ツアレ転生者の華麗な異世界生活   作:さろんぱす。

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誤字脱字報告、それに感想もありがとうございます。


#29 格の違いを見せつけていく

 戦場を一望できる小高い山の上。そこにコッソリ作られた監視所に豪炎紅蓮は居た。

 自然を巧妙に組み合わせた木上の櫓だ。よほど腕の良いレンジャーでなければ気づくことは出来ないだろう。

 

「……それでギギ、上空から見てきた戦力差はどれぐらいだった?」

 

 ママドーラはそんな櫓の中で、団員の一人である魔女のギギに問う。

 双眼鏡で戦場を睨みながら。返ってきたのは驚きの答えだった。

 

「……彼我の戦力差、出ました。竜王国残軍5千。ビーストマン軍……およそ3百」

 

「おやまぁ、随分と少なくなっちまったねぇ」

 

 ギギは魔女という魔力系魔法詠唱者のクラスを修めている。

 その魔法の力で空から戦場全体を偵察していたのだ。更に”正確に数を把握する”というタレントによって、戦場を数字で把握することが出来た。

 

「ビーストマン軍は約1万匹でしたので、もう9千7百匹も死んだことになります」

 

「……ツアレの嬢ちゃん、こりゃあ想像以上の化物だったね」

 

 ママドーラは開戦前に仲間を治してくれた一人の少女を思い出した。

 優しさと残酷さを併せ持ったような少女だ。只者ではないと感じたが、まさかコレほどとは思わなかった。

 

「元々は無理そうな作戦でしたけど、終わってみれば竜王国軍の圧勝のようですね」

 

「まぁそう言うんじゃないよ。あの将軍だって本来は慎重派なんだ。だけど竜王国の状況を知れば、誰だって同じことを考えるさね」

 

 ママドーラはやんわりとギギを窘めた。

 ワーカーとして何度も雇われている以上、あの将軍との付き合いは数年になる。

 だが将軍とて元々は慎重派だったのだ。いや、今も慎重派のはずだ。

 

「それでも今回の作戦を決行せざるを得なかったのさ」

 

「どういうことですか?」

 

「考えてごらん。働き盛りの男が毎年数千人も食われてるんだよ? この国が後何年持つと思うかい?」

 

 落ち続ける士気。年間で何千人にも及ぶ死傷者。それによる国力の低下。

 そうなれば法国へのお布施も減らさざるを得ない。

 

「そして払う金が減ることで、法国の増援部隊の質が落ちる。悪循環だねぇ」

 

「確かにそうですね。今回もマトモなのは陽光聖典ぐらいでした。壊滅してしまいましたが」

 

 次はもう陽光聖典すら来てくれないのでは? 来年も傭兵たちを雇えるのか?

 そう考えれば今のうちに何とかしなくては、という発想に至るのはおかしな事ではない。

 

「幸いなことに今回は陽光聖典の他2部隊の援軍が来て、私ら傭兵たちも残った状態だった」

 

 おまけに王国からも腕の良い治療団(ツアレ達)が来ていて、負傷者はほとんど治療済みだったのだ。コレ以上のチャンスは望むべくもないだろう。

 

「そこであの将軍は、先んじてビーストマン共に何とか手痛い一撃を。と決意した訳だ」

 

「なるほど。実はまともな将軍だったのですね。……それでママ、これからどうしますか? 残りのビーストマン300は南の小山を敗走中。シーダ、バズー、アシダカが追跡していますが」

 

「そりゃ決まってんだろ。……ツアレ嬢ちゃんに〈伝言(メッセージ)〉を送りな。それでこの戦争は終わりさね。まっ、向こうから聞いて来そうだけどね」

 

「ではもう少し待ちますね」

 

 ママドーラは戦争の終わりを感じた。戦場から熱が引いていく様を。

 ツアレから連絡が入ったのは、それからすぐのことだった。

 

 

 

 ◆◆◆ ◆◆◆

 

 

 

「ではニグンさんの保護をお願いします。私は残りを片付けてくるので」

 

「お、お気をつけて……」

 

「天使様!! このニグン、この大恩は決して忘れませんぞ!!」

 

 ビーストマン軍の偉そうな3匹を始末した後。

 私はニグンさんを本陣の将軍に預けてから、残敵の掃討に向かった。

 と言っても場所は豪炎紅蓮が把握してくれてるはずなので、一々探し回る必要はない。私は早速、豪炎紅蓮の魔女さんへと〈伝言(メッセージ)〉を飛ばす。

 

