ツアレ転生者の華麗な異世界生活   作:さろんぱす。

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#2 私の天使は最強なんだ

 みなさまこんにちは。

 奴隷として売られたショックで前世の記憶を取り戻したツアレちゃんです。

 そんな私は現在、手足を縛られて荷馬車で運ばれています。

 

「これが本当のドナドナ体験~、なんちゃって」

 

「あっ? 何いってんだお前」

 

 ガタゴト揺れる馬車は揺れが酷くて全身が痛い!

 まったく少しも子牛の気持ちになれないよ!!

 こんなのが人生の始まりだなんて、余りにもホットスタートすぎるでしょう。

 

「スカイ○ムかよ。どうせならドラゴンが降ってきて全部めちゃくちゃになればいいのに。おじさんもそう思わない?」

 

「本当にドラゴン降ってきそうだから止めろ。あと俺はおじさんじゃない。『スゥサイドさん』と呼べ」

 

「グチすら許されないとか酷くね?」

 

 そんな私の隣には一人の大男が座っている。

 先程自己紹介があったように名前は「スゥサイド」さん。

 モジャモジャのアフロ頭に体がムキムキで暑苦しい。他には御者が一人いるだけだ。

 

「これって、私が逃げるとか全く考えてないよね」

 

「いや逃げてもモンスターに食われて死ぬのがオチだぞ。つーか逃がすわけねぇし。これでも昔はそこそこの冒険者だったんだぜ?」

 

「ふーん、そっかー」

 

 きっと限界を感じてドロップアウトしたんですね分かります。

 しかし言ってることは確かに間違っていない。

 普通に考えたらこの状態で逃げ出すなんて無理だろう。

 

 まぁ今はまだ焦る時間じゃない。 

 私は暇つぶしと情報収集を兼ねてスゥサイドさんと話しを続ける。

 

「それでなんで態々私みたいなガキを買いに来たの? 村にはもっと可愛い子がいたじゃん」

 

「そりゃお前が癒やしの魔法を使えるからだよ。両親騙して借金拵えさせるの楽勝だったわ」

 

「私の両親がチョロすぎて人生が辛い」

 

 しかも原因は治療魔法のせいか。

 あれっ? ってことは初期クラスに神官(クレリック)を選んだせいじゃね??

 

「つまりまた私のせいじゃん!!」

 

「まっ、恨むなら自分の才能を恨みな」

 

 ちょっとこのビルド構築さん裏目りすぎでは??

 原作とのズレが酷い。本来なら貴族に攫われるまでは村で暮らせたはずなのに。

 それが借金奴隷って。【E】カードのマイナス補正重っ!!!

 

「それでこれから私はどうなるんでしょう?」

 

「俺の雇い主がいる王都へ連れて行く。その後は知らん。だが悪いようにはならないだろ。魔法詠唱者(マジックキャスター)は貴重だからな」

 

「その割には村で便利アイテム扱いだったんですけど。こう、無限湧きする回復アイテム的な?」

 

 これまで生きてきた記憶によれば

 『怪我したらツアレを呼び出せばOK』

 『魔法(ツアレ)は村の共有財産』

 『治療費? タダでいいやろwww』

 

 こんな感じだったようだ。……LVが上がったら全員殴りにいこう。

 

「領主どころか村人まで酷すぎる!!」

 

「まぁ大人なんてそんなもんよ。俺らがお前に目をつけたのも、村長が別の村で自慢しまくってたのを聞いたからだしな。『そっちの村は専属の治療師いないってマジ? ぷげらww』って」

 

「なんで共有財産ばらしてるの? 黙っとけよ!! 知られたら奪われるに決まってるじゃん!!」

 

 情報管理ガバガバすぎて泣けてきますよぉ!!!

 

 だが残念ながらこの国で子供に人権なんてものはないのだ。

 売買書に親がサインしてしまった時点で詰みである。なんたる中世か!!

 

「せめて次は3食昼寝付きの場所だったらいいんだけど。休日マシマシ、ボーナス盛々でお願いします」

 

「お前もあの村の住人だってよく分かるわ」

 

アイツラ(村人達)と一緒にするのは止めろぉおおお!!!」

 

 あれは村人じゃない、子供にたかるただのクズ共よ!!

 

「まっ、大丈夫だ。重ねていうが悪いようにはならねーよ」

 

「ほんとぉ~?」

 

 村人騙して子供買ってる組織が優しいとかあるか?

