3.11   作:おみのSS部屋

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Op.7 約束の夜

これは、2024年3月のことだった。

 

「美晴、僕、最後の単位を取りに行ってくる」

 

「行ってらっしゃい」

 

わたしは、おみくんを見送った。

その理由は、彼が卒業論文の作成を行うから。

おみくんは大学を中退していた。

その理由を先日事務室の方が把握したみたいで、その理由を聞いたうえで「彼の卒業論文の単位取得を認めます」というものだった。

 

彼はそれを引き受け、一人京都に行っていた。

ちなみにその期間の家については、大学側が全額負担とのことだった。

 

4月に彼は京都に行った。

その際に、彼はこう言っていた。

 

「美晴、欠かさず連絡しようね」

 

「うん」

 

それが彼との約束だった。

そして、月日が流れたGWのある日。

 

「美晴、今年の誕生日はどこか行きたいところとかある?」

 

「わたし、その時アニメの撮影が終わってちょうど京都に行こうかなって」

 

「じゃあ、日曜日、17:00に京都駅に集合ね」

 

あれから1週間が経過した。

今日は、わたしの誕生日。

それをおみくんが覚えていてくれたことも、約束してくれていたことも、全て嬉しい。

そんな夜は、いつもと違う、特別な雰囲気がどこかしらにあった。

わたしも、おみくんと会うことに少しドキドキしているのを感じた。

 

「おみくん遅いなあ……」

 

時刻は17:10を過ぎたところ。

ただ、おみくんは来ない。

不安になって、わたしは彼のラインを開こうとした。

その時、後ろから肩をたたかれた。

その先にいたのは……

 

「お待たせ。遅くなってごめん」

 

おみくんだった。

でも、いつものおみくんと少し違う。

それは、メガネのせいだった。

彼は、いつもは角ばった眼鏡をかけているのに、この日は丸眼鏡だった。

 

「おみくん、久しぶり」

 

「美晴、元気だった?」

 

「うふふ、元気でしたよ」

 

こんな何気ない会話から始まるこの雰囲気がわたしは大好きだった。

それは、今でも変わっていなかった。

やっと会えた。わたしの本当の運命の人に。

その針が、少しだけ傾いた。

重く、止まっていた時計の針が、再び動き出した気がした。

わたしは、そんな感情を抱きながら、彼と手をつないでいた。

その手はわたしより少し大きく、包み込んでくれる暖かさがあった。

 

「今日はここでご飯を食べるよ」

 

「きれい……!」

 

やってきたのは京都にある海鮮のお店。

その店内は落ち着いた雰囲気があった。

わたしは、その雰囲気に呑まれていた。

 

「こちらになります」

 

店員さんがエスコートしてくれ、わたしたちは個室に入った。

 

「本日はご来店誠にありがとうございます」

 

メニュー表を置いていき、店員さんは帰っていった。

 

「おみくん?」

 

「美晴、お誕生日おめでとう」

 

「うふふ、ありがとうございます」

 

「今日も残り少ない時間だけど、楽しんでいってね」

 

「もちろんです!だって、これはわたしとおみくんだけの二人しか知らない世界ですから……」

 

「さ、おなかも空いてるだろうし、早速頼むか」

 

「はーい!」

 

わたしとおみくんはメニューとにらめっこしていた。

どうやらコースもあるみたいだけど、「おみくんはお酒飲めないし、わたしも飲むつもりがないからいいよ」と言って、普通に注文することにした。

まあ、わたしもおみくんも小食だしね。

 

その間には、二人で近況報告を行った。

その中には、「スタッフさんはどうですか」であったり、「新しい子はどうなの?」といったわたしの話題だけでなく「研究室は順調ですか?」とか「バイト何してますか?」といったおみくんのことについてもしていた。

その中で一番びっくりしたのはおみくんがポイ活を始めたこと。

わたしにもやり方を教えてくれたから、早速インストールして初めて見ることにしたの。

うふふ、報告が楽しみ。

 

そうこうしているうちに二人で料理を食べた。

お酒は、日向夏スカッシュというノンアル。

これなら、おみくんも飲めるかなって思ったから。

こうして二人で過ごす時間が、なんだか懐かしく、そして幸せに感じていた。

わたしは、おみくんがいないとダメなんだなって。おみくんと一緒にいることが幸せなんだって。

その気持ちが強くなっていく。

おみくんが水を一杯飲んでからわたしはこういった。

 

「おみくん、今日は誘ってくれて本当にありがとうございます。とっても幸せです」

 

「美晴が喜んでくれてよかった……。こっちこそありがとう」

 

おみくんは絶対に感謝の気持ちを忘れない謙虚な人。

それは、どこか女性っぽくもあり、でも男性なんだと感じていた。

お会計を済ませ、お店を後にした。

 

「美味しかったです。ごちそうさまでした」

 

「うん。喜んでくれてよかったよ」

 

「この後はどこに行きますか?」

 

「ホテルに行こうか。あ、もうすでにチェックインは済ませているから安心して」

 

「はーい」

 

わたしはおみくんについていき、ホテルに向かった。

そのホテルは、何とも言えない高級感に包まれていた。

 

「おみくん、ここで合ってるの?」

 

「うん。合ってるから安心して。ちょっと僕は用事があるから外に行ってくるね」

 

わたしはおみくんから伝えられた部屋の番号のルームキーをもらい、そのカギを開ける。

中に入ると、大きなベッドが2つ、隣に並んでいる。

こんな豪華なホテルに泊まれることに、喜びを感じていた。

それだけでなく、おみくんの本当の気持ちをお金にして表現しているところが何よりうれしかった。

 

