その言葉は、わたしにだけしか言わないのかもしれない。
その声は、わたしだけにしか伝わらないのかもしれない。
でも、わたしにはちゃんと伝わってる。
その声も、その言葉も……
「おはようございます」
「おはよ、美晴。お誕生日おめでとう」
「うふふ、ありがとうございます」
今日は5月12日、わたしの誕生日。
おみくんは、こう言った記念日のことも全て覚えてくれている。
だからずるいのかもしれない。
でも、わたしは昨日は夜遅くまで仕事があったからか、疲れていた。
わたしはまた静かに目を閉じた。
いつもなら、
「眠たいの?」
とおみくんが気にかけてくれるけど、今日は何も言ってくれなかった。
いや、言わなかったという方が正しいのかもしれない。
わたしが目を閉じたら、彼は毛布を被せてくれた。
ー2時間後ー
「ん、んん……」
わたしがゆっくりと目を開ける。
その目の前には、おみくんが待ってくれていた。
少しドキッとするが、彼はそんなことは思ってもなかった。
「おはよ。よく寝れた?」
「はい、よく寝れましたよ」
「そっか。良かった」
わたしもおみくんも、どちらかといえばマイペースな方で、あまり傷つけたりはしないし、「人は人、自分は自分」っていうタイプだ。
でも、大事なことだけは忘れない。
だから、わたしのことも起こさなかったのかもしれない。
今日が休みなことはおみくんも知ってるから。
「何しよっか?」
おみくんがわたしに聞いて来た。でも、わたしが言うことは決まってた。
「おみくんと、一緒にいたいな……」
最近は、おみくんもわたしも仕事続きでなかなか一緒に過ごす機会がなかった。
だから、こうして一緒に過ごすことが久しぶりだった。
「うん、僕も美晴と一緒にいたかったから、今日は家で思うがままにゆっくりしよっか」
「うふふ、いいですね、それ」
こんな感じで、少し大ざっぱなところも彼とそっくり。
でもわたしは、それがちょうどいいのかもしれない。
おみくんは少し繊細だけど、大ざっぱなところは大ざっぱだから特徴を掴みにくいけど、根はすごく優しいし、人への気遣いはすごくしてくれる。
そんな彼のことを好きになって良かったとしみじみと感じた。
おみくんがわたしの頭を撫でる。
おみくんは、わたしよりも歳下なのに、まるでお兄さんのように感じてしまう。
彼は気にしてないけど、わたしはおみくんのずるさに段々逆らえなくなってる。
彼は、ふとこんなことを言った。
「美晴と一緒にいると、時間があっというま……」
彼にとってわたしと一緒にいることはすこし物足りなくて、濃密な時間だった。
たっぷりの愛情を受け止めて、わたしはすこしだけ泣いていた。
それは、おみくんの優しさと、何もしていないことへの悔しさからだった。
「そんなに嬉しかったの……?」
おみくんは繊細だからわたしが泣いてることなんて気づいていた。わたしはしっかりと頷くと、普段笑顔を見せないおみくんが笑顔を振る舞った。
「おみくん……ごめんなさい……ごめんなさい……」
「謝ることなんてないんだよ……?」
「だって、わたし……何もおみくんにしてあげられてなi……」
おみくんがわたしの口を塞ぐ。
すこし息苦しかったけど、彼はすぐに塞いでいた手を開けた。
「だーめ。そんなこと言ったら」
「え……?」
「僕は僕で美晴さんの優しさをずっともらってる。だから、今ここにいる。ここにいるのは、全部美晴さんのおかげだから……ね……?」
おみくんがわたしの髪をさすってくれる。
それは、すぐ痛みにかわる。
好きなのに、好きなのに……
溢れる涙は止まらなかった。
ぽろぽろと大粒の雫が零れた。
「美晴……」
「はい……」
「とっても幸せ……」
「……!」
その言葉は、わたしの胸の奥深くに届いた。
「わたしも、幸せです……」
わたしの胸の中を渦巻いていた感情がまとまる。
その答えを導いてくれたのは、おみくんだった。
「ベランダ、行こっか」
急におみくんがこんなことを提案してきた。
でも、わたしの答えは決まっていた。
「うん。行きましょう」
2人でベランダからの景色を眺める。
その景色は、青空が広がっていて、辺りを見渡せば街並みの様子が一目でわかる。
その景色は、今この瞬間しか見ることはない。
だから、わたしは写真を撮った。
「おみくん」
「ん?」
わたしは、普段からずっとおみくんには感謝しかしてない。
それは、昔も今も、あるいはこれからも変わらない。
だから、わたしはわたしでいよう。
「これからも、夜峰美晴をよろしくお願いしますね?」
「もちろん。美晴が一人前の声優になるために、できることは何だってするよ」
「ん?今何でもするって言いました?」
「もう……いちいち突っ込まなくていいから……////」
すこしだけいじわるするとおみくんが顔を真っ赤にしたので笑ってしまった。
でも、おみくんってわたしと似てて、すごく純粋だから、ほんとに素敵だよね。
だからわたしがわたしでいられるのかな……
これまでも、この先も、わたしはわたしでいるから……
わたしはふとこんなことを話した。
「わたしの兄は、誕生日に毎年プレゼントをくれるんです。でも、今年はそれがない。そのことが、少しだけ寂しいです」
おみくんは、わたしに抱きつく。
「すごく優しいお兄さんであることは僕も知ってる。でも僕はお兄さんにはなれない。だから自分なりのやり方で、美晴の誕生日を祝えたらなって」
おみくんはわたしにプレゼントを渡した。
その中身は少し大きめの箱だった。
「開けていいですか?」
「うん、いいよ」
わたしはその箱の中身を開ける。
その箱の中には……
「ブレスレット……ですか?」
「うん、美晴に似合うかなって」
「嬉しい!付けていいですか?」
「もちろんだよ。付けてみて」
わたしはブレスレットを左腕につける。
そのブレスレットにはわたしのものであることを示す「M.Y」のイニシャルが刻印されていた。
「嬉しい……大切にしますね?おみくんのことも、このブレスレットも」
「うん、ありがとう」
2人は笑顔になる。
こうして笑顔でいると、おみくんがいたらっていう気持ちになる。
でも、わたしは一人前の声優になるために、ここにいる。
その成長の軌跡を見守っててね、お兄ちゃん。
そして、ありがとう。おみくん。
みなさんこんにちは、おみです。
最近は動画編集が忙しすぎてなかなか書く機会がありませんでしたが久々に書きましたがいかがでしたでしょうか。
また暇な時に思いつきで書いていこうと思いますのでまた是非読んでくださると嬉しいです。
それでは次話もお楽しみに!