「ツアレーーーーー!!」
「はっ? ラキュース??」
みなさまこんにちは。生デスナイトにウキウキのツアレちゃんです。
アンデッドの群れと戦ってたら、急に空から金髪の美少女が降ってきたよ!!
「親方ぁ! って叫ぶべきかな? それとも重さがない!? って驚くところ??」
これなんてエロゲ? そんな事を思いつつ、私はその少女を受け止めた。
両手を広げてお姫様抱っこの形で優しく体をキャッチだ。
衝撃は全身の筋肉で耐えながら、軽く膝を曲げることで地面に逃がす。
地球なら絶対に無理な芸当だが、LVアップする毎に肉体が進化するこの世界なら可能だった。
「良かった!! ツアレ、無事だったのね!!!」
「むしろ余裕だったぞ☆」
受け止めたラキュースは、そのまま私に抱きついて泣き出した。
その様子に私は困惑する。この子なんで泣いてるの?
それから少し離れた場所を、巨大な幽霊船が通り過ぎていった。
中からはどこかで聞いたことのある声で「六光連斬!!」「うおおお! 超弩級連続攻撃!!」とか聞こえてきたが、たぶん気のせいだろう。
わざわざあんな船に乗り込む意味がないからね。むしろあの船だけには、乗り合わせてはいけない!!
「テニヌの試合中に現れて、後ろから体を刺してきそうな船だね」
「もう、何で連絡してくれないのよ!! ずっと心配してたのに!!」
「……そっすか。私は完全に忘れてたっす」
親しい友人みたいなことを言ってくるラキュースに対して、私は思わずルプスレギナ口調になってしまった。
確かに連絡なんてしていなかったが。
でも「リ・アインドル」の街は王都から北側で、エ・ランテルとは方角が違う。
八本指に見つかる危険を負ってまで行く必要はないよね?
それに王都出てからはすごく順調だったからなぁ。
LV上げが楽しすぎて、アインドラ家とか私の中でとっくに過去の存在になっていたよ。
「あー、ごめんね。でも今は戦闘中だから後でね? 後ろで大人しくしててどうぞ」
「それなら任せて!! ――〈
ラキュースはお姫様抱っこのまま魔法を放った。
それは驚くことに、第4位階の集団治療魔法だ。
「おお! ありがとうでござる!!」
「サンキュー! ……ってその女、誰かなー?」
「ひっ……!!」
ハムスケとクレマンティーヌの傷が癒やされ、同時にゾンビ達がボロボロと崩れていく。
まるで除草液をぶっかけられた草花のようだ。
クレマンティーヌはコチラを射抜くような瞳―浮気を見つけた奥さんみたいな―に変わっているが……これは私のせいじゃねぇ!!
「って〈
「見てみて! すごいでしょ? ツアレに追いつきたくて、頑張って鍛えたの!! それからこれを。ツアレが使ってた鎖よ。受け取って!!」
「いやその鎖はいらないが。マジで。むしろ捨てといて」
だってそれスカスカの手抜き品だし。
デスナイト相手じゃ一秒持たずに引きちぎられるだろう。
いや、それより私はラキュースのスキルに驚いた。
〈
習得している位階より一つ上の魔法を使えるという、オバロ屈指のチートスキルである。
でも原作のラキュースは使ってなかったはずなのに。なんか色々とおかしくなってね?
