ツアレ転生者の華麗な異世界生活   作:さろんぱす。

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アーマードコアの新作発表キタァーーーーー!!
ウエダマでプロビデンス襲ってる場合じゃねぇ!!(全敗)
誤字脱字報告ありがとうございます。感想もお待ちしております。


#22 vs魔法省精鋭

「「「「〈火球(ファイヤー・ボール)〉」」」」

 

 ――鉛色の空に紅蓮の花が咲く。

 前を飛ぶフールーダの弟子達による魔法攻撃だ。

 

「げっ、監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)が……」

 

 直撃を受けた監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)は炎に包まれて爆散。光の粒子となって消滅した。

 防御に長け自己回復能力も持っていたはずだが、流石にこの一斉射撃は耐えれないようだ。

 

 だがそれでも消えたのは遮蔽代わりにしていた一体だけ。

 元より〈火球(ファイヤー・ボール)〉を警戒して天使達は分散配置してある。そのため〈第5位階天使召喚(サモンエンジェル・5th)〉によって()()召喚された監視の権天使(プリンシパリティ・オブザベイション)はまだまだ健在だ。

 

 この世界の召喚魔法は、使った魔法より下位のモンスターなら複数呼べるのである。

 1つ下なら同時3体だ。更に私の場合はスキルで召喚数が+1体されるので、一度に計4体を召喚できる。

 

「それでもこれは酷くね? 帝国の魔法省精鋭様が、女の子1人に5人掛かりとか恥ずかしくないんですかぁ?」

 

「何を言っておる。お主を評価しておるからこそ、こうして複数で当たっているのではないか」

 

「ちょっとは加減しろって言ってんだよ!! つーか、わざわざ〈伝言(メッセージ)〉掛けてくんな!!!」

 

 皆様こんにちは。フールーダ一行と対峙しているツアレちゃんです。

 分かってたことだけど1対5はかなりきつい。こちらが一回魔法を使うと、向こうは5発も撃ってくるのだ。余りにも手数が違いすぎる。

 

 それからフールーダのやろう、会話の為に〈伝言(メッセージ)〉を掛けてきやがった。

 戦闘中に私を説得するつもりなのかな? せっかくなので煽り返しているが塩対応で悲しい。

 向こうの返答は攻撃魔法だ。コイツらひどすぎるだろ。少しぐらい油断しろ。

 

 だが泣きごとを言っても状況は変わらないので、こちらも魔法を撃ち返す。

 同時に距離を潰すべく別種の天使達を突撃させる。

 

「慢心せずして何が賢者だよ!! 〈魔法最強化(マキシマイズマジック)業炎(フレイムストライク)〉」

 

 逃げるように前を飛ぶ白ローブの一人に対して、空から炎の柱を降らせる。

 半分が火属性で、半分は神聖属性の聖なる焔だ。両方に対策をしなければ防ぐことはできない。

 

「そして行け!! ――私の天使たち(AGビット)!!」

 

 更に回避できずにダメージを負いふらついた所を、別種の天使達が一斉に襲いかかる。

 上昇中に〈第4位階天使召喚(サモンエンジェル・4th)〉で召喚しておいた、風の上位天使(アークエンジェル・ウィンド)4体だ。

 

 この天使は他の上位天使より大きな翼を持ち〈飛行(フライ)〉よりも早く飛べる。

 なので敵の速度が落ちれば追いつくのは難しくない。

 だが敵を捕まえるよりも先に、長い白髭の老人が魔法を放った。

 

「させんぞ、慢心するのはただの愚者じゃ!! 〈魔法効果範囲拡大最強化(ワイデンマキシマイズマジック)炎弧(フレイム・アーク)〉」

 

 風の上位天使が一瞬で炎に包まれる。もっとも外側を飛んでいた2体だ。

 さらにその炎はお互いを引き合うように広がった。

 

「ちょっ、なにそれ!?」

 