「――もしもし、わたしツアレちゃん。いまアナタ(ギギちゃん)の上空にいるの。……残りのビーストマンどこ?」

 

『南側の小山沿いをコソコソと逃走中です。今なら一網打尽にできるかと』

 

「OK、ちょっと行ってくる。このまま案内よろ」

 

 なので一飛びして魔法ブッパで終了だ。

 これでビーストマン軍は文字通りに全滅し、竜王国軍の勝利が確定。

 

 だがまだ見せ場が終わった訳ではない。

 私は仲間と合流すると、すぐ本陣に戻って負傷者が集められた場所へと赴いた。

 

「将軍閣下、どうか彼らの治療は私にお任せ下さい」

 

「本当に良いのですか? 我々としては助かりますが、そこまでやってもらうわけには……」

 

 どんどん負傷兵が担ぎ込まれてくる場所で、私は将軍に治療への協力を申し出る。

 なんせ結果だけ見れば竜王国軍の圧勝でも、本陣が崩れたせいで怪我人は大勢いる。そこで治療役を名乗り出たのだ。ダメ押しで経験値を稼ぐ為に。

 

「いえ大丈夫です。まだまだ魔力(MP)はたっぷり余ってますので」

 

「そ、そうですか。ではよろしくお願いします」

 

 将軍はこれ以上、働かせる訳には……みたいな事を言っていたけど。

 私がまだまだ魔力が余ってるよ! と告げるとピクピク頬を引きつらせながら、化物を見るような顔で許可をくれた。

 

 しかし自重はしない。だって負傷者を前に見て見ぬ振りは聖女の名折れ。

 というか戦闘はほぼ聖天使状態だったので、私本来のMPは本当に余ってるからね。

 経験値を稼げる場は逃さないよ!! それに試してみたい新スキルもある。

 

「では負傷者を出来る限り、この付近へ集めて貰えますか?」

 

「分かりました。おい、急いで全員を動かせ!!」

 

 私は負傷者がギュウギュウに集められた場の中央へ進む。

 中には男のアレを見られて社会的に死んだベリュース、折れた手足で雑に扱われているエルヤーもいた。うわ生き残ってやがる。コイツラしぶてぇ……。

 

「まずは(魂と引き換えの奇跡からの)――〈不死鳥の炎(フィーニクス・フレイム)〉」

 

 そこでまず私が発動させたのは第7位階の自動蘇生魔法だ。

 背後から出現した炎の鳥が、私に覆いかぶさるように翼を広げる。これで準備が整った。

 

「では行きます……。スキル――常世の祈り!!」

 

 続けて発動させたのは救国の聖女(セイヴァー・セインテス)の2Lv目で取得した新スキル。

 私を中心とした白い波動が周囲に広がっていく。暖かく輝くそれは周囲にいた人々を優しく包む。大勢の負傷者の怪我がまとめて治っていった。

 

「おおっ、怪我が治ったぞ!!」「この人数を一度に!?」「あああ、聖女様っ!!!」

 

 治った人々から驚きの声が上がる。

 中には私に跪いて祈りを捧げてる人まで居た。お賽銭くれてもいいのよ?

 

(……もはや聖女認定待ったなし!! フフフ、経験値稼ぎおいしぃー)

 

 これは自身の死と引き換えに、周囲に回復効果をばらまくスキルだ。

 回復量は私のHPを人数で割って+10%した程度で、今回は200人以上いたから一人の回復量は最低限の約10%になる。

 

(でも今の私はLV()()。その10%は、LV一桁の兵たちには十分な回復量なんだよね)

 

 仮に私のHPがLv1に付き8Up x 36Lv分で288だとすると、約28回復だ。

 LV3ぐらいまでの兵なら全回復だろう。それでも足りなければ個別に治療すれば良い。

 

「こんな風にね! ――〈大治療(ヒール)〉!!」

 

 私は治りきっていなかった負傷者に追加で魔法を使う。

 すると無くなっていた腕がニョキニョキと生えてきた。その奇跡に、魔法を掛けられた人が驚きで飛び上がった。

 

「……これぞ新しく覚えた()()()()の回復魔法。そう、私はついに逸脱者の領域に到達したのだ(ドヤ顔」

 