「それをちゃっかり使ってるってどういう事なの?」
「森でゴブリン狩ってたら使えるようになったわ!!」
「えっ、そんな簡単な方法で取得できたの!?」
私もなんとか取得しようと四苦八苦してて、でも使える気配が微塵もないのに。
それをそんなあっさりと取得しただと? LVもすでに15超えてそうだし。
「なんて成長速度……まさかこいつ、天才か……ッ!!」
そういえばコイツ、原作では4、5年でアダマンタイトに上り詰めるガチ天才だったわ。
「早くツアレに追いつきたくてすごく頑張ったの!! ゴブリンも狼も沢山殺したんだから!!」
「はいはい、偉い偉い」
私はラキュースを地面に降ろして頭を撫でる。
ラキュースの瞳には
なのでここは褒める一択だ。
まぁ前世の記憶を持つ私からすれば、14歳とかまだまだ子供だしなぁ。でも情操教育は親御さんに丸投げでおk。
「それでラキュースはどうして空から落ちてきたの?」
「あっ、それならオジサンに連れてきてもらったの。ほら、アレがそう」
「オジサン……?」
私は
案の定、そこには大型の真っ赤な鎧が浮いていた。
全体的にカクカクとしたデザインで、手に大型の機関銃のような武器を持ち、背中からは光が吹き出している。
……間違いない、あれはアニメにも出ていた朱の雫のパワードスーツだ。
「ということは、中にいるのはアズスって人か……」
「そうよ! ここまで乗せてきてもらったの!! ツアレを見つけたのも、あの鎧のれーだー? とか言う機能よ」
「そんなものまで付いてるの!?」
ただでさえ第7位階の魔法とか使えるのに。
その上に索敵まで出来るとか、どんだけ高性能なんだよ!!
「レアアイテムってレベルじゃねーぞ!!」
「ーーご紹介に与ったアズスだ。よろしくなっ!」
しかしそんなに驚いたのがいけなかったのか。
私の声を聞いたアズスは右手を伸ばして、シュッっとコメカミ付近に近づけると、そのまま魔法をぶっ放した。
「こいつは挨拶代わりだ。第7位階魔法『
左肩の箱から放たれた紅蓮の炎が、アンデッド達を一瞬で燃やし尽くす。
「なんかカッコイイポースで魔法を撃ってる!? でもそれお前の獲物じゃねーから!!」
「すごい威力よね! でも私達だって、いつか使えるようになるはずよ!!」
「いや第7位界は無理でしょ!? ……って、止めて止めて止めて止めて!! そのゾンビは私達のーーーーッ!!!!」
私は必死に叫び声を上げる。
本来なら一気に状況を打開する神の魔法だが、しかし私にとっては、せっかく見つけた経験値を奪う悪魔の魔法だ。
だがその願いが届くことはなかった。
「……私達の? おい、ラキュー、そいつは何を言ってるんだ?」
「これはきっと照れ隠しよ!! ツアレのライバルである私には分かるっ!! ツンデレって奴だわ!!」
「おいおい、この状態でか? ……なるほど、八本指に喧嘩を売るだけの根性がある。よし、援護は任せろ!!」
止めろと叫んだ私に対して、アインドラ家の二人は更に魔法を放つ。
ラキュースは先ほどと同じ、アズスからも再び炎が放たれ、群れをまとめて消し飛ばす。
「……違う、そうじゃない!!」
そんな二人に私は内心でキレそうになっていた。
どうしてこんな酷いことをするのか?
彼らがバンバン倒しているのは、私達がようやく見つけた経験値さん達だ。
このうざい霧の中を何時間も走り回り、体中をベタベタにしながら、ついに探し出した相手だ。
それを急に飛んできて横殴り!? 絶対に許せない!!
「なら、これはもうタレント使うしないよね? アダマンタイト級冒険者が死んじゃうって、嫌な事件だったね……」
「ちょっ、なんで味方の増援にキレてるの!?」
私のつぶやきに、範囲魔法から避難してきたクレマンティーヌがツッコミを入れる。
「だってこのままだと私達の苦労が水の泡になっちゃうし」
ラキュースはまだいいよ。
使った魔法は自分を中心とした範囲系なので、それほど敵は削れていない。
だがアズスの方はダメだ。
コイツが一発魔法をぶっ放す度に数十体が消し炭になっている。
もし戦闘中のハムスケを避けて撃たれてなければ、とっくに敵は全滅してるだろう。
「だからってココでタレント使うのは止めて!! まだ幽霊船も残ってるでしょ!!」
「ぐぬぬぬっ……!!」
タレントを発動させかけた私に、クレマンティーヌが後ろから抱きつく。
見た目よりも大きなおっぱいがフィットし、ポヨポヨとした感触が背中越しに伝わってくる。おかげで私は冷静になった。
ただ、アズスをぶっ飛ばす方は止めなかったから、クレマンティーヌもきっと内心は怒っているのだろう。
この戦いが終わったら二人でボコるのが良いかな? 鎧を脱いたアズスはヘナチョコ(アダマンタイト級最弱)だからね!!
