ツアレ転生者の華麗な異世界生活   作:さろんぱす。

10 / 30
感想・誤字脱字報告ありがとうございます!!


#10 焼肉パーティ

「おっ、こっち焼けた。――〈調味料創造(クリエイト・スパイス)・胡椒〉。……お肉うまぁ~!!」

 

「働いた後のご飯はおいしーねー。戦士長は食べないの?」

 

「いや私は結構だ。というかよく生首を前に肉が食えるな……」

 

 みなさまこんにちは。

 八本指幹部の首を持って戦士長のお宅に駆け込んだツアレちゃんです。

 

 夜中に押しかけたにもかかわらず、ガゼフさんは私達を快く家に迎えて入れてくれた。

 さすが戦士長だ。やはり平民から王の側近まで成り上がる男は違う。器の大きさも戦士長なんだなって。

 

 私たちは早速、テーブルを借りてお肉を焼き始めた。

 

「流石、金貨1枚もする超高級お肉だね。途中で見つけて衝動買いしちゃったけど、こんなの村じゃ食べられないよ!!」

 

「そうだねー。あ~、信仰信仰言ってくる奴らがいないって最高だわ。……あっ、ツアっち、今度は塩でおねがーい」

 

「はいはい――〈調味料創造(クリエイト・スパイス)・塩〉。……ほーれ、神様からのお恵みだぞ~」

 

「信仰が塩に変わるってまじ受ける~」

 

 なお調味料は魔法で出す。焼肉プレートも、フライパンを魔法で加熱して代用だ。

 

 ジュージューと焼かれる分厚いステーキに、パラパラと塩を振りかける。

 すぐ香ばしい匂いが漂ってきた。私とクレマンティーヌはソレをフォークでぶっ刺し、豪快に口の中に放り込む。

 

 軽く噛むだけでプツリと切れる柔らかなお肉。

 その度に滲み出てくる肉汁が、振りかけた塩と混ざりあい、幸せのハーモニーとなって口内に広がっていく!!

 

「おっほぉ~~~!!」

 

「塩気が体に染み込むぅ~~~!!」

 

「すまない。美味そうに食べてるところ悪いが、そろそろ事情を説明してくれないか? その、まるで意味が分からんぞ……」

 

 余りの美味しさに、思わず体がビクンビクンと跳ねてしまう!!!

 

 そんな私達と同じテーブルについているのは、この国の戦士長だ。

 苦心する王を支える忠義の戦士!! みんな大好きガゼフ・ストロノーフさん!!

 私も原作でメチャクチャ好きだった。お陰でテンションアゲアゲ!!

 

 ガゼフさんは肉を焼き始めた私達をじっと黙って見守り続けた。

 そして一息付き終わってから、改めて事情を聞き始めてくれた。……聖人かな?

 

「えーと、私達……もぐもぐ……。八本指に捕まってて……もぐもぐ……。ムカついたから幹部二人をぶち殺して、首持って逃げてきたんですけど」

 

「いや待ってくれ!! つまりこの首はその幹部達だと!? そう言ってるのか?」

 

「そうだよー……もぐもぐ……。ついでに一緒に来てた六腕とかいうのもぶち殺してねー……もぐもぐ……。持参したのがそいつらの首って訳。あっ、意外とタン()も美味しい」

 

「六腕もだと……!?」

 

「オカマっぽいの以外の3人だね。ハゲは警備部門のトップでもあったみたい」

 

 だから今は六本指と三腕だねー、といいながら肉を頬張る。

 

 ちなみに囲んでいるテーブルの上には、持参した4人の首も載っている。

 ちゃんと〈保存(プリザベイション)〉の魔法を掛けてあるので、鮮度は死んですぐのままだ。

 

 まぁしっかり血抜きをしたので、ちょっと顔色が悪いが。

 そこは勘弁してもらうしかない。でも誰かは分かるので問題ないだろう。

 コイツラ原作ではワンパンで死んだのに、やたらとキャラが濃いからなぁ。

 

 驚いていたガゼフさんは暫く考え込んだ後、改めて口を開いた。

 

「うーむ、俄には信じられんが。しかし本当であれば確かに大手柄だ。だが何故、私の家に? 噂の六腕に勝てるのであれば、私の保護など必要ないと思うが?」

 

「そこはほら、私達も戦闘で消耗しちゃってるから。それで何処に行くか迷ったんだけど、他に信用できる人を知らなかったんですよ」

 

