リコリス・リコイル 〜W-licorice-extreme〜   作:goat

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(思った以上の評価をいただけて)おっ…おっぱげた!

感想や評価を貰うと書くモチベになるのでよろしくお願いしますm(_ _)m


#02 Wの変身/二人で一人の仮面ライダー

 

 

「──つまり、その女性を追いかけているストーカーをとっ捕まえて辞めさせるってことですね?阿部さん」

 

白と黒の市松模様の壁紙と、年季の入った仕事机。机の上にはタイプライターや書類が置かれれている。新は革張りの椅子を深く腰掛けながら、今回の依頼主──風都署刑事、阿部幹夫の依頼を確認していた。

 

鳴海探偵事務所には多くの人が訪れる。小学生から老人、誰かの奥さんから警察官まで、幅広く。阿部刑事もそのうちの1人であり、新とは10年来の付き合いである。

 

「あぁ、実害が出ないと俺たちも動けないからな。お前なら何かあっても大丈夫だろうし…頼めるか、シン」

「もちろんですよ、阿部さんの頼みなら断れないですし」

「ありがとうな!お礼に今度ラーメンでも奢るよ」

「マジっすか!?」

「おう、もちろんだ!……そういえば、(りん)たちは?」

 

思い出したように部屋を見回す阿部の口から出てきたのは、新の相棒と言えるもう1人の探偵の名前。

 

「あいつは今別の依頼で出掛けてるんですよ。だから今回は、俺一人で事件を解決してみせます」

「そうか…頼んだぞ!」

 

そう言って阿部は事務所を出ていき、新も立ち上がって壁にかけていた白の中折帽子を被る。手には阿部から渡された茶封筒。中には、事件解決に役立ててくれと彼が集めてきてくれた資料が。

 

「被害者は篠原沙保里、27歳。アパレルブランド・WIND SCALEに勤務し職場の人間関係は良好で彼氏アリ。彼氏とのツーショットをSNSに投稿してから不審な人物にあとを付けられていると……ん?」

 

資料の中に入っていた、その彼氏とのツーショットに映っていたあるものに、新は驚いた表情をする。

 

「おいおい、これって…!」

 

 

─────────────────

 

 

 

「アイツ歯ぎしりすごかったでしょ、夢の中でもカリカリしてんのよあいつは」

 

一方その頃、たきなはDAの制服に身を包んだ千束に連れられて街を歩いていた。向かう先は告げられていないが、きっと犯罪組織のアジトか何かだろうとたきなは考えていた。

 

「…千束さんは」

「ん?なに?」

「どうして、DAに居ないんですか」

 

たきながぶつけたのは単純な疑問だった。少なくとも「ファーストリコリス」に列せられるだけの実力を持ち、辛口で評判の楠木司令を持ってしても「実力者」と評される彼女が、なぜこんな風都にいるのか分からなかったからだ。

 

「えー…問題児だから?」

「じゃあ私と同じですね。千束さんはDAに戻ろうとは思わないんですか?」

 

私は戻りたいです、と付け加えるたきな。千束は不思議そうな顔をして聞き返す。

 

「逆に聞くけど、たきなはなんでDAに戻りたいワケ?」

「なんでって…リコリスなら誰でも本部に居たいモノじゃないんですか?」

「んーもう、たきなは堅いな〜」

「すいません、堅くて」

「別に責めてる訳じゃないよ?ただその…あ、着いたよ」

 

千束の言葉に、たきなは気持ちを切り替える。どんな施設でどんな相手かは知らないが、油断していたやられてしまう。後ろにかけているバックに手を伸ばそうとすると、前から元気そうな子供が押し寄せてくる。

 

「「「ちさとー!!」」」

 

奥にはエプロンをかけた保母が立っていて、にこやかに千束たちを出迎えてくれている。混乱するたきなを他所に、千束は話を進める。

 

「みんなー、この子は新しい相棒のたきなお姉ちゃんだよー!」

「「「たきなおねーちゃん!」」」

 

そう言って、子供たちはたきなに抱き着いてきた。

 

 

 

 

その後、たきなたちは日本語学校に老人ホーム、更には近所の内科クリニックで困り事を解決していった。そして今、たきなは「今日のメインイベント」までの待ち時間を、千束と共に公園で過ごしていた。

 

「…あの、この部署は一体何をするところなんですか?」

 

