勇者パーティーから追放されたけど好きにすることにした   作:サバ缶みそ味

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3話 ある日、森の中

「よし、これで完成」

 

 リンジーは満足げに頷く。できたばかりのこんがり焼きあがったキノコの串焼きを持ってガドに渡す。

 

「道に迷って森の中に入り込んでしまったが食べ物には苦労しないな」

「おかげで食べれるキノコが沢山取れたよ」

 

 二人はこんがりキノコを頬張りながら森の中を躊躇わず進んでいく。

 

「リンジー、東に進んでるか分からない状況だがいいのか?かれこれ2日も経っているぞ」

 

 森の中に迷い込んで丸2日経過しているがリンジーは焦る様子はなく寧ろ状況を楽しんでいた。

 

「前は目的地がはっきりしててもたもたしていられないかったけど、今は自由気ままに進める。自然を満喫しながら進むのも悪くはないよ」

 

 マイペースなリンジーにガドは納得して頷く。

 

「確かに自然を満喫するのは悪くないな……焦る旅じゃないし気楽に行こう」

 

 森の中は危険と隣り合わせであるが二人は気楽に森の中を更に進んでいった。

 

「ガド、あれを見てよ。モモイロシマエナガだ」

 

 リンジーが小声で興奮気味にドガに呼びかける。ガドは身を屈めてリンジーが指さす先を見ると木の枝に桃色の小さな丸い数羽の小鳥が団子詰めに止まっている。

 

「キレイな色をした鳥だな。珍しい鳥なのか?」

 

「なかなか目にすることができない貴重な鳥だよ!図鑑でしか見たことがなかったけど、実際に見るととても綺麗だね!」

 

 無邪気に笑って観察を続けるリンジーにガドはクスリと笑う。ガド自身、こんなにもゆったりとした冒険はしたことはなかったと実感していた。

 オークの名誉のためと各地を転々とし、一心不乱に功を奏そうとした。だが人々はオークを怖がり遠ざけ、悪人に奴隷の番人だのエルフ等の亜人族を誘拐をさせられかけたりと空回りする日々で気が焦り心苦しい日々だった。

 そんな中、リンジーのようなオークの理解者に出会えたことが何よりも心の救いであった。

 

 こんな面白い魔法使いを勇者一行は追放したとは勿体ないと思う。しかしながら勇者一行は魔王軍と戦う目的がある故、リンジーのように道草を食う余裕はないのは理解できる。

 

(だが…ゆっくりするのも悪くはないな)

 

 まずは焦らず落ち着いて、少しずつでいいからオークのことを理解してもらおうとガドは決めた。

 

 観察している最中、突然モモイロシマエナガ達は何かに気づいたのか一斉に飛び立ってしまった。

 リンジーとガドは顔を見合う。こちらはモモイロシマエナガとの距離はけっこう離れて気配を消して観察した為気づかれることはない。

 

「リンジー、もしかすると……」

「大きな生き物が近づいているのに気づいたんだ」

 

 モモイロシマエナガ達より大きな生き物…捕食者のキツネかイタチか、あるいはクマかシカかイノシシか、もしや魔物が徘徊しているのか。

 

 二人の予想通り、遠くからガサガサと何かが駆けている音が聞こえてきた。しかもこの音はこちらに段々と近づいてきている。

 

「リンジー…」

「うん、分かってる」

 

 リンジーは長い杖を持ち、ガドは木の棍棒を持って身構えた。クマか魔物だったら撃退、シカかイノシシだったら今夜の晩ごはん。

 草や枝をかき分けている音が間近に迫ってきた。襲いかかってきても返り討ちにできる準備はできている。

 

 藪から飛び出してくるのはヘビか魔物かーー

 

 

 

「……っ⁉」

 

 

 飛び出してきたのはヘビでも魔物でもなかった。健康的な淡い小麦色の肌をした紺色と白の民族衣装な半袖と短パンを着た金髪のポニーテールをしたエルフの少女だった。

 何故この森にエルフがとリンジーとガドは目を丸くするがエルフの方はドガを見た途端、ギロリと睨んできた。

 

「折角逃げ切れたと思ったのにオークと悪徳商人に出くわすなんて…っ!」

 

 エルフは拳を握りしめる。すると手に魔法陣が展開し、拳に炎が灯されるとリンジーに殴りかかってきた。

 

「リンジーっ!」

 

 ドガはリンジーに襲いかかるエルフを止めようとした。しかしそれよりも早くリンジーは杖をふるってエルフの腕を払う。

 

「えっ?」

 

 エルフがきょとんとしているのも束の間、リンジーが杖で彼女の足を払い横転させた。

 

「きゃあっ!?」

 

 一部始終を見て唖然としていたガドはエルフが地面に倒れたのを見てハッとし、再び襲ってこないよう彼女の両手を抑えた。

 

「は、離してっ‼オークなんかに犯されたくないっ‼」

 

「風評被害だ!オレ達オークはそんなことしないっ!」

 

 エルフも全てのオークが変態だと思われているのかとガドはへこんだ。

 

「なんでエルフがこの森にいるのかな?近くに地図に載ってない集落があるとか?」

 

 リンジーは不思議そうに首を傾げて地図を見る。書かれている地名や山にもエルフの集落や街の表示はない。

 

「もしかして迷子のエルフとかかな?」

 

「うるさい。オークと悪徳商人に話すことはない」

 

「オレとリンジーは冒険者で悪い奴じゃない……」

 

 何とかして弁明しようとするが背後からガサガサと再び何かが近づいてくる音がした。

 

 

「はあ…はあ……逃げ足の速えエルフだぜ……」

「ふう…ふう…だがこいつぁラッキーだ」

 

