誤字・脱字報告、感想もありがとうございます。
竜王国王城の片隅で私は片膝を付く。
通されたのは玉座の間。そんなに広くないが豪華な部屋だった。
「お初にお目にかかります。リ・エスティーゼ王国名誉子爵のツアレニーニャ・ベイロンと申します」
「ふむ、よくきてくれた!! わたしは そなたたちを かんげいする!!」
皆様こんにちは。竜王国で女王と面会しているツアレちゃんです。
ビーストマンを狩る前に挨拶だ。せっかく貰った爵位なので、利用して話を通しておこうという算段である。取得物の扱いとか報酬とか諸々。
すごいアイテムを手に入れても、後から文句を言われたから困るからね。
それは元々竜王国のだから返せとか。なお考えたのは私以外の3人で、なのに通されたのは私一人だ。……なんで?
「ドラウディロン女王陛下も、ベイロン子爵方の来訪を大変お喜びでございます」
「もったいなきお言葉」
「うむ! そなたたちには きたいして おる!!」
玉座の間で待っていたのは宰相。そして天真爛漫な声の
ただし中身は8分の1引いている竜の力で
幼な姿の女王様は子供用のワンピース風ドレスを身に付け、丸出しの足をプラプラ。
あえてソックスを履いてないのは純心さの演出だろうか。
黒を基調とした
(なんてあざとい!! いくら竜の力で化けれるからって、これはあざとすぎるよ!!!)
「……? どうかしたか??」
「いえ、なんでもありません」
私なそんな女王に心内でツッコミを入れた。
もしかしてビーストマン側で狩猟期間が穏和されちゃったのかな?
きっと前線はきついのだ。幼女姿で老若男女の情に訴える必要があるほど。
でも中身が30代だと知ってると心に来るものがあるね。
これも一つの黒歴史だろう。ネタを知っているとラキュースの日記並の居たたまれなさだぞ。あいたたたた!!
「ところで陛下。いきなりで不躾ですが、先に一つお聞きしてもよろしいですか? あっ、よければ私のことは『ツアレおねえちゃん』とお呼び下さい。そっちの方がやる気がでるので」
「なぁにー? ツアレおねえちゃんは、なにがききたいのー?」
「ちなみに国の運営なら赤を通り越して真っ黒ですぞ。私たちのお先もです」
「いえ、そうではなく。私は変身系を看破る魔法が使えるのですが
――なぜ子供に化けているので? いい大人がその言動って引くわー」
「きっさまぁあああああーーーーー!!!」
だが空気を読まない私はぶっちゃける!!
いきなり隠し事を指摘された女王が椅子から飛び上がった。急にボケた宰相の発言はスルーだ。
「貴様……? あっれー、おかしいぞー。子供がその言葉遣いは変じゃないかなー? それにツアレおねえちゃん、でしょ?」
「……ツ、ツアレおねえちゃん!! わ、わたし……ああ、もうよい止めじゃ!!」
怒りに飲まれた幼女は一瞬眩しく光ると、そこには元に戻ったムチムチプリンな熟女が座っていた。真・竜女王のご登場だ。
「ぐぬぬぬ。……おいお主、聞いてたのと全然違うではないか。救国の聖女のはずであろう?」
「それはただのラキュースの妄想ですよ。正直、民とか知ったことではありません。……自分の事は自分でやれって感じ?」
「どうやら陛下と同じタイプだったようですね。まぁ形態を変え年齢を偽ってないだけ陛下よりマシかと」
「形態言うな。こっちが本来の私だぞ」
大人モードの女王は諦めたようにドカっと椅子に座り直す。
見せつけるように、ゆっくりとした所作で足を組んだ。スラリとした生足だ。
おまけに服も大人用のセクシーなドレスへと変わっていた。もし私が男だったら生唾ごくりものだろう。何でも言うことを聞いてしまうかもしれない。
「ちなみに変身は何時でもバラせることをお忘れなく」
「おまっ!!」
だが残念ながら私は女なので無意味だ。
カウンターで放たれた私の発言に女王が再び驚く。
本来なら一国のトップにこの言動は打首されても文句は言えない。
しかし私は
「まぁバラす気はないですけどね。得がありませんし。あと私的にはそっちの方が好きですよ」
「そうかー。私としても子供の振りは心に来るからな……。はぁ、だーるい。こっちの姿で話せるなら気が楽だ」
「あっ、やっぱ無理してたんだ。なら今度お酒でも持ってきましょうか? ところでビーストマンの侵攻ってどうなってるんですか?」
大分打ち解け(脅迫し)たので、さっそく聞きたかったことを聞く。おう、救ってほしければサクサク吐くんだよ!!