ようやく落ち着いたところで、たきなは少しキレ気味に千束に訊いた。

 

「お?先生から聞いてない?」

「保育園に日本語学校、老人ホーム…挙句の果てにはヤクザの事務所。関連性も共通点も見出せません」

「困ってる人を助ける仕事、だよ」

 

たきなの言葉に、千束は笑ってそう答える。人助け?とたきなは首を傾げる。

 

「個人のためのリコリス、ですか」

「そうそう。保育園のお手伝いも学校のお手伝いもコーヒーの配達も、みんな喜んでくれるよ?」

「私たちリコリスの仕事は国家を危険から守るエージェントです。それがこんな…」

「なんかそう言われると映画みたいでカッコイイね!?」

 

でもさ、と一拍置いて千束は続ける。

 

「”国家のため”って言う大義名分のもとに人を暗殺する殺し屋集団、とも言われるよね?」

「それは…致し方ない事だと思います。ああいうこと(・・・・・・)が起きる世の中なので」

 

たきなの視線は、まっすぐ電波塔の跡地へと向けられる。

 

「そうかもねー…まぁとにかくさ、DAが見てなくても困ってる人はこの街にたくさん居るの。私はこの街が…風都が、大好きだからシン兄たちみたいに誰かの役に立ちたいの。だからたきな、力を貸してくれる?」

「………分かりました」

 

そう言って、たきなは少し照れた様子で差し出された千束の手を取って立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、千束の行きつけでもあるという喫茶店「SNACK&COFFEE 白銀」。なんでも今回の”依頼者”がこの店の店主である元マジシャン・フランク白銀の大ファンらしく、この場所を選んだらしい。

 

依頼者を待っている最中、ふとたきなが呟いた。

 

「こんな事してて、評価されるんですかね?」

「ん?評価?」

「本部にです」

「あー……」

 

手を貸すとは言ったが、あくまでもたきなの最優先事項はDA本部への帰還。そのためには仕事で評価されるしかないのだが、少なくとも千束がこなしている任務はDAの評価対象外であろうものばかり。

 

「じゃあ、なんで撃ったの?」

 

そう、千束はたきなに質問する。そもそも何故、たきなが「リコリコ」に左遷されたか──それは、任務中に彼女が人質の危険を顧みず対象を皆殺しにし、更にはそのせいで1000丁にも及ぶ銃取引の詳細が掴めなくなったからだった。

 

「勘違いしないで!揉めたくないなら、なんで命令無視したのかなーって」

 

二人の間に訪れた一瞬の静寂を打ち破るように、明るい声で千束はそう付け加える。

 

「それは、あの状況ではアレが一番合理的な判断だと考えたからです」

 

ハッキリと、力強くたきなは言い放つ。ジリ貧で応援を待つよりも、多少のリスクを承知で機銃掃射すべきだったと、たきなは言い切った。

 

そして、その言葉を聞いた千束は満足そうに頷く。

 

「そっかー…合理的な判断、か」

「はい」

「そうだね。今回の件だって、たきなが悪いわけじゃないし」

「どういう事ですか?」

 

自分が左遷された理由は命令無視ではなかったのか、とたきなは身を乗り出して千束に訊く。

 

「今回の作戦中、通信障害があったでしょ。それはラジアータがハッキングされたから。そんなの公に出来るわけもないし、都合よく命令無視してたたきなに全部を押し付けて隠蔽したってワケ」

「ホントですか!?」

「ホントにホント。事件は事故に、悲劇は美談に…それが組織(DA)のやり方。10年前の事件だって今や平和の象徴、でしょ?」

 

そう言って千束は窓の向こうに見える電波塔跡地を眺める。

 

「だとしたら…私がした事は、なんだったんでしょうか」

 

俯き、そう零すたきな。千束はすぐに「そんなの決まってんじゃん!」と弾けるように言う。

 

「仲間の命を救ったんだよ!カッコイイじゃん!!」

 

あんまりに千束が褒めるものだから、たきなは少し照れた様子で「そうでしょうか」と言う。

 

「決めた!私、たきながDAに戻れる様に協力するよ!」

「いいんですか?」

「もちろん!その代わりと言ってはなんだけど、風都に居る間は……あっ沙保里さーん!」

「……と、新さん?」

 

