3.11   作:おみのSS部屋

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Op.13 Beautiful Birthday

 

この日は、僕にとって忘れない日。

それであると同時に、忘れたくない日。

忘れられない日でもあった……

 

「おはようございます」

 

「おはよ」

 

いつもの何気ない挨拶から始まる日々も、もう何日数えただろう。

今日も、幸せがたっぷりな朝を送ってる。

でも、今日は、そんなことではなかった……

 

今日は僕の彼女、美晴の誕生日。

でも、それと同時に、僕の家族の命日。

その2つが入り混ざる。

去年は一周忌をしてたんだっけ……

今年はどうしようか悩んでいた……

 

「おみくん、どうしたんですか?」

 

「ん?あぁ、ちょっと考え事してて……美晴、お誕生日おめでとう……」

 

「うふふ、ありがとうございます。嬉しいです」

 

美晴はなにも気にしてないかのように明るく振る舞う。

でも、彼女もどこかで傷ついてることは知ってる。

だからそれ以上のことは言わなかった。

 

ーーーーーーーーー

 

「ごちそうさまでした」

 

夜ご飯を食べて自分の部屋に入って、1人で泣いていた。

 

「なんで……」

 

去年で忘れたはずなのに、忘れられない命日。

それも、なんでこの日と重なったのか、不思議でしょうがない……

素直に祝えないよ……この日のこと……

好きな人の誕生日が、こんなにも苦しくて、切なくて、胸を痛めてしまうものであることを、僕はまだ知らなかったのかもしれない。

 

そんな時、彼女が僕の部屋に入ってきた。

 

「おみくん……?」

 

「……!」

 

美晴はゆっくりと僕が寝そべってる横に腰をかけた。

 

「おみくん、わたしの誕生日のこと、覚えてくれていたこと、すごく嬉しかったです」

 

「でも、それと同時に、おみくんがいつもより元気がないなって、感じたんです。それはなんでだろうなぁ、どうしてだろうなぁって」

 

「わたし、今まで気づけないままでした。今日、おみくんの家族の命日だってことに……」

 

「……!」

 

覚えてくれたことも、嬉しかった。

でもそれと同時に、美晴まで悲しい思いにさせたくなかった。

その気持ちが入り混ざる。

僕は、どんな顔を合わせたらいいのかわからなかった。

そんな僕を、彼女は包み込んでくれた。

 

「おみくんは、わたしのことだけじゃなくて、みんなのことをすごく気遣ってくれる、とっても優しい方です。それは、亡くなってしまった、家族に対してもそうです。でも、この日だけは、わたしのことを特別だと思っていて欲しいです。わがままなこと言ってごめんなさい。でも、おみくんにはずっと笑ってほしいんです……」

 

「…………」

 

ゆっくりと、大粒の涙が僕のほおを伝う。

そんなわがまま……受け入れられないよ……受け入れられない……よ……

 

「うん……ごめん……」

 

「美晴のお願いは……断れないや……」

 

もうダメ……感情の行き場が分からない……

ふらついた僕は倒れてしまう……

 

「おみくん!?」

 

「ごめん。泣きつかれちゃった……」

 

そんな僕をぎゅっとまた抱きしめる。

 

「わたしは、ずっと隣にいます……この先、ずっと……だから、おみくんも、わたしのこと、ずっと隣で、見守ってほしいです……」

 

「うん、約束する……」

 

美晴のペアリングがどこにあるのか、少しだけわかった気がする。

そして、それは悲しい気持ちをかき消してくれた。

こんなにも優しい彼女と出会えて、僕は幸せなんだって……

それを、肌で体感した。

美晴の温もりが、僕の心の奥に届くのを感じた。

 

「今日はいっぱい……甘えていいですか……?」

 

「うん。もちろんだよ、美晴……好きなだけおいで……?」

 

「嬉しいです。いっぱい甘えますね……?」

 

美晴は僕の横で寝転がる。

ゆっくりと頭をさすると嬉しそうにこっちを見つめていた。

いつもはすごく真面目で、大人びている美晴も、僕に甘える時は、いつもこんな感じになってる。

 

「おみくんにこうして甘えてもらうと、とっても幸せなんです」

 

「ふふっ、それなら嬉しい……」

 

「おみくん、わたしは今、すごく幸せです」

 

「うん、僕も……」

 

「でも、この幸せが当たり前だなんて、思わないです……」

 

「……!」

 

「わたしは、おみくんからくれる幸せは、とても暖かくて、温もりがあって、わたしのことを包み込んでくれて……わたしがとっても幸せでいられるのは、特別なんだって……そんなの、ずるいですよね……」

 

僕は、美晴の髪をそっと撫でる。

そこには、なにも抵抗のない、美晴がいた。

 

「ずるくなんてないよ……僕は美晴のことを幸せにしてあげたいし、ずっと美晴と一緒がいい」

 

「うふふ、嬉しいです!」

 

美晴の笑顔が一際眩しい。

その笑顔を1番目の前で見れてるからもっと嬉しい。

譲りたくなかった。

この気持ちも、この想いも、全部。

そんな彼女と一緒に叶えたいことがあった。

 

「美晴」

 

「なぁに?」

 

「僕は、美晴といろんな場所に行ってみたい。それは日本でも、世界でも……」

 

美晴はその想いにちゃんと応えてくれた。

それが嬉しいだけじゃなく、ありのままで答えてくれたのも、安心した。

 

「わたしも、もっとおみくんと旅してみたいです」

 

僕の目に映るものと美晴の目に映るもの、それが同じのように感じた。

 

「うん、色んなところに行こう。僕も美晴と、まだみたことない景色や、見せたい景色をみてみたい」

 

ただ、僕と美晴の休みは合う日が多くはない。

それでも、ちゃんと休みが合う日はお出かけすることも多い。

それももちろん嬉しいけど、こうして毎日美晴と一緒に過ごす時間があることが嬉しい。

そのために、僕も美晴に喜んでもらうために、思い出として残すために、記憶に刻むために、1つの決断をした。

 

「ねぇ、美晴」

 

「なぁに?」

 

「今、入社して1ヶ月経ってるけど……」

 

美晴は深刻そうな顔で見つめる。

そんなに深刻な話でもないけど、彼女には理解して欲しい。その思いを込めて口にした。

 

「3年後、転職しようと思ってる」




皆さんこんにちは、投稿主のおみです。
この度は「3.11 Op.13」を読んで頂き誠にありがとうございます。
5月12日。それはこの小説のヒロインの夜峰美晴の誕生日です。
美晴、誕生日おめでとう。
今回は「過去と未来をつなぐ」がコンセプトでした。
過去にあった記憶を消し(消せてないけど)、未来を良くする……
良い思い出だけを刻む。
これは僕の理想の生き方にもなりますね。
男性がこれを言うのもおかしい気がしますが、「強く、気高く、美しく」ありたいと思ってるので。
この小説では、リアルな自分を小説になるべく映し出してます(家がなくなったなど、一部は小説用の設定ですが……)
今回の2つは果たして……?
次作も近いうちに投稿すると思います。
それでは次話もお楽しみに!
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