 最初に焼かれた2体の間に、爆炎が緩やかな弧を描く。

 その範囲はかなり広い。範囲拡大化なしでも〈火球(ファイヤー・ボール)〉より広いだろう。

 炎の進路上にいた天使は纏めて燃やし尽され、風の上位天使4体が一発で消滅してしまった。

 

「フハハハハハ、火属性の第5位階魔法じゃ。惜しかったのぉ」

 

「……ちっ!!」

 

 舌打ちをした私は、すぐ別の安寧の権天使の影に隠れる。

 魔法を直接打ち込まれないように。

 

 予想はしていたが、やはりフールーダは強い。というか強すぎる。

 弟子4人なら何とかなりそうなのに、このジジイが魔法を使うと、せっかく作った有利な状況がリセットされてしまう。

 

「あーもう、邪魔だよ!! 年寄りなら大人しく縁側で茶でも飲んでればいいのに!!」

 

 しかしそれでも勝つためには前に進むしか無い。

 魔力系の魔法詠唱者(マジックキャスター)に距離を与えるのは自殺行為。離れて魔法を撃ち合うなんて愚の骨頂だから。

 それに元より持久戦では勝ち目がない。なので攻勢を緩める訳にはいかない。

 

「〈第4位階天使召喚(サモンエンジェル・4th)〉」

 

「ほぉ、臆せず向かってくるか。ますます壊すのは勿体ないのぉ」

 

 私は再び風の上位天使を召喚。

 何度も陣形を変えながら、敵の隙を探すように突撃を繰り返す。

 

 ――天使をランスのように縦列配置して突撃。……〈電撃(ライトニング)〉で貫かれた。

 ――天使を一塊の球状に配置し、全方位を覆って突撃。……〈火球(ファイヤー・ボール)〉で焼き払われた。

 ――天使を広く上座左右に配置して狙いをバラす。……〈炎弧(フレイム・アーク)〉で薙ぎ払われた。

 

「どうした、どうした? もっとワシを楽しませてみよ!!」

 

 そんな私が試行錯誤する姿を見て、フールーダは妙にご満悦だ。

 まるで出来の悪い生徒の足掻きをあざ笑うかのようっ……!!

 

 てかこのジジイ、テンション上げすぎだろ。

 楽しそうにしやがって。こっちは何も楽しくねーぞ!!

 

(でも収穫が0だった訳じゃない……。うーん、いけるかな?)

 

 色々と試した結果、隙らしきものは3つ見つけた。

 

 まず1つ目。敵はある程度の距離を維持しようとしている、ということだ。

 魔法の射程外に出てバフを掛け直すことすらしない。これは恐らく私の逃亡を危惧しているのだろう。あまり引き離しすぎてしまうと、そのまま逃げ出すと思っているのだ。

 

 なので私を捕獲したいフールーダ一行は、必要以上に距離を開けようとしない。

 ぶっちぎって〈転移(テレポーテーション)〉で戻れば、戦場にいる私の仲間を皆殺しにできるのに。

 あえて両軍の上空を、グルグルと円を描くように飛び回っている。そこが付け込むべき1つ目の隙である。

 

 そして2つ目は、召喚魔法を使わない点。

 これは1つ目と同じく、戦力差を広げ過ぎて私が逃げないように調整しているのだろう。

 後はガゼフさん達を倒すために魔力を温存する意味もあるのかもしれない。つまりナメプだ。

 

 それから3つ目は、4人の弟子達の間にも実力差があるという事。

 試しに一度、天使をバラバラな方向から凸らせてみたが、捕まりそうになった者が二人いた。どうやらまっすぐ飛びながら魔法は撃てても、自由自在な飛行は個人差が大きいらしい。

 

 なので狙うのはこの劣っている二人だ。

 やっぱりこういう時は弱いやつから殺らないとね!! 取るべき方法は、更に囮を増やしてのバラバラ突撃。

 