「街の衛兵とか、誰の息が掛かってるか分からないからねー。かと言って、下手な所に泊まって襲撃されても困るし。でも戦士長の家なら安心でしょー?」

 

「なるほど。そういうことか」

 

 原作でも巡回士が買収されていたように、この国の公務員は基本的に信じない方がいい。

 他にはレエブン侯の屋敷もありだけど、向こうは居るか分からないからね。

 その点、ガゼフさんなら居る可能性が高い。あと私が個人的に会ってみたかった、というのもあるが。

 

 ちなみにこの家はクレマンティーヌが知っていた。

 王国の重要な戦力ということで、捕まる前に諸々調べていたらしい。クレティーまじ有能!!

 

「それでこの首と持ち出した書類なんですけど、報奨金とか出るのでしょうか?」

 

「懸賞金ぐらい掛かってるんじゃないかな~」

 

「……その前に、二人はこの書類に何が書かれているかは把握しているか?」

 

 おっ、何かすごいことが書かれてたのかな?

 そういうガゼフさんは苦虫を噛み潰したような顔をしている。

 

 だが聞かれたことには答えねばなるまい。

 私の質問に対して堂々と胸を張って答えた。

 

「もちろんです。――字が読めないから無理。寒村出身舐めないでくれます?」

 

「そ、そうか……」

 

「ごめんねー、ツアレはアホの子だから勘弁してあげて?」

 

「どうやらそのようだな……」

 

「二人共ひどっ!!」

 

 なんということだろう。これは酷い風評被害だ。

 しかしクレマンティーヌの答えに納得してしまうガゼフさん。一体どこにそんな要素があったというのか。これは一刻も早く撤回させねばなるまい。

 

「私がアホだって!? ならば――〈氷創造(クリエイト・アイス)〉。クレティー、それこのキンキンのエールの前でも言えんの?」

 

 私は酒の入ったカップに、魔法で作り出した氷を入れてクレマンティーヌの前に置く。

 

「くぅ~~、さいっこうに冷えてやがる!! 前言撤回するわ。ツワっちは天才(掌クルー」

 

「すまない。楽しんでるところ悪いが、もう少し詳しく聞いてもいいか?」

 

 飲んだクレマンティーヌは一瞬で掌を返した。コイツのほうがアホなんじゃね?

 

 私たちはそんな感じでお肉とエールに舌鼓を打ちつつ、今までの事情を詳しく話した。

 これで後はガゼフさんと王様に任せればいいだろう。

 ランポッサ3世は慈悲深い王だ。きっと悪いことにはならないと思う。

 

 ただ、報奨金の方は期待しないでくれ、と言われたのが少し残念だった。

 でもまぁお金は沢山あるからね。コッコドールの金庫を見つけれたのは運が良かったぜ!!

 

「これも普段の行いが良いおかげかな。後そろそろ眠くなってきたので部屋貸して?」

 

「事情が事情なので部屋は別に構わんが。しかしよく初めてあった男の家に泊まろうと思えるな……」

 

「だって私達のハートはアダマンタイトだからね!!」

 

「ツアレは割とマジそうだから困るよね。普通は飯の前に事情を話すでしょ……」

 

「自覚があったのか……」

 

「一緒にバクバク食ってたクレティーがなんか言ってる」

 

 話し終わったら借りた客間に移動だ。

 ベッドは一つしか無かったが、女二人なので詰めれば普通に寝れる。

 

「はい、じゃあ〈清潔(クリーン)〉の魔法で汚れを浄化してっと。あとクレティー服脱いで~」

 

「いや、なんで下着まで脱がそうとするの? 戦士長が来たらどうするのよ」

 

「チンコ潰す」

 

 ゴワゴワしたメイド服はポイーで。

 その後、ベッドに入るとすぐに睡魔が襲ってきた。

 恐らく気づかない内に疲れていたのだろう。思い返せば、めちゃくちゃ濃い一日だった。

 

 私はそのまま夢の世界に旅立った。

 裸のクレマンティーヌを、抱きまくら代わりにして。

 

 

 

 

 ――そして夜が明けた翌日。

 

 王宮に登城するガゼフさんを見送った私たちは、朝食を取ってから冒険者組合に向かった。

 理由はクレマンティーヌの登録と、そして私の再()()登録だ。

 

