結婚式そのものは夕方で終わった。
二次会や三次会については行わなかった。
それは行いたくなかったというのが本音であり、みんなにも仙台を観光してほしいと思っていたから。
それに、わたしもおみくんも「二次会や三次会はいいかな」という意見で一致していた。
そんな中、式を終えたわたしたちは松島に移動していた。
ちなみになんで松島かというと、わたしが「おみくんと一緒に巡ってみたいから」と言ったから。
思えば松島には何度かいったことはあるけど、天候不良だったりで、あまり観光はできていなかったから。
それに、わたしが「温泉宿に泊まってみたい」と思っていたから。
おみくんと楽しみたいなって……
だから少しだけ、おみくんにわがまま言っちゃった……
でも、それを快く引き受けてくれたし、ホテルも見つけてくれていた。
ただ、せっかく来たからには楽しみたいので、わたしも月曜日も休みだったから、もう1泊追加しちゃったみたい。
かわいいよね。
ホテルに着いて部屋に入ると、窓の外からは松島の景色が広がっていた。
ちなみに部屋の名前は名月って名前だった。
「綺麗……」
「外にも出れるみたいだよ、出てみる?」
「はいっ!」
わたしとおみくんは荷物を置いて外に出る。
ベンチがあったので、そこに腰を掛けながら、二人で乾杯をした。
おみくんはリンゴジュース、わたしは桃のジュースにした。
アルコールはお昼にも飲んだし、ここで飲んだらおみくんに怒られそうだったから。
それに、お酒を飲んだ後にお風呂に入りたくなかったから、それを避けるためでもある。
「1日、あっというまでしたね……」
「ああ、でもみんな幸せそうだったから何よりだよ」
みんなが笑顔になる結婚式をテーマにしていたこともあったから、それを考えれば今日の式は大成功だったと思う。
おみくんもそれについては納得していた。
二人だけの時間が流れていく。
お互いつかれていたからか、少し口数は少なかった気がする。
気づけば17時半を過ぎていた。
「美晴、先に温泉に入る?」
「それでもいいですけど……」
わたしは少し歯切れが悪そうにおみくんにいう。
おみくんは何のことかあまりピンとは来ていなかったみたい。
「何かあった?」
少し顔がほてって私はこういった。
「せっかくなので……一緒に入りませんか?」
「いいよ」
あまりにもおみくんが快く引き受けたことに衝撃を受けた。
彼は肌を露出することが嫌いで、夏場でも袖の短い服は着ないから本当にこの返事が意外過ぎた。
「いいの……?」
「美晴が僕に見られてもいいならいいよ」
「わたしは……おみくんに見られてもいいですよ……」
少し気まずい雰囲気になる。
それはお互いの素肌を見せ合ったことがなかったから。
よく言えば、節度を持った付き合いを続けてきたということ。
それはおみくんが、「美晴の望まないことはしたくないから」と言ってたのも影響していると感じた。
話し合いの結果、先におみくんが入って、あとからわたしが入ることにした。
「お、お待たせ……」
少し恥ずかしいと思いながら、おみくんの隣に座る。
彼はいつも通り、眼鏡をはずしていた。
「おみくん、これ……」
「え、眼鏡……?」
「おみくん、いつも何も見えてないだろうし、わたしだけ見えるのもフェアじゃないから……」
わたしとおみくんは常に対等な関係にあった。
それはおみくんが大事にしてきたことでもあるし、気づかぬうちにわたしもそうなっていたから。
「ありがとう……」
素直な彼は、その眼鏡を取った。
「背中、お互いで流し合う……?」
「僕はいいけど……」
というわけで、お互いの背中を流すことになった。
緊張で心臓がバクバクしていた。
おみくんが平静を装っていたけど、なんであんなにも落ち着いていられるの……
ずるいと思いつつも、いつも落ち着いているおみくんらしいと感じた。
「おみくんの背中、すべすべですね……」
「そう?美晴に言ってもらえると嬉しいし自信になるよ」
おみくんが笑顔を見せる。
彼が笑顔を見せることはそうない。
それでも、見せてくれるときは本当に素敵な笑顔を見せてくれる。
そんな彼が、わたしは好き……
「美晴も、僕に負けないくらいすべすべだよ」
「うふふ、うれしいです」
気づけば恥ずかしさはなかった。
おみくんと一緒にいることの喜びを肌で感じることができたのがよかった。
二人で一緒に湯船につかる。
わたしは彼の左手をそっと覆った。
「美晴?」
「わたしたち、これまでも、これからも、たくさん幸せを共有して、たくさんの幸せを手に入れましょうね?」
「もちろんだよ」
おみくんの右手がわたしの手を握る。
あまり見せない、彼のスキンシップな行為に、少しだけドキッとしていた。
「おみくん、月、綺麗ですよ」
「ほんとだ。眼鏡があるからよく見えるし、この月を美晴と見れてよかった」
2人だけの温泉旅行で、お互いの肌を見せ合い、まだ1つ距離が縮まった気がする……
それを肌で感じ、ためらうことは何もないと感じた。
「おみくん」
「なあに?」
わたしはゆっくりと、深い口づけをした。
「わたし……幸せです……」
「僕も幸せ……」
あぁ……わたし、本当に幸せなんだ……
5年前からずっと好きで、約束した結婚を実現することができて、好きな人と結ばれて……2人で温泉に入り、ともに月を眺めているのだから……
その月は、これからのわたしたちの未来が明るくなることを示すかのように、明るく照らしてくれていた。
皆さんこんにちは、投稿主のおみです。
この度は「3.11 Op.25」を読んでいただきありがとうございます。
最後は僕がどうしても(というわけではないですが)書きたかった温泉旅行回にしました。
二人の式の余韻を残しつつ、どうストーリーとして載せるかが難しかったです。(あとは描写の問題とかね……)
ただ、それを無事に書けたのが満足です。
さて、このお話でこの長い小説も最終話となりますので、最後に私から。
この小説を書こうと思ったきっかけは、「自分の推しを題材にした恋愛小説を書きたい」が本音でした。
どうやって書いていこうかを考え、悩み、途中でメンタルブレイクしたり、その題材のゲームがサ終したりと、苦難の連続でしたが、それを乗り越え、こうして完結させることができたこと、まずは嬉しく思っています。
「小説読んでますよ」と声をかけてくださったりしていただいて、とてもモチベーションになりましたし、その声に応えることができているかはわかりませんが、小説の1話に「結婚を5年後にする」と書いた時の約束を果たすことができました。
6年間、読んでいただいた皆様、本当にありがとうございました。
本編は完結となりますが、アフターストーリーを5話ほど執筆する予定ですので、そちらもぜひお楽しみいただければと思います。
長くなりましたね。
多分ここまで長いあとがきを読んでくれる方はいないと思いますが……
最後までご覧いただき、誠にありがとうございました!
また次回の小説でお会いしましょう!