「見せてやんよ、私の華麗な戦術(のうきん)をな!!」

 

 そう言いながら私は天使の背から身を晒す。

 今までは直接魔法を打ち込まれないよう、常に天使を遮蔽代わりにしていた。

 しかしこうなったら隠れている訳にはいかない。そう、増やす囮とは()()()のことだ。

 

「まっすぐいってぶん殴る。右ストレートでぶん殴る」

 

「それのどこが戦術なんじゃ?」

 

 私は天使達と共に、敵に向かって突っ込む。

 範囲拡大化スキルを踏まえて魔法攻撃を警戒し、天使たちに相互距離を広く取らせての突撃だ。

 

「玉砕か? 愚かな。――〈火球(ファイヤー・ボール)〉」

 

「我々は言わば魔法省の四天王。――〈電撃(ライトニング)〉」

 

「くくく、この期に及んで奇策など。――〈氷球(アイス・ボール)〉」

 

「効かないと思っていただこう!! ――〈噴酸(アシディック)〉」

 

 当然ながら敵は私に向かって一斉に攻撃魔法を飛ばしてくる。

 おまけに属性はバラバラだ。私の属性防御を調べるためだろうが、何の合図もなくこれを行えるのは流石精鋭って感じがするね。

 

 しかしこの程度は最初から想定済み。

 大抵の場合、召喚士の弱点は本人だと相場が決まっている。ノコノコ姿を晒せば狙われるのは当たり前だろう。

 

(だからココは事前に掛けておいた耐性魔法を信じて突っ切る!!)

 

 直撃した炎が弾けて全身を舐める。一直線に伸びた雷が身を貫いていく。

 続けて飛んできた白い球が弾けて冷気を撒き散らし、そこに噴射された強酸がぶっかかる。

 

 炎と雷は魔法によって完全に無効化されるので何ともない。

 だが残りは軽減の魔法しか掛けてないのでめっちゃ痛い。広がる冷気が針のように全身を刺し、飛来した酸が庇うように尽き出した右手を溶かしていく。

 

「痛い痛い痛い!! いったーーーーい!!!」

 

「ふむ、やはり止まらんか。ならば〈魔法解呪(マジック・ディスペル)〉」

 

 その痛みに私は悲鳴を上げた。恐らく顔も涙目になっているだろう。

 更にフールーダの魔法によって、防御魔法が剥ぎ取られていく。

 弟子が与えたダメージから、使われている魔法を推測しているのだ。くそっ、無駄に高度な連携しやがって!!

 

 まさに服を一枚ずつ脱がされる気分だ。このジジイエロすぎじゃね? 心が晒け出されちゃーう!!

 

 ただし何故か天使の解除は後回しだった。

 もしかしてモンスターの解除は一体ずつしか出来ないのかな? その間に私は回復魔法を使いながら無理やり前進。

 同時に天使たちに思念を送り、前後左右から迫らせる。

 

 そしてこれを更に2回ほど繰り返した時。――ついに弟子二人を捉えた。

 

「ヒャッハー!! つかまえたぞぉーーー!!!」

 

 おいおい、奇策通じちゃったよ!!

 

「やっぱ脳筋戦法は最強ってことだね」

 

「「ひっ!!」」

 

 天使に抱きつかれた弟子2人が悲鳴を上げる。

 二人は顔をこわばらせたまま、何とか逃げ出そうと体を捻るが無駄だ。

 

 天使達はみんな筋力が強化されている。私の天使肉体強化スキルによって。

 なので筋力が伸び辛い魔力系魔法詠唱者が、この状態から抜け出すのは不可能だ。

 

 これがゴツイ亜人や異型ならまた違ってくるが。

 しかし今回の敵は人間だ。トロールのような筋力は無い。ついでに外皮なし、再生力もなし。そしてだからこそ、ここから更に有効な戦法がある。

 

 私はニッコリ笑いながら、捕まった二人を絶望に叩き落とした。

 

「――そのまま()()()

 

「お、おい、何を!?」「ま、まさか……」

 

 私の思念に従い天使がすぐさま動き出す。はい、スタート!!

