「警備お疲れ様で~す。……ところでお兄さん、私達と気持ちいいことしない?」
「んっ、何だお前らメイドが二人? でも気持ちいいことはやっちゃう……ゴフッ!!」
「はいはい、スっと行ってドスッっとな」
「フィイイーーーシュ!!」
みなさんこんにちは。
クレマンティーヌをPTに加えてホクホクのツアレちゃんです。
私たちはあれから堂々と屋敷を進み始めた。常駐してる雑魚共を始末しながら。
ちなみに道中で自己紹介は済ませてある。
お互い親に売られた――私は金で、向こうは信仰で――からか、不思議と気があった。
すでにあだ名で呼ぶ仲だ。二人はマブ友!!
「おぉ~、流石クレティー、すごい手際の良さ。これが本当の暗殺者ムーブなんだね」
「別にそんなすごい動きでもないけどね~。でもこうして人を刺していると、すごく落ち着く」
「その気持はよく分かる。自分より弱いのが居ると安心する生き物だよね。人ってやつは」
基本的には私が注意を引いて、クレマンティーヌが心臓を一突きにする戦法だ。
メイド服の私が、胸元を開いて笑顔で近づけば、みんなコロっと騙されてくれる。
そこを後ろからドスッである。おっぱいの魅了効果がやばい。もう魅了魔法とかいらなくね?
そうして最終的に辿り着いたのは、ここに着て初日に連れ込まれた部屋だった。
「はい到着。ここがコッコドール――奴隷部門のボスの部屋だよ。準備はいい?」
「本当に踏み込むつもりなの? やっぱ止めてすぐに逃げない?」
「何言ってるの。それじゃ未払い賃金が回収出来ないじゃん。泣き寝入りなんて絶対に嫌!!」
一目で他とは違うと分かる、複雑な彫刻がされた高そうなドアだ。
その前で私たちは準備を整える。と言っても、クレマンティーヌが刺突剣の血を拭うぐらいだが。
「すごく壊しがいがありそう。なんかワクワクしてきたよ!!」
「えぇ~、私は余計な危険が待ってそうで嫌なんだけど……」
「大丈夫大丈夫、どうせクレティーより弱い護衛しか居ないから」
もちろんここに来たのは、今まで滞納された賃金を貰うためだ。
私一人なら難しかったかもしれないが、クレマンティーヌという、そこそこ(現状では)の強者が居るなら話は違ってくる。
「クックック、私達を出会わせてしまったのが、コッコドールの運の尽きだぜ!!」
「ほんとかなぁ……」
「クレティーは心配性だなぁ。まっ、
「私からは泥舟にしか見えないんだけどな~。その自信の源はなんな訳?」
「フフフ、それはこれから分かるよ。――たのもーーう!!」
「本当に行きやがった……」
挨拶代わりにヤクザキックを打ち込む。
鍵が掛かっていたであろうドアは、ドゴォ! という音と共にドアノブと蝶番が弾け、そのまま縦に倒れる。
私たちはその扉を踏みながら、堂々と中へ侵入した。
「労基チェックの時間だおらぁあああああーーーー!!!!」
「どうも~、お邪魔しまーす」
「はぁ!? イキナリなによ!!?」
入った部屋の中には、予想通りコッコドールがいた。
柔らかそうなソファーから腰を浮かしたまま、驚いた顔でコチラを見ている。
「……って、誰かと思ったらツアレちゃんじゃないの。一体どうしたのかしら? あと一人は知らない子ね」
しかし居たのはソレだけでは無かった。
驚いたことに、部屋の中では他に3人の男たちが、対面のソファーに座っていた。
私はその人達に見覚えがありすぎて動揺を隠せなかった。
「うそっ!? どうしてこの人達がこんな所にいるの……?」
「また貴様か……」
なんだか嫌そうな顔をしたのは、全身に入れ墨のあるムキムキのマッチョ。
ピカピカ光る6腕のボス――「闘鬼」ゼロ。
「なんだこのメイド共は? ……いや、本当にメイドか? 濃い血の匂いがするぞ」
二人目は金糸刺繍の服を着た伊達男。
実は6腕の人間種で一番LVが低い毒使い――「千殺」マルムヴィスト。
「多分この店のメイドだと思うが。ボスの知り合いのようだし、専属の娼婦か?」
そして三人目は、青白い肌に痩せた頬で、室内なのにフードを被っている。
軽戦士と幻術士を中途半端に修める、失敗ビルドの見本――「幻魔」サキュロントだ。
「ウッソだろおい。6腕の内、3人が揃ってるとかマジで??」
「ねぇちょっと、私より弱い護衛しか居ないって言わなかった? 3人とも私より強そうなんだけど。逃げて良い?」
「何言ってるの、こんなチャンス二度と無いよ!!」
「どういう意味で!?」
クレマンティーヌが慌てているが、私は内心大興奮だった。
正直、超会いたかった3人だ!! うっひょー! これは大ラッキーですよ!!