千束が内ポケットから何かを取り出そうとしたが、相談者の姿を見つけて名前を呼ぶ。そして彼女の横には、何故か新の姿もあった。

 

「シン兄?どうしてここに居るの?」

「俺も阿部さんに彼女のことを頼まれちまってな。まさかお前らと依頼主が被るとは・・・」

「報酬は7:3でいいよ」

「そんなにくれんのか?お前にしては珍しいな千束」

「ちがうちがう私とたきなが7、シン兄が3だよ」

「ふざけんな!こちとら重要な情報をだな……」

 

新と千束がぎゃんぎゃん言い合う姿に困惑気味の沙保里に、たきなは「どうぞ」と椅子を引く。

 

「千束さん、それから新さんも。依頼主の方も困惑してます。早く本題に入りましょう」

「「すいません……」」

 

二人も席に着いたところで、沙保里はたきなと千束に一枚の写真を見せながら事情を説明する。

 

「彼氏と撮ったこの写真をインスタに投稿してすぐに脅迫メッセージが送られてきて…怖くなってすぐに消したんだけど、それから私も彼も誰かにあとを付けられるようになったの」

 

写真には、肩を寄せ合う二人の姿が。一見なんの問題もないように見える写真だ。

 

「どこから恨み買うかわかんない時代ですもんねー…前の彼氏さんとか?」

 

写真を見た千束が沙保里に聞くが、彼女は首を振って否定する。

 

「警察にも痴情のもつれだって言われて取り合ってもらえなくて…けど、前の彼なんて居ないの!だからほんとに、心当たりがなくて」

 

沙保里の返答に、うーんと唸ったあと閃いたように千束は彼女に質問する。

 

「じゃあ!職場の人とかは?」

「いや、俺が調べた限りだとそれは無いな」

「ないかー」

 

即座に新に否定されテーブルに突っ伏す千束。たきなはと言うと、写真を拡大して何やら2人の後ろの方を凝視していた。

 

「千束さん、これ」

「ブフォッ」

「うおっ汚ねぇな!」

 

コーヒーを飲みながら他の可能性を考えていた千束が、たきなの指さすところを見て思わず吹き出した。

 

「だ、大丈夫…?」

 

心配した沙保里が千束に訪ねるが、彼女は咳き込みながら「大丈夫です!」と答え、音量を下げてたきなと話す。

 

「ちょっと!沙保里さんヤバいのに巻き込まれてんじゃん」

「えぇ、この後ろのビルと人影…例の銃取引の現場ですね」

 

コソコソと話す千束たちを見ていた新が、沙保里にある質問をする。

 

「沙保里さん、このビルってもしかして……」

「そう!例のガス爆発のビルなのよ!朝日が映えるカフェだって言うから朝早く行ったら…帰ってニュースを観てビックリしちゃった!」

 

その答えで疑問が確信に変わったたきなは、沙保里にお願いする。

 

「沙保里さん、この写真送ってもらえますか」

「え?い、いいけど…」

 

写真が送られてきたことを確認して、千束が沙保里の方を向く。

 

「沙保里さん、もっと詳しくお話聞きたいからお泊まり会とか…どうですか!?」

「いいわね、それ!私は全然おっけーよ!」

「よっしゃー!たきな、私パジャマ取ってくるから沙保里さんと先に二人で歩いてて!」

 

そう言って千束はパパっと店を出ていく。新も「そういうことなら…」と立ち上がる。

 

「レディたちの秘密の花園に……俺のようなハードボイルドな男は似合いませんから、これで失礼させてもらいます」

 

気取った物言いに沙保里もたきなも大分困惑しつつ、店を出ていく新の後ろ姿を見送った。

 

 

 

 

──────────────

 

「それじゃあ2人は、今日初めて会ったの?」

「はい、優秀な人らしいですが…見えませんよね」

 

すっかり日も暮れ、二人は沙保里の家へ向かって歩いていた。

 

「それで、前のバイトに戻りたいと…嫌なことがあったから辞めたのよね?」

「いえ、少し誤解があっただけです」

「そんなに戻りたいんだ…」

 

沙保里と話しながら、たきなは一定の距離を保って後ろをつけているワンボックスカーを確認する。恐らくは、銃取引を行っていたテロリストの一派だろう。

 

「分かった。私もたきなちゃんがバイト戻れるように協力するよ!こう見えてもバイト経験豊富だからさ!」

 