 ちなみにココに来る前の私はLV33だった。

 それが開戦前の聖女(ちりょう)活動と、開幕の自爆ブッパで救国の聖女(セイヴァー・セインテス―)クラスが1Lv上昇。

 続けて聖天使状態でビーストマン9千匹以上を狩ったことで、転生天使の分御魂(ソウルメイデン・オブ・アルテマ)クラスが2Lv上昇。他諸々を全部合わせて合計36Lv(第6位階)になったのだ。

 

 なお後者のクラス2Lv分はスキルで翼を生やして飛べるようになり、右太ももに聖痕が刻まれ聖印として使えるようになった。足は絶対に隠すなってか? もうスカートもズボンも履けない。

 

「フフフ、でももうフールーダ戦のように無様に墜落することはない。また強くなってしまった……」

 

 それから残りもサクサクと治療していく。

 もはや自重する気は一切ない。治療行為はあっという間に終わった。

 

「さすがねツアレ。さすツア!! でも私だって成長してるんだから!!」

 

 しかし終わって砦の自分たちの部屋に戻ると、ラキュースはおもむろに剣を抜いた。なにか見て欲しいものでもあるのかな?

 

「見て見てツアレ、私も呪いの炎を操れるようになったの! スキル――武器呪炎付与(エンチャント・カース・ウェポン)

 

「えっ」

 

 ラキュースがスキルを発動させて吹き上げた黒炎は、今までと少し違っていた。

 ところどころが紫色をした凶々しい炎だったのだ。おまけにムンクの叫びみたいな形まで時々浮かび上がっている。触るだけで呪われそう。

 

「フフフ、これは新しく取得した『呪炎の狂信者(カースフレイム・ゼロット)』クラスのスキルよ!! 今はまだ弱いけど、斬った相手の能力値を下げる事ができるみたい」

 

「おまラキュ!」

 

 こいつマジかよ。また中二臭いクラスを取得してる。

 呪われた神官騎士(カースドナイト)の親戚かな? ラキュースは何処に向かってるんだろう。

 

 もう最後は「闇炎の支配者(ダークフレイム・マスター)」とか取っちゃうんじゃなかろうか。

 この世界の中二病って怖いね。闇の炎に抱かれて消されそう。もしくはタタリ神にジョブチェンジ。

 

 だがパワーアップを遂げたのはラキュースだけでは無かった。

 

「おっ、ラキュースもか。実は俺も『嵐の強襲者(ストーム・ライダー)』ってクラスが取れたんだぜ」

 

「えっ、ガガーランも?」

 

 なんとガガーランニキまで新クラスを取得していたのだ。

 

「飛びながら雷のハンマーで戦ってたからか? 全身に緑の雷を纏えんぞ。……こんな風によ!!」

 

 発動されたスキルによって、ガガーランニキから緑の雷が迸る。バチバチバチバチ。

 名前から推測すると、原作で持っていたエアライダーの亜種だろうか? その見た目は余りにもカッコイイ。すぐにラキュースから嫉妬が飛んだ。

 

「なにそれカッコイイ。ずるい!!」

 

「武器ダメージが増えるみたいだ。まぁ当てれないと意味ないんだけどな。へへへ、俺もようやく個性って奴を手に入れたぜ」

 

「ガガーランニキは元から個性(筋肉)の塊では?」

 

 ゲーム的に言えば、物理攻撃時もしくは接触した相手に雷ダメージって感じかな?

 オーラ系と違い触れないと効果がないようだが。ていうかモンハンの雷狼竜(超帯電状態)だこれ!!

 

「それならば殿ぉ~。某もついに武技が使えるようになったでござるよ~!! ハムスケ・ウォーリアーでござる!!」

 

「まじで!? ハムスケ偉い!! 今日はご馳走にしよう!!」

 

「やったでござるぅ~~」

 

 続けてハムスケもここぞとアピール。おっ、どうやら順調に成長したようだ。

 私は立ち上がったハムスケと正面から抱き合って喜ぶ。モフモフモフモフ。

 やったね。こうなったら目指せ〈4光連斬〉だ。全身を使った1ターン10回攻撃……きっと相手は粉々になるぞ。

 

 そして最後はクレマンティーヌだけど……。

 

「それでクレティーは? クレティーはどうだったの?」

 

「あー、その、私はちょっとぉ……」

 

 質問を投げると、クレマンティーヌは言いにくそうにモジモジしだした。可愛い。

 気になった私は、思わずそのほっぺたを舐める。思いっきりベローン! と。遠慮なんてしない!!