まぁどうせなら残りの3人も居てほしかったが、流石にそれは贅沢というものだろう。
この状況がすでに幸運なのだ。3人いただけで満足しとかないとね!!
「恐らく、奴隷売買が禁止になって追い詰められてきたから、巻き返すために大きな作戦でも行おうとして呼んだんじゃないかな? たぶん」
「あらすごいわね、大体当ってるわ。……それでえーと、あなた達は何をしにきたのかしらん?」
「やだなぁ、そんなの決まってるじゃないですか」
グダグダしてた私達にコッコドールが話し掛ける。
対して私は胸を張り、堂々と要求を突きつけた。
「――八本指からの、退職のお知らせです」
「……なんですって!?」
コッコドールが驚いて飛び起きる。
だがこのオカマはすぐに気を取り戻すと、残る3人に目配せを行った。
ゼロ達は即座に立ち戦闘態勢を取り、ビリビリとした殺気を飛ばしてくる。
認識と反応の速さは、さすがに裏組織のトップ共だね。
しかしこの程度で止まる私ではない。
俺は止まんねぇからよ……止まるんじゃねぇぞ……ッ!!
「アナタが悪いんですよ? 私はこの3ヶ月必死に働いたのに。でも給料は貰えませんでした。なので残念、もう無理。出ていきます!!」
「給料ですって? ……そういえば払ってなかったわね」
「それで私、考えたんです。未払い賃金はどうしたら良いかって」
「……一応聞いてあげるけど、どうするつもりなのかしら?」
「そんなの決まっています。――このままアナタ達4人の首を狩って通報でおk。きっと賞金ウハウハだよ!!」
「「「「「はぁ???」」」」」
私の答えに部屋にいる全員が驚きの声を上げた。
おいクレマンティーヌ、なんでお前まで驚いてんだよ。
「ねぇちょっと、それ本気で言ってるのかしら?」
「まじまじ大マジですよ~。というわけで早速〈
「ちょっ!! 第8位階!!!??」
宣言と同時に私はタレントを発動させる。
吹き出したクレマンティーヌを傍目に、空間に光が満ちていく。
それは最初に使った時のように、全方位に撒き散らされる光ではなかった。
むしろ溢れた光は、逆に一点へと徐々に凝縮。そして一体の天使へ姿を変えた。
「これが私の切り札天使その2!! その名も――『
最初に呼んだ
3メートルちょいの体躯は、胸、肩、腰、肘とパーツの全てが尖っている。
その上、右肩からは4本のアンテナのようなブレードが飛び出していて。
左肩の背には3つの車輪が回り、そこから滝のように光が吹き出ていた。
まるでジェット戦闘機を人形にしたような姿だ。具体的に言うとA○FAの水没○子。
「でもここには水がない。つまりブースターが壊れないこの天使は無敵!! さぁいくぞぉおおおおお!!!」
この3ヶ月、こっそり何度も召喚したお陰で(即キャンセル)、能力は全て把握している。
LVが足りないのか、まだ私が呼び出せるのは数種類のみだけど、そのどれもがこの世界では超級の力を持つ天使達だ。
「ま、まずいぞ
「お、俺たちは、どうすればいい!?」
「分かっている。お前たちはフォローに徹しろ!! サキュロントは幻影、マルムヴィストは牽制だ。俺も全力を出す!!」
私の天使を前に、6腕の3人組が慌てだす。
裏の戦闘者だけあって、しっかり実力差を感じ取れたらしい。だが今更遅い。
「おっ、ようやくスイッチ入った? おっそーい。でも私は優しいから待ってあげるね?」
「……ぬかせっ!!」
私はメスガキムーブで彼らを待つ。
その間にゼロは全身のタトゥー(強化)を発動させていった。
胸のバッファローから頭のライオンまで。文字通り出し惜しみ無しの全バフ起動だ。
全身を順番に光らせながら自己強化を重ねていく姿は、まさにピカピカおしゃれオジさん!!
