勇者パーティーから追放されたけど好きにすることにした 作:サバ缶みそ味
この世界には普通の人間、つまりは普人族と人間ではない種族、いわゆる亜人族が存在する。
亜人種には耳の長いエルフ、総じて森人族。獣の姿をしたまたは人の姿で身体に動物の部位がついた獣人族等、多種多様の種族が存在している。
獣人や人々で賑わう街中をリンジーはキョロキョロと辺りを見回しながら歩いていた。
彼の眼差しは輝いており、建物や露店に並ぶ品々やサラリとした毛並みの獣人と見るものすべてに好奇心を抱いている。
「うん!やっぱり街中の散策は楽しいな」
露店にはアイテムだけでなく野菜や果物、肉といった食材だけでなくこの街ならではの特産品や土産物もある。
「御飯やお土産に何か買おうと道草を食ったりしてよくリーナに怒られてたっけな…」
リンジーは勇者パーティーにいた時のことを思い出す。だが今は勇者パーティーから追放され、一人旅になってしまったリンジーには目的があった。
「あった。ここだ」
リンジーは目的の場所を見つけ足を止める。辿り着いた場所は酒場だった。
「旅の仲間を見つけるにはやっぱり酒場だよね」
旅の仲間を集める場所は国や民間からの
ギルドには正式に登録された冒険者の普人族が多く、酒場にはならず者だったり正式に登録されていない冒険者がいたり、亜人族が経営し集う酒場も存在する。
リンジーが立寄った酒場『跳び猫亭』は亜人族が集う酒場だった。
中に入ると獣人族の冒険者達が酒を飲んだり仲間同士で会話していたり真っ昼間ながらも賑やかに騒いでいた。
普人族の入店は珍しくないようで行き交う獣人達はちらっとこちらを見ただけで通り過ぎていく。
「坊や、入る店を間違っちゃいねぇか?」
カウンターから店主らしき虎毛の猫型の獣人がからかってきた。リンジーは店主の嘲笑には全く気にせずカウンター席に座る。
「大丈夫、酒は嗜めるお年頃だよ。『ドラネコウォッカ』、ストレート」
リンジーは辺りを見回しながら銀貨を店主に渡す。店主は訝し気に見つめながらショットグラスに注いでリンジーに手渡した。
「悪いが猫耳のかわいい女はいねぇぞ。ついでに犬耳のデカチチの女もいねぇぜ」
獣人族の中でも人の姿をし、動物の耳と尻尾のついた女性は(普人族にとっては)美しく、人気でよく冒険者に誘われたりする。
しかしその美しさ(普人族にとっては)のせいか普人族に攫われたりして奴隷にされたりいかがわしい店に売られたりするようだ。
「生憎そういった目的じゃないよ」
リンジーはショットグラスに注がれたウォッカをイッキに飲み干しおかわりを要求した。
「じゃあ、何が目的なんだ…?」
リンジーはキョロキョロと見回してから店主にしか聞こえない声で答えた。
「この酒場に……『オーク』の冒険者がいるでしょ?」
「⁉」
その答えに店主は思わず酒瓶を落としそうになった。
勇者が討伐目標にしている魔王には『魔王軍』という眷属がいる。
恐ろしい怪物もいるがその中には亜人族も属している。その亜人族を今は『魔人族』と称す。
魔人族には『ゴブリン』や『コボルト』、そして『オーク』が属しており魔王軍の名のもとに侵攻している。
無論、悪さをする魔人族ばかりではなく、侵略を望まない平和主義の魔人族も存在する。だが普人族による風評被害のせいてわ彼らの風当たりは悪い。
店主は周りに聞かれてないか辺りを見回し周りに聞かれないよう小声で答えた。
「な、なんでここにいるってのがわかるんだ…⁉」
「あちこち酒場にいないか虱潰しで聞いて探してたんだ。そしたらこの酒場にいるって。話によると富豪や商人向けに用心棒として雇わせてるって聞いたよ?」
「まぁ確かに金持ちや商人向けっつぅけどなぁ…やめといた方がいいぞ?先週、その『オーク』が雇い主を殴って大暴れしたからなぁ。おかげでこっちの商売は閑古鳥だったんだ」
折角オークに用事がある顧客に出会ったがリンジーの成りを見て断ろうした店主だったが目を輝かせながらずいずいと顔を迫らせてきたリンジーにたじろいだ。
「大丈夫、失礼のないよう話をするさ!それでどこに行ったら会えるのかな?」
こちらの話を聞いてないのか、それとも熱意があるのかリンジーの陽気さに呆れた店主はため息をついて後ろを指差す。
「カウンターの先にある『VIPルーム』だ。止めはしねぇが怪我しても俺は知ら」
「うん。ありがとう!」
リンジーは話を最後まで聞かずそのままオークがいる部屋へと入っていった。とんだお調子者だと店主は再びため息をつく。
