3.11   作:おみのSS部屋

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Op.21 white and blue photos

年が明けた1月5日。

 

僕らは再び旅行をした。

 

今回は美晴が全部決めているから、僕は何も知らない。

 

今までこうして2人で出かけた旅行で、僕が知らないというのはあまりなかったから、少しだけ新鮮に感じていた。

 

東京駅に向かい、やってきたのは東北新幹線のホーム。

 

てことは、また東の方に行くということ。

 

どんな旅行になるのか、少し楽しみな気持ちもありながら、美晴から切符を受け取った。

 

 

「はい、ここからはこれを使います」

 

 

ここから乗るのは東京8:32発のはやぶさ・こまち7号

 

今回ははやぶさ側の乗車となった。

 

旅行そのものは2泊3日となっていて、今日が少しハードとのことだった。

 

あと、美晴には「オフィスカジュアルの服装で」とのお願いもあった。

 

美晴と旅行するときは、たいていオフィスカジュアルで毎回行くけどね……

 

 

「おみくん、仙台駅に着いたらここに向かいますね」

 

 

と言って渡されたのはとある式場か何かの招待券だった。

 

その式場に覚えはないが、外装が非常にきれいだった。

 

てことはもしかして……

 

全ての点が線でつながった感覚を覚えた。

 

 

そんな2人を乗せて10:18に仙台駅に滑り込んだ。

 

今回はここで下車してそのまま美晴が指定した場所へと向かう。

 

そこには、すでに凛とした女性が待っていた。

 

 

「美晴、久しぶり」

 

 

「奏、元気だった?」

 

 

どうやら美晴の旧友らしい。

 

笑顔で2人が会話をしているのを見ると、少し和やかな気持ちになる。

 

 

「向こうにいるのが未来の旦那さん?」

 

 

「旦那さんなんて、恥ずかしい……」

 

 

美晴が少し顔を赤くしていた。

 

そんな美晴と目が合って、こっちに来てほしいと言われた。

 

 

「今日はね、ウェディングフォトを撮ってもらおうと思っててね、わたしの高校の同級生でカメラマンをしてる奏にお願いしてるの」

 

 

「初めまして。安藤奏です。よろしくね」

 

 

気さくな感じの話し方ですごく波長が合いそうな雰囲気がある。

 

 

「初めまして。私こういうものです」

 

 

と、自分の名刺を渡した。

 

 

「元々2人ってどういう関係だったの?」

 

 

「美晴のマネージャーを担当してて、その後少しだけ担当を離れていたけど、今は専属マネージャーとなり、今年からは美晴の事務所のIT関連のことも担当することになってます」

 

 

と端的に説明した。

 

 

「まさか、美晴が年下と付き合うなんて思わなかったわ……」

 

 

「そう?そういう奏は?」

 

 

「ま、私も年下と結婚したけど」

 

 

高らかな笑い声が響く。結局そうなんかいと突っ込みたくもなった。

 

 

「さ、入って入って。準備できたら撮影するよ」

 

 

「よろしくお願いします」

 

 

と言って、僕らは式場の中に入り、着替えをした。

 

とはいえ、僕は着替えが先に終わっていたから、式場の階段先で外を眺めながら美晴が着くのを待っていた。

 

5分ぐらい経った後、美晴到着した。

 

それがわかるかのように、ヒールの音がコツコツと大きくなる。

 

美晴が僕の左肩に触れたのを見て振り返ると……

 

 

薄い緑色の長いワンピースを着た美晴がそこにはいた。

 

 

「どう……かな?」

 

 

少し恥ずかしそうに美晴が聞いた。

 

 

「うん、すごく似合ってるし、美晴らしくて落ち着いてる」

 

 

「おみくんも、ぶれない落ち着きがあって好き……」

 

 

お互いのファーストミートは少し恥ずかしいものだったけど、それでも落ち着いたものができたのかなと感じた。

 

 

「お二人とも、落ち着いた感じで似合ってますね~」

 

 

ほどなくして奏がやってきた。美晴の化粧を担当してその片づけをしていたらしい。

 

 

「さ、撮影してくよ~!動画のリクエストもあったから、動画もアシスタントの人に流してもらうからよろしくね」

 

 

と言って、1日の撮影が始まった。

 

指輪を開けるシーンや、お互いの手に付けるシーン、ピアノ演奏のシーンや個人ショットなど、被写体として撮影された数、なんと200以上。

 

動画も150ほど撮っていたとのことだった。

 

夕焼けの時間には、式場の外に出て撮影も行った。

 

少し寂しい気持ちを持ちつつも、どこか嬉しくもあった。

 

17時。長かった撮影も終了……と思ったその時。

 

 

「じゃあ、明日は車で志津川までよろしくね」

 

 

「おっけー!任せて頂戴!」

 

 

美晴と奏の会話を聞いて……

 

 

「あれ?明日もあるの?今日だけかと思ってたけど」

 

 

「あれ?雅也さんには言ってないの?」

 

 

「うん、言ってない。彼はなんでも知りたがるから」

 

 

痛いところを突いてくると同時に、明日もあることが決まっていたみたい。

 

それよりも、美晴と奏が一緒に笑っているところを見ると、どこか懐かしい気持ちにもなった1日目だった。

 

 

その日の夜、僕と美晴は仙台市のホテルで泊まった。

 

そのホテルは、僕らにとっての思い出の場所だった。

 

 

「ふう」

 

 

部屋に入った途端、疲れがどっと来た。

 

 

「おみくん、1日お疲れ様でした」

 

 

美晴が荷物を置く。

 

なかなかなれない服装での撮影ということもあり、疲労もあった。

 