「オッケー、ではこちらもスキルを発動!!」
私も天使にスキルを発動させる。
右肩の筒の一本がコストとして消滅し、代わりに右手の甲から光が伸びていく。
形成されたのは青白いレーザーブレード。
これは<
その見た目は完全にACの
「事前準備はもう終わったね? ならば天使ちゃん、GOーー!!」
「――俺に合わせろッ!!!」
私は遠慮なく号令を下し、天使が敵に向かってブレードを構える。
対して3人は、恐らく持ちえる全てを使って攻勢に出た。
「〈
サキュロントの魔法でゼロが透明化する。更に幻影で作られたゼロの分身が複数出現。最後の視点を塞ぐデバフは抵抗で無効化。
「〈肉体向上〉! 〈剛撃〉! 〈超貫通〉!! ――からの〈投擲〉!!」
マルムヴィストは複数の武技を同時起動させ、毒付き刺突剣を全力で投げる。
「ウォおおおおお! このクソ天使がッ! 砕けちれぇええええええ!!!!」
そして最後にゼロが全力を込めた突きを放った。
文字通り3人の合体攻撃。恐らく現在撃てる、最高の連携技だろう。
――しかし。
「ぐぁあああああ!!」
「うそだろ!?」
「ば、ばけもの……!!」
周囲にゼロの悲鳴が上がる。
続けて他2名も驚きの声を上げた。だがソレもそうだろう。
3人が動き出すと同時に、私の天使は
――そしてその一瞬で、全てが終わっていた。
振り抜いたゼロの腕は、
投げた刺突剣は
そして4体の幻影すら
「うわあ、動く速度ぱねぇ!!!」
私は自身の天使に賞賛を送る。目に写ったのは光の残像だけだった。
スキルによる超加速を行い、右腕のレーザーブレードでゼロと分身を斬ったのだ。
そう、この天使は速度特化のアタッカーなのである。超早い!!!
「とはいえ、予想通りの光景ではあるけどね」
LV35のデスナイトですら、帝国4騎士が全員掛かりじゃないと抑え切れないのだ。
ならばそれよりも遥かに強いLV50台の天使相手に、同じ程度の面子で勝てるわけがない。
見れば3人は攻撃後の姿勢のまま、絶望した表情でその場に立ち尽くしている。
戦力差を悟って、戦意が失せてしまったのだろう。これ以上はもう戦えなさそうだ。
……ちなみにコッコドールはこっそり逃げようとしてたが、クレマンティーヌがきっちり捕まえて甚振っていた。
「これは私が拷問された分! これも私の分!! そしてコレが私の分だぁーーーーッ!!!」
「全部あんたの分じゃないのよぉ!! って、顔は止めみぎゃああああ!! 私のモテモテフェイスがぁーーーーー!!!」
「うるせぇ、その面でモテるわけねーだろ! 死ぬまで苦しめ!!」
クレティー、グッジョブ!! 笑いながら全身を滅多刺しだ。
よっぽど恨みが溜まってたんだね。あんだけ拷問されればそうなるか。
まぁそれでもギリギリ急所は避けているのかな?