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「なんだお前は?」
部屋に入れば自分よりも高身長で、下顎から一対の大きな犬歯が生え、軽装だが緑色の肌をした禿頭のオークがいた。オークはいきなり部屋に入ってきたリンジーをジロリと睨みつけている。
一方のリンジーはオークの睨みにも怯むことなくまじまじと見つめていた。
「ここは面白半分に来る所じゃない。さっさと帰っ…」
「ほうほう緑色の肌…オークの中でも森林地帯に暮らす『森オーク』か…ガタイも犬歯も実際に見たほうがすごくたくましいね!」
「お、おぉ…?な、なんなんだ、お前さん…?」
威圧に屈するどころか興味津々に見つめてくるリンジーにオークはたじろぐ。
「おっと、初対面なのに名乗らないのは失礼だったね。俺はリンジー、1から冒険し直す者だ。それで、君の名前は?」
「…オレの名はガド。それでリンジー、オレに何のようだ?」
ガドの問にリンジーは待ってましたとにっこりと頷いて答えた。
「ふふん…ガド!一緒に冒険しないかい?」
するとリンジーの誘いにガドは眉間にしわを寄せ、わなわなと体を震わせ表情は険しくなっていく。
「冒険だぁ…?ふざけるのも大概にしろ‼」
ガドは怒りテーブルを思い切り叩く。しかしリンジーはガドの怒りを物ともせずきょとんとしていた。
「どいつもこいつもおちょくりやがって!!オレたち『オーク』を何だと思ってるんだ⁉」
「ん…?
「……は?」
首を傾げるリンジーにガドの目が点になった。
「悪いことをしているオークもいるけどその反対の正義感あるオークだっている。本当のオークは義理堅くて仲間思いのある武人精神の強い種族だ」
「………」
「昔、『ブラン・モン山』で『森オーク』と『山岳オーク』、いがみ合ってた部族が力を合わせて侵攻してきた帝国軍を退けたって聞いたことがあるよ!これほど逞しくて頼もしいオークと一緒に冒険できるなんて心が躍るじゃないか!」
ガドはリンジーの熱弁に圧倒されていた。しかしすぐに我に返ると再びわなわなと体を震わせる。
「お前……‼」
ガドはギロリと睨んでリンジーの両手を握りしめた。
「………話が合いそうだな!」
ガドはとても嬉しそうに笑ってリンジーと握手を交わした。
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「最近の冒険者達はオークを理解してない‼」
ガドは酒を飲みながらリンジーに訴えた。リンジーは分かると頷きながら酒を交わす。
「どいつもこいつもオークを女性を攫ったり嫐ったりする性欲魔獣だと勘違いしてやがる‼」
ガドは更に酒を飲み怒り上戸となる。
「前にオレを雇った商人なんか実は奴隷商人でオレを使って女を攫おうとしてやがった!だから頭にきて殴ったんだぞ」
「みんなオークを悪い奴だと思ってるよねー…」
「冒険者になれればオークの悪いイメージを払拭できると思ったんだが…難しいもんだなぁ」
ため息を漏らすガドだったが嬉しそうに笑ってリンジーを見つめる。
「だがオークのことを理解してくれてる人もいるって知って安心した。しかしまぁ百年もの昔の話を知ってるとは」
「よく爺ちゃんが話してくれたんだ。オークは力が強いだけじゃないって」
よせやいとガドは照れながら笑う。
「それでリンジー、次は何処へ向かうんだ?」
リンジーは唸りながら考えでかい鞄から地図を取り出しじっとながめる。
「うーーーん……とりあえず東に進もうか」
「東か…おし、そうと決まれば祝杯だ」
二人は笑い合って乾杯を交わした。リンジーは新たな仲間を加えて新たなる旅路が始まろうとしていた。
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「悪いね、荷物持ってもらって」
街を出て街道を進むリンジーはでかい鞄を背負ったガドに頭を下げる。
「気にするな。あとそれから此れだけは守ってくれ…オークだから、誇り高き部族だからといって気を遣わなくていい」
ガドの言葉にリンジーはきょとんとする。ガドは少し照れながら話を続けた。
「一緒に旅する仲間だから…気さくに気軽に接してくれ」
「ガド…ありがとう。実は俺、勇者パーティーから抜けてたんだ」
「そうかそうか……なんと!?」
「カクカクシカジカだけど…」
「ふむふむ、リンジーほどの優しい奴を追い出すとは…それでそれで?」
リンジーとガドは話を弾ませ盛り上げながら街道から外れ森の中へと進んでいった。
悪いオークばかりじゃなくていいオークもいてもいいと思うの(誰