 

「――ペロッ! これは嘘をついている味だぜ!!」

 

「ちょっ、急になにするのよ!?」

 

 だってやって欲しそうにしてたし。構ってアピールは見逃さないぜ。

 

「それにこういう時のクレティーは、なにか恥ずかしいことを隠している。私は詳しいんだ。おしっこ我慢してるとかかな? さぁ遠慮せず言ってみなさい」

 

「それじゃ、ちょっと使ってみるけど。……絶対にからかわないでね? スキル――報復の決光」

 

 諦めたクレマンティーヌは大人しくスキルを発動させる。

 すると金色が混じった赤い光のオーラが吹き出し、クレマンティーヌの全身を覆った。

 ガガーランが雷狼竜なら、こっちは赤き金獅子って感じだ。モンスターのイメージは逆なんだけどなぁ。

 

「おお、こっちもカッコいいね!! でもどういう効果があるの?」

 

「これはその……仲間が重症を負うと一時的に身体能力が強化される、みたいな? 最大強化は誰かが死んだ場合のみ、みたいだけど……」

 

 んんんん???? それってつまり、味方がやられると怒ってパワーアップってこと?

 しかも私が自爆したら激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリーム(古い)だって!?

 

「なるほどティンッ! と来たわ。……つまり、仲間大好きパワーアップってことね!!」

 

「完全にツアレとのコンボ用じゃねーか。てか、そんなに俺らのこと大事だったのかよ」

 

「姫は仲間思いってことでござるか?」

 

「クレティー、私のこと好き過ぎでしょ。専用コンボスキルを取得するとか。とっても可愛い」

 

「ああああああああ!!!! だから言いたくなかったのよぉ!!!!」

 

 よほど恥ずかしいのか、クレマンティーヌは頬を赤らめながら壁の方を向いた。

 なんだコイツ、可愛すぎだろ。私が男だったら押し倒してるぞ。いや、男じゃなくても押し倒したくなってくる。

 

 それにしても、みんな順調にパワーアップしてるね!!

 敵を倒し、LVアップし、新たな能力を得る。これこそ、この世界の醍醐味だ。

 やはり竜王国に来たのは間違いではなかった……。

 

 その日はそうしてお互いの新能力をお披露目しながら過ごした。戦争の余熱を冷ますように。

 

 

 

 ◆◆◆ ◆◆◆

 

 

 

 ――翌日。

 私はスキルから〈上位転移(グレーター・テレポーテーション)〉を発動、一度エ・ランテルの自宅に戻った。

 

「あ、あれ? 姉さん、竜王国はどうしたの?」

 

「ちょっと必要な物が有ったから、一度魔法で帰ってきたよ!! まぁすぐ向こうに戻るけどね」

 

 出迎えてくれた妹のセリーに軽く状況を告げると金庫に向かう。

 それから()()に必要なだけの金貨を持ち出すと、再び竜王国の砦に転移。

 

「……よし、必要額を袋に詰めてってと。――〈帰還(リターン)〉!!」

 

 こちらは神官が覚えることのできる第6位階の転移系魔法だ。

 ただし転移先は()()()しか作れない。しかも24時間過ごした場所のみである。

 代わりに距離による制限がない。まさに拠点に帰る為だけの魔法と言えるだろう。

 

 竜王国の砦へと戻った私は、持ち出した金貨を抱えて別の部屋に向かう。

 そこには回収された陽光聖典の死体がずらりと並べられていた。

 

「ニグンさん、お待たせしました。それでは準備が終わりましたので、これから陽光聖典隊員の蘇生を始めます」

 

「おお、ツアレ()! 何卒よろしくお願い致します!!」

 

 そんな仲間の死体が沢山の部屋で、ニグンさんが私に跪いて頭を下げる。

 戦場で命を救ったからか、ガチで私が上位者みたいな感じで接してくるから困る。

 

「まぁそのうち気にならなくなるか……」

 

 あとこの蘇生はニグンさんのアイデアだ。

 私の「どうしたら法国から沢山お金を引き出せますか?」という身も蓋もない問いに対して「部下を蘇生してくれれば沢山湧き出てくるでしょう」と答えてくれた。

 