「おい、宰相。今の状況を教えてやれ」
ドラウディロン女王がクイッっと顎を刳ると、宰相がサクサクと説明を始めた。
「はっ、現在は南部に新造した砦で何とか食い止めております。しかし戦力差はいかんともしがたく、陥落は時間の問題だと報告が……」
「ふむふむ、砦に群がってるのね。一網打尽にできそうで、それは大変
バラけずに集まっているのは狩りやすくていいね!!
それからも私たちは、しばらく世間話を続けた。まぁ私はほとんど聞いてる方だったけど。
「それで本当に前線に行ってもらえるのか? ぶっちゃけるが、あまり報酬はだせんぞ」
「ええ、許可が貰えればすぐにでも」
もう装備は揃ったし金貨もまだあるからね。
それでも必要になったら、雪山で
「あっ、移動についてもお構いなく。魔法で飛ぶので。大体の場所だけ教えてもらえると助かります」
「そうなのか。やはり魔法とは便利だな。ビーストマンだけ殺す魔法とかアレばいいのにな」
「それはそれは是非とも使ってみたい物ですな。私も前線で暴れますぞ」
女王陛下の言葉に宰相が腕を組んで深く頷く。
しかし当たり前だがそんな魔法はない。キーノちゃんなら作れそうだけどね。
ちなみにココまでの移動についても、魔法&魔法で楽勝だった。
もうまじで〈
しっかり記憶した場所であれば、どこに行くのも一瞬だ。
魂と引き換えの奇跡から発動してるので1日1度しか使えないが。それでも十分すぎる。
今回はまず私が〈
迷いそうなのでカッツェ平野は通らず、ラ・エンテルから道沿いに南の法国へ行き、そこから東にある巨大な湖を飛び越えて竜王国にINだ。
それからみんなを〈
これなら馬車でちまちま進む必要がない。旅の手段としては最高である。
クレマンティーヌの知識によれば、信仰系も第6位階に転移系の魔法があるらしいので、LVが上がったら是非とも取得したいと思っている。
「……ところでベイロン子爵殿は先の戦闘で帝国軍4万を降伏させたと聞いておるが。本当にそんなに強いのか?」
「もちのロンですよ。私にかかれば帝国軍なんてお茶の子さいさい(ガチ)。ビーストマンだって丸ごと狩り殺して見せましょう。だから前線で自由に戦う許可をプリーズ」
「……そ、そうか。流石は王国の英雄殿、とても頼もしいぞ!!」
私の強気すぎる発言に女王の顔が一瞬だけ引き攣る。
表面上はニコニコ顔のままだが、恐らく内心では「……こいつマジか」みたいにドン引きしてる事だろう。……言ってることは本当なのに。
「では少し待っててくれ。戦闘の許可と、略式だが前線までの地図を渡そう。それから先日、ちょうど法国から派遣団が来てくれてな」
「法国の派遣団ですか?」
おっ、ニグンさんの陽光聖典かな? 好きなキャラだったので会えるのは嬉しい。
「うむ! 実は毎年部隊を派遣して貰っておるのだ。私が竜の血を継いでいる故、非公式にだが」
ほほう、すでに搾り取られてるのか。なんて可愛そうな国なんだ。これは私も搾り取らなきゃ(無慈悲な決意)
「それはそれは。前線で会うのが楽しみですね」
「どちらが先に着くかは分からんが、向こうで会ったら仲良く頑張ってくれ」
「かしこまりました」
私は期待を胸に、ビーストマンに群がられている砦へと向かった。
◆◆◆ ◆◆◆
はい、という訳でやってきました最前線の砦。
「……雰囲気くらっ!!」
「みんなボロボロでござるな。そんなに敵が強いのでござるか?」
「フフ、どうやら
「おい、ラキュース。その言い回し逆に難しくねーか?」
だがビーストマンに攻められてボロ負けしてるせいか、砦の中はとにかく雰囲気が暗かった。
私とハムスケが驚きの声を上げちゃうほどだ。これは将来の牧場化まったなしですわ。
「でもだからと言って行動しないのは意味がないんだよなぁ。クレティーはどう思う?」
