この日は、僕にとって忘れない日。
それであると同時に、忘れたくない日。
忘れられない日でもあった……
「おはようございます」
「おはよ」
いつもの何気ない挨拶から始まる日々も、もう何日数えただろう。
今日も、幸せがたっぷりな朝を送ってる。
でも、今日は、そんなことではなかった……
今日は僕の彼女、美晴の誕生日。
でも、それと同時に、僕の家族の命日。
その2つが入り混ざる。
去年は一周忌をしてたんだっけ……
今年はどうしようか悩んでいた……
「おみくん、どうしたんですか?」
「ん?あぁ、ちょっと考え事してて……美晴、お誕生日おめでとう……」
「うふふ、ありがとうございます。嬉しいです」
美晴はなにも気にしてないかのように明るく振る舞う。
でも、彼女もどこかで傷ついてることは知ってる。
だからそれ以上のことは言わなかった。
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「ごちそうさまでした」
夜ご飯を食べて自分の部屋に入って、1人で泣いていた。
「なんで……」
去年で忘れたはずなのに、忘れられない命日。
それも、なんでこの日と重なったのか、不思議でしょうがない……
素直に祝えないよ……この日のこと……
好きな人の誕生日が、こんなにも苦しくて、切なくて、胸を痛めてしまうものであることを、僕はまだ知らなかったのかもしれない。
そんな時、彼女が僕の部屋に入ってきた。
「おみくん……?」
「……!」
美晴はゆっくりと僕が寝そべってる横に腰をかけた。
「おみくん、わたしの誕生日のこと、覚えてくれていたこと、すごく嬉しかったです」
「でも、それと同時に、おみくんがいつもより元気がないなって、感じたんです。それはなんでだろうなぁ、どうしてだろうなぁって」
「わたし、今まで気づけないままでした。今日、おみくんの家族の命日だってことに……」
「……!」
覚えてくれたことも、嬉しかった。
でもそれと同時に、美晴まで悲しい思いにさせたくなかった。
その気持ちが入り混ざる。
僕は、どんな顔を合わせたらいいのかわからなかった。
そんな僕を、彼女は包み込んでくれた。
「おみくんは、わたしのことだけじゃなくて、みんなのことをすごく気遣ってくれる、とっても優しい方です。それは、亡くなってしまった、家族に対してもそうです。でも、この日だけは、わたしのことを特別だと思っていて欲しいです。わがままなこと言ってごめんなさい。でも、おみくんにはずっと笑ってほしいんです……」
「…………」
ゆっくりと、大粒の涙が僕のほおを伝う。
そんなわがまま……受け入れられないよ……受け入れられない……よ……
「うん……ごめん……」
「美晴のお願いは……断れないや……」
もうダメ……感情の行き場が分からない……
ふらついた僕は倒れてしまう……
「おみくん!?」
「ごめん。泣きつかれちゃった……」
そんな僕をぎゅっとまた抱きしめる。
「わたしは、ずっと隣にいます……この先、ずっと……だから、おみくんも、わたしのこと、ずっと隣で、見守ってほしいです……」
「うん、約束する……」
美晴のペアリングがどこにあるのか、少しだけわかった気がする。
そして、それは悲しい気持ちをかき消してくれた。
こんなにも優しい彼女と出会えて、僕は幸せなんだって……
それを、肌で体感した。
美晴の温もりが、僕の心の奥に届くのを感じた。
「今日はいっぱい……甘えていいですか……?」
「うん。もちろんだよ、美晴……好きなだけおいで……?」
「嬉しいです。いっぱい甘えますね……?」
美晴は僕の横で寝転がる。
ゆっくりと頭をさすると嬉しそうにこっちを見つめていた。
いつもはすごく真面目で、大人びている美晴も、僕に甘える時は、いつもこんな感じになってる。
「おみくんにこうして甘えてもらうと、とっても幸せなんです」
「ふふっ、それなら嬉しい……」
「おみくん、わたしは今、すごく幸せです」
「うん、僕も……」
「でも、この幸せが当たり前だなんて、思わないです……」
「……!」
「わたしは、おみくんからくれる幸せは、とても暖かくて、温もりがあって、わたしのことを包み込んでくれて……わたしがとっても幸せでいられるのは、特別なんだって……そんなの、ずるいですよね……」
僕は、美晴の髪をそっと撫でる。
そこには、なにも抵抗のない、美晴がいた。
「ずるくなんてないよ……僕は美晴のことを幸せにしてあげたいし、ずっと美晴と一緒がいい」
「うふふ、嬉しいです!」
美晴の笑顔が一際眩しい。
その笑顔を1番目の前で見れてるからもっと嬉しい。
譲りたくなかった。
この気持ちも、この想いも、全部。
そんな彼女と一緒に叶えたいことがあった。
「美晴」
「なぁに?」
「僕は、美晴といろんな場所に行ってみたい。それは日本でも、世界でも……」
美晴はその想いにちゃんと応えてくれた。
それが嬉しいだけじゃなく、ありのままで答えてくれたのも、安心した。
「わたしも、もっとおみくんと旅してみたいです」
僕の目に映るものと美晴の目に映るもの、それが同じのように感じた。
「うん、色んなところに行こう。僕も美晴と、まだみたことない景色や、見せたい景色をみてみたい」
ただ、僕と美晴の休みは合う日が多くはない。
それでも、ちゃんと休みが合う日はお出かけすることも多い。
それももちろん嬉しいけど、こうして毎日美晴と一緒に過ごす時間があることが嬉しい。
そのために、僕も美晴に喜んでもらうために、思い出として残すために、記憶に刻むために、1つの決断をした。
「ねぇ、美晴」
「なぁに?」
「今、入社して1ヶ月経ってるけど……」
美晴は深刻そうな顔で見つめる。
そんなに深刻な話でもないけど、彼女には理解して欲しい。その思いを込めて口にした。
「3年後、転職しようと思ってる」
皆さんこんにちは、投稿主のおみです。
この度は「3.11 Op.13」を読んで頂き誠にありがとうございます。
5月12日。それはこの小説のヒロインの夜峰美晴の誕生日です。
美晴、誕生日おめでとう。
今回は「過去と未来をつなぐ」がコンセプトでした。
過去にあった記憶を消し(消せてないけど)、未来を良くする……
良い思い出だけを刻む。
これは僕の理想の生き方にもなりますね。
男性がこれを言うのもおかしい気がしますが、「強く、気高く、美しく」ありたいと思ってるので。
この小説では、リアルな自分を小説になるべく映し出してます(家がなくなったなど、一部は小説用の設定ですが……)
今回の2つは果たして……?
次作も近いうちに投稿すると思います。
それでは次話もお楽しみに!