その言葉を聞いて、たきなはこの人はいい人なんだな、と心の中で思う。そして同時に、一言「ごめんなさい」と聞こえないような小声で謝る。

 

「では、早速協力して欲しいことが」

「え?いいけど…」

「ありがとうございます。では、私は少し用ができたので先に行ってます」

「ちょっ、ちょっとたきなちゃん!?」

 

後ろから沙保里の声が聞こえてくるが振り向かずたきなは次の角を曲がり壁に隠れて拳銃を取り出す。住宅街ということを鑑みてサプレッサーを取り付け、敵の動きを待つ。

 

たきなの作戦はこうだ。

 

あえて沙保里を1人にすることでテロリストに彼女の身柄を確保させて止まっているところを急襲。確実に敵をあぶり出し射殺できる、合理的な案だ。

 

「ちょっと、なにするの!?」

 

案の定、ワンボックスカーが沙保里の進路を塞ぐように止まり中から屈強な男たちが現れ、沙保里を捕らえようとする。

 

(よし、今だ──!)

 

たきなが飛び出そうとしたその時、強烈な衝突音と共に数名の男がたきなの方へと吹き飛んできた。何が起きたのかたきなが理解出来ないでいると、沙保里の前に白いスーツの男が立っているのが見えた。

 

「まったく、たきなちゃんに任せたはずなんだがな…」

(あれは…新さん?)

 

帽子についた埃をふっと息を吹きかけ払いながら、新は凹んだ車から出てきた男たちを一瞥する。

 

「人の殺し方は教わってても、レディを口説く時の作法は習わなかったみたいだな」

「んだとテメェ!」

 

新の挑発にキレた男が1人、ナイフを持って突撃していく。

 

「オラァ!」

 

しかし、新は僅かなステップでナイフを避けて鋭い拳を男の顔面に叩き込む。たきなから見ても、相手の男はそれなりの経験は積んでいる様子だったが、新はなんなくそれをいなしてみせた。

 

「「多勢に無勢だいっけぇ!」」

 

一体一では互角かそれ以上ということを悟った男たちは、流石というべきか多対一で新に襲い掛かる。ナイフや警棒、どれも当たればタダではすまないような危険な武器ばかりだが、新は恐れる様子なく相手の懐に忍び込み、鋭い拳でノックアウトする。

 

最初は6人ほど居た男たちも、わずか1分たらずでリーダーを残してたった1人になっていた。

 

(すごい身のこなし…それに打撃のインパクトもある。ほんとにただの探偵?)

 

たきなが新の戦闘能力に感服していると、既に彼は残ったリーダーへと迫っていた。

 

「さぁ、街を泣かせるクソ野郎…とっとと観念して、情報を吐いてもらうぜ!」

 

新の台詞に、リーダー格の男は不敵な笑みを浮かべ、内ポケットからUSBメモリのようなモノを取り出した。

 

「テメェ…なんでガイアメモリ(・・・・・・)を持ってやがる!」

 

そのメモリを見た新は驚き、キッと男を睨みつける。

 

「これでも俺たちの依頼主は慎重派でね…”仮面ライダー”が出てきても対処できるように渡してくれたのさ」

 

そして男はそのメモリを自分の腕に突き刺した。

 

《MAGMA》

 

その音声と共に男の体は人とは思えないような姿へと変化していく。皮膚は黒く変色し、まるで溶岩のようになり、顔の周りからは炎が勢いよく噴き出す。

 

「その女ごと死ねっ」

 

炎の怪物──マグマ・ドーパントは、その手を沙保里の方へと向ける。

 

「まずい、沙保里さん!」

 

マグマ・ドーパントの攻撃を察知した新は咄嗟に沙保里に覆い被さる。

 

「ふん…どれだけ格闘技に優れていてもその怪我では俺には太刀打ちできまい」

「クソっ……」

 

沙保里を庇った際に焼かれたのか、新の背中には火傷の跡が。これまで静観していたたきなもこうなれば出ていかざるをえず、マグマ・ドーパントを射撃しながら投降を勧告する。

 

「どういう理屈でそうなっているかは知りませんが…いますぐ変身を解除して投降しなさい!でなければ……」

「でなければ、なんだあっ」

「かはっ…」

 

マグマ・ドーパントの拳がたきなを捉え、数メートル後ろに吹き飛ばす。

 