「んー、確かにここまで来て、何もしないってのは何だけどさぁ。でもみんな負け犬の顔だし無理じゃね?」
確かに砦の人たちは、みんなワンワン泣きそうな顔をしている。
なので私はすぐに砦内の負傷者収容場へと案内してもらった。
よほどビーストマンの責めが激しいのか、学校の体育館よりも広いホールは怪我人でいっぱいだった。余りにも運ばれてくる人が多すぎるのか、外の廊下に寝せられてる人までいる。
そこで私は聖女の真似事をする事にした。
「じゃあ私は
「任されたでござるよ!!」
ここでもハムスケは大変目立っているので良い広告塔になるだろう。
その分だけスペース取っちゃうけど何人か治せばすぐ開く。
「なるほどねー。治療は情報を集める
「全くだぜ。いきなり無償で治療とか、狂ったのかと思ったじゃねーかよ」
「名声を稼ぐ! 情報も集める! 両方やるのが聖女のすごいとこって訳ね!!」
「フフン、それほどでもない。特に
クレマンティーヌとガガーランは対応が酷い。だがラキュースのヨイショに胸を張って答える。
んっ? 私もちょろくねって? いや分かってて乗ってるから良いんだよ!!
まぁこう言ったけど、一番の目的は
この世界ではそれらしい行動を取ることで、戦闘
例えば剣士なら素振り、魔術師なら魔法研究だ。
そして狙った
例えば〈
しかし
しかも1日1回限定なので連打できない。なので私はその代わりに
なんせ負傷者が大勢いて、神殿に文句を言われず
ついでにその行為を出汁にして、ビーストマンの情報を集めれば一石二鳥である。
なお、
「じゃあ数日はこのまま情報集めに徹するってことで。あっ、ついでに怪我人いたら連れてきて。……みなさーん! 王国からきた神官でーす!! なんと第5位階の魔法が使えまーーす!! 〈
大体の方針が決まったら、私はいつものように魔法を使う。
第5位階魔法によって、第4位階の
「お、おい、いまの見たか?」「本当に第5位階!?」「新しい神官様が来てくれたのか!」「早く治してくれぇ!!」
それを見た人々の合間に驚きが広がっていく。
なんでわざわざ召喚したかというと、この天使に治療魔法を行使させることで、
例えばMP10消費で4体の天使を呼び、1天使がMP2消費の魔法を5回使えるとしよう。
すると実質40MP分の働きになる訳である。まぁ実際は同じ治療魔法でも私より回復量は落ちるのだけど。
しかしそれでもコスパが良いことは変わらない。手間さえ掛けれれば水増し治療が行える。
それにとにかく大勢から感謝されるには、この方法が一番だ。1人の深いキズを直すより、100人の浅いキズを治したほうが目立つってね!!
「フフフフ。聖女の力、みせてやるぜ!! さぁどんどん癒やしていくよーー!!」
まぁ深い傷は私が直接治せばいいだけなんだけど。
私はハムスケと天使を引き連れ、片っ端から治療魔法をかけていく。ヒャッハー! お前らの怪我は私の
そうして数日が過ぎた頃には、砦で私を知らない者は居なくなっていた。
ビーストマンも沢山食べて満足したのか、ここ数日は攻めてくることもなく。大勢いた負傷者も大体は動ける程度まで回復した。
だが全てが上手く行くわけではない。
こんな目立つことを続けていれば、面倒事がやってくることもある。
「――ガハハハハハ! ちょいと失礼するよぉ!!」
砦の責任者から治療のお礼にと用意された私達用の部屋(治療室兼任)。
そこで集まった情報を纏めていると、豪快に扉を開いて飛び込んできた人が居た。
「あんたが噂の聖女様かい? なんでもどんな傷でも無償で治してくれるんだってねぇ……。いっちょウチの若いもんの怪我も治しちゃくれないかい?」
「えーと、まぁ別に良いですけど」
それは赤い髪を2本に纏めたゴツイおばさん……いや歴戦の女傑だった。
髪は後ろで左右に団子串のように伸ばされている。全長は2メートルを超えていてガガーランよりもでかい!!
