3.11   作:おみのSS部屋

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Op.12 365日

「僕と結婚してください」

 

この言葉から、4年が経った。

それ以降、僕らの生活に変化はないものの、一緒に暮らしていく中で、徐々に安心できる環境に落ち着いていた。

離れ離れになっても、離れず、ずっと変わらなかった。それどころか、2人の関係はますます強くなっていくばかりだった。

 

だから「今」があるのだと実感していた。

 

ーーーーーーーー

 

「んっ、んーーーーっ」

 

僕は背伸びをする。

あれから、4年。

そしてあと1年なんだと実感が湧かない。

 

「おはようございます」

 

「美晴、おはよう」

 

あの日から14年。

あの時の記憶が蘇る。

こうして、今でも美晴と過ごせること、これが軌跡であり、奇跡なんだと感じる。

 

「おみくん、あの日から14年ですね……」

 

「うん。もう14年かって思うくらい、あっという間だった……」

 

走馬灯のように駆け抜けた日々。

その中では、様々なことがあった。

僕は美晴をぎゅっと抱きしめる。

 

「おみくん……?」

 

「聞いてほしい」

 

「うん……」

 

僕は美晴に話した。

この14年のことを……

 

「震災が起きたあと、僕が避難したのはみんなと別の小学校だった。だから、とても不安だったし、風邪もひいた。この辺りから、僕って心配性なんだって分かるようになった。その後は仙台では何も起きなかったし、感情は豊かだった。ただ、奈良に引っ越した先の中学で、僕のもう既に感情が疎くなったのかもしれない。中学の時も、高校の時もなんでこんなにも明るくて元気なんだろうって。それがきっかけで大学で明るくなろうと思ったら、この有様だった」

 

「じゃあ、おみくんの感情が壊れたのって……」

 

「すでにこっちに来てたタイミグで壊れてたのかもしれない。正確なことは僕も分からない。ただ、心が壊れてしまってからは、ストレスを感じるだけの日々が長く続いた」

 

「おみくん……」

 

「でも、美晴と出会って、みんなと出会って、少しずつかわりはじめて、僕の感情が戻っていくのを、肌で感じた。美晴はいつも優しくて、溜め込んだストレスを全部吐き出せる。そんな環境がある今が、1番幸せだって」

 

「……」

 

「みんな、美晴は特に待ってたよね。僕の感情が戻ることを……」

 

「うん……」

 

「でも、もう大丈夫。みんなのおかげで、本当に取り戻せた」

 

このことだけはきいてほしかった。

遅くなってごめんという気持ちしか出てこない。

それでも、美晴は待ち望んでたと思う。

ありのままの、生き続けた感情の僕を。

美晴はそっと僕に抱きついた。

 

「おみくん……おかえりなさい……」

 

「ただいま……美晴ちゃん……」

 

初めて口にした、美晴ちゃん。

美晴のことをこう呼んでこなかったから、彼女は少し戸惑っていた。

 

「おみくん、いじわるすぎます」

 

「ふふっ、いってみたかった」

 

「わたしも、そう呼ばれて嬉しかったです……」

 

美晴のことをぎゅっと抱きしめると、心が苦しくなることが多かったけど、今はそんなことは全くなかった。

 

「美晴と一緒にいると、すごく心が落ち着いて、穏やかでいられる……」

 

「わたしだって、おみくんと一緒にいるだけで、毎日がすごく幸せです」

 

「じゃあ、これからは美晴のこともっと幸せにしてあげたい……」

 

「うふふ、こうしておみくんと一緒だといつも幸せですよ……?」

 

美晴は、くすっと笑っていた。

僕と一緒にいることが幸せか……

普段はすごくしっかりしてるけど、僕といる時だけは甘えんぼな美晴。

そんな美晴となら、この先何があっても乗り越えられる……

そんな気がした。

 

「おみくん、いつもより甘えんぼですね……」

 

「うぅ……恥ずかしい……///」

 

「恥ずかしがらなくていいんですよ?」

 