 前の冒険者タグは残っていない。捕まった時に取り上げられてしまったから。

 それならいっそ、もう一度新人として登録し直した方が早いんじゃね? という考えである。

 

「どうせ前のも一日しか活動してないからね。なら一緒に登録しよう。前は偽名だったけど、間違えそうだから今度は本名で」

 

「いや間違えるなら偽名は止めなよ。頭大丈夫ー?」

 

「私の冴えわたる頭脳が何だって? 問題はPT名をどうするかだね。……『最強無敵団』とかどうかな?」

 

「ださっ!!」

 

 大通りを抜けて暫く歩くと、組合の建物が見ててきた。

 流石にこの国の本部だけあって、王都の冒険者組合は大きかった。

 見上げれば建物は6階建ての総石造りだ。

 

 私は中に踏み込んでから、ぐるっと室内を見回す。

 入り口から真っ直ぐ進んだ先にはカウンターがあった。その内側には、訪れた人たちを相手している受付達。

 

 それから左側は壁に何枚も用紙がピンで留められていた。

 こちらは依頼の貼出しコーナーだろう。冒険者達が一つずつ内容を吟味している。

 

 最後に右側には複数のテーブルと椅子が置かれている。

 こちらは待ち合わせ場所かな? 冒険者、そして依頼人だと思われる人達が寛いでいた。

 

 私たちはそんな室内を眺めながら受付の列に並んだ。

 

「という訳でツアレニーニャです」

 

「クレマンティーヌです」

 

「ではコチラがカッパーのプレートになります。なくさないように注意してくださいね」

 

「「はーい」」

 

 登録が終わったらすぐに組合を出る。

 後は魔術師組合で必要なマジックアイテムを買い込み、そのまま真っすぐ王都を出た。

 

「八本指の首で報奨金が出ない以上、この街にいる必要性は無いからね」

 

「確かにデメリットの方が多いよねー。冒険者も多いせいか碌な依頼がなかったし。……首押し付けられたガゼフっちは大変そう(ボソッ」

 

「んっ、なんか言った? じゃあちゃっちゃ行こうか。出入り門は使わずに城壁を飛び降りたから、暫くは私達がまだ中にいると思うでしょ。あっ、途中のモンスターは全殺しだよ」

 

 目指すべき目的地はエ・ランテルだ。原作では魔導国の首都になった都市。

 これから起こる歴史を知っていれば、この世で最も重要な都市と言っても過言では無いだろう。

 

 なのでそこに基盤を作ることは重要である。

 そうしておけば建国時に、スムーズに魔導国へ移籍できるはずだ。

 

「それにあの街は付近に狩り場が多いからね。特にカッツェ平野の無限湧きは最高!!」

 

「んー、アンデッドは苦手なんだけどなぁー」

 

「その為の炎武器だよ。めっちゃ高かったけど」

 

 平原でゴブリン狩りをしてよし! 森で薬草を取ってよし! アンデッドが無限湧きするカッツェ平野もある!!

 刺突が得意なクレマンティーヌはスケルトン系が厳しそうだけど、そこは炎武器を買ってきたので大丈夫だろう。

 

「これが私達の門出だよ! 最強を目指して結成したPT――『白羽聖女団』のね!!」

 

「んー、最初の最強無敵団よりはマシだと思うけどさぁ。でも聖女って何処から来たの?」

 

「何言ってるの? 私たちは聖女そのものでしょ」

 

「それマジで言ってんの?」

 

 クレマンティーヌは呆れた顔をして空を見上げた。

 

 だが私は知っている。

 そんなクレマンティーヌこそ、別の世界線では聖女と呼ばれることを。

 そして私は癒やしの魔法が使えて、性格も穏やかで優しいと来ている。つまり聖女と言っても過言ではないだろう。

 

「なにより人知れず国の悪を倒し、報奨も受け取らずに去ろうとしている私達が聖女でなくて何だというのか」

 

「確かにそう言われるとそうっぽいかなー。そこだけ聞けば……」

 

 それから色は原作に出てきたチームを避けて白にした。

 羽は戦闘中に私が天使を呼び出すのと、あとクレマンティーヌが羽のようヒラヒラ舞って避けながら戦うスタイルだから。

 

 という感じで決まったPT名が『白羽聖女団』である。

 

 メンバーは女性限定の予定。

 そして出来れば、英雄級の実力者のみにしたいと思っている。

 

 なんせクレマンティーヌという強者が手に入ったのだ。

 ならせっかくだし、最強のPTを目指しても良いよね!!