「手紙……?」

 

わたしは、一人しかいない部屋の真ん中のテーブルに1つの手紙が置かれているのに目を向ける。

その手紙にはこう書かれていた。

 

「美晴へ」

 

「これ……おみくんの手紙……?」

 

わたしはその手紙を開けて読んでいた。

 

「……!」

 

 

美晴へ

 

美晴の誕生日だっていうのに、わざわざ京都に足を運んできてくれて本当にありがとう。

本当は、僕が東京に行かないといけないところなの、ごめんね。

 

お誕生日おめでとうございます。

美晴の誕生日を祝う度、「美晴のことを大切にしたい、幸せにしてあげたい」という気持ちが強くなるのを感じます。

だから、今年も美晴の素敵な笑顔をそばで見ていたいし、困っているときは背中を押してあげたい。

それは、声優という仕事であっても、プライベートであっても。

美晴が美晴らしく生活できるために、僕もできることを1つ1つ、していくね。

美晴のことを好きになってから、結婚しようと約束したその日から、そして、今日の約束。すべてが思い出。

4年間、特別な思い出がたくさん詰まった僕と美晴だけの物語に、また新たな1ページを刻もうね。

ありがとう。

 

P.S

今宵、僕は貴方をシンデレラにすることを約束します。

 

「……!!」

 

わたしの目からは涙があふれていた。

夢にまで憧れていたシンデレラ。

それを、私にさせるって……?

頭の中がぐちゃぐちゃになる。

でもその心を静めてくれるのは、やっぱり彼の声だった。

 

「美晴、お待たせ」

 

わたしは今すぐに彼に聞きたい。

この手紙の最後の意味を。

 

「おみくん、手紙の最後って……」

 

「あ、手紙詠んだんだ。ありがとう」

 

おみくんは私の頭をなでる。

なんだか、それだけで心が幸せで満たされていく……

 

「ふふっ、そのまんまの意味だよ」

 

「え……?」

 

おみくんがわたしの前に立つ。

月と、京都タワーに照らされて、まぶしい光を放つおみくんと、その夜景に目を奪われていた。

 

「今日は、この夜景よりも、美晴のことが美しいです。お誕生日おめでとうございます」

 

おみくんはわたしに誕生日プレゼントを渡す。

 

「……!」

 

そこには、純白のヒールが置かれていた。

よく見ると

 

MIiharu Yomine 2024.5.12

 

と書かれていた。

 

「これは、世界でたった1つだけの美晴のための靴です。美晴が、かつて言っていた。お姫様に憧れていたと。それを実現させてあげたいなと思って、これにしたんだ」

 

わたしは目を光らせておみくんにだきついた。

 

「嬉しいです……そのことを覚えてくれていたおみくんも、このプレゼントも、全部……」

 

「お気に召されましたか?お姫様」

 

「恥ずかしいから、やめて……」

 

そういおうとした時、おみくんがわたしの体を持ち上げた。

 

「きゃっ!おみくん?」

 

おみくんが俗にいう、お姫様抱っこをしてきた。

半分嬉しく、半分恥ずかしい気持ちがあった。

それでも、わたしがしたいことを叶えてくれるおみくんが、いちばん好きなことは変わらなかった。

 

「満足ですか?お姫様」

 

「ええ。満足ですわ」

 

「それが聞けて何よりです」

 

完全になりきっていた。

それがおかしくてふと笑っちゃった。

こうして些細なことでも笑い合えるこの関係も、全部好き。

気づけばまたおみくんに抱きついてた。

 

「おみくん、ありがとうございます。わたしはいま、とっても幸せです……」

 

甘く、切なく、優しい声が部屋に響く。

かき消す音は何もなかった。

 

「美晴、ありがとう。これからも、美晴のこと、たくさん幸せにしてあげる。だからよろしくね」

 

「はい……」

 

わたしたちは離れていても、こうした1つの約束があれば、いつだって離れることはないと確信した。

早く2026年3月11日にならないかな……

わたしは晴れ渡る京都の夜空を見上げながら願った。

おみくん、ありがとう……

そして、ずっとずっと、大好きです……




みなさんこんにちは、up主です。
この度は、3.11 Op7を読んでいただきありがとうございます。
また期間が開いてしまいました。
大変申し訳ございません。

さて、私からまずは2点お知らせです。
1点目が就職活動が全て終了いたしました。
ただ、ここはまだ通過点にすぎません。
これからも精進していきます。
2点目が別シリーズ「お隣の天使様と47都道府県を巡ってみた件」についてです。
今年2月に兼六園を訪問している際の小説がまだおそらく投稿されていないかと思います。
そちらにつきましては、年内までに投稿すると思いますので、今しばらくお待ちください。

この小説も、実在している場所がモデルになっています。
ただ、実際に足を運んでいるわけではないのでその点はご了承ください。
学生と社会人の誕生日の祝い方~学生編~が今回のテーマでした。
少しどころかかなり奮発して高級ホテルに泊まった二人を想像して執筆しました。
こんな恋愛、ほんとうらやましいですよね。
書いてて泣きました。
人生はドラマなんだと、初めて感じた瞬間でもありましたね。

そして文中に出てきたポイ活の話、実は本当にしているんですよ(爆弾発言)
何を使用しているのかについて知りたい方はXのDMにて個別相談をお願いします。

今回は、とあるお話に出てきたことを実現するためのお話しとして書かせていただきました。
かつて憧れを持っていたお姫様、それを少しでも再現できていたら幸いです。

さて長くなってしまうのもあれなのでここらで締めましょうか。
話したいことはいっぱいありますけど
それでは皆様、次回もお楽しみに!
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