誰かを好きになる。
誰かから幸せをもらえる。
孤独なんかじゃないと感じる。
自分は一人じゃないと感じる。
「おはようございます」
「うん。おはよ」
「おみくん、お誕生日おめでとうございます!」
「ありがとう。すごくうれしい!」
美晴と過ごすいつも通りの朝。
でも、今日はそれがいつも通りではないと感じた。
なぜなら今日は僕の誕生日だから。
でも、朝は非常にバタバタしているから、何も普段と変わらない。
朝、ご飯を食べて会社に向かう、何も変わらない日だった。
(今日は自分のためにも美晴のためにも早く帰ろうかな)
こんなことを思いながら自分の椅子に座り、仕事に取り組んでいた。
その時、美晴から1件のLINEが来る。
『今日の夜ご飯は何がいいですか?』
僕は悩みながらも
『美晴が作ってくれたハンバーグが食べたい』
と答えた。
これが15時くらいのお話だった。
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「おみくん、遅いなあ」
時刻は20時を回っていた。おみくんは一向に帰ってくる気配がない。
ということを考えていたその時、家のドアが開いた。
「ただいまー」
「おかえりなさい。お疲れ様です」
「ごめんね、待たせちゃって」
おみくんが帰ってきた。
遅くなったのは、同期と一緒に話してたからとのことだったみたい。
「さ、ご飯食べましょ?」
「そうだね、温かいうちに食べよっか」
わたしとおみくんの二人でご飯を食べるのはいつもと変わらないけど、それが今日だけは特別に感じた。
おみくんも、少しばかりか、嬉しそうだった。
それでも、彼は多分、悩みを抱えている。
その悩みに、少しでも寄り添いたいと感じた。
それに……
「ごちそうさまでした」
「お粗末様でした」
「わたし、先にお風呂入ったので、入っていいですよ?」
「ありがとう。じゃあ、入ってくるね?」
わたしは、おみくんと一緒にいる時間が好き。
その時間を、少しでも長くとりたい。
だから、こうして少しでも早くひとりですることを終わらせていきたいと思ってる。
その行動の表れだった。
お風呂からあがったおみくんは、基本的には自分の部屋に向かい、パソコンを開けて作業をすることが多い。
それを知っていたわたしは、小さな箱を1つ持って、ソファに座っていた。
彼は何も言わずとも掃除もしてくれる。
それも嬉しいし、「自分がすること」という認識もあったから、それも嬉しい。
お風呂から上がった彼はやはり自分の部屋に入った。
おそらくこれからPCで作業をするみたい。
わたしは、そんな彼の部屋に入った。
「お疲れ様です」
「うん、美晴もお疲れ様」
「今、時間ありますか?」
「うん、いいよ。どうしたの?」
わたしはおみくんの後ろで両腕を彼の肩の上にのせる。
「おみくん、いつもわたしのことを守ってくれてありがとうございます。わたし、聞きたいことがあるんです」
「何を聞きたいの?」
「おみくんが、わたしのことどう思ってるかについて、聞かせてほしいなって……」
「……!」
「わたしは、おみくんのこと、本当に好きだし、大切だと思ってるの。でも、おみくんは本音をずっと言ってくれない。それは、わたしにとってフェアじゃない」
わたしは、少しだけ声が震えていた。それは、少しの怖さと、これから先もおみくんの隣がずっといいと思っていたから……
「おみくん、聞かせて。本音を……」
「うん」
おみくんがゆっくりうなずく。そして、わたしに全部話してくれた。
「僕はね、心が壊れた後、美晴と一緒に生活できないことをすごく心配したし、すごく不安だった」
「その間に僕が美晴のことを嫌いになるんじゃないかって。忘れてしまうんじゃないかって……すごく不安な毎日だった……」
「でも……それを全部受け止めて、支えてくれたのは……美晴だったんだって……」
「ありのままの本音を口にしながら、全部受け止めてくれて、すごく嬉しかったし、安心した……」
「でも、それが当たり前だと思ってしまってたところがあった……」
わたしはおみくんに抱きつく。 その目には大粒の滴があった。
「美晴……ごめん……」
「謝らなくていいですよ……」
「これだけ言わせて……」
「うん」
「付き合った頃よりずっと、美晴のことを大切にしたいし、好き。大好き。声優の夜峰美晴として、じゃなくて、1人の夜峰美晴という女性として」
気付けばおみくんも泣いてた。
「おみくん……嬉しいです……」
「やっと言えた……本音……」
「本音を言ってくれたことも、おみくんの気持ちも、全部嬉しい……」
わたしはずっと彼の腕で泣いてる。 頭をそっと撫でて、彼の気持ちを落ち着かせた。 少しだけ、心にあった重みが軽くなった気がした。
泣き止んだおみくんがわたしの方を向く。
