ツアレ転生者の華麗な異世界生活   作:さろんぱす。

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#3 貴族はオワコン

 皆さまこんにちは。

 前回、自らの力で自由を勝ち取ったツアレちゃんです。

 いきなり奴隷として売られたのは驚きましたが、諦めなければ何とかなるものですね。

 

「タレント一発で解決余裕でした。……第8位階ってつおい(確信」

 

 やはりこのビルド構築は間違っていなかった。

 あれから私は馬車を走らせ、近くの街を目指して街道を疾走していた。

 すると道中で盗賊に襲われている馬車を見つけた。

 

「ヒャッハー!! 獲物がかかったぞぉおおお!!」

 

「馬車の中にいるガキは人質だ!! 殺さずに捕まえろよ!!!」

 

「ゲヘヘヘヘ、お前らの父親が悪いんだぜ。八本指様に逆らうから……」

 

 八本指とは原作に出てきた巨大な犯罪組織だ。

 どうやらすでにヒャッホイ! してるらしい。

 巣が作れてどこにでも湧く準備が整ってるんだね。恐怖公の眷属みたい。

 

「すごいテンプレ!! だがヒャッハー!! 犯罪者は経験値だあああああーーーー!!!」

 

 もちろん私はそのまま乱入する。

 横殴りで経験値を荒稼ぎだ。

 

「それと〈第1位階天使召喚(サモン・エンジェル・1st)〉っと。おっ、可愛い天使じゃん!!」

 

 ついでに覚えている召喚魔法の確認も行う。

 出てきたのは「見習いの下級天使(レッサーエンジェル・サーヴァント)」という天使ちゃん。

 

 名前に見習いと付くだけあって小さめの天使だ。

 身長は中学生ぐらいで背中の羽も小さい。

 ただし手にはショートソードを握って浮いていることから、戦闘自体は問題ないようだ。

 

「おおーと、ここで溝落としドリフトォ―――!!!」

 

「ぎゃああああああ!!!!」

 

「あしがぁああああああ!!!」

 

 私はまず馬車で後ろにいた弓持ちを轢き、続けて天使ちゃんを残りの賊に突撃させる。

 戦う場所はいつでも逃げれるように、賊たちの囲いの最外周だ。

 グルグル回りながら馬車と天使ちゃんでプチプチ潰していく。

 

「他人にヘイト押し付けて狩りするのたーのしぃいいい!!!」

 

 運よく訪れたボーナス狩り場にテンションが上がる。

 そうしていると賊共が逃げ出したので、私もすぐに逃げ出す。

 

 なんせこの国の貴族は腐ってる奴が多いからね。

 それはたまたま会う貴族もクズの割合が高いということ。というかほぼクズだろう(偏見

 

「ワンチャン期待して貴族ガチャを引く(に関わる)なんて愚の骨頂よね。まともな貴族もいるだろうけど、期待値が低すぎてオワコン。ってことでツアレちゃんはクールにバックレるぜ!!」

 

 襲われてる所を助けたのに。お礼の催促もできないなんて王国貴族最低だな。

 

 そんな訳で戦闘を終えた私は即座に離脱。

 レベルアップにより全身に力が漲る不思議な感覚を体験しながら、街へ向かって馬車を飛ばした。

 

 

 

 

 

 そして太陽が頭上を超えた頃、私はようやく街に辿り着いた。

 スゥサイドさんから聞いておいた「リ・アインドル」という街である。

 

「なんだか活動再開したアイドルが作ったような名前ね。Re:アイドルって感じの。……でも門前に並んでる人たちはみんな良い顔してる。治めてるのは良い領主なのかな?」

 

 パッっと見た感じ、なかなか賑わってそうだ。

 近くの街道には賊が湧いて、騎士と貴族(仮)が刈られてたけど。

 

「よし次のもの!!」

 

「おっ、やっと私の番だ」

 

