親族経営中小企業のセキュリティ・レディは今日もダレる。 作:ウェットルver.2
「してやったり、だぜ。」
ひさしぶりに太陽の光を浴び、……ひさしぶりでもないな?
家事のための掃除用品、洗剤、食材、嗜好品、ついでに漫画にグッズにパソコン用品にラジオカセットに銀行や郵便局への用事を含めても、けっこう浴びてはいる。
「強いて言った」と言い直すなら、「純粋な私事では」ひさしぶりだ。
カラオケでのストレス発散も含めれば、まあ数日ぶり。
本当に純粋に。
ニートは連日休日だろと揶揄されても現実そうでもないよ、な介護生活を共にする人間にとって、自分の精神状態や介護や家庭の経済を気にせず遊べるような。
そういう「休日」はひさしぶりなのだ。泣きそう。
晴れ晴れとした気分でホットドッグ屋に行くのは、マジひさしぶり。
Cafe Nagi、いいよね……雰囲気も場所も……! あと店長も。
「チリドッグください。」
「ドリンクはどうだ。」
「コーラで。」
「了解した。」
めずらしい。バイトの子がいたのか。
店長さんは忙しいのか、まったく店の奥から出てこない。
あの無精ひげが案外いいんだけどな……まあ親父の髭剃り見てるし、無精ひげが無精じゃなくて繊細な技術で整えられたカイゼル髭てきなサムシングなの知っているけど、ほらカイゼル髭もそうだけど髭の魅力は浪漫であって現実無精かどうかはね?
ガチ無精髭は落ち武者なんだよねえ。
「こちらをどう……どうした……ましたか?」
「ん? あっ、ああ、なんでもないですよー。」
バイトでも立派な店員さんだ、礼節を欠かせるのは淑女じゃあない。
いやあ、すごいよね接客業。お侍気分の斬捨て御免なやべーやつ相手だろうと、へんにイラつかせずに仕事しなきゃならねーんだもん。ぼくには無理。
「うーん、ぼく、あいつに【スキドレ墓守】はやりすぎたかな……?」
「っ!?」
「あ、すみません、ひとりごとですぅー。」
「そ、そうか。」
ほんと堅気の仕事は尊いのだ。
この街、DEN-CITYでの地域の闇なんて、あまりに狭く深いもの。
表街道や裏街道を含めても、ホームレスの姿が見えない……ということはつまり、ホームレスが発生しない社会である、という意味ではない。
ホームレスになるしかない立場の人間が、ネットカフェを転々として生活をする、という、えげつない貧困の不可視化が進行してしまった、これが正確なところだ。
そして室内とは、その地域の暗部が行動するには十分な暗所でもある。
SNS社会の極みでもあるDEN-CITYは、ネットワーク業を介して仕事を作ろうとする暗部の人間が職質を受ける機会もなく暗躍できる、そういう時代に至ったのである。
表が繁盛すればするほど、裏はこぼれた影に集まり暗躍する。
あのクソ■■のGhost Girlが仕事に困らないのも、このせいだろう。
ゆえに堅気は尊い。だからくたばれGhost Girl。おのれSOL。
そして頑張れ少年、おねえさんは応援しちゃうぞ。
「……寒気がするな。」
『はあ? 今日の気温は24℃だぞ、突風だって吹いてないだろ?』
「妙な視線を感じた。」
『はいぃ?』
「いただきまーす。」
食にも礼は欠かすべからず。
しっかり手を合わせて感謝を可視化しつつ、店員さんに伝えながら。
まずはひとくち。……うん、あいかわらず美味しい。
「はぁい。ちょっといいかしら。」
「おまえは……?」
店員さんにバイカースーツの女性が語りかけている。
お、ショタコンか? ナンパか? 若い芽に興味がおありで?
いいねえ、そういうの。堅気同士なら見逃せるけれど。
ナンパする側が堅気じゃなかったら、マジでふざけんなって話。
様子は見ておくか。
しかし、さっきから何の話をしているんだか。
今日は車の往来が多いし。余計に声が拾えない。
近くにいた女の子が興味深そうに近寄っている。あの制服からして近所の高校生なのだろう。しかも、バイトの店員くんと同校と見た。
…………うん?
え、待って、きみ、そのバイク乗りのコと知り合いなの?
どういう人間関係だよ、彼女。すごいな?
「……ま、いっか。
店長さんも近くにいるだろうし、そろそろ巡回してくる頃のはず。
なんかやばかったら警察が動くでしょ、退散しましょ、そーしましょ……」
まずは勝利の美酒を味わおう。
コーラだけど。腹立つGhost Girlのあんちくしょうを封殺して勝利した、というだけでもマジで機嫌がいいのだ、おかげで今日は魔法少女モノの映画を気兼ねなく楽しめる。
お小遣いも悪くないし。映画はネットのアーカイブより3D体感式よ。
応援のペンライトも買える。ついでに気になった漫画の映画も観ちゃおう。
今日は、パーリナイだい。
「どうした?」
「……あの子のストラップの、あの人形。
すっっっごい見た憶えがあるというか……思い出したくないような……」
「イルカ? かわいいじゃない。」
『
……裏社会の電脳トレジャーハンターさまの嫌な思い出ねえ?』
「Ai。」
『へいへい、だまってますよーだ。』
続きがあるなら?
-
読みたい
-
次で打ち切ってもいい
-
無理に書かなくていい