胸とか顔とか刺して、まだ死なないのだからすごい技術だ。
「うーん、これがきっと匠の技ってやつだね!! よーし、私も張り切っちゃうぞ~」
私も天使に追撃の指示を出す。
――最初の瞬きの間にゼロの心臓をえぐり。
――次にマルムヴェストの頭を割り。
――続けてサキュロントの首を飛す。
最後に天使が残心しながら私の前に戻ると、3人の体が同時に床に倒れた。
6腕として王国の裏に君臨した者たちの、余りにもあっさりとした最後だった。
「見た見た? クレティー、これが私の天使だよ!!」
「……まじかー、そりゃこんなの呼び出せるなら、あの余裕の態度も納得だわ」
そう言いながらも、クレマンティーヌもトドメにコッコドールの首を切り落とした。
これで死体が4つ。あとは首を切り取って、部屋にある書類とか持っていけば十分だろう。八本指の一角を崩した証拠だ。
「でもこれなら先に召喚しとけば良かったんじゃないの? 部屋に入る前に。ツアっち本人は弱いんだから、先制されたら危なかったでしょ」
「いやそこはクレティーがいるから大丈夫かなって。不意打ちぐらい防いでくれるでしょ? それに対峙する時間が長いほど経験を詰める――成長できるかと思って」
「こんな状況で成長て」
態々部屋に入ってベラベラ喋ったのは、少しでも多くの経験値を得るためだ。
ゴミのように死んでしまったが、それでもこの3人は国で指折りの強者だった。
それを狩れるなんて滅多にないチャンスなので、戦闘時間を伸ばして、少しでも経験値を稼いでおきたかったのである。
ちなみに今回は一気に5つもLVが上がったようだ。
これは体が内側から変わるような感覚の回数で分かる。
LV8からいっきに13だ。第3位階が見えてきたね!!
あの筋肉たちは経験値の宝箱だったんや!!
「これで後はコイツラの装備を剥ぎ取るだけ。退職金代わりだよ。遠慮なく貰っちゃお? ほらほら、この薔薇っぽい柄の刺突剣とかクレティーによさそう」
「いやこれが退職金かよ。今更だけど、あんた頭可笑しいんじゃねーの? 追い剥ぎじゃん。この部屋にいたのが、あのオカマだけだったら、どうするつもりだったの?」
「そこはほら幹部だし、着てる服のどこかは魔化されてるかなって。あっ、ほら、
「いらねー。てか、なんで女物のパンツ履いてんのよ……」
それから私たちは行きがけの駄賃とばかりに、屋敷中の経験値を狩りまくった。
もちろん捕まっていた奴隷たちは逃して。彼らには私達の善行をアピールして貰わないと行けないからね。
そして最後は屋敷に火を放って外に出る。
炎はアッという間に全体に広がり、紅の華が全てを覆っていく。
「……ふぅ。こんな所かな? うん、やっぱり炎はいいね」
「そうね。私も結構好き。全部瓦礫に変えてくれるから……。でも見てたらお腹空いてきたかも」
「結構動いたし、お肉がいいんじゃ? 打ち上げは焼肉とエールにしよう。お金なら沢山あるよ(コッコドールの貯金)」
そのまま燃え上がる館を見上げる。これでもう、私達を縛るものは何もない。
村からの因縁も、奴隷としての日々も、スパイとしての仕事も、何もかもが炎によって燃え尽きていくのだ……。
「そういえばこの首だけど、持っていく宛はあるの?」
「それはもちろん。むしろ私がそんな事も考えていない馬鹿に見える?」
「かなり見える」
「ひどっ!!」
クレマンティーヌにだけは言われたくないんだが?
アナタ原作では行き当たりばったりで死にましたよね。それもモモンガ様に喧嘩売って。
「でもこの国の貴族は腐敗が酷いから、変な所だと捕まるのはこっちだよ?」
「大丈夫大丈夫。そこはほら、この国には頼もしい民の味方がいるからね」
「この国で民の味方……?」
そんなのいたっけ? と呟くクレマンティーヌを後目に、私は一人の男を頭に思い浮かべた。
それは原作においてモモンガ様すら魅了した偉大な戦士。
辺境の村でも駆けつけてくれるイケおじ。
別名、王国の敵絶対に許さないマン。
私たちは首を持ったまま夜の街を走り抜ける。
そして一軒の家に駆け込んだ。
「――助けてください戦士長ーーー!! 八本指に、襲われてまーーす!!!(幹部の首持参)」
ガゼフさんなら! それでもガゼフ・ストロノーフなら、きっと私達を保護してくれる!!!