 

「フフフ、これはきっと伝説になるよ!!」

 

「伝説て。ツアっちはどこを目指してるの?」

 

「もちろんまだ見ぬ明日を。クレティーこそ法国には帰らなくていいの?」

 

「帰っても良いことなんて無いからねー。せいぜい、お前はつかえねークズだって言われながら、また自殺みたいな任務を強制されるだけだろうし」

 

「あっはっは、私と似たようなもんだね。じゃあこのまま冒険者として好き勝手やっていこう!!」

 

 どっちの両親も碌でもない。

 私の方はある意味で自業自得だけど、クレマンティーヌは周辺でもっとも優れた国家でこれだからお気の毒だ。

 

 それから私たちは、そのまま東へ向かった。

 途中で出会うモンスターを殺してLVを上げながら。

 

 エ・ランテルに着いたのは、王都を出てから実に2ヶ月後のことだった。

 

 

 

 

 ◆◆◆ ◆◆◆

 

 

 

 

「では我が戦士長よ。詳しい話を聞かせてくれぬか?」

 

「畏まりました。事が起きたのは昨晩です……」

 

 首を持ってやってきた二人を保護した翌日。

 いつも通り王宮へ登城したガゼフは、すぐに王の前で報告を行った。

 

 だがそれに対する、周囲の貴族たちの反応は辛辣であった。

 彼らの言い分を要約すれば

 

『その二人は本当に実在するのですか?』

 

『実は戦士長の妄想なのでは?』

 

『女に縁がなさすぎてついに精神がおかしくなったようですな』

 

 こんな感じである。

 さらにその言い分は徐々にエスカレートし、ついにはガゼフが他人に罪を擦り付けようとしてる、とまで言い出す始末であった。

 

『常識的に考えて、アダマンタイト級と言われる6腕を殺せるのは戦士長しかおりますまい』

 

『ならば屋敷に火を付けたのも戦士長ということになりますな』

 

『これはひどい。戦士長の位は取り上げるべき。代わりに私の娘(50過ぎ)を嫁に差し上げましょう』

 

 これには流石のガゼフも怒りを禁じ得なかった。

 思わず全力で殺気を叩きつけてしまったのは若気の至りだろう。

 

 受けた数人の貴族達は即座に泡を吹いて気絶。

 ハイハイ、このアホどもは本当にこりねーな、と同じ派閥の者に運ばれていった。

 なお、少数のまともな貴族にとってはここまでがテンプレなので、彼らは黙ってやり取りを見守っていた。

 

 しかしその茶番が終わると、すぐに声を張り上げた貴族たちが居た。

 

「そのツアレという少女は本当に生きているのでしょうな!?」

 

「ツアレはどこにいるんですか!? 私のツアレは!! ……えっ、戦士長の家? 何してるんですか不潔です!!」

 

「お、落ち着かれよ伯爵。それとラキュース殿も」

 

 その筆頭はアインドラ伯爵家の二人だ。

 現当主と、何処からか部屋に入り込んできた長女である。

 

 聞けばどうやらアインドラ家はツアレという少女に大きな借りがあるらしく、気づけばガゼフは詰め寄られて質問攻めにされていた。

 

(まさかここまで影響を及ぼすとは……)

 

 あの少女は一体なんなのか? そう思わずにはいられない。

 だがガゼフに出来るのは、昨日の出来事を淡々と語るだけである。

 

 しかしこの間に対象の二人はとっくに王都を出ていた。

 そして探しても見つからなかった事から、今回の件は最終的に戦士長の妄想として処理された。

 ガゼフ・ストロノーフ、まさかの3ヶ月減給である。

 

「どうしてツアレがいないのよ!! 戦士長の嘘つき!! やっと会えると思ったのに!! もう私、泣いちゃいそう」

 

「止めてくれ。泣きたいのはコッチだ……」

 

 アインドラ家の令嬢に責められ、ガゼフは心の中で泣いた。




ランポッサ「ガゼフよ、詳しい事情を説明せよ」
ガゼフ  「はっ! 夜に二人組が突然家にきて、生首を魚に肉を焼いて食べ始めたのです」
周辺の貴族「おまえは何を言っているんだ」
アインドラ家「ツアレ! ツアレ! ツアレ! ニャーーーー!!!」

こんな感じの報告会。ガゼフさんは泣いていいと思う。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。