 つまり本国で蘇生せず私に依頼することで、蘇生魔法の依頼料をぼったくろうという算段だ。

 

「こんなんで良いの法国? 〈転移(テレポーテーション)〉が使える人ぐらい居るだろうし、ここに蘇生魔法が使える人を連れて来れば済むんじゃ?」

 

「いえ、そうはならないでしょう。本国での蘇生は予約がいっぱいの状態でして。ならばツアレ様にご依頼するのは間違った判断ではありません」

 

「あっ、そうなんだ。なら大丈夫だね」

 

 ちなみに法国の相場だと、蘇生魔法の請求料は一回当たり金貨300枚らしい。

 竜王国に来ていた陽光聖典はニグンさん以外に40人で、全員死んだから依頼料は金貨1万2千枚になる。

 

 だが原作知識がある私は、法国は間違いなく払うと確信している。

 なんせ陽光聖典は平均LV20超えの精鋭部隊だ。予備役入れても100人もいない。その蘇生なら文句は言わないだろう。

 

 それに加えて私の力が伝われば大人しく払うはず。喧嘩したくなければ。

 なので魔法の発動費は、私が一時的に建て替えておくことにした。

 

「ニグンさんの人権(全財産込)を担保にだけどね」

 

「ご心配なく。書いた借用書は()()()()()おきます。これで部下もすぐに状況を理解するかと」

 

 〈死者復活(レイズデッド)〉は発動に金貨200枚が必要だから、今回の費用は合計金貨8千枚だ。

 貯金がほぼ無くなってしまうが、まぁ暫く出費の予定はないので大丈夫だろう。+1.5倍で帰ってくると考えれば悪くない。

 

「では端から順番に。――〈死者復活(レイズデッド)〉」

 

 みんなに金貨を死体の上に置いてもらい、私はその前で蘇生魔法を行使する。

 一人ずつ順番に、順番に……。途切れること無く蘇生を行っていく。

 

 全ての隊員が息を吹き返すと、彼らは熱狂に包まれた。

 そして、その数日後に陽光聖典は本国へと帰っていった。

 

「ツアレニーニャ様! 改めて感謝致します! このニグン、今回の件は一生忘れませんぞ!!」

 

「ちゃんと金送ってね? エ・ランテルの方に。じゃないと天使になって法国の首都を吹き飛ばすから。あとクレティー返せとか寝言ほざいても同じ事をする。偉い人に言っといて」

 

「もちろんです!! ツアレ様達のご活躍は、この私が本国にしっかりとお伝えさせて頂きます!! ではまたどこかで!!!!」

 

 何度も振り返って手を振りながら、陽光聖典が砦から出ていく。

 これで法国とのパイプも出来たし、上層部に私の意思も伝わる。少し待てば大金も手に入る。

 代わりに力も伝わってしまうが。まぁ、帝国との戦争でハデに使っているので今更だ。

 

「やっぱり助けてよかったね。有能キャラは味方にしとかなきゃ(確信)」

 

「確かに有能だと思うけどさ―、でもなんか小物臭くなかった?」

 

「何言ってんの、そこがいいんだよ!!」

 

 私はそんな彼らを見ながら呟き、クレマンティーヌが相槌を打った。

 

 ……なお、蘇った部下たちは、ニグンさんが()()で蘇生を願ったと勘違いしていた。

 おかげでニグンさんは理想の上司として、部隊員からの尊敬と忠誠が鰻登りだ。

 

「ニグン隊長!」「有難う御座います!!」「一生ついていきます!!」「隊長最高ー!!」

 

 ここ数日は大体こんな感じだった。壁に借用書を貼ったのはこの為だったのだ。

 そういえば私が最前線に到着した時、陽光聖典はすでに全滅していた。

 そのため部下達はニグンさんの「自分の命だけは~」から始まる命乞いを聞いてないんだよね。だからこんな事になっているのだろう。

 

「それに蘇生費用も、どうせ本国に請求するだろうね」

 

「それずるくねー? 結局、ニグンってのは一切損しない訳じゃん」

 

「そりゃ国の正式な軍人なんだから、任務費用を国に請求するのは当たり前だよ」

 

 保険の支払いに保険をかける保険会社的な?

