお古で悪いけど、これを使ってくれ」

 

「────はいっ。ありがとうございます!」

 

 彼らが何をしようとしているのか、分かってしまう。彼らは自らの命を以って一矢報いようとしているのだ。可能ならば止めたい。だが彼らの破壊を止める手立てはない。ならば彼らが望むようにさせ、そして勝つ事が命に報いる唯一。

 

「名前」

 

「え?」

 

「名前を教えて下さい! わたし、立花響って言います。あっちで戦ってる青い人が風鳴翼さん、赤いのが雪音クリスちゃん、紫色のがわたしの親友の小日向未来」

 

「で、アタシが暁切歌デース!」

 

「月読調です。これ、ありがとうございます。あっちで貴虎さんと一緒にいるのが、マリア」

 

「────ありがとう。俺は葛葉紘太。あっちでツンツンしてるのが」

 

「駆紋戒人だ」

 

「お前達と言う仲間がいた事を、今度は決して忘れん」

 

 貴虎が言った。

 

「へっ、頼んだぜ」

 

「ふん」

 

「皆、メガへクスはアレが本体じゃない。あのクラックの向こうにある惑星がメガへクスそのものなんだ。ただそれをどうやって倒せば良いのか、僕達には」

 

 スパークが突然強くなる。倒れ込みそうになる3人を、皆が支える。体の各所から、血ではなく火花が散り始めた。

 

「もう、時間がないみたい。マリアさんこれを」

 

 戦極ドライバーとブドウロックシード。マリアはドライバーだけを受け取り、光実の手を貴虎に差し向けた。

 

「これは貴虎が使いなさい。代わりに貴方のロックシードを頂戴」

 

 長きに渡り戦い続けたメロンロックシードには、数多の傷が存在する。そっと指でなぞる。一つ一つに貴虎の誇りと悲しみと血が染み込んでいる。それの何と力強い事か。

 

「後、さっき紘太さんが言ってたのを君に」

 

 調に渡されるキウイロックシード。形見のようなものではと思い、貴虎に渡すべきではと考えたが、光実が自分に与えた意味を考え、受け取った。

 

「兄さん」

 

「何だ」

 

「兄さんにもう一度会えて良かった。貴方の弟として生まれて良かった。貴方は僕の誇りです」

 

「──オレももう一度会えて嬉しかった。お前の兄として生きられ嬉しかった。お前はオレの誇りだ、光実」

 

 光実も紘太も戒人も笑っていた。こんなにも希望に満ちている事が嬉しいのだ。

 

「未来!」

 

 背後で倒れる音がし、振り返った響が駆け寄った。ギアのおかげで重い傷こそ負ってないものの、3人とも満身創痍であった。ロックシードも外れており、メガへクスがどんどん強くなっている事は明白であった。

 もう一度立ちあがろうとする翼を、紘太が制す。その紘太の体から火花が散っている事にギョッと目を見開く3人。

 

「さあ、最後の花道だ! 行くぜ、戒人、ミッチ!」

 

「ああ!」

 

「はい!」

 

 止めようとしたクリスを、響が制する。それだけで、彼らが何をしようとしているのか分かってしまう。涙が溢れそうになるが、鮮烈な生き様を目に焼き付けんと、懸命に堪えた。

 ドライバーがなければ無力と判断しているのだろう。あっさりと組み付かせた。次の瞬間、3人は光に包まれ、爆発した。

 メガへクスにとって、3人の行動は造反以上に理解不能だった。所詮端末を破棄する程度の爆発力しかなく、3人集まったとしても誤差の範疇でしかない。無駄と分かっていながら、何故このような事をするのか。

 

「何故このような無駄な事を」

 

「無駄ではない」

 

 煙が晴れる。貴虎が地面に落ちている赤いロックシードを拾った事で、今の爆発で放出させられた事に気付く。しかしギャラルホルンの解析を終えた今、戦闘力は減少するどころか、大幅に強化されている。

 

「3人が命掛けの行動を、無駄にはしない!」

 

 もう一方の手に持つメタリックグリーンの多面体を、リンゴロックシードから放出されたエネルギーが包み込む。

 

 ──奴が言っていたのはこの事だったのか。力か、帰還かの二者択一。

 

 リンゴロックシードが色を失い砕ける。

 

 ──選ぶまでもない。オレはこの世界を守る

 

 多面体から光が溢れ、その形を変える。既知のロックシードとは大きく異なる形と大きさ。確かな力を感じる。

 

「──行くぞ!」

 

 ──カチドキ! 

「変身!」

 ──カチドキアームズ! いざ出陣! エイエイオー! 

 

 ──メロン! 

「変身!」

 ──メロンアームズ! 天下・御免! 

 

 ──オレンジ! 

「変身!」

 ──オレンジアームズ! 花道オンステージ! 

 

 ──ドリアン! 

「変身!」

 ──ドリアンアームズ! Miss.デンジャラース! 

 

 ──ウォーターメロン! 

「変身!」

 ──ウォーターメロンアームズ! 乱れ玉・ババババン! 

 

 ──イチゴ! 

「変身!」

 ──イチゴアームズ! シュシュっとスパーク! 

 

 ──バナナ! 

「変身!」

 ──バナナアームズ! ナイトオブスーピアー! 

 

 ──キウイ! 

「変身!」

 ──キウイアームズ! 撃・輪・セイヤッハッ!




今話で装者全員がロックシードを使いますが、外見がどんなかは皆さんで想像して下さい。私のデザインセンスはウンチなので、全く思い浮かべる事ができませんでした
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