その見た目は、まるで毛を赤く染めたドーラ(ラピュタ)だ。40秒で支度させられそう。
当たり前だが、私はこの人物について全く心当たりがなかった。
「その前に何処のどなたですか……?」
「おっと! コイツは名乗るのが遅れちまったねぇ。私は
“
聞いたことがある。原作で帝国のワーカー達が上げていた凄腕の剣士の名だ。
でも嘘だろ、まさかこんな人だったなんて。いや燃えるような赤い大剣を背負ってるけどさ!!
「どうするのツアレ?」
ラキュースが不安げに聞いてくる。だが答えはすでに決まっていた。
「……もちろん行ってみるよ。だって面白そうだからね!!」
「物怖じしないなんて流石だわ! ならば
「おっと、即答とはね。こいつぁ気が合いなうな子たちだよッ!!」
もちろん私は即座に了承する。
こんな面白そうな人から逃げるなんて、とんでもない!!
脇に抱えられて連れ込まれた部屋には、豪炎紅蓮のメンバーだと思われる人たちが勢揃いしていた。
「世話になるから紹介しとくよ。
ママドーラさんの紹介に沿って各員が軽く頭を下げる。
帽子の上からゴーグルを付けた青年、赤いヘッドバンドの女性。
それからサングラスを掛けた豚鼻と、右手に包帯を巻いたイケメン青年。最後は浮いた箒に腰掛けた黒ローブの少女。
みんなどこかで見たことがありそうな人たちだ。
ただし全員が大人で、歴戦の兵といった雰囲気を醸し出している……!!
コチラに向ける眼光はとても鋭い。これ平均LV15ぐらいあるんじゃね?
あと確か
「でもボロボロだけど。何処で何してたんですか?」
「私たちは野外戦で殿を務めていてね。今帰ってきた所なんだよ」
ここは砦なのに野外で殿???
「砦を無視して進もうとする敵も少数だがいるのさ。その対処に出てたって訳だよ」
「……マジですか。PTに神官いないのによくやるね」
「もちろん金は吹っかけてやったがね! それで治るかい?」
「魔力も回復してるし、ぜんぜんよゆー」
なのでとりあえずサクっと治したらめっちゃ懐かれた。……ママドーラさんに。
でもお陰で外の状況は大体把握できた。聖女プレイで味方にした大勢の話と合わせれば、もはやこの戦場の動きは筒抜けだ。
ママドーラさんと意気投合した私は、満を持してビーストマン殲滅の準備を始める。
「それで本当に皆殺しにする気なのかい?」
「信じられませんか? だったら別に私達だけ行きますけど」
「いやなんだろうね。アンタからは殺るといったら必ず殺る凄みを感じる。……いいだろう、せっかくだから乗ってやろうじゃないか。フォローは私達が引き受けてやるよ。もちろん有料だけどね!!」
「それではよろぴく。あとは
「そいつぁ無理だね。砦の奴らはビーストマンの恐ろしさが身に染みちまってる。
「ですよねー」
まぁ現在、竜王国を攻めているビーストマンは約1万程度。
私達だけでも狩り尽くすのは十分可能だろう。聖天使モードには
……でも反抗を考えていたのは私達だけでは無かった。
その前に砦の責任者から招集があった。なんでも法国からの派遣団が到着したそうだ。更に砦内の兵もあらかた治療された為、全員で反抗作戦を行うとか。
「まともな作戦なら良いんだけどねぇ……」
「まともじゃなくて勝てるから(私たちは)平気平気」
呼ばれた部屋には各チームのリーダーが勢揃いしていた。
私は軽く頭を下げて部屋に入ると、すぐに端へ移動。そのまま背中を壁に預けてママドーラさんと話していると、暫くして砦を預かっている将軍が入室してきた。
「諸君、よく集まってくれた。女王陛下より、この砦を任されている将軍である。よろしく頼む」
薄い色付きメガネを掛けたふっくらとした髪の男だ。
体型はスラっとしていて、どことなく立ち振舞が貴族っぽい。〈
「では法国からのお三方、どうぞご入室下さい」
それからすぐに法国の人たちが呼ばれた。
私はついにニグンさんに会えるのかと、ワクテカしながらその時を待った。
だが部屋に入ってきたのはニグンさんだけではなかった。
私はそっちもよーく知っていた。というか原作ファンなら知らない人はいないだろう。
一人目は金髪を伸ばした軽薄そうな男。
体全体からゲスな臭いが立ち上っており、ジョ○ョなら即座に「コイツはくせぇーーー!!」と叫ばれてそう。
「法国の支援部隊を率いております。――ベリュース・レスツ・ミーゴンと申します」
ってこの人はベリュース隊長!!