 結果だけ見れば、私に稼がせ、部下からの評価を上げ、それでいて一切損していない。

 

 その行動の根本になっているのは、立ち場と希少性から来る信用だ。

 ……周りが自分を切れないと確信しているのだ。完全に自分の価値を分かってやがる。

 

「うーん、流石に世渡りが上手い。まぁ乗った私も私だけど。でもベリュースやエルヤーなんかとは格が違うね。全然違う」

 

「流石にアレらと一緒にするのは可哀想な気がする」

 

 おまけに恐らく私とのパイプ役もニグンさんになるだろう。

 傍から見れば共に戦った戦友で、蘇生費を肩代わりしてくれるほど親しいと思われるから。

 

 そうなれば法国だって重要度を上方修正せざるを得ないはずだ。立ち回りマジぱねぇ……。

 

 

 

 ◆◆◆ ◆◆◆

 

 

 

 そして戦争終結から丁度1週間後。

 私たちは竜王国の王城にいた。戦果の表彰式をするからと呼ばれて。

 

「ツアレおねえちゃーーーん!!!」

 

「うぉっ!! Q(急に)Y(幼女が)T(飛び出してきた)!!」

 

 さて、ドラウディロン女王陛下はどんな様子で迎えてくえるかのかな?

 と考えながら王城の玉座の間に入ると、玉座から飛び降りた幼女状態の女王が走り出し、その勢いのまま抱きついてきた。

 

「ツアレおねえちゃん! わたし、とっても心配だったの!!」

 

「えー(ドン引き)、大丈夫だよ。お姉ちゃんは強いからね!!」

 

 私をその幼女を受け止めながら驚愕する。

 見渡した部屋の中には大勢の人達が詰めていたのだ。

 

 私はその行動の意味を即座に理解した。

 こ、こいつ。大勢の前でお姉ちゃん呼びすることで、私と姉妹のような深い関係だという事をアピールしようとしているっ!!

 

「……なんて腹黒い幼女なんだ。伊達に年は食ってないね(ボソッ)」

 

「……おい止めろ。年とか言うな。しゃーないだろ、どうせ他国のスパイだっているんだ。少しでもアピールしとかんとな(ボソボソッ)」

 

 私たちは小声でやり取りする。

 当たり前だが、周りにはとても聞かせることが出来ない内容だ。それからすぐに表彰が始まった。

 

 幸の薄そうな宰相が内容を告げて、褒美が授与される。

 幼女はニコニコしながら玉座に座ったままだ。……先生、女王君がサボってます!!

 

「それではツアレニーニャ・ベイロン名誉子爵殿」

 

「はっ!!」

 

 順番が来た私達は女王の前に進んで片膝を突く。

 こうした謁見も王国から数えて3回目だ。流石に慣れてきた。

 

「此度の誰も真似できない戦功に対し、竜王国は『黄金ダイヤモンド十字剣付黒竜大翼勲章』を授与するものである!!」

 

「ツアレおねえちゃんの為に新しく作ったんだよ!!」

 

「そーなのかー」

 

 いや名前長すぎ!! どんだけ盛り込んでんだよ!!! どこの破壊王用の勲章だ。

 

「それから残りの3名……いや失礼。ハムスケ殿を含めた4名に対しても、多数の敵を打ち取ったその戦功に対して『黒竜双爪勲章』を授与する」

 

 おっ、ハムスケにも勲章くれるってまじでー? これは純粋に嬉しい。

 この場には来てないけど、きっと喜んでくれるだろう。王国からは何も無かったからなぁ。

 

 他にも将軍達に黒竜鋭角勲章(指揮などの知謀系)ってのを。

 帰国した陽光聖典には黒竜突牙勲章(勇敢に戦った系)が送られていた。

 

 ちなみに黒竜と付く勲章は、この国では最上級の物になるらしい。

 その下に赤龍、青竜……と続くのだとか。私って他国の人間なのに良いのかな?