「うん……」

 

美晴に甘えるだけで、恥ずかしいと思ってしまう。

それは、日常的なことであっても、非日常であることとして受け入れてしまっているからなのかもしれない。

そして、このような経験がないからなのかもしれない。

僕は何も言わずに美晴に甘えていた。

 

「ふふっ、膝枕はどうですか?」

 

「すごく暖かくて心地いいや……」

 

だめだ。このまま寝てしまいそうになる。

そんな時、時計のアラームが鳴る。

 

時刻は14時40分。

あの日、あの時まであと6分だった。

 

「もうこんな時間……!」

 

「外に出よっか」

 

2人は外に出る。

外は快晴だった。

 

「黙祷。」

 

2025年3月11日14時46分。東日本大震災から14年。

14年間、ずっと忘れることのなかった日。

そして、それをもっと受け継いでいく日。

あの日を知らない今の世代に、僕らが伝えるべきであることを再確認して、目を開ける。

それと同時に、僕はあるもう1つの約束も果たさないといけないと決意をする。

 

「もう…‥14年ですね……」

 

「あっというまで、ずっとこの日を忘れることはなかったな……」

 

「それは……これからもですか……?」

 

「もちろん、この日は忘れないし、忘れられない日だよ。僕にとっての3月11日は、2つの意味で特別な日だから……」

 

「この日を選んだのも……なんだか不思議で……今なら少しだけわかる気がします」

 

「それが分かってくれたら、僕は本望だよ」

 

あまり多くは語らない僕が、この日は本当に多く語っていた気がする。

それだけ当時のことを知ってほしい、あるいは、美晴に伝えたいきたい思いがあったのかもしれない。

そして、僕は最後にこれを言った。

 

「美晴、一回、指輪が入ったケースを回収しても良い?」

 

「分かりました。おみくんに返しますね?」

 

実は、美晴のリングケースに入れていた指輪は、美晴がつける指輪じゃない。

多分、美晴はそれに気づいてない。

じゃあなぜそれをしたのか。

その謎が暴かれるのは……当分先の話……

 

そして、返してもらったリングケースの中に、美晴が綴った1枚の折り紙があった。

 

さぁ春は訪れた。嵐を乗り越えいざここに。

踊るも自由、眠るも自由。全ては好きのままにあれ。




みなさんこんにちは、投稿主のおみさんです。
この度は「3.11 Op.12」を読んでいただきありがとうございます。
いつぞやの3.11投稿します宣言から何年経ちましたかね、ようやく投稿できました。
嬉しいです。

さて3.11ということで少しだけ中の人からお話を。
仙台にいた時は、そこまで気にしなくても、歳を重ねるにつれて不安になり、心が壊れたという事実は変わりません。
何が良くなかったかは不明ですが、おそらく人間関係だと思います。
なんなら新卒で入社しますが、人間関係はうまく行くのでしょうか……

話がそれましたが、3.11は本当に怖かったです。
経験したことのない揺れの強さ、長さでした。
当時は小学生でしたが、昇降口の窓が割れていたのを鮮明に覚えています。
そして雪が降ってたのも覚えています。
だから花は咲くの最初の歌詞が「真っ白な雪道に」なんだと思います。
暖かい、雪が降らないで有名(?)な仙台市ですら雪が降ってたので他県でも降っていたと思います。
そして、私はみんなと別の小学校で避難して、その時に熱を出したのも覚えてます。

その後奈良に引っ越して悲しい思いをしたのはここだけの話……

あれから14年が経ちました。
今の高校生は知ってる人はいるかもしれませんが、中学生くらいは知らない世代になってくるのではないでしょうか。
だからこそ、私は伝えたいんです。東北は良い場所であるということを……
それを伝えるため、今日も東北に旅をしています。


ありがたいことに、SNSで「おみさんのSS好きです」っていうコメントを頂きました。誠にありがとうございます。
これからもまったり頑張って行きますので応援していただければ嬉しいです。
それではみなさま、次回もお楽しみに!
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