 茂みから出てきたのは軽装な鎧を身につけた黒い鱗で赤い瞳の二足歩行のトカゲ…蜥蜴人(リザードマン)だった。

 

「こんな森に蜥蜴人…!」

「リンジー、目を輝かせるのはいいが……あまりいい蜥蜴人じゃなさそうだ」

 

 ガドが警戒している通り、二人の蜥蜴人は腰にサーベルを提げ、いつでも襲えるように手を近づけている。

 

「なあオークを連れた旅人さんよぉ…捕まえてくれたことは感謝するが早く返してくれねぇかい?」

「市場に出す大事な商品でな?街に出す前に逃げ出しやがったんだ」

 

「商品?」

「リンジー、どうやらこいつらは奴隷売人のようだ」

 

 ガドはムッと顔を険しくし、リンジーはなるほどと頷いた。

 

「だから右足に枷がついてたわけか」

「じろじろ足を見るな変態」

 

「こいつはハイエルフとダークエルフの間に生まれたハーフエルフだ」

「魅惑的な褐色肌と官能的な身体だから娼館に売れば大儲けだ」

 

 厭らしい目でエルフを見つめ舌なめずりする蜥蜴人にガドは更にイラッとした。するとリンジーはガドを宥め、エルフの前に立った。

 

「ちなみにいくら?」

 

「「「は?」」」

 

 いきなりのリンジーの質問に蜥蜴人達とエルフはきょとんとした。

 

「え、えーと……お前が買うのか?」

 

「買ったら彼女はこっちの自由でしょ?それにハイエルフとダークエルフのハーフエルフって初めて見るしね!」

 

 悪く言えば衝動買いである。目を輝かせるリンジーに二人の蜥蜴人は顔を見合わるとニヤリと笑う。

 

「じゃあ5500万ギルカだ」

「まあお前には払えないだろうけどな!」

 

 リンジーを嘲笑う蜥蜴人達にガドはギロリと睨んだ。蜥蜴人達はギョッとし後退りする。

 

「お、オークの旦那ぁ暴力はいけねえぜ?」

「こ、こっちは商売してんだ。は、払えたら何もしねぇよ?」

 

 これはリンジーでは払えない額だ。払えないと襲ってエルフを奪い返す算段なのだろう。

 

「よし、ちょっと待ってて」

 

 リンジーは蜥蜴人達の魂胆を全く気にすることなく背負っていた大きな鞄を置いてガサゴソとあさり始めた。

 

「どっこいしょっと!」

 

 リンジーの掛け声と共に出てきたのはどうやってその鞄に詰め込んだのかと言いたいくらいの大きな赤い箱だった。しかも一つだけでなく三つも出てきた。

 

「えーと…なにこれ?」

「この中に金貨、銀貨合わせて2000万ギルカが入ってる」

 

「おいおいそんなハッタリ……ってマジで金貨と銀貨じゃねぇか⁉」

「それが三つ……ろ、6000万ギルカだと!?」

 

 本物の金貨と銀貨であることに蜥蜴人は驚愕する。驚愕したのは蜥蜴人だけでなくエルフとガドも目を丸くしていた。

 

「り、リンジー、これは?」

 

「ユージンが『リンジーはあちこち旅するから路銀がいるだろう』って冒険や報酬で手に入れた宝を無理矢理渡してきたから質に流したんだ」

 

 これで鞄は少しは軽くなるとほっとするリンジーと少しだけ小さくなった鞄を見てまだあるのかとガドは唖然とした。

 

「これで買えるよね?」

 

「えっ?」

 

「商売なんだろ?文句はないよなぁ?」

 

「わ、わかった!わかったからオークの旦那は殺気立たないでくれ!」

 

 蜥蜴人は焦りながら契約書をリンジーに押しつける。リンジーは契約書を破くとエルフの右足の枷が外れた。

 

「ど、どうする?ボスに叱られるぜ…?」

「と、兎に角これ以上面倒事にならねえようずらかるぞ!」

 

 蜥蜴人達は箱を重たそうに抱えるとそそくさと逃げ出していった。

 

「ふう…まさかそんな大金をしょっていたとはな」

「持ってたら無駄遣いするから、少しずつ使うつもりだったよ。もう大丈夫、えーと……」

 

 自由の身になったエルフの少女は背伸びをし、リンジー達を見つめる。

 

「私はクレア、クレア・ラシィーヌ。助けてくれたことには感謝するけど貴方達についていく気はないから」

 

 クレアは蜥蜴人達が進んだ道を進もうとしていた。

 

「お、おい!そっいに行くとまた蜥蜴人に捕まるぞ!」

 

 ガドが止めようとするがクレアはガドの手を払い睨む。

 

「奴らのアジトには私の他に捕まっている亜人族の女性達がいる…彼女達を助けないきゃ」

 

「だったら…」

 

「オークなんかに手を貸してもらう道理はない!」

 

 クレアはキッと睨んで駆け足で蜥蜴人達の後を追いかけていった。ガドはやれやれとため息をついて肩を竦める。

 

「はあ……困った奴だ。リンジー、どうする?」

 

「俺達も行こう。とりあえず先回りだ」

 

 先に囚われている亜人族の女性達を助け感謝されよう……とリンジーがそう考えていないことはガドは察していた。

 

 何故なら、リンジーの目は好奇心に輝いている。

 

 

「この森に蜥蜴人のアジトがあるなんて…!是非とも会ってみたくなってきた!」

 

 リンジーは好奇心と探求心の塊だとガドはやれやれとため息をついた。

 

 




クレアのイメージは某ブイチューバのエルフさん

 いっぱいちゅき


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