 

 私は無詠唱化した〈伝言(メッセージ)〉をドラウディロン王女に飛ばす。

 こうすると声を出す必要なく、テレパシーみたいに脳内で会話できるのだ。

 

『もしもし? わたしツアレちゃん。今後も私を良いように使いたいのがバレバレなの』

 

『うむ、次もよろしくな!! ちなみに金は出ないぞ。ずっ友ということで頼む』

 

『どっちも知ってた。でもちょっとぐらい隠せや!! あと宝物庫の中を見せろん』

 

『げぇー、友達料ッ! しかし、もう碌な物が残っておらん……』

 

 まぁ呼ばれたらホイホイ来ちゃうけどね! だってまだまだLV上げたいし。

 それに私がMAXまで上がっても、次はセリーのLV上げがある。ビーストマンには、まだまだお世話になりそうだ。

 

 それから後日、エ・ランテルの拠点に法国からも荷物が届いた。

 中身は金貨と勲章だった。それも二つ。

 

「えーと、1つ目は『一等救光勲章』ね」

 

 これは味方の救援に大きな功績を果たした人の為の勲章らしい。

 私は砦の負傷者の治療、および陽光聖典を全員蘇生した事で資格を満たしたとか。

 

「それから2つ目が『特等大闇勲章』」

 

 そしてこちらはビーストマンを大勢打ち取り、人類の生存に多大な貢献を果たした事を評してだとか。

 

 それも特等、法国の勲章では最上級だ。

 これはもしかして、うちは敵対しないよ! っていうアピール込なのかも。

 

「後は()金貨が……4千枚!?」

 

 袋を開けて中身を数えてみると驚くべき額だった。

 金貨で4万枚換算だ。元は2万枚だから倍になってるね。勲章と併せてすごい奮発してる。

 もしかしてニグンさんの救命料に加えて、お友達料も込なのかな? +4倍になって帰ってきたぞ!! ニグンさんは約束通り法国から金を引き出してくれたようだ。さすニグ!!

 

 ちなみに王国からも帝国戦後に「大輝星戦烈勲章」ってのを貰っていて、これも最上級の勲章だったりする。

 

「つまり周辺3国から最上級勲章を貰った事になるのか……」

 

 王国 :大輝星戦烈勲章

 法国 :特等大闇勲章、一等救光勲章

 竜王国:黄金ダイヤモンド十字剣付黒竜大翼勲章

 

 ……並べるとこうなる。やっぱり竜王国だけ長い!!

 でも、こんな風にポンポン渡されると有り難みが沸かないね。カッコイイから額縁に入れて飾っちゃうけどさ。

 

 それから私たちは暫くダラダラとした時間を過ごした。

 そして2週間ほど立った頃である。エ・ランテルのマイハウスに、レエブン侯配下のマジックキャスターが駆け込んできたのだ。

 

「ベイロン子爵閣下! ランポッサ三世陛下より緊急連絡です。王国北部でボウロロープ侯爵と大勢の貴族たちが挙兵! バルブロ第一王子を筆頭に、王国へ反旗を翻しました!!」

 

 ふぁっ!?

 

「つきましてはすぐに王城へ出頭せよとのご命令です」

 

 えー、暫くはゆっくり出来る思ったのに。あの馬鹿王子達、何やってんだ……。

 

 

 

 ◆◆◆ ◆◆◆

 

 

 

 先の大戦の被害から不夜城と化したバハルス帝国の皇城。

 皇帝ジルクニフが目の下に隈を作って書類を処理していると、そこへ慌てて駆け込んできた秘書官達がいた。

 

「陛下っ!! 王国で第一王子達が決起いたしました!!」

 

「なんだと!? 今やっても意味ないだろうが!! 急いで止めさせろ!!」

 

 ジルクニフはその報告に眉を顰める。

 ネギを背負ったカモが自ら鍋に飛び込もうとする、そんな幻覚が脳裏をよぎったからだ。

 

 元々王国に内乱を起こさせるのは、帝国側が建てた計画だ。

 だがそれは白羽聖女団を他国に釘付けにした上で、という条件付きだった。

 なぜなら彼女たちがいる状況で内乱など始めては、恐らく一瞬で片が付いてしまうから。

 

「陛下、無理だと思われます。もはや挙兵は済み、王都に向かって進軍を始めたと報告が……」

 

 しかし竜王国の戦争が予想以上に早く片付いてしまったせいで、予定が大幅に狂ってしまった。

 おかげで現在、白羽聖女団は完全にフリーな状態だ。そんな時に内乱など全くもって無駄でしかない。何事もタイミングは重要なのだ。

 

「……ちっ! ならイジャニーヤだ。王軍側の指揮官共を狙わせろ。上層部へ損害を与えるんだ」

 