 敵に組み付いていた守護の天使(エンジェル・ガーディアン)は器用に体を動かして上下を入れ替え、敵の頭を地面に向けたまま両足で首を挟みロック。

 

「馬鹿、止めろぉお!!」「た、助けてください! フールーダさまぁあああ!!!」

 

 そして両手で腰をガッチリホールドすると、グルグルと横に回転しながら地面に向けて加速!!

 フールーダが止めるまもなく小さくなっていく二人を見ながら私は叫んだ。喋ることが出来ない天使の変わりに。

 

「――エンジェル・パイルドライバ(天使式・脳天杭打ち攻撃)ーーーー!!!!」

 

「「ぎょああああああーーーー!!!!!!」」

 

 空にその技名が響くと、遅れて地面に二つの血の花が咲いた。

 余りにも危険すぎてプロレスでも禁止になった必殺技だ。もちろん直前にロックを緩めて受け身を取らせるなんてナメプもなし。

 

 高度から地面に叩きつけられた魔法詠唱者は頭が爆散、即死である。

 私の天使も落下ダメージで死んでしまったが、こっちは召喚したモンスターなので何も問題ない。必要ならまた呼び出せばいいだけだ。

 

「くっ、馬鹿が。あれほど油断するなと言ったであろうに」

 

「し、しかしフールーダ様! あれは想定外です!!」

 

「なんて野蛮なガキなんだ……これだから王国の平民は……」

 

 へいへい! 精鋭さん達びびってるぅー!!

 

 あっさりと殺られた弟子へ、フールーダが罵声を飛ばす。

 流石にこの殺され方は想定だったらしい。へへへ、ざまぁ!!!

 

「ふむ、じゃがこうなっては本気を出さざるをえんな。召喚魔法を使え。囲んで叩く」

 

「「はっ!!」」

 

「今更遅いってーの」

 

 どうやらここからが本番のようだ。

 私はフールーダ達が呼び出すモンスターをまとめて相手にする。

 魔法を打ち込み、天使に防御魔法をかけ、自分自身を回復して戦う。ものすごく集中しているのがわかる。まるで360度全方位が見えるようっ!!

 

 ……だがこの時の私は少々飛ばしすぎていたらしい。

 

「〈業炎(フレイム・ストライク)〉……あれっ?」

 

 限界はすぐに訪れた。詠唱したはずの魔法が発動しない。

 

 ――つまり魔力(MP)切れである。

 

「ふむ、ようやく魔力が尽きたか。ならばこれで止めじゃ――〈魔法解呪(マジック・ディスペル)〉@天使の翼」

 

「ちょっ!? またその魔法オチかよぉおおーー!!!」

 

 更にフールーダの魔法によって飛行の為の翼が消滅。

 私は落下しながら必死に魔力を振り絞り、第1位階の天使を呼び出してしがみついた……。

 

 

 

 

 ◆◆◆ ◆◆◆

 

 

 

 

「何やってんのよ、あの馬鹿……」

 

 クレマンティーヌは空から落ちるツアレを見ながら、そんな事を呟いた。

 

「なんせあのフールーダ様が相手だからな。まぁ頑張った方だろう」

 

 対峙しているのは赤と黃の短剣を持つ騎士だ。

 帝国4騎士の一人【悲酸】ディルムード・フリン・ダィスキーである。

 

 すでに敵の神官達は皆殺し済みだ。

 とは言え、クレマンティーヌも無傷ではない。何度か攻撃が掠っていた。

 