 確かにマジックキャスターは希少らしいが。

 いや貴族が専用の治療師を確保しようとしてる可能性もあるか。

 

 うーむ、考えても村以外の知識がないから分からないね。

 だがこの人が嘘を言っているようには見えない。

 ならば少なくとも、村よりはマシな所ではなかろうか?

 

「……信じてもいいのかな?」

 

「もちろんだ。なんせ有能な奴には優しいからな。うちのボス――コッコドール様は」

 

「違法娼館のオカマじゃねーか!!!!」

 

 一瞬でも信じた私が馬鹿だった!!!

 その名前を聞いた瞬間、私は気合で立ち上がり馬車から飛びおりた。

 手足を縛られた状態なので上手く着地出来ない。頭からゴロゴロと地面を転がる。

 

「って何してんだ!? おい御者、馬車を止めろ!! てめぇそのまま動くな!! ひどい目に合わすぞ!!」

 

「いたたたた!! 小石が顔に刺さって痛い!!」

 

 受け身が取れなくてめっちゃ痛い。

 だが今はそんな事を言ってる場合じゃない。

 このままだとお先真っ暗。八本指の下僕化ルート不可避だ。

 

「ならここでどうにかしないと!! ……集中……集中!!!」

 

 私は少し先で止まった馬車を見ながら、私の中の力を汲み上げる。

 それは(ツアレ)(転生者)としての記憶を取り戻した時に得た力。

 今までのツアレは気づけなかった奇跡を起こす能力――生まれながらの異能(タレント)

 

「――〈第8位階天使召喚(サモン・エンジェル・8th)〉!! ヒャッハーーーー!!!」

 

「おっ、おい! なにしてやがる!?」

 

 私が力を開放すると周囲に光が満ちた。

 視界が白く染め上がる。空気が震え、周囲に圧倒的な気配が満ちていく。

 

 それは目の前で打ち上げ花火が弾けたかのようだった。

 そしてそこに強大な何かが出現。

 

 私は急に流れ込んできた知識から、その巨大な何かの名前を叫んだ。

 

「――これが私の『勝利の座天使(スローン・ヴィクトリー)』だぁあああああ!!!」

 

「なんだぁああああああ!!??」

 

 現れたのは白い装甲板を何枚も重ねたような外見の天使だ。

 巨大な全身を、丸みが一切ない分厚い板が覆っている。

 右手は大剣、左手は大盾が直接腕にくっついていて、足のない脚部からは光が噴出。

 そして背後には大きな車輪が左右3つずつ。翼の代わりのように並びグルグルと回っていた。

 

「おおっ! けっこうカッチョイイ!!」

 

「はぁああああああああ!????」

 

 まるでSFのロボットのような外見だ。

 ACなロボゲーなら間違いなく有澤重○製だろう。それぐらいゴツイ。

 だが放たれている波動は暖かく神聖で、それがこの天使を聖なるものであると教えてくれる。

 

「じゃあいっちょ行ってみようか――薙ぎ払え!!!」

 

「ちょっと待て!! こんなの聞いてねえぞ!!!」

 

 私はノリノリでいつか言ってみたかったセリフを口にする。

 すると天使が右手を振り上げ、掲げられた剣に光が集まっていった。

 

 そしてそれを振り下ろすと――地面に向けて極太のビームが放たれた。

 

「FGOのエクスカリバーだこれ!!!」

 

「うわあああああああああああああ!!!!!」

 

 スゥサイドさんが悲鳴とともに光に飲み込まれる。

 召喚時に得た知識によれば、これは<聖滅なる砲斬撃(フォー・アンサー・ザ・デッド)>というスキルらしい。

 でも個人的にはエクスカリバーと呼ぼうと思う。だってその方が分かりやすい。はい、決定。

 

 そうして光の放出が終わった後には、スゥサイドさんは塵一つ残っていなかった。

 

「おっ、あの世に直帰かな? ……第8位階の天使さんマジぱねぇ」

 

 アニメに出ていた第7位階の天使もかっこよかったが、私が呼び出したこの天使は更に上だ。

 こんなのを15歳の子供が呼び出せるとか、タレントってやばい!!