「あの赤いのは後でボコるとして。まずはこのデスナイトを倒す方が先。そういうことだよね、クレティー?」
「ぜんぜん違う。なんでアダマンタイト級に喧嘩売ろうとしてんの!?」
「大丈夫だよクレティー。貴方の覚悟は心で理解できた……」
言いたいことは分かる。
なんせこの世界には経験値という考えがない。討伐金も部位を持っていけばいいだけだから、つまり横殴りの敷居がものすごく低いのだ。
まぁ日本だって自分が猟師で、熊と戦ってる人を見つけたら銃で援護しようとするだろう。
その時に経験値がどうこうなんて考えないはずだ。そんな事を考慮するのはゲームの中だけである。
「でもここはそういう世界で、だから私から経験値を奪う人は許せない!!
――〈
「「第8位階!!?」」
「微塵も理解してなーーーい!!!!」
驚いてるアインドラ家の二人を後目に、タレントで切り札の天使を召喚する。
今回呼び出したのは初めての時と同じ「
戦車にロボットの上半身をくっつけた異形だが、そのゴツイ姿が頼もしい。
すぐに思念で指示を送ると、座天使の右手に付いている大剣が輝き出した。
「ハムスケ戻って!!」
「了解でござる!!」
ハムスケにも後ろに下がってもらう。このまま撃つと死んでしまうからね。
代わりに後ろで正座していた「
それとついでにラキュースが持ってきた鎖も投げておく。
もうそろそろこの鎖さんも成仏してもいいだろう。むしろ黒歴史なので早く消したい。
あとはUターンして戻ってきた幽霊船の進路上に、デスナイトごしの射線をあわせて……
「っしゃ、放てぇーーーー!!」
私の合図で、座天使が特大の
振り下ろした剣に沿って打ち出されたのは、魔法の世界には不釣り合いな極太のビーム。
「なにこれ!? なにこれ!? すごーーい!!!」
「……まじかよ。俺の鎧以外に、こんなやべぇもんを撃てる奴がいただと」
「お”お”お”お”お”お”ーーーーーー!!」
ラキュースがキラキラした称賛を上げ、ついでアズスが驚きの声を上げる。
そんな中でまず最初に、デスナイト達と天使が光に飲み込まれる。
ゾンビなどのアンデッド達はボロボロになって消滅。
デスナイトだけは叫び声を上げながらHP1で耐えたので、追加で〈
「食いしばりはなぁ! 知られてたら意味ないんだよ!!」
それから地の上位天使が、グッと親指を立てて地面に沈むように消えていく。
ものまね芸人さんかな? その最後の姿は、やりきった! やっと休める!! もう呼ばないで!!! そんな哀愁が漂っていた。もちろん帰りに必要なのですぐに呼ぶつもりだ。
「そのまま行っけぇえええええーーーーー!!!」
そしてそれでもまだ光の砲撃は止まらない。
デスナイト達を打ち抜き、紫の薄霧を切り裂いて進む光砲は狙い通りに、ズザザザ! と横滑りしてきた幽霊船に直撃!!
「っしゃ! ストライーーークッ!!」
「「ぎゃああああああああ!!!!」」
ドゴォオオオ!! と轟音を立てながら船の横っ腹に大穴が開く。
続けて炸裂した熱と衝撃が内部で荒れ狂い、それから一瞬だけ遅れて船が内側から爆散。
船体は粉々に砕け散り、光と混ざって周囲に飛び散って霞のように消えていった。
「すごい! すごい! すごい!!」
「まっ、私の天使にかかればこんなもんよ」
その様を見て私は勝鬨をあげた。
ラキュースの称賛に混じって、なんか野太い声が二人分聞こえた気がするが、きっと気のせいだろう。あんな船に乗り込む人なんているはずがない。
それから見れば、空中に投げ出されたアンデッド達が一匹ずつ消滅していた。
おそらくはあの幽霊船こそが本体で、乗っていたアンデッド達は召喚された存在だったのだ。
つまりこれでミッションコンプリート!!
「ツアレちゃん、大勝利ーーーーー!!」
やったぜ!!!