 なんせ煙幕玉も無限にある訳ではなく、敵の神官も途中からは逃げ出したせいである。

 そのため集中力を周囲に向けざるを得ず、回避力が低下してしまったのだ。

 更に別の場所から飛んできた魔法詠唱者の攻撃を受け、耐久上限を超えた属性防御魔法は解けてしまっていた。

 

「貴様もそろそろ下ったらどうだ? それだけの強さなら皇帝陛下は悪いようにはすまい。なんなら俺が個人的に可愛がってやるぞ」

 

「すぐ不倫しそうな男はパスで。というか帝国行くのはちょっとねー」

 

 クレマンティーヌは周囲を油断なく警戒しながら考える。

 確かに帝国は周辺で一番まともな国かもしれない。

 しかしクレマンティーヌの場合は少々事情が異なる。例えば法国から要請があった場合、帝国はそれを断れるだろうか?

 

 なんせ法国は強者全てに、人類への奉仕を要求する国だ。

 使われる側からすれば堪ったものではないが、クレマンティーヌが英雄の領域に入っている強者だと知った場合、間違いなく身柄を要求するだろう。裏仕事を押し付ける為に。

 

 そして噂の切れ者皇帝は、恐らくその要求に応じる。個人よりも国を優先するのは帝国も同じだからだ。つまりココで下っても未来は暗い。お先真っ暗と言うやつだ。

 

(あの畜生共……。あー、まじうっざい)

 

 頭の中に久しく思い出していなかった両親と兄の姿が浮かんでくる。

 信仰を捧げよ。国のために奉仕を。何故出来ないんだ。……散々な聞かされた言葉がリピートする。

 

 今だからこそ言えるが、余りにも酷い家だった。

 もはや二度と会いたくないと思うほどに。そして遠ざかるなら方法は一つだけだろう。

 それは、法国が手出しを戸惑うような()()の側にいること。

 

「だから結局はツアっちといるのが一番安全なんだよね。いや結局、私はあの馬鹿の隣が心地良いんだろうね」

 

「ノコノコ戦争に出てきて罠にはまるマヌケの側が安全だと?」

 

「そうだよー。国の道具になるなんてもう真っ平だしさー。それに、王子をぶん殴っちゃった私を、ハイタッチで迎えてくれる子が他にいるのかな? 拷問されてぐちゃぐちゃの体を無償で治して連れ出してくれる子は?」

 

「はっ?」

 

 ディルムードが理解できないと目を細める。

 その瞳は可愛そうな者を見る目だった。だがクレマンティーヌはそうだろうなと思った。

 

 だってそんな子は普通いないから。どこを探しても。いるはずがない。

 だからあの時に会えたのは奇跡だ。ほんの少し何かがずれただけで一生関わることは無かっただろう。

 

 そしてその場合、例え一人で逃げれたとしても、その後の人生は地の底だったはずだ。

 他人の都合で良いように使われる様が簡単に想像できる。

 

「……ツアレだけが私を助けてくれた。だから私は一緒にいる。分かる? 私はね、国なんてもうどうでもいーんだよ。あの馬鹿と馬鹿やってる方が楽しいからねー」

 

「……そうか。ならば俺が引導を渡してやろう」

 

 話は終わりだとばかりに、ディルムードが両手に剣を構えて向かってくる。

 だがそんな武器も当たらないと意味がないと、クレマンティーヌは攻撃を冷静に捌いていく。

 

「そらっ! ――〈剛腕〉」

 

「はいはい。 ――〈要塞〉」

 

 武技を使って繰り出された敵の左刺突を、こちらも武技を使って受け流す。

 攻撃もしたいところだが、武器の性能に差がありすぎて打ち合えそうにないので、いったん様子を見る。

 

「フフフ、ずいぶんと俺の武器を警戒しているようだな? 酸と負の属性を宿す黄剣『再生者殺し(リジェネータキラー)』に、炎と神聖属性を宿す赤剣『亡者滅ぼし(アンデッドブレイカー)』。そしてこの2剣により、酸と火に焼かれた相手が悲鳴を上げて許しを請う。――故に【悲酸】の二つ名。貴様にもたっぷりと味あわせてやろう。……そうら!!!」