 

「知られたら周辺国のパワーバランスが狂っちゃーう!! ……でもこの天使さん、どれぐらい持つんだろ? あっ、あと御者も殺しといて」

 

「ちょっ、おれ雇われただけぇええええええ!!! ……おふぅ!!!」

 

 私は御者の殺害を指示し、縄を切って貰いながら落ち着いて秒数を数える。

 54……56……58……勝利の座天使(スローン・ヴィクトリー)は体感4分ぐらいで消えていった。

 

「そうすると召喚時間は信仰系のクラスLV毎に一分? それとも固定??」

 

 私はすでに神官(クレリック)LV4まで上がっている。

 村で治療薬として酷使されたせいである。

 

 なので持続時間は恐らく前者だと思うが、タレントによる召喚なので後者もありえる。

 まぁこれはLVが上がってから、また呼び出せばハッキリするだろう。

 

「それから呼べる天使の種類も調べなきゃね。……その前に何か残ってるかな?」

 

 終わったら馬車に置かれていた荷物の中から金目のものを物色する。

 幸いなことにスゥサイドさんと御者の荷物は馬車に丸々残っていた。

 予備武器に着替えに貨幣、後は細かいものが色々だ。

 

「よかった。一緒に消えてたらどうしようかと思ったよ。あと確かこの辺に仕舞ってたはず……」

 

 ゴソゴソと荷物をあさり、中から一枚の用紙を探し出す。

 私を売った時に両親がサインした奴隷契約書だ。

 

「うーん、やっぱり文字は読めない。分かるのは両親のサインぐらいか」

 

 一応目を通してみるが、やはり書かれている文字は分からなかった。

 この世界では6大神が使ったワールドアイテムの効果で言葉は自動翻訳される。

 だから他人と話す分には問題ない。しかし文字はダメだ。これはどこかで習う必要があるだろう。

 

「さてこれの処分は……火を起こすのは面倒だからグチャらせとこ」

 

 私はその契約書をビリビリと細かく破り、地面に置いてから水袋の水を掛けた。

 最後に靴のカカトで踏み踏み。土と混ぜグチャグチャにしてから穴に埋める。

 

「よっし、これで私の借金はチャラ!! なーんだ【E】カードの『借金有り』楽勝じゃん!!」

 

 私はヒャッホーイ! と続けながらその場でバンザイ。

 やっぱ暴力こそが最強だな。パワー・イズ・マネー。

 詐欺師に騙されて売られても、殴って契約書を奪えばあっという間に解決だ。

 

「やったね! ハッピバースデー、新しいツアレちゃんの誕生だよ!! ……残った馬車と馬は記念に貰っとこ。捨てるのは勿体無いからね!!」

 

 それから私は御者席に乗って移動を再開。

 最初は少し戸惑ったが、馬の扱い方は前世で体験してるので問題なく行えた。

 

 そうして一番近くの街へ向かい……

 

 

 

 

 

 

 

 ――そこで変な子に絡まれた。

 

「ツアレ! ツアレ!! ツアレーーー!!! さぁ勝負よ今日こそ封印された闇の力でアナタに勝つわ!! 奈落より引き出されし偉大な深淵の前には、例え貴方といえども膝を屈するしかないのよ!!!」

 

「……何で勝手に部屋に入ってるの? 闇の力の前に常識を引き出してどうぞ。ていうか忙しいから帰って」

 

 キラキラの金髪でとにかく元気いっぱいな子だ。

 名前は「ラキュース・アルベイン・デイル・アインドラ」という。

 原作でもひと際異彩を放っていた、重度の中二病患者ちゃんである。

 

「もしかしてこれがコネに【D】カード(ライバル出現)を使った効果? ……えっ、ライバルキャラこれなの? いやいや、絶対におかしい」

 

「いいえ、おかしくないわ!! その年で信仰系魔法を使いこなす貴方が、私のライバルに相応しいのは確定的に明らか!! きっとこれは神様が定めた運命なのよ!! だから勝負勝負勝負!!!」

 

 一体どういうことなの?

 私はただ、貴族の馬車を襲っていた賊どもを、街に入る前に引き逃げして経験値うめぇ、しただけなのに。

 それがわざわざ泊まっている宿にやってきてライバル宣言って。

 

「せめてそこは家に招いて後ろ盾になるとかそんなんでしょ!? 物語的に考えて!!」

 

「おっ、吟遊詩人が歌う英雄の話? 私は13英雄の冒険が好きなの!!」

 

「聞いてねぇよ!! いいから帰ってよ!! あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!」

 

 私は部屋の中で叫びを上げた。

 

 ……もう意味が分からないよ!!

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