「――〈
あの後、近くの街に戻ってからの、打ち上げのテーブル。
そこで私は正面に座るガゼフさんとガガーランニキに頭を下げていた。
机に頭をこすりつけるような謝罪だ。
驚くことにあの幽霊船には、この二人が乗りこんでいたのである。……まさかこの二人がテニヌプレイヤーだったとは。
「いや気にしないでくれ。結局はあれほどのアンデッドを無事に討伐できたのだ」
「そうだぜ。俺らもこうして治療して貰ってピンピンしてるしな」
二人は気にするなと言ってくれるが、気にしてないはずがない。
なんせ一歩間違えれば、どちらも即死していただろうから。
危ない危ない。ガゼフさんが死ぬとか、危うく原作開始前に王国が崩壊するところだったよ!!
「(火力が高いってのも考えものだね。次はもっとうまく使わないと)」
今回は巻き込んだのがこの二人で助かった。
これが貴族共だったなら、きっと打首待ったなしだっただろう。
なのでここの打ち上げ代は私持ちだ。
今は金欠だけど、殺しかけた訳だし、せめてこれぐらいはね?
ちなみにラキュースとクレマンティーヌは睨み合っている。
私の左右に座って、私を間に挟んで。
すごく険悪な雰囲気だが、たぶん音楽性の違いだろうから、私に出来ることは何もない。だから2人とも私の太腿つねるの止めて!!
「それにツアレ殿は私達が乗ってると知らなかったのだからな」
「むしろ責められるべきはアズスのおっさん達だよな。俺らの事、言うの忘れてたって何だよ」
「……そうですね、どうせならアズスさんを吹き飛ばすべきでした。いや、今からでも遅くはないかな?」
「「えっ」」
アズスは娼館へ行ってしまったから、追いかけて部屋に乗り込むという手もある。
でも今は激戦が終わった後だし、やっぱそういうのは後回しかな。
ぶっちゃけ私も少しだるいので、とっとと食べて、クレマンティーヌの柔らかパイ枕でゆっくり寝たい。
「それでどうしてガゼフさんがココに居るんですか? 王様の護衛はいいの?」
「その件だが、君たちが置いていった八本指幹部の首が本物だと断定された」
「ふぁっ!?」
嘘だろっ、王国の上層部がまともに仕事をしてるだと……!??
「一体何が起こっているんです? まさかみんな麻薬で頭アッパラパーに……??」
「何を驚いているのか分からんが、王国の上層部にも、まともな者はいるということだ」
レエブン侯とかかな? 他にはちょっと思いつかない。
ザナック王子も今は猫かぶってるはずだし。第3王女なんてアレだからね。
王国貴族の層の薄さは流石である。
「それで良ければ私達とともに王都まで同行して貰いたい。そこで王から褒美が出る予定だ」
なるほど、そういうことか。これはやっと運が向いてきたんじゃね?
しっかり調査した上でお礼までくれるって、王様いい人じゃん!!
「分かりました。そういうことなら喜んで行きます。でも王城へ入る時に身体検査で服を脱がされたりしないですよね? それから『この先に進みたければ分かってるね? グヘヘヘヘ』とか。私は詳しいんだ(前世知識)」
「大丈夫だ。流石に王の客にそんな事をする輩はいない」
「ほんとぉ?」
「絶対にいると思うけどなぁー」
「大丈夫よ!! ツアレの身は私が守るわ!!」
ガゼフさんの宣言に私、クレマンティーヌ、ラキュースの3人が噛みつく。
ガガーランニキは運ばれてきた肉に噛みついていた。
しかし戦士長がココまで言っても、欠片も信用できない王国貴族ってすごい。
まぁ装備を整えて金欠だったので、報奨金がもらえるのは素直にありがたい。
なんだかんだ言っても、やはり人の世は金だ。ならば同行するも悪くないだろう。
それに六腕の残りも狩っときたいしね!!
すっかり忘れてたけど、今の私はLv20代半ば。クレマンティーヌとハムスケもいるから負けることはないだろう。
報奨金と八本指もぎもぎ狩り放題ツアー……行くしか無い、王都へ!!
[悲報]フールーダ、デスナイトが手に入らない。
おじいちゃん涙目。でもどうせ5年経っても支配できないんだし些細な事ですよね!!