 

「聞いてねーし、いらねーよ!!」

 

 突き出される左右の連続刺突を、クレマンティーヌは身を捻って避ける。

 そうして攻撃を避けながらジッと相手の観察を続ける。

 

(身体能力はこちらが上、でも装備は向こうが上ね)

 

 それでもトータルではこちらに分があるだろう。クレマンティーヌはそう結論づけた。

 しかし後ろから魔法を飛ばしてくるマジックキャスターが厄介だ。先に始末したいところだが、常に浮いているので手が出せない。

 

「〈盲目化(ブラインドネス)〉〈魔法の矢(マジック・アロー)〉」

 

 やり取りの最中に一瞬だけ視界に黒い靄が掛かり、続けて3本の光が飛来する。

 第2位階の盲目化魔法に、第1位階の攻撃魔法だ。

 だが前者は事前に掛けられた防御魔法によって即座に無効化。後者も必中なだけで威力は大きくない。

 

「だが隙は出来たぞ!! 〈剛腕剛撃〉」

 

「二人掛かりとかきっもー。……ちっ、〈重要塞〉」

 

 しかしダメージで一瞬だけグラついたせいで、ディルムードの剣を避けそこなった。

 なんとか赤剣は武技を使って防いだものの、もう片方の黄剣が脇腹を掠める。

 刺突によるダメージはほとんどないが、代わりとばかりに武器に込められた魔法がクレマンティーヌの身を襲う。

 

 すぐに酸によって脇腹の表面が爛れ始め、負のエネルギーが内部で荒れ狂った。体内を手でかき混ぜられたような痛みがジワジワと広がっていく。

 

「あー、いったいなー、もー!!」

 

「ふむ、今のは惜しかったな」

 

 クレマンティーヌはすぐに引き、空いた手でポーションを自身へ振りかけた。

 すぐに怪我は治ったはずだが、まだ溶かされた脇腹がジクジクと痛む気がする。

 

「ちまちまうざいなー。さっさとぶち殺してツアっちのとこへ行かなきゃならないのにさー」

 

「もう諦めろ。ツアレという女は犠牲になったのだ。古くから続く魔法研究……その犠牲にな」

 

「じゃあてめぇも犠牲にしてやるよ!!」

 

 クレマンティーヌは気勢を吐き出す。

 とは言え、そろそろ決着をつけたほうが良いとも思っていた。

 

 さり気なく周囲を伺えば、徐々に周囲を囲む騎士たちの数が増えてきている気がする。

 ガゼフ・ストロノーフは無双しているが、それでもこれ以上この場に居座るのはよろしくない。

 

「……しゃーない。こうなったらサクっとぶち殺してあげるよー」

 

「貴様ごときにやれるかな? 4騎士最強である俺を。この【悲惨】のディルムードを」

 

「筆頭は【巨刃】じゃなかったっけー?」

 

 そんな軽口を叩きながらも、クレマンティーヌは次で決着を付けることを決意した。

 それも傷を少なく勝つことは諦める。死にかけてでもサクっと殺す事を優先する。

 

「〈能力向上〉〈能力超向上〉〈疾風走破〉」

 

 すぐに武技で身体能力を向上させ、更に追加でスキルを一つ発動させる。

 コッコドールへ復讐を果たした時に取得した職業(クラス)――復讐者(アヴェンジャー)で得た力の片方を。

 

「――痛みの器(ペインローダー)、起動。うんじゃ、いっくよー」

 

 そして――クレマンティーヌが動く。

 踏みしめる地面が爆発したかと思うほどの疾走だ。ディルムードへまっすぐ向かっていく。

 

「愚かな。それでは先程と同じではないか」

 

「〈魔法の矢(マジック・アロー)〉」

 

