3.11   作:おみのSS部屋

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Op.10 暖かく受け入れて

 

おみくんは、2月末にこんなことを言ってました。

 

「研究発表終わった」

 

と、言ってました。

が、その後何も返信がありません。

不安になったわたしは、京都に行きました。

 

そこには、1人の男性がいました。

 

「おみ……くん……?」

 

わたしはおみくんの部屋に入ると、そこにはベッドに横になってたおみくんがいました。

 

「おみくん!?おみくん!?」

 

おみくんはすごい熱を出して倒れていました。

わたしはあやふやになりながらも、おみくんの世話をする。

わたしとおみくんは、7月からずっと会えていなかった。

わたしの仕事のこともあったし、おみくんの邪魔をしたくなかったから。

わたしは、おみくんが目を覚ますまで待ってた。

この感じ、多分今日熱出たよね……

大丈夫かな……おみくん……

 

ー4時間後ー

 

「あ……れ……?」

 

「おみくん……?」

 

おみくんが目を覚ました。

でも意識は濛々としてる。

でも、わたしがいることはすぐに気がついたみたいで……

 

「み……はる……?」

 

「はい?」

 

おみくんは急に涙目になる。

それを見たわたしがぎゅっと抱きしめる。

 

「泣いて……いい……?」

 

「泣きたいなら、いっぱい泣いていいですよ……?」

 

「うん……」

 

おみくんは、わたしの服を掴んでずっと泣いてた。

多分、わたしのことも、ずっと考えてくれたんだよね……

おみくん、わたしはその気持ちだけでも嬉しい。

わたしはおみくんの背中をゆっくりとさすってあげた。

 

「美晴のことと研究のことが同時に不安になって……それで……」

 

「おみくん、お疲れ様でした。よく頑張りましたね」

 

「うん……」

 

おみくんが、わたしにすごく甘えてた。

今日くらいは、いや、今月くらいはずっと甘えっぱなしでもいいのかな……

今までわたしがいない間、たくさん頑張ってたことは知ってるから、そのぶんたくさん甘やかしてあげよう。

そうわたしは誓ったのであった。

 

「ん……おみくん……」

 

わたしはおみくんに膝枕を用意する。

すると、おみくんはそこに飛び込んできた。

 

「よしよし……」

 

わたしはおみくんの頬や頭をゆっくりとさする。

おみくんは何も言わずに受け止めてくれる。

おみくんの頬をさすると、それは熱を帯びていた。

やっぱり、風邪引いてたんだね……

 

「美晴の膝枕……すごい暖かいや……」

 

おみくんの目がとろんとしてる。

わたしはおみくんがかけていたメガネを取る。

おみくんは何も抵抗しなかった。

 

「好きなだけ、甘えていいですよ?」

 

「うん……」

 

わたしは嬉しかった。

わたしの知ってる、1番大好きなおみくんがそこにいたことを。

ただ、それと同時に、すこし不安があるような顔をしてた。

たから、やっぱり体や心の状態は良くないのかなと思った。

 

「おみくん、風邪は大丈夫ですか……?」

 

「今日の朝熱が出たみたい……」

 

「いっぱい頑張ったんですから……その反動が来たんでしょうね……」

 

「このままもうちょっと……寝ていい……?」

 

「もちろんです。誰も何も言いませんよ?」

 

「うん……」

 

おみくんはまた寝てしまった。

寝顔がかわいくて顔をぷにぷにと押してた。

おみくんも、わたしに負けないくらいかわいい……

なんなら、わたしよりかわいいと思っていた。

おみくんは熱を出してたからずっと額に濡れたタオルを置いていた。

 

わたしは、リビングでYouTubeを見たらしながら時間を潰していた。

しばらくして、わたしはおみくんの部屋に戻った。

気付けばもう夕方になっていて、夕陽が部屋を照らしていた。

 

「ん……んんっ……」

 

おみくんが背伸びをする。

ゆっくりと目を覚ました。

 

「おみくん、よく寝れましたか?」

 

「うん。美晴が熱を下げてくれたおかげでよく寝れた……」

 

「うふふ、嬉しいです」

 