 入場待ちの列に並んでいたら順番が来たので前に進む。

 門兵さんによる不審者チェックだ。だが身バレは困るので、ここは偽名を使っておく。

 

「では出身村と名前を名乗れ」

 

「ビプロヴォーケ(煽られ)村の方から来たツアレ・コンソメ・パンチー(大好物)です」

 

「……なんだか美味しそうな名前だな。あとそんな村あったか?」

 

「なんなら戸籍で確認して下さい」

 

「むむむ」

 

 私の答えに門兵さんが困った顔をする。

 私が転生したこの国――リ・エスティーゼ王国はまともに戸籍が管理されていない。

 なのでいい加減な事を言っても調べようがないのだ。へいへいピッチャー困ってるぅー!!

 

「おかげで犯罪者天国な有様だよ!! ……もう行って良い? 通りますね」

 

「いや待て。見たところ女一人のようだな? ……他の同行者はどこにいる?」

 

「ちっ、カンの良い兵隊さんは嫌いだよ」

 

 しかしすんなりと通してはもらえなかった(1敗

 まぁ女一人だからね。よっぽど酷い兵隊さんじゃなければ事情ぐらい聞くだろう。

 

 なので予め考えてたカバーストーリーを答える。

 

「見た目だと分かりづらいですけど、これでも20歳の男なんです。消防署の方から来ました」

 

 ここには魔法もタレントもある世界なのだ。

 ならば見た目が女のような男(20歳)がいても不思議ではないだろう。

 コッコドールとかいうオカマもいるし。完璧なカバーだ。

 ……さぁ不思議じゃないって言え(願望

 

「しょうぼうしょ? いや、その体つきで男はアリエナイだろう」

 

 しかし私の話は全く信じてもらえなかった(2敗目

 もしかしておっぱいか? 原作でも結構大きかったこのお乳があかんのか?

 

「推定Dカップだけど本当なんです。それに私はマジックキャスターなので一人旅も余裕のよっちゃん!! ちなみに信仰系あみのすきー」

 

「あみのすきー?」

 

 私はクラスを正直に申告する。

 これからは信仰系魔法詠唱者として活動する予定だし、どうせすぐバレるからココで話しても問題ない。

 

 でも門兵さんは中々信じてくれなかった。

 というか私の言うことを全部ウソだと疑ってるような。どうしてそんなに人を疑うんですか!!

 

「ぜんぶ本当なのに!!」

 

「いや、どう考えても無理があるだろ。本当だと言うなら、ここでその魔法を使ってみせろ」

 

「えっ、ここで? ……うーん、分かりました。では魔法が使える事を証明しましょう」

 

 と思ったら実演を求められた。

 こんなところでヤレなんて、なかなかチャレンジャーな兵隊さんだ。

 

 しかし求められたからにはヤるしかない。百聞は一見にしかず。

 まぁやってみろって言い出したのは向こうだし? よーし、わたし頑張っちゃうぞ~~!!

 

「では失礼します」

 

「えっ」

 

 私はその場でナイフを取り出し、()()()()()()()をぶっ刺した。

 

「みぎゃあああああああああ!!!」

 

「おっ、演技上手っすね~」

 

 刺された憲兵さんが足を抑えてゴロゴロ転がる。

 

「おいそこの!! いきなり何してんだてめぇ!!!」

 

 更に悲鳴を聞きつけ、門横の検問所から兵隊さん達がゾロゾロ出てきた。

 彼らは私を囲み、一番偉そうな髭を生やした兵隊さんが口を開く。

 

「おい何があった? 血が流れているようだが……貴様がやったのか?」

 

「治療魔法を実演しろと言われたので。では今から治しますね――〈軽傷治癒(ライト・ヒーリング)〉!!」

 

 そんな彼らの前で魔法を唱える。

 すぐに転がっていた兵隊さんの傷が塞がり出血が止まった。

 