 だが敵もその疾走を黙ってみている訳ではない。

 再び魔法詠唱者から魔法の光が飛ぶ。それが命中して体がぐらついた所へ、赤と黃の短剣が突き出された。

 

 しかし先程と違うところが一つだけあった。

 

「〈重要塞〉」

 

 クレマンティーヌは赤剣こそ武技を使って防いだものの、もう片方の黄剣は()()()()()()のだ。

 そのため脇腹に切っ先が刺さった状態で、武器へ込められていた魔法の力が発揮された。

 即座に酸と負の属性が爆発し内蔵を焼く。体の一部が無くなってしまったかと錯覚するほどの衝撃だ。

 

「でもだからどうした!!」

 

「なにっ!?」

 

 しかしクレマンティーヌは止まらなかった。さきほど発動させたスキルの効果だ。

 この痛みの器は出血と疲労、そして痛覚を無効にしてくれる。不死身になる訳ではないので使い所は難しいが、おかげでクレマンティーヌは痛みに囚われずに動くことが出来た。

 

 そのまま懐に入ったクレマンティーヌはディルムードの首にスティレットを伸ばす。

 最速で、最短で、まっすぐに、一直線に……!!

 

「くっ、〈即応反射〉〈回避〉……」

 

「おせぇんだよ!!」

 

 驚いたディルムードは慌てて武技を使うが、クレマンティーヌの動きの方が早い。

 そして首に先端を突き立てた状態で、復讐者(アヴェンジャー)で得た力の、もう片方を発動させた。

 

「――応報の一撃。死、ね!!」

 

「ぐぁああああああああ!!!!!!」

 

 瞬間、スティレットから赤黒い稲妻がほとばしった。

 これは痛みの器を発動中に受けたダメージを、同じだけ相手に返すスキルだ。

 わざと致命的な一撃(クリティカルヒット)を食らい、体の一部が欠損している今のクレマンティーヌが使えば、その威力は想像を絶する。

 

 ディルムードは顔中の穴から血を吹き出していた。

 すでに気を失っているのか眼は白目をむき、体はビクンビクンと跳ね続けている。まるで落雷にあったかのようだ。

 

 ――そして最後に、首が爆発。

 

 スティレットを引き抜いたときには、ディルムードの頭は体からこぼれ落ちていた。

 

「ふぅー。まっ、こんな所かな? 何か途中で恥ずかしいこと言っちゃったけど、このクレマンティーヌ様が負ける訳ねーんだよ!!」

 

 勝利を確信したクレマンティーヌは空に向かって吠える。

 それから急いでポーションを使い傷を癒した。痛みの器が切れる前に回復しておかないと、痛みのショックで自分も死にかねないからだ。

 

 そして治療が終わると、思い出したようにスティレットを投擲。

 唖然とした顔で後方に浮いていた魔法詠唱者は、ついでにと投げられたスティレットを避けきれずに絶命。

 

 最後は埠頭のビットよろしくディルムードの頭に片足を載せ、高々と手を振り上げた。




ツアレ「MPが尽きた」
フールーダ「魔法を剥ぎ取るんご」
クレマン「脇腹が爆発しました」
ディルムード「首が爆発しました」

という訳でクレマンティーヌ回でした。
あと前話でアンサラーにとっつき(パイルバンカー)出来なかったので、代わりにパイルドライバーを出してみました。

■以下独自クラスの設定とか
復讐者(アヴェンジャー)(戦士系)最大5レベル
取得条件:拷問のような酷い目にあった後、やった相手を組織ごと壊滅させる事
スキル1.痛みの器(ペインローダー):出血、疲労、痛覚に完全体制を得るスキル
スキル2.応報の一撃:受けたダメージを相手に返すスキル

元ネタはD&D3.5のCyran Avenger+フレンジード・バーサーカーです。
調べたらAvengerが7種類ぐらいあってびっくりしました。多すぎぃ。
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