 

今日は特に何かあるというわけではなく、このまま終わりみたい。

 

夜ご飯について全く決めていなかったけど、美晴が「パスタが食べたい」と言ってたので、イタリアンのお店にした。

 

 

そうして1日目が終わったのだった……

 

寝る前に時計を見たら20時だった。

 

 

2日目は志津川へと向かった。

 

その場所で今日は撮影をする。

 

 

「美晴、志津川がどうしてわかったの?」

 

 

「おみくんにこの場所を教えてもらったの。その時にね、震災遺構として今もある式場があるから、そこで写真を撮りたいの」

 

 

まさか自分がきっかけだとは思わなかった。

 

……にしても、志津川なんて言ったっけ……

 

別に美晴に言ったから何かがあるわけではないけど……ま、いっか。

 

この日は海の近くでの撮影だった。

 

この日はお互い白と青を基調とした服装だった。

 

とはいえ、僕のズボンの色は黒だったけど。

 

 

外での撮影だったから、海風が強い。

 

だから、美晴は撮影の途中からは髪を結んでいた。

 

レッスン中は髪を結んでいるみたいだけど、それ以外で髪を結ぶ美晴なんてあまり見ないからか、少し新鮮だった。

 

撮影は日中いっぱい行われた。

 

外は快晴だったからか、とても良い心地よさがあり、テンションも上がっていた。

 

美晴もそれは同じだったみたいで、仙台に戻るまでの帰りの車の中では二人とも寝ていたらしい。

 

 

2日間の撮影を終えて、仙台に戻ってきた僕たちはいったんホテルに戻る。

 

 

「今日は奏とその旦那さんが来るみたいで、一緒にご飯を食べる予定なの」

 

 

ちょっとした打ち上げみたいで面白そうだった。

 

思えば、最後に打ち上げに参加したのはいつだろうか……

 

思い出したくても思い出せなかった。

 

 

「お待たせ~」

 

 

奏の隣には男性が一人立っていた。

 

背は僕と同じかやや高いくらいで、さらっとしていながら、どこか優しさもある。

 

落ち着いた振る舞いが特徴の男性だった。

 

 

「紹介するね、私のパートナーの安藤康広さんです」

 

 

「皆さんお疲れ様です。奏が2日間お世話になりました」

 

 

康広さんが挨拶をする。ちなみに後で聞いたら同世代だった。

 

 

「さ、今日はみんなで仙台が誇るおいしい焼き肉をたべよ~」

 

 

と言って、みんなで焼肉料理店に入る。

 

ちなみにこのお店、プロのアスリート選手も足を運んだことのある有名なお店だった。

 

それを象徴するかのように、サインの色紙が並んでいた。

 

 

その後は2日間の撮影の話や僕たちの仕事やプライベートの話をしながらおいしいお肉を堪能した。

 

美晴もとても楽しそうで、ワインまで頼んじゃって、本当にここにきて良かったと感じた。

 

美晴はお酒をよく飲むけど、今日は控えていた。

 

 

「奏、2日間ありがとう」

 

 

「こっちこそ、ありがとうだよ!また東京遊びに行くから待っててね~」

 

 

「ふふっ、いつでもおいで」

 

 

と言って2人と別れ、長い撮影が終わった。

 

奏たちと別れた後、2人でホテルに入り、仙台の夜景を眺めていた。

 

 

「おみくん、2日間お疲れ様でした」

 

 

「美晴こそ、企画から何から何まで、全部してくれてありがとう」

 

 

美晴の頭が僕の肩に乗っている。

 

重たくはないし、むしろ心地良いくらいだった。

 

 

「おみくん、疲れとか、大丈夫ですか……?」

 

 

「良い疲れになってるから、この後お風呂に入ったらすぐに寝ようかな?」

 

 

「わたし、もう少しだけこのままでいたいですけどいいですか?」

 

 

「うん、いいよ」

 

 

今日の美晴はどこか甘えんぼで、声がいつになく優しい。

 

きっと、ほとんど1年間甘えてなかったからなのかなと感じ、そっと頭を撫でた。

 

すると美晴さんは「もっとして」と言わんばかりに、視線をこちらに向けた。

 

 

そんな甘えんぼな美晴にいじわるがしたいと思った僕は、美晴の唇に口づけをした。

 

 

「ん……」

 

 

時が止まる。

 

それくらい優しい時間だった。

 

目を見開くと、美晴の顔が赤くなっていた。

 

 

「おみくん、ずるい……」

 

 

「ダメだった?」

 

 

「ダメじゃないですけど……ずるい……」

 

 

かわいい。すごくかわいい。

 

美晴が彼女でよかった……

 

こんな顔、他の人には見せれない……な……

 

 

そっと横を見ると、美晴が幸せそうに寝ていた。

 

やれやれ……という顔をして僕は美晴をベッドまで運んだ。

 

あと2か月……

 

長いようで短いんだと感じる。

 

 

幸せで満たされなかった空白の9ヶ月を満たすには十分すぎる2日間を過ごした。

 

 




新年あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
この度は「3.11 Op.21」を読んでいただきありがとうございます。
今まで出てきてなかったウェディングフォトのお話です。
少し書き足りない部分はありましたが、それでも書くことができてよかったです。
また、志津川には東日本大震災の遺構として、式場があります。
詳しくは語らないですが、気になる方は是非足を運んでみてほしいと思いますし、
活気ある三陸の街と海の幸を堪能してほしいと思います。
さて寒い時期がまだまだ続きますが、皆さんも体調管理には気を付けて、暖かな春を待ちましょう……
それでは次話もお楽しみに!
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