「すごく嬉しい。ありがとう」

 

わたしはおみくんの頭を撫でる。

体も、心も、全てが疲れ果てていたおみくんの心が、また落ち着きを取り戻した。

彼は研究室でも1人黙々とやってたらしい。

だからほとんど口を開けることはなかったって。

だからなのかな、おみくんは今感情を押し殺してるように見えてしまう。

 

「おみくん……」

 

「ん……?」

 

「わたしと付き合い始めた時のおみくん、知ってますか?」

 

わたしは不意にこんなことを聞いてみる。

おみくんは、頷いていた。

 

「うん。すごく優しくて、ずっとそばにいてくれて、心を癒してくれるおみくんが好きって言ってた」

 

その後、おみくんは無言でわたしに抱きついた。

 

「美晴……ごめん……」

 

「おみくんが変わっちゃったとか、そういうことを言いたいわけじゃないんですよ……?」

 

この話はそういうことを言いたいわけじゃない。

それだけ、それだけは理解して欲しい。

 

「美晴……?」

 

「おみくんと出会って、わたしの兄やおみくんの両親が亡くなったり、おみくんの精神状態が壊れたり、本当に激動でした」

 

わたしの目が少し熱くなるのを感じた。

 

「それでも、おみくんは……わたしのことを幸せにしたいからって……ずっと言ってくれて……」

 

もうダメだよ。止まらないよ。

 

「それが、すごい嬉しくて……」

 

おみくんがぎゅっと抱きつく。

 

「美晴……我慢しないで……」

 

「……!」

 

「いっぱい、泣いていいよ」

 

なんで、こんなにも優しいの……

わたし、こんな優しい男性、知らない。

男性って、ずっと怖いって思ってたけど、こんなにも優しいの……?

後にも先にもおみくんだけだよ……

心が壊れてても、なんで彼はわたしのことをこんなにも心配してくれて、守ってくれて、好きでいてくれるの……?

分からないよ……わたし……

おみくんのこと……しらないだけなの……?

それでもわたしは、おみくんに抱きついた。

 

「うん……」

 

わたしは泣いた。

彼とのこれからが、きっと良くなると願いながら。

彼の服はとても厚くて、暖かい。

止まって。でも止まらないで。

わたしの中でずっと葛藤があった。

 

「美晴」

 

「はい……」

 

目の涙が乾かないうちに、おみくんは優しく口づけをしてきた。

それは、とっても優しく、あっさりと受け入れた。

 

いつぶりだろう。こんな日を送ったのは……

嬉しくて、また涙が溢れちゃうじゃん……

ずるいよ……おみくん……

わたしはゆっくりと潤んだ瞳を開ける。

おみくんは笑顔だった。

 

「おみくん……ありがとうございます……」

 

「こっちこそ、美晴に言いたいよ。ありがとうって」

 

お互いのほおをつつき合う。

でも、こうしてるあいだもおみくんもわたしも笑顔だし、すごく幸せ……

お互いはにかんでた。

 

「美晴、目閉じて」

 

「ん……」

 

おみくんが涙をほろってくれた。

こういう優しさも1つ1つが、わたしにとってかけがえのない思い出……

そしてまた笑顔になる。

 

「おみくんに、またこうしていっぱい甘えてもらいたいです」

 

「うん、いつでもおいで。甘やかしてあげるから」

 

「でも……」

 

「でも……?」

 

「今、美晴に甘えたい」

 

「いいよ……おみくん……」

 

おみくんが後ろから抱きついてくる。

わたしの顔がほんのりと赤くなる。

 

「ぎゅー……」

 

おみくんはわたしにべったり甘えていた。

おみくんは、全部が優しい。

そんな彼となら、今後も衝突の起きることのない、平和な毎日が過ごせると思うし、子どもができたとしても心配なさそう……

 

「今日はいつにもまして甘えん坊ですね」

 

「だめ?」

 

「そんなの言わないですよ。わたしは、おみくんが元気になってくれたら1番ですから……」

 

後ろからおみくんが頭を撫でてくれる。

わたし……いつの間にかすごい幸せを手にしてたのかな……

それも全部、おみくんのおかげ……

 