「あのムカつく探偵から殺してやろうかと思ったが…まずは貴様からだ」

 

灼熱の炎を帯びた、マグマ・ドーパントが一歩一歩たきなに近付いてくる。

 

「クソっ……逃げろ、たきなちゃん!」

 

自分も痛みで立てない新が叫ぶが、さっきの1発が内蔵に響いていてたきなもその場から動けなかった。

 

(もうダメ……)

 

振り上げられた拳に、たきなが死を覚悟したその時。

 

「たきなから離れろぉぉぉぉお!!」

 

聞き慣れてしまった、弾けるように明るい声と共に、1台のバイクがマグマ・ドーパントごと吹き飛んで行った。バイクから飛び降りてふわりと着地したのは、「リコリコ」に戻っていたはずの千束だった。

 

「たきな、怪我はない?」

「けほっ……さっき殴られたのがちょっと痛いですが、それ以外は」

「そっか。じゃあ、まだ戦える?」

「戦えますけど、アイツには銃が効きませんよ」

 

あの硬い、岩のような皮膚は弾丸を寄せ付けない。たきならリコリスの獲物である銃器では、まともなダメージを与えられないのだ。

 

「知ってるよ、そんなの」

「じゃあ、何か策があるんですか!?」

 

たきながそう言うと、千束はたきなの背負うバックを指差した。

 

「だから、拳銃は効かないって言ったじゃないですか!」

「ちゃうちゃーう、今朝渡したベルトがあるでしょ?」

「まさか、アレを使うんですか?どうみても武器には見えなかったですけど…」

 

立て続けのたきなの質問には答えず、千束は胸のポケットから黒いガイアメモリを取り出してたきなに渡す。

 

「目には目を、歯には歯を、そしてガイアメモリには──」

「ガイアメモリを、って事ですか」

 

その通り、と言って千束はニカッと笑う。

 

「私が持ってたダブルドライバーは二人の変身者が居て初めて”仮面ライダー”に変身できるの。だからお願い、たきな。私に半分力を貸して」

 

いつものような表情とは違う、いたって真剣な顔で千束はたきな二頭を下げた。それくらい「仮面ライダー」とやらになるのは大きなことなんだ、とたきなは認識し──起き上がったマグマ・ドーパントを見つめる。

 

「千束さん。もし私たちがその”仮面ライダー”に変身すれば…あの怪物は倒せますか?」

 

たきなの問いに、千束は力強く頷いた。

 

「もちろん。1人じゃ無理でも──2人なら、絶対に倒せる」

 

その言葉で覚悟を決めたたきなは、タブルドライバーを装着し、黒いガイアメモリ─”切り札(ジョーカー)”のガイアメモリ”─を構える。

 

「ちゃんと半分力貸してよ?相棒(たきな)!」

「そっちこそ、お願いしますよ。……千束さん」

 

気付けば先程まで吹いていた風は止み、雲の間に隠れていた月がその姿を見せている。

 

「「変身!」」

 

《Cyclone》

 

千束がドライバーに「Cyclone」のメモリを突き刺すと、即座にたきなの方のドライバーにメモリが転送されてくる。

 

《Joker》

 

そしてたきなが「ジョーカー」のメモリをドライバーに突き刺し、「L」が向かい合う状態から「W」の形へとドライバーを押し倒し────風が、強く吹いた。

 

六人目(・・・)……!」

 

月明かりに照らされる、緑と黒がハーフハーフのボディ。首元のスカーフを風にたなびかせるその姿を見て、新は思わずそうもらした。

 

「そ、その姿は…お前は一体何者なんだ!?」

 

マグマ・ドーパントが「一人」、否、「二人」を指差して叫ぶ。

 

『私たちはダブル。仮面ライダーダブル。さぁ、お前の罪を数えろ!』

 

 

 





・ガイアメモリ…「地球の記憶」を内包した特殊なメモリ。主に風都で流通しており、風都ではこのガイアメモリを悪用した超常犯罪があとを絶たない。強い毒素を持ち、使い過ぎれば人格が攻撃的になり死に至る危険性を持つ。

・ドーパント…人間がガイアメモリを生体コネクタに差し込んで変身した怪物。

・「さぁ、お前の罪を数えろ!」…千束がかつて救われたという「ある人」の決め台詞らしい。 ちなちにたきなは結構ノリノリで言ってた。
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