 まぁ刃物傷とはいえ15歳の女子が刺した程度の傷だ。

 軍人ならこれぐらいは慣れっこだろう。ノリがいい人なのか、大げさに痛がってくれているが。

 

「どうです? 完璧な治療魔法でしょう? 馬力が違いますよ!!」

 

「ばりき??」

 

 そのままドヤ顔で胸を張る。

 しかし兵隊さんたちはまだ信じられないようだ。

 

「……まさか本当に治ったのか? こんなボロボロの服の女の子が魔法を??」

 

「ん? まだ信じれないって? ……しょうがないにゃぁ」

 

 なので私はもう一度同じ門兵さんをぶっ刺した。

 

「ぎょぇえええええええ!!!」

 

「おいいいいい!!!! 何してんだてめぇ!!!!!」

 

「だって信じてない顔してたし。――ほい〈軽傷治癒(ライト・ヒーリング)〉。これで分かってもらえた?」

 

 シュッシュッ! とナイフを上下させながら再び兵隊さんに問う。

 信じてくれないなら何度でも実演してやるぜ! そんな表情で。

 

「あと10回ぐらい()せばいいですか?」

 

「……いや分かった!! 分かったからもうナイフは仕舞ってくれ!! ……お前らもそう思うよな? 通ってよし!!」

 

「あざーっす!!」

 

 兵隊さんたちはみんな青い顔をしながら首を縦に振った。

 おっ、どうやらこれ以上は必要ないようだ。やったね、これで街に入れるよ!!

 

「やっぱ人間は対話してナンボよね。これで私のコミュ能力がアダマンタイト級なのは確定的に明らか」

 

「これが対話か? 半分脅迫だと思うが……あと規定の料金は払ってもらうぞ」

 

「治療したんだから半額にして?」

 

 私はシナを作って兵隊さんにより掛かる。

 偉そうな髭の兵隊さんは、銅貨1枚分すら負けてくれなかった(惨敗

 

 

 

 

 

 ……………………

 ………………

 …………

 

 

 

 

「あーあ、なんか詰まらないな。もっとびっくりすること起きないかなぁ……」

 

 しっかり整備された広い街道を行く豪華な馬車の中。

 取り付けられたガラス窓ごしに外を眺めながら、一人の少女がそんな事を呟いていた。

 

 少女の名前はラキュース。

 今年で14歳になるアインドラ伯爵家の令嬢であり、英雄級の才能を持って生まれてきた少女である。

 

「お嬢様、不吉な事をおっしゃらないで下さい」

 

「だいじょうぶよ。この辺の街道は安全だって父様が言ってたもの」

 

 お付きのメイドにそう言いながらラキュースは再び街道を眺める。

 その瞳にあるのは、この年齢の少女によくある日常の飽き。そして非日常への憧れだ。

 

(このまま屋敷に帰った後はどうなるんだろう? またいつもの繰り返しなのかな……)

 

 ラキュースは生まれてから今日まで、何不自由のない環境で育った。

 優しい両親、暖かな家庭、優秀な家庭教師。そして冒険の話を聞かせてくれる叔父。

 記憶が戻って秒で売られたどこかの平民奴隷に比べれば、親ガチャ大当たりウルトラハッピーだと言えるだろう。

 

 令嬢としての教育と、神殿での祈りを繰り返す日々……。

 それは大多数の平民が望む、代わり映えしない安定した毎日だ。

 

 ……しかし最初から持っていたからこそ、ラキュースはそれだけで満足出来なかった。

 その間に膨らんでいったのが、非日常への強い憧れだ。

 特に好きだったのは、人々を守り邪悪な敵と戦う英雄のお話である。

 

 ――チャンスがあれば私だってきっと。

 

 最近はそんな事を思う事も多くなっていた。

 だがそんな状況が()()やってきた時――ラキュースは全く動けなかった。

 

「ヒャッハー!! 獲物がかかったぞぉおおお!!」

 

「回りの騎士どもは全員ころせえええ!!」

 