「みはる……すごく幸せだよ……」

 

おみくんの優しい声。

少しだけ切なくて、すぐ消えそうで、でもちゃんと心には届く……

 

「わたしも、こうしておみくんと一緒にいるだけで幸せです……」

 

おみくん、おかえりなさい。

ゆっくり、ゆっくりでいいです。

おみくんの壊れた心と、無くした感情……多分元には戻らないけど、今よりもっと感性が豊かなものにしてあげたい……

それが、今わたしが望んでること。

 

「おみくん、ペアリング外してたんですね。つけましょうか?」

 

「うん。お願いしていい?」

 

おみくんはペアリングを外してた。

まぁ、そりゃそうだろうなとはわたしも思ってたけどね。

わたしはおみくんの右薬指にペアリングを付けた。

 

「もう……外さない。外したくない……」

 

「わたしもです……」

 

実は付き合ってから今まで、離れ離れになることが多かった。

それでも、わたしたちは別れなかった。

それだけ、想いが強かったから。

でも、それだけじゃない。

事務所のみんなが応援してくれたから。

わたしは、それが全てなんだって感じる。

 

でも、やっと言えるよ。

 

おみくんのこと、これから独り占めにできるって……

 

「おみくん……」

 

「なぁに?」

 

「おみくんが大学生活で失った感情と、壊れた心……全て取り戻したいです……」

 

「……!」

 

「ゆっくり、ゆっくりでいいです……わたしは……おみくんのバラバラに砕けた心を……元に戻したいです……」

 

わたしはおみくんに本当のことを伝える。

元には戻らないことはわかってる。

それでも、感情がないなんて嫌。

わたしは、ありのままの感情を持った優しいおみくんがいい。

その心はおみくんにも通じていた。

 

「美晴……頑張るよ……美晴が望む、優しいおみくんになるように……」

 

おみくんがそっと私の手を握る。

その手は、いつもよりも暖かく感じた。

 

「頑張らなくていいです。気を張り詰めすぎて、壊れるのが嫌だから……だから……自然な、ありのままのおみくんでいてください……」

 

「うん」

 

わたしの手を握るおみくんの手は、だんだんと暖かさを帯びていく。

彼の努力を、わたしの手でサポートしてあげたい……

でも、ついにその時は迎えたのかもしれない。

と思ったけど、おみくんの手の力がすっと抜けていった。

 

「おみくん……?」

 

おみくんは疲れてたのか、また寝てしまった。

よっぽど疲れてたのと、わたしに会えて安心したのかな……

ほんと、お疲れ様……

わたしが掛け布団をかけてあげる。

 

「すぅ……すぅ……」

 

おみくんって、すごく寝相もいいし、寝息も静か。

まるで、わたしに弟がいるかのような気がした。

でも、考えてみたらおみくんよりわたしの方が年上だから……自然と弟みたいに思っちゃうのかな……

 

「おみくん、お休みなさい……」

 

わたしはおみくんの頬や頭をさする。

なんだか、わたしもこうして弟の世話をしてみたかったなってふと思った。

(わたし……ちょっとだけお姉ちゃんになった……うふふ)

 

〜翌日〜

 

「んっ……ん……」

 

わたしがおみくんより先に起きた。

おみくんはあのあと、ずっと寝たきりになってた。

起きていたのかもしれないけど、少なくともわたしが見た限りではずっと寝ていた。

 

「ふぁ……ぁ……」

 

「あ、おきました?」

 

「おはよ……」

 

「おはようございます……おみくん……」

 

おみくんはまだ眠そうになってた。

わたしに抱きついてきた。

 

「きゃっ……」

 

唐突だったので変な声が出てしまった。

おみくんも、わたしに甘えたい……のかな……?