カルネ村を襲い、デスナイトと戦って散った勇者のベリュース隊長じゃないか!!
200……いや、500金貨!! と叫んで死んだ人である。まさかこんなところで出会うとは!!
身に付けているのは鎧ではなく、ゆったりと衣服だが、それでもゲス臭は隠せていない。
将軍に向ける視線は完全にカモを見る目だ。コイツ人生を舐めすぎてますわ……ッ!!!
「知ってる者もいるかもしれんが、今回は王国の方もいるので紹介しておこう。ベリュース殿は法国の商人。今回は支援部隊を率い、不足気味な物資を販売に来てくれたのです」
「そうなのですか。王国出の私は知りませんでした。戦争中の国に赴くなんて。とても義に厚い方なのですね!!」
「いえいえ、ぼったくr……ではなく、母国のポイント稼g……でもなく。悲しみにくれるこの国の現状を思えばこそですとも」
とりあえずヨイショしておくと、ベリュース隊長は満更でもないのかフッと笑った。
あれ、コイツちょろくね? でもそうか。そういえば作中で資産家って言われてたっけ。
もしかして、こうやってポイントを稼いでたから王国襲撃部隊の隊長になれたのかな?
だって幾ら家が資産家でも、それだけでは極秘任務の隊長に選ばれるのは無理だよね。なるほどなるほど。ただし商品の値段は間違いなくぼったくりだろう。
それから私は続けてベリュース隊長の隣に視線を移す。
そこにいたのは金髪をオールバックにしたツリ目。刀という武器を腰に吊るす、自信を満ち溢れさせたナルシストそうな男だった。
「護衛及び戦闘部隊隊長――エルヤー・ルデール・ウルブズ。お見知りおきを。まぁすぐに忘れられなくなると思いますがね」
「エルヤー殿は私も初めてお会いしますが、何でも相当な強者だとか。将の私としても頼りにしておりますぞ」
こっちはナザリック地下大墳墓に侵入した勇者エルヤー君!!
ハムスケに「ちょっと弱すぎでござるなぁ」と言われた有名なエルヤー君だ!!
「フッ、ビーストマンなどこの刀のサビにしてみせますよ。聖女などという
「まぁ、それは頼もしい。王国民の私にはとても言えないお言葉ですわ。……では将軍閣下、エルヤー
「もちろん構いませんとも。しかし神に選ばれた至高の種である人間のはずが、下賤な亜人などに後れを取るとは。この砦にはよほどの雑魚しか居ないみたいですね」
余りの挑発に、部屋の兵士達が顔を引き攣らせる。
中には青筋を浮かべている人もいた。だがエルヤーは気づいてないのかニヤリと笑う。
おっwまっwえっwwwww 喧嘩売りすぎて草生える。
でもこれこそがエルヤーだ。そうそう、そうしてちゃんと全方位に喧嘩を売らないとね。
あと私を堂々とディスってきたけど、不思議と気にならなかった。それよりも感動で胸が一杯だったのだ。
「それと最後はみなご存知、陽光聖典隊長のニグン殿です。今年もよろしくお願いします」
「いえいえ、これも人類を守護するため。国に与えられた任務ですのでお構いなく」
そして最後はみんな大好きニグンさんである。
金髪のM字刈りなのはアニメ版と同じだが、左頬に縦傷は入っていない。
なんという最強メンバー……ッ!! 法国が誇る三大ダメンズが大集合だ!!
