あの日、あの夜、わたしは聞いた。
「3年後に転職する」
この真意って……?
わたしはこのモヤモヤが消えないまま、月日が流れていく。
そして週末を迎えた。
「おはよう」
「おはようございます」
おみくんとの関係が悪くなったとか、おみくんが変わったとは何も思わない。だからこそ、あの言葉の意味が余計に気になる。
それを気にしていたわたしは、こんな提案をした。
「おみくんって、明日の夜は空いてますか?」
「うん、空いてるけど、どうしたの?」
「明日の夜は、外でご飯を食べませんか?」
「いいよ。どこに行こっか」
この受け答えも普通だった。いつも通り、何は変わりはない。
何かに期待しなくなったとか、そう言ったことではない何かを感じた。
あるいは、私が知らないだけでおみくんの心の中ではまた傷ついてるのかもしれないと勘繰ってしまう。
次の日の夜、わたしはおみくんと一緒に夜ご飯を食べをに行った。
その時も、何ら1つ変わらない。
指輪も付けてる。いつも通り、静かで冷静。
そして何より、普段通り話してくれる。
わたしの心の中はさらに複雑になってしまった。
「おみくん」
「ん?」
「わたしの誕生日の日に口にした、3年後に転職するの意味って……?」
おみくんは、ゆっくりと口を開く。
その前に大きな深呼吸をした。
「実は現職では、ありのままの自分を出せてない。本来の自分を100にしたら、大体30くらいかな……?それくらいのことしか言ってない」
衝撃の事実だった。
わたしはおみくんの心がまた閉ざされるのではないかと不安になってしまう。
そう思ってしまうのも無理はないけど、一度心が壊れたおみくんが、それも入社して1ヶ月経過した時点でこんなことを言ってきた。
こんなおみくんは初めてなのかもしれない。
「言いたいのに言えないことがある、それを僕は閉ざしてる。何かを言われるのが面倒で、会社という空間的影響、そして何より、転職することは入社前からすでに決めていたことだから」
おみくんは、そんなことを口にした。
おみくんのこの意思の強さは多分揺るがないし、本当に転職するんだろうな……と思ってる。
それに……わたしにはわかる。
ありのままのおみくんを出せていない理由が。
それが分かるから、悲しいのかもしれない。
「ありのままの自分を出せてないって言ったけど、同期は僕と美晴が来年結婚することも知らないし、僕たちが付けてる指輪のことも知らない。それに、結婚式も先輩社員の方はもちろんのこと、会社の同期も一切呼ぶつもりはないよ」
心が壊れてからのおみくんはすごくドライだ。
だからこの選択をするのも無理はないし、むしろ自然だとも思ってしまう。
だからわたしはこう答えた。
「分かりました。おみくんが自らの意思で転職先を決めて欲しいと思いますし、わたしは、おみくんが幸せなら他に何も要らないです」
否定しない返答をした。これが彼にとっては1番良いのかもしれない。
「ありがとう。僕を受け入れてくれて……」
「おみくんは今後2年から3年は指輪は付けないということですか……?」
「仕事の人が関わる時は付けない予定だけど、プライベートでお出かけしたりする時とかは付けようかなと思ってるよ。あ、とは言っても買い物とかそういう場では付ける予定はないから、他県にお出かけする時につけるくらいかな」
「分かりました。わたしも、何かサポートできることがあればしますね……?」
「分かった、ありがとう。あと、結婚しました報告そのものは美晴のアカウントの方からやって良いし、美晴には指輪をつけてもらいたいかな……」
いつ何時でもおみくんはわたしのことを第一に考えてくれる。
それも嬉しいし、わたしはわたしでいてほしい、無理に合わせないで欲しいということの表れだと思った。
「おみくん、ありがとうございます」
「転職に先立って美晴にお願いしたいことがあるんだけど……」
「何ですか……?」
おみくんはわたしにお願いしたいことを伝えてくれる。その内容を聞いて、わたしはすぐに答えた。
「うん!とても良いと思う!それに、みんなにも早く見せてあげたい!」
「ほんと?ただ、まずは環境を整備しないといけないから、作り始めるのは来年3月からを予定してるけどね……」
「分かりました。協力してほしいことがあれば協力しますね?」
「分かった。また聞くと思うからその時はよろしくね」
その内容は画期的で、とてもおみくんらしいものだった。
お互いの本音を言い合える。
やっぱり、おみくんを選んで本当に良かった……
みなさんこんにちは、投稿主のおみです。
この度は「3.11 Op.14」を読んでいただきありがとうございます。
転職の話が出てきましたね。
書きたいことを書くだけのアカウントですが、これは書きたかったです。
僕のXを知ってる人なら実態を知ってると思うので、それを見て察しが付いてる方もいるのではないでしょうか。
さて次は何を書きましょうかね。
次話もお楽しみに。