なぜか執行官になってしまったが、正直やめたい   作:まっしゅポテト

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ファデュイ式

 

 爆発音が鳴り響く。

 大きな火炎が辺りを包み込み、大きな衝撃を与える。

 

「常に警戒を怠ってはいけませんわ……」

 

 目の前の女はゆったりとした仕草で首を傾げた。それは気品に溢れており、荒くれ者が多いファデュイの中でも一段と浮いて見える。

 しかし穏やかな声に反し、周りには火の粉が音を立てて舞っていた。

 

 20人ほど居た兵士たちはそのほとんどが倒れ伏し、死屍累々といった有様。本来ならば退屈のはずの就任会は予想外の方向に動いていた。

 

 ここは戦場では無いはずの場所。武装も解除命令が出され、無手で来るよう言われたにも関わらず、この有様である。

 

 それは何故か。

 目の前の女が兵士たちの前で爆弾を一斉に起爆させたからだ。

 

 不自然な草の束と火薬の匂いに気づいていた者は、爆発後すぐに防御姿勢を取った。今立ち上がれているのは、警戒を怠らず戦場慣れした者たちである。

 だが仮に気づけなかったとしても爆弾自体の殺傷力は大したことは無い。この爆弾はあくまで試すものである。熱さと衝撃はあっても、鉄片が混ぜられていた訳では無い。数分も経てば回復するだろう。

 

 ただ武装解除をせず、爆弾を隠し持っていた者は別だ。

 

 血を流し、苦しそうに呻く男たちをアヤックスは冷めた目で見た。彼らは新しい執行官を暗殺するべく送り込まれた刺客、おおかたどさくさに紛れて目撃者となる他の兵もろとも消そうとしたのだろう。

 

 隠者は爆薬を多く用いる執行官である。爆殺であれば、不慮の事故として片付けられると読んだのか。

 刺客達は少しの熱と衝撃で反応する信管を用いた粗悪な爆弾を持ち込み、逆に不慮の事故として返り討ちにされた。噂の通り、策略に長ける執行官というのは嘘でないらしい。

 

 ともかく執行官の地位を狙ってか、それとも彼女個人に恨みがあるのかは知らないが、そのようなやり方はアヤックスの好みでない。 

 重要な単独任務でなんとか成果を上げ、傷もいえぬまま会ったことの無い女の部下に招集された。歴代で最も若い執行官というから、どんなものかと思ったら、なかなか苛烈な制裁を好むようだ。

 

 

 

 仮面の中から覗く瞳は、スネージナヤ人の碧眼。

 女は倒れ伏せる刺客に手を向けた。

 

「ですが私もやりすぎました。手当をしてからお話しましょう?」

 

 さてこの女、諜報部から上がってきたらしい。暗殺や拷問はお手のものだろうが、アヤックスは手っ取り早く自分の功績を建てるため、口を出すことにした。

 

 

 

 

 いや、どうしてこうなった!?

 

 私は必死に平然を装いながら、辺りを見回した。

 やべぇ、めっちゃ血流れてる人いる。就任式で事故で人死んだとかなったら早速クビが飛ぶわ。助けないと。

 

 もともと爆弾を用意していたのは私であるが、爆発のタイミングも威力も思ってたのと違う。

 新人就任式は伝統的に上司と試合をするという脳筋儀式なのだが、私はもちろんクソ雑魚。部下と戦ったら即死であるので、雑魚でも使える爆弾を用意した。

 

 爆発する →みんなビビる→「常に警戒を怠るな」ドヤァ

 

 で何となく乗り切ろうとした。もちろん爆弾は威力を抑えてあるし、スーパーテイワット人は耐久力に定評があるので簡単に死ぬことは無いはずである。

 そのハズだったのだが……。

 

 

「ぐぅっ!全部図ってやがったのか!」

 

 

 めっちゃ重症なんだけど!?

 

「ふ、ふふっ、常に警戒を怠ってはいけませんわ……」

 

 私は混乱のあまり、避けないお前が悪い的なクソムーブをかました。

 動揺してお嬢様口調になってしまう。ヤバい想定していた状況と違いすぎる。どうしよう。

 部下を不当に痛めつけたら何罪になるのだろうか。稲妻伝来式土下座でどうにか許してくれないかな。

 

「ですが私もやりすぎました。手当をしてからお話しましょう?」

「くそぉ!」

 

 謝罪と、この不手際を示談で収めてくれるようお願いする。反応を見るにダメっぽい。そりゃそうだ。

 どうしたものかと動けないでいると、横から男が手を挙げて話しかけてくる。馴れ馴れしいな。

 

「あっはっは、容赦ないねぇ隠者サマは!」

 

 私はチャラ男を睨んだ。隠者の名の通り、前世から生粋の隠の者である私は陽キャが嫌いである。

 

「割り込んですみませんね隠者様。そこの男は俺と一緒の部隊でさ。彼の対処は俺にさせてもらいたいんだ。ほら、身内の恥は身内で濯ぐって言うでしょ?」

 

 なんか聞いたことのある声に違和感を覚える。

 

「あ、もしかして俺も仲間だと思われてる?もちろん違うし、逃したりしない。今ここでやるからね」

 

 イマイチ状況が掴めないが、示談交渉の仲介をしてくれるのだろうか。コミュ強ぽいし、知り合いなら話がスムーズに進むかもしれない。 

 よし、現状を打破できるならと期待を込めて私は頷いた。

 

 

 チャラ男はにっこり笑うとどこからか取り出した弓で負傷者を思い切り叩いた。

 

「ぐッ!!」

 

 負傷者は頭からダラダラと血を流し、地面に伏せる。

 

 

 

 

 

 チョットマッテェ!?

 

 

 対処ってそういう、口封じ的なやつ!?

 

 

「貴様!調子に乗るな!」

 

 倒れてた男達がよろよろと起き上がり、剣を構える。おいなんでこっちに来るんだ。殴ったのはそこのチャラ男だぞ。

 

「いいねぇ!楽しませてくれよ!!」

「てめぇアヤックス!馬鹿にしやがって!」

 

 だから待ってって!

 

「隠者様!お下がりください!」

「う、うん」

 

 言われるまでもなく私はミラーメイデンお姉さんの後ろに身を隠す。

 

 その後、負傷者たちはものの数分で制圧され、20人ほどいた部下は5人に減っていた。

 

「お、お疲れ様です……」

 

 私は真っ白になった頭で拍手した。

 

 




ぜーんぶドカーン!!
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