内二人は部下を見捨てて命乞いしたツワモノで、もう一人は奴隷に見捨てられて死んだツワモノである。これは期待するなという方が無理だろう。
「まさかこれほどのメンバーを送ってくれるとは……ッ!! 法国には感謝しなきゃならないね。ママドーラさんもそう思うでしょ?」
「あんた本気で言ってんのかい? えっ、まじでそう思ってる……?」
私はブルブルと身を震わせた。3人がビーストマンに齧られる所を想像して。
まさにこれこそ私達が望んでいたものだ。……すごい
◆◆◆ ◆◆◆
「……それで初めて来た3人。王国の聖女と、ニグン殿と一緒に来た2人だが、宰相はどう思った?」
ツアレ達が王都を出てから、ドラウディロンは盛大に愚痴を吐き出していた。
「率直に言って
「だよなー。あーもう、なんで来るのはあんな
大人モードで片手には酒瓶が握られており、周囲には濃いアルコール臭が漂う。
しかし宰相はそれを止めようとしない。当たり前だろう。なぜなら宰相の手にもまた、酒瓶が握られているからだ。
「というか我が国は姥捨山ではないのだぞ? 法国は何を考えてるんだ」
「法国からすれば邪魔者を派遣という形で合法的に始末できますからな。それでも来てくれるだけマシですよ」
「金があればもっとマシな奴らを雇うんだがな。しかし国庫はすでに空っぽ。国の年収は年々右肩下がりだ」
「おまけに前線の兵も消耗スピードが早すぎます」
竜王国の隣にはビーストマンの国があった。
獅子や虎の頭を持ち人間を食べる亜人の国だ。
竜王国はそこから何年も攻められ続けており、国民を磨り潰しながら何とか持ちこたえている状況だった。
「一体どーしたらいーんだ? 消費が早すぎてリソースが足りんぞ。完全に赤字だ。プラスとは言わんが、せめてゼロにせんと不味い」
「それにはもっと強い軍を作って、侵攻を跳ね除けるしか無いですね。今の状況では絶対に無理ですが」
「だが現状維持も限界が見えてきておるではないか」
「はい。前線で若い男が死にまくっておりますので。とくに食料の生産量が酷いことになっております。このままであと数年……もし大規模な侵攻があれば、その前に終わりでしょう」
当たり前だが若い働き手がいなくなれば、その分だけ生産量は激減する。
生産量が減れば育てられる子供の数が減る。そしてそれは将来の兵士の数が減る事に繋がる訳で……。
「完全に悪循環じゃないか……。あーあーあー、もう考えたくなーい。誰かパパっとビーストマン共を皆殺しにしてくれんかなぁー」
「無理でしょう。そんな方がいれば、足でも何でも喜んで舐めてあげますよ。……陛下が」
「それで助かるなら別に構わんがな……。あー、冒険者から英雄級が出てこんかな」
竜王国は最早、政治ではどうしようもない状況に追い詰められていた。
今必要としているのは圧倒的な個である。しかしアダマンタイト級冒険者は
「では愚痴も出尽くした所で、そろそろ前線への手紙を書いて下さい。ちゃんと幼い子供の振りをしてですよ? 最低でも30枚はお願いしますね」
「ぐぇー、あれは本当に心に来るんだぞ……」
そう言いながらドラウディロンは机に上半身を放り投げる。
豊かな胸がギュッ押しつぶされるが、色気は微塵も感じられない。
その姿は上司から終わらない案件を押し付けられた、草臥れきったサラリーマンのようだった。
しかしそんなドラウディロン達は知らない。
今正に最前線で、それを行える馬鹿がハジケようとしていることを。
……一週間後に手紙が届いた時、砦周辺のビーストマンは一匹も残っていなかった。
今年派遣された法国組3大隊長
・支援部隊を率いるベリュース隊長
・戦闘部隊を率いるエルヤー隊長
・陽光聖典を率いるニグン隊長
……勝ったな!!!