「馬車の中にいるガキは人質だ!! 殺さずに捕まえろよ!!!」

 

 なんと叔父の領土へ遊びに行った帰りに、賊から襲撃を受けたのだ。

 

「えっ、えっ、えっ……」

 

「お嬢様!! 賊です!! お隠れ下さい!!」

 

「隊長!! 囲まれています!!」

 

「ちっ……陣形を崩すな!! なんとしてもお嬢様をお守りするんだ!!!」

 

 もちろん馬車には護衛の騎士がついていた。

 だが不幸なことにそれは最小限の人数だった。

 20人以上いた賊に対して騎士達は奮闘するも、時間が経つにつれて一人、また一人と倒れていった。

 

(そ、そんな! あんなに強かった騎士達が!! 私はもうダメなの!?)

 

 そしてとうとう残りの騎士が3人だけになった。

 賊たちの数もだいぶ減ってはいたが、それでも残りの騎士だけで馬車を守るのは不可能だ。

 

 ラキュースの心が絶望に支配される。

 何時もはあんなに活躍の場を望んでいたのに、しかし実際にその状況が訪れれば、出来たのは自分付きのメイドと抱きしめ合いながら、震えて神様に祈ることだけだった。

 

 ――しかし、そんな時である。

 

「ヒャッハー!! 犯罪者はみんな経験値だあああああーーーー!!!」

 

 そんな事を叫びながら、一台の馬車が突っ込んできたのだ。

 それも邪魔するやつは全員轢き殺す! と言わんばかりの速度で。

 

「な、なんだ、どっから来やがった!?」

 

「お前ら避けろぉおお!!」

 

「ぎゃあああ!! 俺の足がああああ!!」

 

 それは賊たちにとっても予想外だったのだろう。

 眼の前で対応が遅れた賊共が次々と跳ねられていく。

 

 さらに――

 

「〈第1位階天使召喚(サモン・エンジェル・1st)〉……貴重な経験値さんだよ! 収穫! 収穫!!」

 

 なんと乗っていた()()()は魔法で天使を呼び出したではないか。

 

(うっ、嘘!! あれは私と同じ信仰系の魔法!!)

 

 しかも使ったのは召喚魔法である。

 それもなんど練習してもラキュースには使えなかった魔法だった。

 

 そうして戦いの形勢は逆転した。

 2頭立ての馬車に女性が一人だったことから、賊達は先に降りた男達が他にいると()()()し、逆に包囲される事を恐れて逃げ出したのである。

 

「キタッ! キタッ! キタッ!! LVアップキタァアアアーー!!!!

 こ、れ、が、進化!!(恍惚な表情) ……あっ、私のことはおかまいなく」

 

 しかも戦闘が終わると、その子は何も受け取らずに去ってしまった。

 

「お嬢様! もう大丈夫です!!」

 

「しかし、あの子はいったい何だったんだ?」

 

 てっきりお礼を催促されると思っていたのにびっくりである。

 ラキュースは興奮を隠せなかった。

 

(すごい! あんなすごい子って本当にいるんだ!!)

 

 他者を助けるため危険に飛び込む勇気。何も言わずに立ち去る潔さ。

 その姿はまさに吟遊詩人が語る英雄そのものだ。

 まるでお話の中の人物が目の前に飛び出てきたかと思った。

 

(わたしも、わたしもあんな風になれるかな? ……ううん、絶対になるんだ!! そしてあの子と一緒に戦いたい!!)

 

 その日、ラキュースは将来の夢を見つけた。

 英雄の才を持った子が現実を直視し、ついに進むべき(あこがれ)を見つけたのである。

 

「待っててね!! 絶対に! 絶対に会いに行くから!!!」

 

 ラキュースは祈るように両手を握り合わせ心に誓った。

 

 ……なお実際は、横殴りで経験値うめぇ!! していただけの模様。

 でも救ったのは間違いないからセーフ!!!

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