 

「何食べますか?」

 

「風邪明けだからそんなに食べたくないけど、魚が確か入ってたはずだからそれ使って定食がいいな……」

 

「わたしもそれにしますね?」

 

「いいよ」

 

わたしはおみくんの布団から出て、エプロンを付けた。

毎日が、幸せで満たされる生活が、戻ってきた気がした。

それだけでも、とっても嬉しかった。

 

「ちょっとずつでいいですから、おみくんの食欲戻していきますね……?」

 

「うん」

 

おみくんは、少しだけ安心した様子でこちらを見る。

なんだか、すごく嬉しい……

朝ごはんを食べ終わった後、わたしはおみくんにこんなことを聞いた。

 

「おみくん……」

 

「ん……?」

 

「これから、ずっと一緒にいてくれますか……?」

 

おみくんはぎゅっと私に抱きつく。

少し切ない表情が印象的すぎた。

 

「もちろん。ずっと一緒だよ……」

 

その言葉はわたしのこころをぎゅっと締めつける。

安心したい。でもドキドキしたい。

その気持ちが揺れ動く。

まさに、今がその瞬間なんだと実感する。

 

「美晴と一緒がいい……甘やかしたいし、甘やかされたい……」

 

「わたしも、いっぱいおみくんに甘えますね……?」

 

「うん。おいで」

 

なぜだろう。

おみくんといると、ずっと心が穏やかで、幸せでいられる。

これが、心からの幸せってことなの……?

初めての感情にずっと戸惑ってるけど、これもそうなのかな……

 

「美晴に聞いてもいい?」

 

「なんですか?」

 

「僕って、いつの間にか弱くなってたのかな……?」

 

「……」

 

「昔は、あまり人に頼ってこなかった自分だけど、気付けばいつしか、美晴にずっと甘やかしてもらってるし、美晴にずっといてほしいって、思うようになった……」

 

わたしは抱きついたまま、おみくんにそっと応えた。

 

「そんなことないですよ……?おみくんが頑張ってるのは、わたしだって知ってますし、わたしだって、たくさん甘えてますから……」

 

「そっか……考えすぎなのかな……?」

 

「おみくんが、甘やかして欲しいって思ってくれてることが、わたしは嬉しいですよ……?」

 

わたしの本当の気持ちと、おみくんが抱いていた気持ち。それがぶつかり合う。

でもそれを調和してくれるのは、やっぱりおみくんだった。

 

「美晴がずっとそばにいるから、気づいたらその優しさにどこか甘えてたのかも……でも、美晴それを嫌って言わなかった。受け入れてくれた。だから幸せなんだって……」

 

「わたしも、おみくんの優しさたくさんもらって幸せです!」

 

「なんか、恥ずかしいけど嬉しい……」

 

2人だけでいると、嫌なことも忘れる……それくらい幸せな時間だった……

 

「美晴」

 

「なぁに?」

 

「初めて気づいたことだし、美晴には知ってもらいたいから……言ってもいい?」

 

「良いですよ」

 

「僕、HSPなのかもしれない……」

 

おみくんから初めて告白された。

それを受け入れるのには、時間はかからなかった。

なぜなら、薄々感づいていたから。

それにわたしは、「どんなおみくんでも受け入れる」と心に決めてるから……

わたしはおみくんのことをぎゅっと抱く。

 

「心配しなくて良いですよ……?わたしはどんなおみくんでも受け入れますから……」

 

「ありがとう……すごく嬉しい……」

 

おみくんの心の音が聞こえる。

それは、少し暖かくて、少し冷たい音だった。

 

「泣いていい……?」

 

「もちろんです」

 

おみくん、きっとすごく疲れてて,すごくストレスがあるように感じる……

いつになく声に元気もないし、体もぐったりしてるのを肌で感じる。

 

おみくん、頑張りすぎです。

あなたが頑張ってるのを、わたしは誰よりも知ってます。

だから少しでも良いので……甘えてください……ううん、甘えてほしいです……

 

泣きやんだおみくんはそのまま寝ていた。

普段は大人なのに、わたしがいる時だけは……多分こういう振る舞いをしてくれてるのかな……?

このギャップも、全部おみくんの良いところだと思っていた。

みんなの前でも優しいけど、わたしといるともっと優しい。

それどころか、怒らない。でも気持ちを押し殺してはない。

そんなおみくんを、好きになって良かった……




この小説投稿後、また1話が投稿されます。
あとがきはそちらで。
以上!!
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