 だが最早止められないことを悟ったジルクニフは次善の手を放とうとする。

 王軍上層部の暗殺だ。これなら王国にも少なくないダメージが残る。

 それに王軍の総大将は王派閥側から出るだろうから、もしかしたらレエブン侯などの諸侯が死に、致命的な損失が発生するかもしれない。

 

 そしてその結果として混乱が起きれば、貴族派側にもチャンスが生まれるだろう。

 

「陛下。それが貴族派に潜伏させている諜報員によりますと、すでにイジャニーヤは雇われているようで。暗殺対象は白羽聖女団だそうです」

 

「なぜそんな無駄なことをする!? フールーダを超える相手を殺せると思っているのか!!」

 

 だがそれも、すぐに意味が無くなってしまった。

 ジルクニフは王国貴族派の余りの考えなさに、一瞬だけ思考が止まりそうになった。

 何故自分から勝ち筋を捨てるのか。全くもって理解出来ない。

 

「いや待て、貴族派の奴らは一体どうやって勝つ気なんだ? もしかして最初から諦めているのか?」

 

「それが陛下、どうも貴族派は国中の冒険者を徴兵している模様です。従わない場合は仲間を人質に取る形で。ミスリル級以上に限定しても『4武器』『天狼』『虹』『クラルグラ』他多数の確認が取れています。これらを白羽聖女団にぶつけるつもり、なのではないでしょうか?」

 

「なるほどそういうことか。そこまで形振り構わずとは、どこまで愚かなんだ……。だが冒険者を戦争に出した場合の有効さは証明されている、か」

 

 奇しくも先の戦争で白羽聖女団が証明してくれたのだ。

 上級の冒険者は1PTで何百、何千人もの兵と同等の戦力になりえると。ならばそれを徴兵して敵にぶつければ良い、と考えたのだろう。

 

 勝っても冒険者がみんな国から出て行き、退治されなくなったモンスターによって、町や村が壊滅的な被害を受ける、という事実に目をつぶって。

 

「いや、もしかしたら本当に考えていないのか? みんな頭バルブロか?」

 

「陛下、それとまた大金をばらまき帝国の傭兵やワーカーも集めたようです。有力なチームですと『グリーンリーフ』『ヘビーマッシャー』が参加している模様」

 

「それと大都市リ・ボウロロール内に傭兵団『死を招く剣団』の姿が有ったと。こちらにはブレイン・アングラウスが所属しております。更に『八本指の残党』まで集まっているようで」

 

「第一王子は王城から出る際に、王国の秘宝を持ち出したようです。貴族派軍内で自慢気にレイザーエッジを振り回す姿が確認されております」

 

 ジルクニフは部下達から矢継早に告げられる報告を脳内でまとめ吟味する。

 しかし最後に告げられた言葉によって、今度こそ思考が停止してしまった。

 

「最後に、コレはまだ裏が取れていないのですが……」

 

「なんだ? これ以上、気がかりなことが有るのか?」

 

 ジルクニフは言いたく無さそうな部下の雰囲気に不安を覚えた。

 だが皇帝として、どんな報告では聞かなければならなかった。

 

「それがその……。貴族派軍の中で()()()()()様の姿を見たとの報告がございまして……」

 

「なんだと!?」

 

 ジルクニフは告げられた言葉の意味がよく分からなかった。

 一体何が起こっているのか。どれだけ考えても理解できない。脳みそはパニック状態だ。

 だがそれでも一つだけ分かった事がある。

 

 ――それはもう、この内乱は制御不可能だということ。

 

 帝国の思想から完全に離れ、貴族たちの欲望に流されて。

 王国という船は誰にも分からない方向へ進み始めていた……。




ニグン「蘇生依頼でツアレ様を稼がせ、私は部下の忠誠心を得て、発生する費用は本国に請求する。これからの立ち位置(パイプ役)も確保……ヨシッ!!」

ジルクニフ「貴族派なんで勝ち目がない状態で決起してるの? 馬鹿なの??」

バルブロ&ボウロロープ侯「自前の精鋭兵団、第一王子の名。イジャニーヤ、パワーマッシャー、グリーンリーフ、4武器、クラルグラ、天狼、虹、死を招く剣団、八本指残党、フールーダ(幽霊)……他にもいっぱい。オールスターだ! これだけ揃えれば絶対に負けへんやろ(総力戦の構え)」

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