「おみくん……ありがとう……わたしも……おみくんのこと大好き……マネージャーさんとしてじゃなくて、1人の男性として……」
お互いの顔が合う。 おみくんからゆっくりと唇を合わせてくる。
それは、少し力無くて、でも切なくて、とてもゆっくりだった。
「美晴、もうこれからずっと一緒だよ……」
「うん……嬉しいです……」
「僕も嬉しい……」
彼がそばにいるだけで、幸せを感じられる。 それが特別で、美しくて、素敵で……毎日がこうして幸せでありたいと感じた。
「おみくんの手、暖かいです……」
「いつも言われるよ。暖かいって……」
「おみくんの心も、暖かくなってくれるといいな……」
わたしは何気ないことを呟く。 その言葉が、おみくんの心の奥に届くといいな……
「おみくん……」
「ん……?」
「わたしたち……特別……ですよね……?」
「もちろんだよ。僕らは特別」
「わたし、気付いたんです」
「……?」
「おみくんが、わたしにくれる優しさ……当たり前のように感じたらいけないんだって……」
わたしでは意識をしたことすらなかった。 当たり前のように感じていた、この優しさって……
「おみくんがくれる優しさ、暖かさは、全て特別です……」
余分な熱を含まない暖かさがそこにはあった。 ずっと泣いてた彼のことを、わたしはそっとそばで見守っていきたいし、困っていたら道を示してあげたい……そんな風にさえ思った。
「おみくん……甘えていいですか……?」
「何してほしいの?」
「わたし、アニメのオーディション合格したのに、おみくんにいっぱい褒めてもらってないから、いっぱい褒めてください」
「あ、ごめん自分の事でいっぱいいっぱいで……」
「もう!おみくんなら信じてたのに……」
「ごめんごめん!」
って言いながら頭を撫でてもらう。 さっきまで頬を膨らませたけど、こうしておみくんに甘えてもらうことが一番幸せなのかもしれない。
でも、それはもらうだけじゃダメなことは知ってる。
「よしよし……美晴、合格おめでとう……」
「ん……嬉しいです……」
嬉しい。すごくうれしい。
でも、それだけじゃだめだと感じる。
わたしは、ずっと閉まっていたプレゼントをおみくんに渡した。
「おみくん、改めてお誕生日おめでとうございます。これはわたしからおみくんへのプレゼントです」
わたしはプレゼントとして持っていた箱を渡す。
「ありがとう。開けていい?」
「もちろんです!」
おみくんがすごく楽しみに、その箱を開ける。
開けた後、少しだけ感銘を受けていたのが印象的だった。
「おお……嬉しい……」
箱の中に入っていたのは、ネクタイとネクタイピン。
ネクタイピンの裏側には……
「このネクタイピンの裏に入ってるのって、自分の名前?」
「はい!おみくんのものだよというのをわかりやすくするために付けてもらいました!」
「すごくうれしい……明日早速つけていこうかな……」
「それだったら、わたしが付けたいです」
「え、いいの?」
「はい!」
「じゃあ、これだけ渡しておくね」
おみくんはわたしにネクタイピンを渡した。
「美晴、ありがとう。忘れられない誕生日になったよ」
「おみくんが喜んでくれて嬉しいです!」
その日は少し夜も遅くなっていた。
2人はゆっくりと目を閉じた。
〜翌日〜
「準備できたからいってくるね」
「あ、おみくん」
おみくんがネクタイピンをつけ忘れていたので、それをわたしが付けてあげた。
「似合ってる?」
「もちろんです!とってもかっこいいですよ?」
「嬉しい……ありがとう……」
「おみくん」
「ん?」
わたしは彼の頬にキスをした。機嫌がものすごく良かったのを今でも覚えている。
「うふふ、こういうの、やってみたかった」
「満足ですか?お嬢様」
「お、お嬢様なんて……恥ずかしい……////」
「さ、行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
彼は家を出た。
わたしは、今日も変わっていく。
おみくんも、変わっていく。
でも、おみくんへの気持ちは変わらない。
彼が追い求める理想をかなえるその日まで、わたしは応援し続けると決めたのだから……
皆さんこんにちは、投稿主のおみです。
この度は「3.11 Op16」を読んでいただき誠にありがとうございます。
誕生日回です。
本日24歳となりました。
今年1年の抱負、というよりはテーマとしては「我慢と成長」にしたいと思います。
理由は知りたい人は聞いてください。
さて、誕生日ですが社会人になるとそんなことはそっちのけな気がしましたね。
あまり特別感はないです。(そもそも毎日同じような生活してたら特別感の「と」の字もないような気がしますが……)
最近は朝は比較的涼しくなってきたので、風邪を引かぬよう、体調管理には気を付けて1日1日を過ごしてほしいかなと思います。
それでは次話もお楽しみに!